超音波検査技術
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45 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 黒木 唯, 望月 泰秀, 茅野 博行, 加藤 はるか, 千野 沙織, 蜂矢 るみ, 豊崎 瑛士, 太田 礼, 大桃 優依, 十文字 美帆, ...
    2020 年 45 巻 6 号 p. 563-573
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/05
    [早期公開] 公開日: 2020/10/27
    ジャーナル フリー

    目的:大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)の経時的な進行に関して大動脈弁硬化症や軽症まで含めたASの自然経過および左室リモデリング形態との関連性について検討した.

    対象と方法:当院において3回以上経胸壁心エコー検査で経過を追えたAS患者501症例を初回検査時の最大大動脈弁通過血流速度(Vmax)からA群(Vmax <2 m/s),B群(2≦ Vmax <3 m/s),C群(3≦ Vmax <4 m/s),D群(4 m/s≦ Vmax)の4群に分類した.予後に影響を与えるとされる0.3 m/s/年を超える進行速度を基準とし4群間で比較検討した.また左室形態を4群(正常,遠心性肥大,求心性リモデリング,求心性肥大)に分類し左室形態がASの進行に与える影響も検討した.

    結果と考察:進行速度は4群間で有意な差を認め,より重症のカテゴリーの患者で0.3 m/s/年という進行速度を超える患者が有意に多かった.ロジスティック回帰分析ではA群を基準とした時,B群(オッズ比2.08, p=0.021),C群(オッズ比3.79, p<0.001),D群(オッズ比6.41, p<0.001)とASの重症度が高いほど進行するリスクが高いことが示された.また,左室肥大パターンに関しても解析したところ,正常パターンを基準にした場合,求心性肥大は有意な進行速度の規定因子であった(オッズ比2.12, p=0.001).さらに進行速度で3群に分けて検討した結果,最も進行の早い群(0.2 m/s/年以上)では求心性肥大を呈した患者が有意に他の2群に比して多かった.

    結語:AS患者ではより重症の患者で進行が速く,また左室求心性肥大を呈した症例ではASの進行速度が速いことが示唆された.

研究
  • 長田 剛, 野里 陽一, 岡部 聡寛
    2020 年 45 巻 6 号 p. 574-582
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/05
    [早期公開] 公開日: 2020/10/27
    ジャーナル フリー

    目的:胆囊結石(胆石)の形成因子や形成機序に関する研究は古くから行われているものの,胆囊形状と胆石保有の関連に着目した研究は少ない.そこで,本研究では胆石の有無と胆石の種類を胆囊形状別に比較検討することに加え,胆石保有に最も影響する因子を知ることを目的とした.

    対象と方法:2019年4月から2019年10月に,当院でスクリーニング目的に腹部超音波検査を施行した144例(男性78例,女性66例,平均年齢75±13歳[34~95歳])を対象とした.胆囊形状を洋梨型,くびれ型,屈曲型に分類し,胆石の有無を胆囊形状別に比較した.そして,保有する胆石を大胆石と小胆石に分類し,胆囊形状別に比較した.また,胆石の有無と年齢・性別・Body mass index・糖尿病・脂質異常症・胆囊形状の関連を検討した.

    結果と考察:胆囊形状は洋梨型97例,くびれ型26例,屈曲型21例に分類された.胆石の保有は洋梨型11例,くびれ型5例,屈曲型12例であり,屈曲型で有意に高値を示した(p<0.001).大胆石や小胆石の保有と胆囊形状に有意差はみられなかった.また,胆石保有には胆囊形状(屈曲型)が有意に影響した(オッズ比:10.35, 95%信頼区間:3.42–31.32, p<0.001).屈曲型に胆石の保有が有意であったことについては,胆囊内での胆汁うっ滞が関与していると考えられた.

    結論:胆石保有に最も影響する因子は屈曲型を呈する胆囊であり,超音波検査で分類した胆囊の形状は胆石保有に関連していることが示唆された.

  • 尾羽根 範員, 白井 秀明, 河本 敦夫, 藤岡 一也
    2020 年 45 巻 6 号 p. 583-594
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/05
    [早期公開] 公開日: 2020/11/11
    ジャーナル フリー

    日本超音波検査学会体表領域専門部会では実技講習で実用可能な乳房超音波ファントム(以下ファントム)を開発した.ファントムは形状や軟らかさに走査しにくさを再現し,内部も実際の乳腺のように複数の腺葉で構成し良悪性の腫瘤や構築の乱れを模したターゲットを配置した(特許第6651164号).

    2018年度はファントムを用いて講習効果の検証を目的に検査法の講義,走査の実技,画像判読の講義による講習を4回試行した.講習効果の検証は受講者74名を対象に受講前後で(1)スクリーニングに要する走査時間,(2)悪性腫瘍ターゲットの静止画記録,(3)症例動画でのひきつれの有無の判定の3項目のテストを行い成績を比較した.

    (1)走査時間は講習後に有意に短縮した(p=0.002).(2)悪性腫瘍ターゲットの静止画像は講師3名が,探触子の浮き,ターゲットの描出位置の偏り,境界の明瞭性,選択断面の良否を3段階で評価し講習後の評価が有意に向上した(p<0.0001).(3)ひきつれの有無は受講前後で同じ動画の順序を変えて供覧し,講習後に感度,特異度,正確度が有意に向上した(感度:p=0.032, 特異度・正確度:p<0.0001).

    受講者による実物と比較したファントムの評価も良好で,似ている:5~似ていない:1として,表面の硬さ:4.0, 内部の硬さ:4.0, 乳頭部の減衰:3.5, 腺葉構造:3.4, 良性腫瘍:4.5, 悪性腫瘍:4.2, 区域性病変:3.9, ひきつれ:3.7であった.

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