超音波検査技術
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46 巻, 4 号
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原著
  • 森 貞浩, 藤浪 麻衣, 矢島 麻里絵, 森 夕佳, 町田 直子, 井上 知彦, 箭内 紀史, 小野 嘉文, 高佐 顕之, 渡久山 哲男, ...
    2021 年 46 巻 4 号 p. 317-329
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/04/23
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目的:腸閉塞機転でパルスドプラ法を使用し得られたresistive index(RI)によって虚血進展予測と層別が可能かを検討すること.

    対象と方法:対象は腹痛精査目的のUSで腸閉塞機転を同定しえた64例である.保存的治療群と手術群でRIを比較し,receiver operating characteristics curve(ROC)で手術・腸切除要否のカットオフ値を算出した.さらに腸切除要否について多変量解析で血液検査データ,腹水,発症からの時間区分各因子のオッズ比を算出した.

    結果と考察:RIは保存的治療群に比し手術群で有意に高値で(0.73±0.06 vs.0.89±0.09, p<0.01),腸温存群に比し腸切除群で有意に高値であった(0.80±0.10 vs.0.94±0.06, p<0.01).RIの手術要否カットオフ値は0.79(感度87.5%,特異度91.7%),腸切除要否カットオフ値は0.85(感度100%,特異度72.5%)であった.多変量解析では発症からの時間区分とRI高値が腸切除に関連した.パルスドプラ法で拍動血流を認めてもRI高値の場合には静脈の絞扼,うっ血に伴う末梢動脈灌流の低下を示唆し静脈絞扼時期を示すものと思われ,この段階の手術で腸管を温存できる可能性があった.

    結語:腸閉塞例では閉塞機転局所のRI計測により静脈絞扼状態の評価が可能となり,RIが0.85を超える場合には絞扼性の可能性が高く腸温存のために緊急手術の検討が望まれる.

研究
  • 三浦 大輔, 崎田 光人
    2021 年 46 巻 4 号 p. 330-339
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/04/23
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,特発性孤立性上腸間膜動脈解離(Spontaneous Isolated Superior Mesenteric Artery Dissection: SISMAD)における超音波画像の経時的な変化を解析することである.

    対象と方法:対象は2013年3月~2020年1月に当院で超音波検査にて最初にSISMADと診断された21例のうち10例(平均年齢48.2±3.9歳,男10例)である.計測項目はSMAにおける最大外径,最小内径,最大狭窄率,平均狭窄率で,これらを発症日,発症から約3日後,約1週間後,約1か月後,約3か月後と分類した各フェーズで計測した.さらに各フェーズにおける,発症日を基点とした増減率を算出した.

    結果:最大外径:発症から徐々に血管径は拡大し,約1か月後に+9.8%と最大の拡大率となった.最小内径:約1か月後に−31.4%と最大の内腔狭小化が生じた.最大狭窄率:発症日から徐々に狭窄が進行し,約1ヶ月後に+26.3%とピークとなった.平均狭窄率:発症から約3日後に−3.3%とわずかな軽快傾向があったが,約1か月後には+22.5%とピークとなった.全てのパラメータは約3か月後にはピークアウトした.

    結語:SISMADの経時的超音波画像所見として,狭窄は約1週間後から一度増悪し,約1か月後にピークになる傾向を認めた.画像所見は増悪傾向となっても,腹痛の増強などの臨床所見に注意しながら,保存的加療が期待できる可能性がある.

症例報告
  • 小野寺 亜希, 市原 真, 平田 真美, 木下 静江, 廣瀬 邦弘
    2021 年 46 巻 4 号 p. 340-346
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/04/23
    ジャーナル フリー

    症例は50代女性.マンモグラフィで両側乳房に良性石灰化を認め,超音波検査(US)を施行.左乳腺外上区域に径16 mmの腫瘤を認めた.腫瘤は境界部高エコー像(halo)様に見える像を呈していたことから乳癌も否定できず,生検を施行した.病理組織像で腫瘤内にはアミロイドの沈着が高度で,アミロイドーシスと診断された.病変の境界部は組織学的に,アミロイドが脂肪組織の隙間に入り込むような沈着パターンを示していた.これは硬性型浸潤性乳管癌の浸潤先進部でみられる癌細胞と線維化,周囲の脂肪組織が混在する状態と類似性を認め,腫瘤の境界部がhalo様に見えた成因と考えられた.アミロイドーシスは全身性と限局性に大別されるが,本例はシェーグレン症候群に合併した限局性アミロイドーシスと考えられた.乳腺に発生する限局性結節性アミロイドーシスはまれであり,乳癌との鑑別が難しいとされている.US像と病理組織像を対比した症例はこれまで認められないため報告する.

  • 山本 理絵, 宮﨑 明信, 梅橋 功征, 野﨑 加代子, 古野 浩
    2021 年 46 巻 4 号 p. 347-353
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/07/20
    [早期公開] 公開日: 2021/04/23
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は80代男性.2年前にStanford A型大動脈解離を発症し,ステントグラフト挿入,大動脈弁置換術,三尖弁形成術を施行.今回,呼吸苦にて他院より心不全疑いで当院受診した.来院時血圧は69/49 mmHgで明らかな心雑音は聴取できなかった.経胸壁心エコー検査では,壁運動低下なく,左室中部から心尖部まではやや過収縮であった.パルスドプラ法による左室流出路速度波形により算出した心係数は5.9 L/min/m2と高拍出状態であった.推定肺動脈収縮期圧は54 mmHgと上昇し,肺高血圧を示唆する所見を認めた.上行大動脈人工血管と周囲の自己血管間に無エコー領域を認め,自己血管径は66 mmと著明に拡大,カラードプラ法にて吻合部近位にleak flowおよび人工血管周囲に拍動性の血流を認め,仮性動脈瘤の形成が疑われた.大動脈弁短軸レベルで右肺動脈近位部の主肺動脈から肺動脈弁に向かう異常血流シグナルが観察され上行大動脈置換術後仮性動脈瘤から肺動脈への穿破を疑った.造影CTにおいても同様に仮性動脈瘤の形成および肺動脈への穿破が否定できない所見であり,仮性動脈瘤–肺動脈穿破と診断された.今回,我々は非常に稀な上行大動脈置換術後仮性動脈瘤–肺動脈穿破の症例を経験し,経胸壁心エコー検査が有用であったので報告する.

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