超音波検査技術
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47 巻, 5 号
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研究
  • 髙比良 直也, 小谷 敦志, 河地 見波, 齊藤 冬見, 竹村 盛二朗, 増田 詩織
    2022 年 47 巻 5 号 p. 479-489
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/09/21
    [早期公開] 公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:GEヘルスケアジャパン社製Vivid E95超音波装置における自動計測と従来の手動計測との妥当性について検討する.

    対象と方法:2020年9月~2020年12月に経胸壁心エコー図検査を施行した,心拍数100回/分未満の洞調律症例271例.傍胸骨左室長軸断面から拡張末期時相で左室拡張末期径,心室中隔厚および左室後壁厚,収縮末期時相で左室収縮末期径について自動計測と手動計測で比較した.左室流入血流速度E波および減速時間,A波,僧帽弁輪拡張早期運動速度E′(心室中隔側,側壁側),大動脈弁最大通過血流速度についても同様に比較した.ドプラ法の自動計測は,設定できる検出感度幅を0.5~10.0まで計測し,自動計測検出率および自動計測と手動計測で比較した.

    結果と考察:左室拡張末期径,心室中隔厚,左室後壁厚および左室収縮末期径については,描出状態が良好な101例において自動計測と手動計測で有意差を認めなかった.ドプラ法の各計測項目の検出率は81%~100%であった.手動計測と有意差を認めない検出感度範囲は左室流入血流速度Eで5.0–5.7, Aで4.5–5.5, 僧帽弁輪拡張早期運動速度E′は心室中隔側で3.4–4.2, 側壁側で1.9–2.6および大動脈弁最大通過血流速度で4.2–4.8であった.

    結論:左室径およびドプラ法の自動計測は描出状態や感度が適切な場合,手動計測と同等の精度が得られる.

症例報告
  • 中村 雅美, 松本 謙一, 種村 匡弘
    2022 年 47 巻 5 号 p. 490-497
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/09/21
    [早期公開] 公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は40代,女性.胃部不快感からの食欲低下を主訴に紹介来院.3年間で体重は13 kg減少,初診時体重は26 kgと著明なるい痩を認めた.血液所見では軽度の肝機能障害と低カリウム血症,腎機能障害を認めた.悪性腫瘍の除外のため実施した超音波検査において吸気時に腹腔動脈起始部の狭窄が生じ,血流シグナルの消失と総肝動脈,胃十二指腸動脈の逆行性血流シグナルを認めた.腹腔動脈起始部には硬化性病変や腫瘍性病変による影響は認められず,正中弓状靭帯による圧迫狭窄を疑った.腹部造影CT検査では腹腔動脈は起始部で高度狭窄を認め,膵アーケードによる還流により下膵十二指腸動脈は拡張し,胃十二指腸動脈の血流は逆行性血流を疑った.正中弓状靱帯圧迫症候群と診断し正中弓状靭帯切離術を施行した.術中正中弓状靭帯切離後に腹腔動脈の拡張を目視で認めた.術後の超音波検査では腹腔動脈の呼吸による血流変化は改善され,総肝動脈,胃十二指腸動脈は順行性血流シグナルとなった.正中弓状靱帯圧迫症候群では呼気相に狭窄が増強するとされるが,自験例では吸気相に狭窄を認め,腹腔動脈狭窄部から末梢側血流の消失を超音波検査でリアルタイムに確認し,側副血行路の逆行性血流シグナルを認めた.呼吸による変動を周囲脈管も含め観察することが本疾患を発見し血行動態の評価の一助になると考えられた.

  • 安井 謙司, 村中 敦子, 西川 諒, 村井 良精, 阿部 記代士, 淺沼 康一, 田中 信悟, 高橋 守, 髙橋 聡
    2022 年 47 巻 5 号 p. 498-504
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/09/21
    [早期公開] 公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は50代女性.当院消化器内科でB型肝硬変と診断され,通院加療されていた.徐々に悪化する息切れを主訴に当院呼吸器科内科へ紹介となり,身体所見および動脈血液ガス分析からI型呼吸不全と診断された.胸部CT検査,肺機能検査,血液検査では呼吸不全の原因を示唆する所見は認められなかった.心エコー図検査においても,心不全の原因となりうる有意な弁膜症および肺高血圧症の合併を疑う所見はみられず,心房・心室位に短絡血流を示唆する異常血流も認められなかった.そこで,生食コントラスト心エコー図検査が実施されたところ,右房・右室にマイクロバブルが確認された5心拍後に左房・左室へのマイクロバブルの流入が認められた.その後,マイクロバブルの染影効果により左房・左室全体が造影された.同検査所見から,呼吸不全および低酸素血症の原因は肝硬変に合併する肝肺症候群と考えられ,99mTcMAA肺血流シンチグラフィーの結果とあわせて確定診断された.治療方針として,低酸素血症に対して在宅酸素療法が導入され,肝硬変については肝移植が検討されることになった.

    生食コントラスト心エコー図検査は肝肺症候群に対して低侵襲,低コスト,高感度の検査である.本症例のような疑い症例に対して,スクリーニングとして積極的に施行されるべき検査と考える.

  • 大谷 祐哉, 渡邊 瑳貴, 榧木 美佳, 福山 愛子, 南 貴美, 栗岡 利里子, 竹村 利恵, 中田 恵美子, 髙橋 秀一, 佐藤 俊, ...
    2022 年 47 巻 5 号 p. 505-512
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/09/21
    [早期公開] 公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は50代男性.202X年3月に大動脈弁輪拡張症に対して自己弁温存大動脈基部置換術を施行した.手術から2か月後に一過性の右麻痺・嘔吐で当院受診し,胸部単純CTにて大動脈基部から上行大動脈周囲に液体貯留が疑われ入院となった.経胸壁心エコーで大動脈基部周囲にエコーフリースペースを認め,右冠尖と無冠尖の交連付近からto and froパターンの血流シグナルを認めた.また,大動脈周囲に著明な充実エコーを認めた.その一部は収縮期に可動性を認め,動脈血が流入していると考え,左室流出路破裂による仮性動脈瘤を疑った.造影CTでは大動脈基部から上行大動脈にかけて巨大動脈瘤を認め,大動脈基部付近から造影剤が漏出していた.各検査から左室流出路吻合部破裂による仮性動脈瘤と診断され緊急手術となった.

    術中所見では右冠尖と無冠尖交連部弁直下の左室流出路吻合部に亀裂が認められたが穿破は無く,亀裂部のフェルト閉鎖と大動脈弁置換術が行われた.

    大動脈周囲にエコーフリースペースを認め,血流情報を詳細に観察し解析することで重篤な合併症を迅速に診断することができた1例を報告した.自己弁温存基部置換術後の検査には術式をよく理解することが重要と考えられた.

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