目的:心アミロイドーシス(CA)はアミロイド線維が心筋間質や微小血管周囲に沈着することにより,形態的,機能的障害を引き起こす病態である.近年,CAに有効な治療法が確立され,早期診断がより重要となってきている.本研究はCAの診断のために,心エコー図検査時に心エコー図所見に加えて,確認すべき臨床背景や身体所見,心電図の所見を明らかにすることを目的とした.
対象と方法:対象は当院でCAの精査が施行された48例(男性37例,年齢70±13歳)である.CA確定群(25例),否定群(23例)の2群に分類し,患者背景,CA関連疾患,心電図指標,心エコー図指標について比較検討した.また,CAの可能性を系統的に評価するためのアルゴリズムを作成した.
結果と考察:年齢,血液透析の有無,CA関連疾患の有無,心電図電位,心室中隔壁厚,左室後壁壁厚,平均壁厚,心房中隔・右室壁肥厚の有無,左室拡張末期径,基部平均LS(longitudinal strain: LS),心尖部平均LS/基部平均LSに有意差を認めた.また,統計上有意差はなかったが心電図の偽梗塞パターンは確定群にのみ認めた.得られたデータよりCAの可能性を指摘するためのアルゴリズムを作成した.CAの可能性を低,中,高に分類し,48例を当てはめると,可能性高に振り分けられた15例は全例CA確定群であり,低に振り分けられた11例はすべて否定群であった.
結論:心エコー図検査時に,心エコー図所見に加え心電図所見やCA関連疾患の有無を加味することで,CAの精査,ひいては診断につなげることができる.
症例は10代女性.転落による多発外傷により当院高度救命救急センターに搬入された.第1病日の頭頸部CT検査で左頸部内頸動脈(internal carotid artery: ICA)に閉塞所見を認め,鈍的脳血管損傷(blunt cerebrovascular injury: BCVI)と診断された.第6病日の脳血管MRI検査では同動脈の再開通が示唆されたため,左頸部ICA病変の評価目的に頸動脈超音波検査が施行された.頸動脈超音波検査では左頸部ICAにflapを認め,カラードプラにてentry血流を検出した.また病変の真腔側に可動性血栓がみられた.第7病日に頸部脳血管造影検査が施行され,外傷性解離性動脈瘤と診断された.経過観察目的に施行された第9病日の頸動脈超音波検査では真腔側にみられた血栓は消失し,偽腔へのentry血流が顕在化し偽腔径の拡大を認めたため,担当医に速やかに報告した.第12病日の頭頸部CT検査にて,さらなる偽腔の拡大が確認されたため,第13病日に左浅側頭動脈・中大脳動脈吻合による血行再建術ならびに左ICA結紮術が準緊急的に施行された.頸動脈超音波検査を併用しBCVIの経過観察を行うことで,可動性血栓の消失と偽腔の急速拡大を早期に確認することができた.侵襲的な治療介入へ繋げられたことはBCVI急性期における頸動脈超音波検査の有用性を示していると考えられた.