日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2434-3056
Print ISSN : 1882-0115
39 巻, 2 号
39巻2号(通巻108号)
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
学会総会報告
学会賞報告
学会総会:会長賞・座長選出優秀演題賞
歴史に学ぶ:先達の回想録 第3回
文献紹介
原著
  • 長谷川 陽香, 白石 卓也, 内田 真太郎, 松井 佐知子
    2023 年 39 巻 2 号 p. 13-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【目的】クリニカルパス(Clinical Path、以下CP)適用となるストーマ造設患者におけるCP逸脱の要因を明らかにする。

    【方法】2019年1月から2022年3月にストーマ造設を伴う下部消化管手術でCPを適用した症例を対象に、CP逸脱の有無で2群に分け、その独立危険因子を多変量解析で抽出した。また同様の解析を、CPを7日以上逸脱した入院期間長期化の有無で2群に分けて行った。

    【結果】解析対象は78例で、年齢中央値68歳(範囲:24‐86)、男性51例(65.4%)であった。CP逸脱症例は62例(79.5%)で、その独立危険因子は、術後合併症あり、無職者、ストーマ装具からの便漏れの3項目であった。入院期間長期化症例は24例(30.8%)で、その独立危険因子は、開腹手術、術後合併症あり、ストーマ合併症あり、ストーマ装具からの便漏れの4項目であった。

    【結論】入院期間短縮のためには、術後合併症発生に注意し、ストーマ合併症やストーマ装具からの便漏れに配慮したストーマケアの指導が重要と思われる。また当院のCP逸脱症例の割合は高く、設定期間を含めたCP自体の見直しによる改善の必要性が示唆された。

  • 近藤 恵子
    2023 年 39 巻 2 号 p. 21-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【目的】災害時に備えたオストメイトへの支援対策を検討するために、長野県の市町村とストーマ用品販売店(以下販売店)の現状を明らかにする。

    【方法】長野県内の77市町村と販売店7ヵ所を対象として、郵送法にてアンケート調査を行った。

    【結果】アンケート回収数は、市町村32ヵ所(41.6%)、販売店6ヵ所(85.7%)であった。96.9%の市町村が福祉避難所の存在を知っていたが、71.9%は福祉避難所と防災関連の話し合いを行っておらず、53.1%は福祉避難所による避難訓練に参加していなかった。市町村の3.1%しかストーマ用品を備蓄しておらず、オストメイトに備蓄を期待し、84.4%はストーマ用品セーフティーネット連絡会(以下連絡会)の存在を知らなかった。病院や市町村と連携していた販売店はそれぞれ66.7%、50%であり、連絡会の存在を知っているのは半数であった。災害時のオストメイトの問い合わせ先は、市町村も販売店も様々な理由で様々な施設を挙げ、異なっていた。市町村はオストメイト対応の相談窓口を、販売店はWOCN所属施設を知りたいと要望していた。また、すべての販売店は、その情報に関する地図を必要と回答した。

    【結論】災害時のオストメイト支援に必要な市町村と福祉避難所の連携および市町村、販売店、WOCNの連携や共通認識が未だ不十分であることが明らかとなった。

短報
  • 近藤 恵子
    2023 年 39 巻 2 号 p. 34-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【目的】オストメイトへの対応窓口を可視化するため、地理情報システム(Geographic Information System、GIS)を用いたストーマ支援情報に関する地図(以下マップ)を作製する。

    【方法】2019年に調査した長野県内のストーマ用品販売店7ヵ所と、皮膚・排泄ケア認定看護師、長野県WEBサイトに公開されている災害拠点病院に対して同意文書による説明を行い、同意を得てマップを作製した。マップ作製では、GISを用いて地理空間情報にストーマ用品販売店、ストーマ相談窓口、災害拠点病院の位置情報を入れた。

    【結果】マップには、ストーマ用品販売店7ヵ所、ストーマ相談窓口30ヵ所、災害拠点病院10ヵ所の位置情報を入れた。「ストーマ支援情報」と命名し、長野県ホームページに掲載した。

    【結論】災害時にオストメイトが必要とする情報を備えたマップを作製し、長野県ホームページに掲載した。このマップは、災害時のみならず、平時にも有用であると思われる。

症例報告
  • 藤城 尚美, 前田 耕太郎
    2023 年 39 巻 2 号 p. 41-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【背景】便失禁は生活の質(quality of life、以下QOL)を低下させる原因となる。今回、経肛門的洗腸療法(transanal irrigation、以下TAI)を導入したことで、便失禁なく生活ができるようになり、QOLが向上した症例を経験したため報告する。

    【症例】50歳代の男性。腰椎すべり症の手術後、馬尾神経症候群のため便失禁を含めた排尿・排便障害を発症した。内服治療では便失禁が十分に改善しないため、TAIを導入した。TAI前後で、排便に関する満足度を評価するVisual Analogue Scale(0:最悪-10:最善)は2.3から10と著明に改善し、便失禁への不安感のためにトイレへ行く回数も便失禁に対して不安を感じる時間も減少した。TAI開始前の表情は暗かったが、TAI開始後は、便失禁なく生活できるようになって表情も明るくなり、「洗腸を行う日は早く家に帰って洗腸がしたいと思う」や「排尿も調子が良い」と、TAIに対する前向きな発言が聞かれるようになった。

    【結語】脊髄障害による便失禁患者に対するTAIの導入が、便失禁の改善とQOL向上の一助となった。

  • 照田 翔馬
    2023 年 39 巻 2 号 p. 47-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【背景】ストーマ穿孔は開腹による別部位でのストーマ造設を要する場合が多いが、緊急での一期的再造設は難易度が高い。今回、局所手術により開腹再造設を回避しえた腹壁部型ストーマ穿孔を経験したので報告する。

    【症例】77歳、女性。 S状結腸憩室穿孔に対するHartmann手術後で、結腸単孔式ストーマ造設状態であった。ストーマ周囲の膨隆と疼痛を主訴に前医を受診し、腹部CT検査でストーマ周囲皮下に便塊と遊離ガス像を認めた。ストーマ穿孔の診断で当院へ紹介され、緊急手術を施行した。ストーマ周囲を切開して皮下に貯留した便を除去したところ、ストーマの腹壁部に穿孔を認めた。傍ストーマヘルニアがあり、筋膜は離開していたが腹膜は保たれており、便による汚染は腹壁に限局していた。穿孔部を含めた皮膚側のストーマ脚を切除し、それより口側のストーマ脚は温存して人工肛門を再造設した。術後は抗菌薬の継続投与と皮下ドレーンの管理を行い、術後38日目に軽快退院した。

    【結論】腹膜炎を伴わない腹壁部型ストーマ穿孔は、局所ドレナージとストーマ脚を温存する再造設手技により、急性期の開腹を伴うストーマ再造設を回避できる可能性がある。

実践報告
  • 五藤 愛佐子, 平中 哲也, 福留 洋子, 今井 晶恵, 松井 早苗, 渡邊 多恵
    2023 年 39 巻 2 号 p. 54-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【目的】当院でのストーマセルフケアパス(以下、パス)の妥当性を検討する。

    【方法】消化管ストーマ造設術後にパスを用いた患者を対象とし、患者背景、手術関連因子、ケア習得日数などを検討した。パスは患者参画型で15項目から成り、ケア習得目標期間を術後10日以内として、その達成率を算出した。ケア習得10日以内群(達成群)と11日以上群(非達成群)の間、および緊急手術群と待機手術群の間で検討項目を比較した。

    【結果】対象は58例、年齢中央値67歳、男性41例(70.7%)で、ケア習得日数中央値15日、全項目での達成率25.9%(15/58)であった。各項目での達成率は、技術を習得する項目と比較して、アセスメントを伴う項目と退院前指導の項目が低かった。非達成群は達成群と比較して、緊急手術率と術後合併症発生率が有意に高かった。緊急手術群は待機手術群よりも、ケア習得日数中央値が有意に長く(21日vs.11日)、全項目で達成率が低かった。

    【結論】すべての患者に現在のパスとケア習得目標日数10日以内を適応するのは妥当ではなく、緊急手術患者を対象とした新たなパス作成とケア習得目標日数設定の必要性が示唆された。

地方会抄録(地域研究会記録)
編集後記
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