日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2434-3056
Print ISSN : 1882-0115
41 巻, 3 号
41巻3号(通巻115号)
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歴史に学ぶ:先達の回想録 第9回
総説
  • 三木 佳子
    2025 年41 巻3 号 p. 195-211
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル フリー
     「セクシュアリティ」は、包括的概念として「性に関するあらゆること」の代名詞として使用する傾向があるが、保健医療領域では診断と支援を可能にする定義が必要である。性機能障害やセックスには性反応を基盤にした明確な定義がある。これらの概念と区別するために、保健医療領域における定義として、「個人の性的特性および性的対象者との相互作用」を提案する。
     ストーマ保有者にとってのセクシュアリティは、性機能障害よりもパートナーとの関係性の方が重要とされる。ストーマ保有者が考える「幸福で満足できる状態(well-being)」には、性行為の満足のみならずパートナーとのコミュニケーションやスキンシップも含まれる。したがってセクシュアリティにおける支援目標は、「ストーマ保有者自身が望む性的に幸福で満足できる状態(Subjective Sexual Well-Being、SSWB)」である。
     この支援目標を達成するには、ストーマ保有者の変化を意図した治療的コミュニケーションが有効である。支援の実際では、ストーマ保有者がパートナーとの相互作用を高めてSSWBを達成できるように、医療従事者が治療的コミュニケーション技術を駆使して支援することを提案する。
  • 諏訪 勝仁, 江川 安紀子, 小林 雅代, 衛藤 謙
    2025 年41 巻3 号 p. 212-224
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル フリー
     傍ストーマヘルニア(以下、PSH)はストーマ造設後に最も多い合併症であり、術後2年を超えると半数以上に発生する。PSH発生に肥満は主要なリスク因子であり、今後増加することが予測される。PSHの予防法として強く推奨される手技はないが、後腹膜化経路ストーマ造設や造設時メッシュ留置が有用視されている。
     PSHの多くは無症候性で経過観察されるが、嵌頓、絞扼などの緊急症例では絶対的手術適応となり、疼痛、ストーマ装具貼付困難、整容性不良などは相対的手術適応になる。
     手術術式として、筋層一次縫合は再発率が高いため推奨されず、メッシュを用いた術式を選択すべきである。メッシュ法には、onlay法、retromuscular法、intraperitoneal onlay mesh(IPOM)法などがあり、IPOM法ではkeyhole法とSugarbaker法が代表術式である。腹腔鏡下IPOM法のメタアナリシスによるkeyhole法とSugarbaker法の再発率は各々24.1%、9%と前者が明らかに高率であり、現時点では腹腔鏡下keyhole法は推奨されていない。
  • 味村 俊樹, 本間 祐子
    2025 年41 巻3 号 p. 225-245
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル フリー
     便失禁は、日常生活に多大な影響を及ぼす症状であり、その原因や重症度に応じて適切に治療する必要がある。2017年に便失禁診療ガイドライン2017年版が発行されて以来、便失禁診療が普及しつつあり、2024年11月には改訂第2版として2024年版が発行された。本総説では、その2024年版の内容を一部引用しながら、便失禁の診断・治療に関して概説する。
     便失禁は「無意識または自分の意思に反して肛門から便が漏れる症状」と定義され、本邦での有症率は、20~65歳で4.0%、65歳以上では7.5%である。便失禁に関与する因子として便性状、排便関連筋群機能、直腸肛門感覚機能、直腸内圧・容量・コンプライアンス、結腸機能、認知・運動機能がある。
     便失禁症状は漏出性と切迫性に大別され、その原因は病歴聴取、直腸肛門指診、直腸肛門機能検査、肛門管超音波検査で診断する。
     治療は初期診療、専門的保存的療法、外科治療に分けられ、低侵襲の治療法から試みるのが原則である。初期診療には、食事・生活・排便習慣指導とスキンケア、下剤などの内服薬調整、薬物療法がある。専門的保存的療法には骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、経肛門的洗腸療法がある。標準的外科治療としては、第一選択として仙骨神経刺激療法と肛門括約筋形成術があり、第二選択として消化管ストーマ造設術がある。研究段階の治療法として肛門括約筋再生医療が期待される。
症例報告
  • 小川 光, 前田 耕太郎, 山崎 雄一郎
    2025 年41 巻3 号 p. 246-254
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル フリー
    【背景】二分脊椎患者は出生時から神経因性大腸機能障害(neurogenic bowel dysfunction:NBD)による排便障害を有することが多い。経肛門的洗腸療法は排便管理の自立を促し、生活の質(quality of life:QOL)の向上も期待できる。しかし、これまで本邦では、順行性洗腸療法(malone antegrade continence enema:MACE)から経肛門的洗腸療法(transanal irrigation:TAI)に変更した報告はないと思われる。
    【症例】16歳男性。脊髄髄膜瘤に伴うNBDのため、11歳時にMACEのための虫垂瘻造設術を受けた。しかし5年間のMACEによる排便管理の後、洗腸翌日の便失禁と腹痛および臍からの腸粘液漏れが生じ始めたため、当院にてペリスティーン®アナルイリゲーションシステムを用いたTAIに変更した。MACEからTAIへの変更によって、NBD特異的排便障害評価尺度であるNBDスコア(最善:0点~最悪:47点)、便失禁重症度評価尺度であるCleveland Clinic Florida Fecal Incontinence Score(便失禁なし:0点~最悪便失禁:20点)、便失禁特異的QOL評価尺度であるFecal Incontinence Quality of Life Scale(最悪:1点~最善:4.1点)は各々19点、13点、3.2点から10点、8点、3.6点とすべて改善し、視覚的アナログスケールで評価した排便状態・管理に対する満足度(全く満足しない:0点~完全に満足:10点)も、4.2点から8.5点に向上した。
    【結語】TAIからMACEに移行するのが一般的だが、逆にMACEからTAIへの変更によって排便障害症状改善とQOL向上が得られる場合があることが、本症例によって示唆された。
  • 磐淺 万紀子, 三木 佳子
    2025 年41 巻3 号 p. 255-261
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル フリー
    【背景】糞便性汎発性腹膜炎の手術では、手術部位感染によって創が離開しやすい。難渋な創傷ケアのみならず全身管理も重要である。
    【症例】70歳代後半、女性。長期間の便秘が原因で発生したS状結腸穿孔に対して左下腹部に単孔式S状結腸ストーマを造設した。術後9日目に腹膜内部ストーマ脚腸管に穿孔が生じ、左上腹部に単孔式横行結腸ストーマを造設した。術後36日目には手術部位感染が発生し、正中創はストーマ近傍まで離開した。離開創にトラフェルミン製剤を噴霧し、患者の協力を得ながら生食ガーゼドレッシング法を実施した。また、高カロリー輸液と抗生剤治療を併用し、経口摂取によって栄養状態を改善した結果、術後355日目に創部は治癒した。
    【考察】統一した創傷ケア方法の実施、感染制御と栄養状態の改善が治癒に至った要因と考える。
    【結論】腹腔内部まで及ぶ離開創であっても、患者を含めた協働によって長期間のケアを継続できたことで創傷治癒が得られた。
研究報告
  • 西澤 祐吏, 藤田 あけみ, 辻仲 眞康, 三木 佳子, 味村 俊樹, 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会編集委員会タスクフォース
    2025 年41 巻3 号 p. 262-267
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル フリー
    【背景】看護系雑誌では、地域名・研究施設名を匿名化する慣習があるが、医学系雑誌では明示することが通例であり、相違が生じている。
    【目的】看護系雑誌と医学系雑誌を対象に、匿名化表記の実態を明らかにし、地域名や研究施設名の匿名化について検討する。
    【方法】医学系と看護系の主要雑誌を選定し、公表されている論文内の匿名化表記の有無について調査した。
    1.医学系雑誌
    2015~2019年に発行された7学会誌と2商業誌について調査した。
    2.看護系雑誌
    2017~2020年5月に発行された9学会誌について調査した。
    【結果】医学系雑誌では匿名化表記は認めなかった。看護系雑誌では、調査対象論文675編中、「A病院」などの匿名化表記を154編(22.8%)で認めた。
    【結論】看護系雑誌では施設名を匿名化している論文が多数存在する一方、医学系雑誌では匿名化されていなかった。個人情報が保護される範囲で研究施設の情報を公表することは、科学雑誌として重要と考える。
地方会抄録(地域研究会記録)
編集後記
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