一般に人工,合成皮革は天然皮革と比較してその風合いに差があるといわれている。そこでこれらの試料を用いて官能検査を実施したところ,視覚評価においてはこれらの間に顕著な評価差は認められなかったが,触覚評価においては,異方感,温冷感,凹凸感等の官能特性が関与していること,またこれらの官能特性には,曲げおよび伸張異方性,熱吸収性,スティックスリップ現象(摩擦係数差)等の諸物性が起因していることが重回帰分析等により判明した。一方,各皮革材料の有する諸特性の違いを明確にする目的で判別分析を実施したところ,前述した物性に加えて,曲げ剛性,曲げ抵抗増加率,伸張ヒステリシスロス率等が抽出された。したがってこれらの官能特性や諸物性値を意識的にコントロールすることにより,天然皮革を模倣した代替材料や,あるいは天然皮革とは全く異なった新しいタイプの皮革材料の開発が可能となることが明らかとなった。
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