1.中国民居の基本的な構成形式である「庁と庭(テイ)」(建屋と内庭)を生活実態から考察し,中庭を生活機能空間と位置付けることによって,観賞空間である庭園の発生要因が住居部内に存在しないことを明らかにした。2.住居部外に隔離して併設される書斎・応接間は,文人・官僚等エリートのシンボルである。それは日常生活機能との隔絶位置に意味があり,その鑑賞対象となる庭院(小庭園)を理想郷の表現ととらえ,私家園林(私邸に付設される大庭園)の原点とした。3.私家園林は花庁(宴会場)を中心とする宴遊の場の形成であり,その表現は皇家園林(宮廷と離宮を結んでの宏大な王侯庭園)の縮景である。この私家園林を非日常空間である庭院の展開形態とし,住居部との隔離併設に理想郷表現としての存在意義をおいた。4,『園冶』を基礎資料として,建屋中心の配置計画など園林構成手法を考察し,住居部の変容と密接に連動して展開し,自然景観に重点をおく日本庭園の作庭技法との比較考察を行なった。
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