デザイン学研究
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40 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 古屋 繁, 釜池 光夫
    原稿種別: 本文
    1993 年 40 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    乗用車の車体形状の特徴とその根拠を明確に指摘することができない場合の形状認識の構造を明らかにするため,特徴の表現の仕方に着目し,インタビュー調査から表現の仕方に関する項目を抽出した。この結果,特徴の表現が「相対的な位置関係」の記述によってなされていることから,ある基準からの逸脱の度合いによって,それを特徴として把握しているものと推定した。そして,特徴の判定の判定基準として平均的表象(平均モデル)をおいて,その差分を誇張すればその特徴の把握が容易になると考えた。この考え方の妥当性を検証するため,誇張の程度(誇張率)を変化させた誇張画を作成し,同定の確信度が最大となるものを選択してもらった。この結果,対象に応じて様々な「平均モデル」が成り立ち,平均的表象からの差分による形態認知には,累積的経験による平均モデルの更新と見る頻度による限定された特徴からの知覚という2つの側面かあることが示唆された。
  • 村井 俊子, 小島 俊一
    原稿種別: 本文
    1993 年 40 巻 2 号 p. 9-16
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    少人数による気軽な打合せは,オフィスにおける日常的な業務形態のひとつである。本研究では,打合せを支援する目的をもったグループウェア環境をテーブルトップと命名し,その試作機を開発,有効性を確認するため評価実験をおこなった。試作機の開発では,打合せを支援する要素として「紙と鉛筆」による視覚化に注目し,以下の2つの仮説を設定した。(1)入力と表示の一体化/What l write is what l see(2)回転表示による視覚情報の共有化/What l see is what you see評価実験では,初心者でも違和感なく使うことができ,電子化された「紙と鉛筆」環境がすぐに理解されていた。特に(2)の回転表示を直接操作で行うことに,ユーザインタフェースとしての高い有効性が確認された。また,このようなグループウェアツールをデザインする際には,プロクセミックス(近接学)を基本に考えることが有効であることがわかった。さらに,グループウェアにおけるテリトリーの重要性を確認し,自然な主導権の授受の実現を得た。
  • 田村 良一, 杉山 和雄, 山中 敏正
    原稿種別: 本文
    1993 年 40 巻 2 号 p. 17-24
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,人と人との間にみられる交流の関係を消費者と商品との間にあてはめ,「一眼レフカメラの選好」を例として考察した。「ライフスタイル」「エゴグラム」は「態度」の異なる側面をみていることか「Fishbeinらの態度の式」との比較から明らかになった。これまで選好は「ライフスタイル」に力点が置かれ説明されてきたが,被検者を「エゴグラム」により分類した場合には,エゴグラムの違いによる選好人数の違いに有意な差がみられ,より適切に選好の関係を捉えられることがわかった。また評価項目を擬人的に5つの自我状態に対応させると,被検者と選好する一眼レフカメラの間には「自然な交流上の関係がみられた。本研究の成果から,これまで「ライフスタイル」による製品開発がほぼ唯一の方法であったが,「エゴグラム」を念頭に置いた「交流」の観点からの製品づくりができることを示唆できた。
  • 天貝 義教
    原稿種別: 本文
    1993 年 40 巻 2 号 p. 25-32
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ヨーゼフ・アルバースにとって,素描とは,線から成立した視覚的形成を意味し,その主要な関心は,二次元的な手段によって三次元的な効果を呈示することにあった。それゆえ,アルバースの用語法に従うならば,我々は,素描において,線と線との間を我々に読み取らせるような線の観察と分節を学ぶこととなるのである。アルバースは自らの素描観を,バウハウス,ブラック・マウンテン・カレッジ,イェール大学デザイン学部における素描教育を通じて明確にしてゆくが,一方その教育活動と並行して多数の線の構成を試みており,1942年には『図的構築』の連作を完成させ,『構造の星座』の連作は1950年代初期にその制作が始められた。本稿の目的は,アルバースの素描教育の変遷過程を跡づけるとともに,その素描教育の内容とこれら線の構成による連作との関係を考察することにある。
  • 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1993 年 40 巻 2 号 p. 33-40
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    平安時代から江戸時代にかけて描かれた絵画史料,絵巻物と屏風絵に登場する飲食器を対象として,その性状と用いられ方に着目しながら,歴史的変遷過程を観察・考察した。具体的には,絵画史料に登場する総計466件の飲食器について,(1)性状および使用状況による分類を行って量的データとして処理すること,ならびに,(2)個々の使用状況を観察し古文書の記述と合わせてその特性を考察することを行った。その結果多くの知見が得られたが,以下の3点は特筆すべき事項である。(1)高い高台を有する木椀の発生は器を手に保持して食する作法の確立に呼応しており,その時期は,およそ室町時代中期以降であると考えられる。(2)社会的階層の高低を問わず平安時代から江戸時代まで一貫してケとハレの生活の全面で広く利用されていた木椀は,いわば「飲食器を代表する生活のたの器」であったといえる。(3)「一器多用の器」として木椀が社会的身分を問わず長い時代にわたって使用されてきたのは,木椀が多様な用途に対して優れた対応力を有することを,その使用を通じ,人びとが広く認知してきたためと考えられる。
  • 原田 利宣, 森 典彦, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    1993 年 40 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,生物進化(淘汰,突然変異)の原理を基本にした遺伝的アルゴリズム(genetics algorithm)を応用して,ある条件(基本コンセプト)からそれに適応した適合解(イメージ)を発散的に求めるシステムの開発を行った。また,それら適合解と,同じ基本コンセプトからニューラルネットワークを用いて求めた適合解を比較,考察することにより,遺伝的アルゴリズムにより探索された適合解の特徴が抽出された。さらに,ニューラルネットワークと遺伝的アルゴリズムを並列につなぎ,それら双方の推論結果をパラメータによって制御し推論結果を導き出すニューラルー遺伝的アルゴリズム推論システムの開発を行った。その結果,遺伝的アルゴリズムによる適合解の既成概念にとらわれない新規性を有するという特徴と,ニューラルネットワークによる適合解の既成概念的ではあるが矛盾を含む可能性が小さいという特徴の双方をパラメータによって制御可能なことが確認された。
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