デザイン学研究
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40 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 玉垣 庸一, 宮崎 紀郎, 湊 幸衛
    原稿種別: 本文
    1994 年 40 巻 5 号 p. 1-8
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    輝度と色度が不均一な曇天空を扱うことができるように,第3報で提案した陰影付け手法を拡張し,任意形状の反射面における陰影値をガウスの球面から求められるようにした。不均一な輝度分布の導入によって,球体や立方体の非対称な陰影布置が得られるようになり,均一な曇天空の下では不自然であった立体感を改善することができた。次に,前報で提案した玉葱状色立体と同一形状の立体を,輝度が不均一な曇天空(天頂方向に最大輝度を有し,各方向の輝度がその天頂角の余弦の2乗に比例するような回転対称型の分布)の下に置かれた完全拡散体に見立てて陰影計算し,新たな色立体を得た。前報では均一な輝度分布を仮定したので,等飽和度面(等S面)の等色相線(等H線)に沿って,高さに比例した輝度の変化が得られたが,本報では高さの2乗に比例した輝度の変化が算出された。不均一な分布を導入した結果,玉葱状色立体における明るさ変化の知覚的等歩度性を改善することができた。
  • 田中 みなみ, 宮崎 紀郎, 町田 俊一
    原稿種別: 本文
    1994 年 40 巻 5 号 p. 9-18
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    戦後、科学技術の諸成果が家庭生活に導入されることにより、食器の取り扱い方法も大きく変容した。本稿は、天然木素地漆椀を使用した後の洗浄および乾燥に関し、実際の場面を考慮した実験を行い、社会的に言い伝えられている漆椀の取り扱い方法の妥当性を検討したものである。なお、天然木素地漆椀の取り扱い方法に関する口承とその問題点の抽出は,実践に先立って実施した生活者ならびに生産者へのアンケートに基づいている。実験によって、言い伝えられている洗浄および乾燥の方法は、天然木素地漆椀の取り扱い方として最も適していることが判明した。また、その取り扱い方法は、「生きて呼吸している」と表現される漆器のいわぱ科学的メカニズムを経験的に熟知した上に成立していることが確認された。
  • 増山 和夫
    原稿種別: 本文
    1994 年 40 巻 5 号 p. 19-26
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論は,デザインプロセスを人間の行為遂行の過程に照らして捉え直し,最も創造的であるべき「問題そのものの構想(デザイン)」のための方法論について論じるものである。社会的な問題とされている状況(問題状況)は,受動的で気になるさまざまな「行為のかたち(こと)」の集合である。デザインが対象とすべき「問題」は「在る」というよりも,問題状況を前にして独自に構想されるものである。問題状況を把握・認識するには,対象とする領域で現実に生じているさまざまな事柄を抽出し,「原因-結果」あるいは「関係の有無」に基づいて,その構造を略図として表すことが有効である。その関係構造から,状況を構成する「場」「生活空間」「歴史・文化」の側面に対応づけられる事柄の集合およびそれらの関係が読み取れ,その階層性を明らかにすることができる。それを踏まえ,直観と構想力の飛躍によって,独自の視点・立場から問題状況を解釈・評価し,具体的に対象とすべきデザイン問題を構想することができる。
  • 関 徹夫
    原稿種別: 本文
    1994 年 40 巻 5 号 p. 27-32
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    近年,自動車ユーザーの自動車観の中で,使用性(扱いやすさ)向上への期待が高まる傾向がある。一方,自動車は他商品に比較して依然こだわり性の高い商品であり,ユーザーの外観スタイルを主体とする情報性への期待を軽視することはできない。自動車デザインが情報性と使用性が背反関係にある現在のデザイン価値の構造をふまえている限り,ユーザーの情報性,使用性の両方への期待に同時に応えることは困難であり,両者が並立する新しいデザインの価値構造の考え方をふまえたデザインが必要である。そのためには,従来のデザイン方法論を改めると同時に,デザイナーの能力要件の見直しも必要である。
  • 上原 勝
    原稿種別: 本文
    1994 年 40 巻 5 号 p. 33-38
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    デザイン材料計画には,2つの考え方があることが分かった。1つは,製品の機能からの考察で,材料選択,材料開発,材料設計,材料改良,新機能付与である。他は,材料の性質からの考察で,新材料や廃棄物の用途開発,転用やリサイクルである。デザイン材料計画の動向を,製品と材料のかかわりの変化,考慮要因の変化,技術の変化,材料の変化,材料の役割の変化について調査した。結論として,次の事を得た。1)新材料の出現は材料と製品との新しいかかわりを作り出している。2)材料計画は全体のシステムやサイクルから考慮しなければならない。3)ゴミ問題に関係し,材料計画は一層重要になっている。
  • 古屋 繁, 武者 祐司
    原稿種別: 本文
    1994 年 40 巻 5 号 p. 39-46
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文では乗用車のカテゴリー分類と形状認識との関係について考察した。乗用車に関するカテゴリー分類として,被験者のアンケートにより抽出されたサンプルから「一般的カテゴリーによる分類」「典型的車種からの分類」「親近性による分類」「個人的カテゴリーによる分類」の4つのカテゴリー分類を想定した。各々のカテゴリーの「基準像」から「特徴像」を求め,各カテゴリーと全体の「基準像」から作成された「誇張像」の各々について確信度が最大となる誇張率を求めた(調査(1))。さらに,それぞれの確信度最大となった「誇張像」の中から,確信度が最も高いものを選択してもらった(調査(2))。この結果,2BOXと3BOXというボディスタイルによるカテゴリー分類が存在することが,またこのカテゴリーの「基準像」には,その離反量により適応範囲があり,2つのカテゴリーに帰属しない車種は,オリジナルによるあてはめによってなされていることが明らかになった。
  • 小関 利紀也
    原稿種別: 本文
    1994 年 40 巻 5 号 p. 47-56
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ブルーノ・タウトの建築空間の探求は,何故にグラスハウスをもって突如として断絶したか。また,グラスハウスとジードルンクの思想とは,一般に相対立し,相互に矛盾するものと考えられているが,これらが1914年,同時に並行して実現され得た理由は何か,等々,タウトの造形思想の解明には難しい問題が数多く残されている。こうしたタウトの複雑な造形思想の問題について,ジャポニスムに始まる空間構成の探求と,工房思想を中心とする田園都市運動との両面からの解明を試みる。これらタウトの作品に通ずる二つの傾向を結びつけ,綜合する契機となったのは,タウトがファルケンベルクのジードルンクに見出した,社会的思想と呼ばれる共同体感情の空間感覚のヴィジョンであったが,この社会的思想の形成の経過から,グラスハウス成立の事情と,その造形思想の意味の解明を試みる。
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