デザイン学研究
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41 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 羽生 清, 今井 由美子
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 3 号 p. 1-8
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    私たちの心に疎外感をもたらし,私たちを取り巻く環境を破壊した技術社会をデザインしなおすために,私たちの裡なる自然に眼を向けてみたい。子どもの絵は,混沌と秩序とを未分化に内在させながら,裡なる自然を生き生きと表出している。子どもの描画は,発達によって三つの段階に分類できる。まず,身体運動に基づいている「本能期」。次に不可思議なかたちで描かれる「未分化期前期・後期」。そして子どもの絵の最終段階である「視覚再現期」である。本論「未分化期・後期」では,子どもの描く人物像に焦点をおき,子どもの描画の核となる基本的なかたち「まる」の重要さを発見した。無意識のうちに自らが生み出す宇宙に,すべてを注ぎ込む子どもたち。大人の概念に束縛されず,自己分裂さえも平気な子どもたちの感覚的概念とでも呼ぶべきものが,高度に細分化した現代社会をもう一度,総合的にデザインする際の鍵となってくれるように思われる。
  • 劉 建中, 久保 光徳, 青木 弘行, 鈴木 邁, 吉田 旺弘
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 3 号 p. 9-16
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    オートバイのフレーム構造は,軽量かつ高剛性であることが要求される。本研究では有限要素モデルを使用したフレームの形態設計を,寸法最適化問題として定式化した。最適化過程において,断面積が0となる部材を数値計算上取り除くことによって,構造物の形状を変化させることによる形態設計を行った。そのために,有限要素法による構造解析および非線形計画中の罰金関数法と可変計算量を利用し,様々なフレーム形態のバリエーションを抽出することができる形態最適化システムを開発した。代表的な形態であるクレードル型フレームを初期形状とし,その比ねじり剛性を初期設計値に維持しつつ重量を最小とするシミュレーションにより,本システムの妥当性を検証した。さらに,このシステムを,エンジンブロック剛性を考慮したクレードル型フレームの形態最適化設計に応用し,異なる位相形状である高剛性・軽量のダイヤモンド型フレーム形状を得た。
  • 藤原 俊三
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 3 号 p. 17-22
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    前輪駆動の自動車は,後輪駆動自動車に比較し雪道や不整地走行に強いことが知られている。自転車の場合も,仮に前輪駆動自転車があれば,雪道や不整地走行に強いのではないかという仮定に基づき,本研究は実際に前輪駆動自転車を製作し,どのような走行性なのかその特質について研究したものである。先ず,歴史的前輪駆動自転車をその基本構造を基に,近代的技術で再現し,走行性について調査。次に,新開発の前輪駆動自転車を試作,従来の後輪駆動自動車と走行性について比較した。その前輪駆動自転車の構造について図解で詳細に説明している。歴史的自転車のレプリカの走行性は,自転車のJISの走行試験の基準では満たされなかったが,新開発の前輪駆動自転車の走行性は,従来の後輪駆動自動車に比較しても高い走行性を示した。この研究の成果は,新しいデザインの前輪駆動自転車開発の可能性について明らかにした。
  • 日野 永一
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 3 号 p. 23-30
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    明治末から大正の初期(1909-1913)にかけて,5冊のデザイン技法書が相次いで刊行された。これらの書は専門教育を対象としているが,当時普通教育の中へデザインが導入されたことが,大きな出版の契機となっている。これら技法書は,欧米の研究に基づきながらも,日本独自のデザインを生み出すことに意を用い,それぞれが独自の特色を示している。現在と比較するならば,時代の差と,体系的な未整備が残るが,その基本的な考え方は現在にまで続くものがあり,現在そのまま使用されている用語も少なくない。これらの書で確立されたデザインの創作方法は,その後の日本のデザイン教育に大きな影響を与えることになり,特に「便化」という自然物のスケッチから始まって模様を構成する方法は,長く中心的な指導法の位置を占めるようになった。
  • 近藤 朗, 清水 忠男, 佐藤 公信
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 3 号 p. 31-40
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    現在のオフィスにおける創造的問題解決の重要性の高まりとともに,それをグループで行うコラボレーションが注目されている。同時にコラボレーションの「場」で使用するための様々なツールも開発されているが,それらを使用することが「場」における人々の行動とコラボレーションに変化を与えると思われる。本小論では,創造的問題解決を行うためのいくつかの「場」を実験的に設定し,情報環境における情報伝達と情報表示・展開の側面に関する被験者の主観評価を基にコラボレーションの「場」を構成するツールについて考察することを目的とする。その結果,現状で設定可能なコラボレーション「場」とそのツールに対する評価が明らかになり,今後,コラボレーションの「場」における情報環境をデザインするための示唆が得られた。
  • 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 3 号 p. 41-48
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    シート設計要因には腰椎支持など個人差の比較的少ない性能要因と硬さに代表される個人差大の嗜好要因の2タイプがある。座り心地評価構造はそれらが混在して評価されることでより複雑になっており、特にその傾向は自動車の走行状態での動的評価よりも静止状態の静的評価において顕著である。本稿では、静的評価による官能評価実験を実施し,各パネルの客観的評価(刺激の強さ)と主観的評価(満足度)の対応関係から嗜好要因を抽出すると共に、その嗜好要因に基づいたパネルの層別化,各層毎の評価構造の解明,嗜好要因の官能特性と物理特性との対応検討を試みた。その結果,嗜好要因としてばね感,および座部と背もたれの硬さ感の2要因が抽出され,それらをもとに層別化した7グループの各評価構造を明らかにした。また,ばね感と硬さ感に関与する物理特性は,各々共振振動数,たわみ量とヒステリシスロス巾の合成値であることが判明し,座り心地設計上の嗜好特性を制御する因子として今後活用可能であることを示した。
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