デザイン学研究
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42 巻, 2 号
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  • 吉橋 昭夫, 須永 剛司, 植村 朋弘, 長田 純一
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    製品をユーザの認識と思考に対応する「インタラクティブな対象」と考える視点から,製品の操作系デザインの基本的方法について研究を行った。電子手帳の操作過程の分析から,製品操作におけるユーザの認知モデルに関して次のことが明らかになった。1)ユーザの製品操作の過程は,人間の認知的なプロセスを図式化した「行為の7段階理論」にあてはまる。2)「行為の7段階」のモデルはサブゴール・レベルへ拡張することができる。サブゴールを達成するための個々の操作行為を「行為の7段階」によって説明できる。3)行為のサイクルの進行に外界の知識が利用される。さらに,この「行為の7段階理論」の認知モデルは,以下のようにインタフェース・デザインへ応用することができる。a)「行為の7段階」の各段階を考慮してデザインする。b)ゴール,サブゴールの各レベルごとに検討する。c)ユーザが利用できる知識を製品上に適切にデザインする。
  • 寺内 文雄, 大釜 敏正, 増山 英太郎, 久保 光徳, 青木 弘行
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 7-12
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    木目模様の方向の嗜好とその背景にある心理的要因を明確にするために,模様の方向の官能評価実験およびイメージの解析を行った。官能評価実験には(1)木目模様の複写,(2)木目模様を連想させる線模様,(3)山形模様の3種類の模様を用い,これらの方向の嗜好を一対比較法によって評価した。評価に寄与する心理的要因はカード間の評価の相関関係と,数量化理論III類によるイメージ構造の解析結果から検討を行った。その結果,木目模様では方向の嗜好が水平・垂直方向に偏り,なかでも上方向と右方向の評価が高いことが確認できた。また,数量化理論III類によって,模様イメージはI)緊張感,II)親近感,III)活動感の3要因で構成されることが明確となった。これらの結果を併せて検討したところ,模様イメージのI)緊張感とII)親近感が木目模様の方向の嗜好に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 小池 星多, 須永 剛司
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 13-18
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,人間とコンピュータとの新しい関係について捉え直しを試みる。コンピュータが人間の対象認識を支援する機能について,以下のように論じた。筆者は,新しいコンピュータの特長である,対象認識支援機能に注目した。対象認識支援機能とは,人間が対象を体験し,その体験をコンピュータ上に,例えばコンピュータグラフィックスを用いて表現する過程を通じて,もとの対象について新たな理解を得られるようなコンピュータの機能のことである。対象認識支援機能には,体験記録機能,視点生成機能,新体験生成機能がある。これらの3機能から,コンピュータを「協働体」として捉えることができる。コンピュータ以外の人工物も,協働体として捉えることによって,人間と人工物との新しい関係が見えてくる。
  • 井上 勝雄, 安斎 利典, 土屋 雅人
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 19-26
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    アイデアスケッチやモックアップモデルの選別に代表されるデザイン評価に言語表現を用いたデザイン評価方法を提案する。実際に企業内でのデザイン評価はほとんどが言語による方法でありその有効性が高い。しかし,言語というあいまいなものを取り扱うことの難しさから研究事例は極めて少なかったが,言語を扱えるファジィ理論の登場によりその可能性が生まれてきた。そこで本研究では,ファジィ測度を用いた携帯電話機の事例研究と,また,ファジィグラフ(ファジィアウトランキング法)を用いたAV機器用リモコンの事例研究を通じて,ファジィ理論を用いた言語表現を用いたデザイン評価の妥当性を検証した。ファジィ測度による方法は精度の高い評価ができ,また,ファジィグラフによる方法は柔軟性の高い評価が可能であることが分かった。本結果は,言語表現を用いたデザイン評価方法を提案すると共に,デザイン評価においてファジィ測度とファジィグラフによる方法が有効であることを示した。
  • 青山 智津子, 上原 勝
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 27-36
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    現在ゴミ問題において,空き缶・新聞紙・ペットボトルなど再生できる不用物への対処が問われている。使用者が「分別して」いれば,多くの工程・作業の軽減となり,再生資源の活用,ひいては循環型社会の構築につながることが知られている。本研究では不用物の回収における使用者の行為および心理的側面(意識・感覚)に視点を置き,本来の意味での「回収」および「回収具」の提案を行うことを目的としている。本稿(1)においては,不用物をゴミの同一線上に扱う意識・感覚が社会に内在していることを明らかにするとともに,このような状況に至った社会的背景を示した。また,不用ものをゴミとしてではなく資源として扱う「感覚」の形成という観点から,これに影響を与えるものとして,日常目にするもの,生活習慣,について論じ,回収を考える上での心理面への配慮という視点の必要性・可能性を示した。
  • 増山 和夫, 戴 春莉
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 37-46
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    企業や行政が遂行する各種事業および施策,さらにその製品やサービスの開発、デザインは、基本的にその組織の業務体系に依存している。業務体系は基本的に、情報処理ユニットとしての職務を構成要素とする情報処理システムである。そのような社会的機関における業務形態を人間活動システムとしてとらえ、その現状分析とデザイン問題の構想のために「指し示しの法則(行為の代数式)」と援用する。業務遂行の現状を直接影響行列としてモデル化し、MDA-ORとクラスター分析に加えて、職務の部分集合およびそれら相互の関係構造を「行為の代数式」によって数式表現すると、業務体系の全容を理論的に考察することができる。また、縦割的に考えられがちな業務体系を、その実態に沿って横断的にとらえることが容易になる。人の行為・行動を数式表現し、分析することは、「行為のかたち」の集合である問題状況の把握・認識、解釈と評価、ならびに「こと」を対象とするデザイン活動における問題の構想とその検証の方法として有効である。
  • 梨原 宏
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 47-56
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    高齢者らが屋内で使用する車いすを木製化し,生活環境に相応しいものに高めようとする筆者らの試みは成形合板技術の応用によって実用化の段階に入っている。本研究はこの車いすの形態の生成過程を科学的に解明することを目的としている。本報告は,成形合板による車いす構成の成立要因を,意匠設計されたLVLフレームの強度評価から明らかにしている。LVLフレームはムク材の平均的な機械的性質を持ち,成形条件の設定は適性であること,断面を30×30mmにすれば工業的に使用されている金属パイプフレームと同等あるいはそれ以上の強度を持つこと,意匠設計されたサイドフレームは車いすに急激に座る動的負荷の場合,最大で降伏値の1/3程度の相当応力が発生し実用上問題の無い強度を有することがわかった。以上より車いすを構成するLVLフレームは実用に適う寸法,形状を持つことが判明した。
  • 山口 眞理, 三橋 俊雄, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本小論は,山本鼎を中心とした農民美術運動に商店を当て,大正・昭和前期における,農村工芸振興を通した地域開発の内発性に関する検討を行ったものである。その結果,次の点が明らかになった。1)山本鼎の農民美術運動は,彼が同時期に興した児童自由画教育運動と同様,当時の時代的風潮であった大正デモクラシーという内発的発展志向のなかで受容され,実践・展開された運動であった。2)山本の主張は,わが国が世界に誇り得る国民的資質であるところの工芸を,農民美術というかたちで農民救済のための農家副業に導入し,さらに,その農民美術を一大産業としての産業美術にまで高めていこうとするものであった。3)農民美術運動は,peasant artの概念から発想された運動ではあったが,その実際的な展開はきわめてデザイン的な特質を有し,今日のデザインを通した地域振興のあり方に対して示唆を与えるものである。
  • 比嘉 明子, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 1995/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    農展・商工展は,工芸品とその意匠図案の改善を目的に開催された展覧会である。初期の農展の図案部門には,より新奇な様式や多様な表現法による各種の工芸品図案が出品された。しかし,工芸品図案は徐々に減少し,第14回展以降にはポスターなど広告図案が主流となる。また,国産奨励優先の方針のもとで図案部門が縮小され,第6回展以降には,入賞数全体に占める図案の割合は低下し,図案部門は衰退していった。工芸の経済的側面のみならず美術的側面をも重視する農商務省の方針のあいまいさに対して図案家や工芸作家たちが反発して農展を離れていったことが,図案部門衰退の原因であった。また,その背景には,工業技術の定着や資本主義の発達など当時の社会的状況変化のなかで,大規模な展覧会による工芸図案奨励という方法が意味を失ったという事情もあった。しかし,全国的公募制であった農展・商工展は,図案奨励策の全国的普及とこれに伴う図案家の社会的確立に大きな役割を果たしたと考えられる。大正から昭和戦前のデザインの史的展開のなかで,農展・商工展の図案部門は重要な役割を担っていた。
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