デザイン学研究
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42 巻, 4 号
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  • 五島 聖子
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    庭園は,植物,石,水,という自然を主な要素として造られる空間であり,庭園の完成は,絵画や彫刻,建築等に比べて,多くの面で植物の成長や四季の変化といった自然の営み自体に頼っている。では,何が庭園の中でデザインされ,どのような効果を持ちうるのか,また,デザインされた空間としての庭園は,どのような点で,人間の手の加えられていない自然と異なるのであろうか。このような問題意識の上に立ち,ここでは庭園が与える心理的影響とデザイン性について,小石川後楽園を回遊した日本人大学生の視覚的,言語的調査に基づいて考察した。その結果,高く評価される景観にはその空間構成に条件があること,景観はメッセージを持ちうること,また,景観の審美評価には,被験者の体験が関係していることがわかった。小石川後楽園は自然風景を模した景観であるが,そこは気づかぬ所で鑑賞者の心理をコントロールし,メッセージを伝えるようにデザインされた空間である。
  • 清川 直人
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 11-20
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    人々が実際に居住した住宅の変遷と住まい方の変遷を「居住履歴」と呼び,この居住履歴から現代日本の住宅の変容の実態を把握することを目的としている一連の研究の中で,本論文はその第一報にあたり,住宅平面の構成を理解する方法として,居室のつながり方に着目した住宅平面のパターン化と,住宅平面の類型化を行い,類型について考察することを目的とする。調査によって収集された243の平面図について次の手順で類型化を行った。(1)居室同士のつながり方に着目して平面図をパターン化する。(2)パターンに現れた居室のつながり方から,「閉鎖度」を定義した。(3)「閉鎖度」の数値から住宅の類型化を行い,O,Oc,Ocl,M,Coの5つの類型が抽出され,その有効性が確認された。類型の特徴の考察から,類型と住宅規模などに関連性があることと,住宅空間は,世帯の成長とともに,開放的なものから閉鎖的な空間構成へ移行したことがわかった。
  • 両角 清隆, 渡辺 誠, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 21-30
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    機器の操作における障害発生の原因として,ユーザーの操作のイメージと機器のインターフェースデザインのズレが考えられる。その操作のイメージに関して,操作の「意味あるまとまり」としての「分節」を視点として分析した。被験者28人に小学生向けの「ブックエンドの組立説明書」を記述してもらい,書かれた「分節」の性質や分節間の関係から,操作の流れを考察した。その結果,次のことが明らかになった。経験の差により知識のあり方である分節が異なり,また分節の量も関係も異なる。なかでも,分節間の関係は初心者と熟練者の差が大きい。初心者ほど一般的概念でトップダウン的に分節化し,その結果全体の説明は階層化され分節は逆にツリー状になるのに対し,熟練者は作業についての全体的な知識があるため,効率的に作業を進めるために必要に応じて類似の作業をくくり,また説明としてはフラットに分節を並べた流れになっている。インターフェースをわかりやすくするためには,初心者の分節化の方法に対応していなければならない。
  • 郭 炳宏, 寺内 文雄, 久保 光徳, 青木 弘行, 鈴木 邁
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 31-40
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    要求特性の把握から設計・試作に至る複合材料の開発過程は,検討すべきパラメータが多岐にわたるために試行錯誤に依存せざるを得ない状況にあり,材料開発を支援する効率的な手法の開発が求められている。本研究では,階層構造ニューラルネットモデルが有する学習・推測能力を活用することにより,任意の複合材料構成から材料物性値を予測する推論モデルの構築を試みた。モデルの構築に際しては,入力データとして複合材料構成を特徴づけるパラメータ,出力データとして5種類の力学的特性値[最大曲げ応力・曲げ弾性率・曲げひずみ率・最大応力時までの吸収エネルギー・破断までのエネルギー]を使用し,総合誤差・学習回数・ニューロン数・中間層数などの検討を行った。また,構築した推論モデルを用いて,積層構成の違いによるハイブリッド効果出現挙動を検討した。
  • 内藤 郁夫, 江崎 月霞, 鈴木 信康, 飯岡 正麻
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 41-46
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    絹布(サテン)を赤,黄,緑,青,紫の5色に染色し,色彩と光沢との関係を検討した。いずれのサンプルにおいても,測定方向により色彩が異なって観測される。等色色票を選択し,その表色値をサンプルの値とした。横糸方向からの光沢感は縦糸方向からの値より高い。しかし光沢感は鏡面光沢度(Gs)とは比例しない。また,明度は光沢感により上昇するが彩度は減少した。このため,同一サンプルにおける色は一定であるが,観測方向により光沢感が変化し,観測される色彩が変化すると仮定した。心理的光沢度差(横糸方向の値・縦糸方向の値)はGsの差と良い直線関係が成立した。
  • 小池 星多, 須永 剛司
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 47-56
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,コンピュータを人間の対象認識を支援する道具として使用したときの,コンピュータの機能に関する研究である。生物の運動を観察,体験し,コンピュータ上にアニメーションとして表現する大学のデザイン教育の実践を事例とし,作品分析から,コンピュータに表現者の体験がどのように記録されているのかを明らかにした。その結果,以下のことがわかった。コンピュータ上には,複数の視点によって表現者と生物との相補的な関係が記録されている。また,生物の生態,骨格などに関する知識が記録されている。コンピュータに表現された生物の運動は,コンピュータの不変的な規則を組み合わせることによって記録されている。同時に,これらの不変的な規則によって運動は不変項を捉えたものとして再編成され,表現者の運動の認識を支援している。
  • 李 愚訓
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 57-66
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    工業デザインの分野において今までデザインのための手法は多く提案されているが,デザインそのものの思考過程に関してはまだ十分に究明されていない。このようなデザイン思考過程に普遍性が存在するのではないかと考えられ,本研究ではそれを明かにしようと試みた。デザイン思考過程を観察するためにデザイン専攻の学生を対象として携帯電話,自転車のロック装置,ホチキス,CDホルダーの4つのテーマについてプロトコル法の内,発話思考法を用いたデザイン実験を設け,得られた発話データに対して思考の単位化,思考単位の分類・分析を行った。その結果,対象,製品サイクルの観点,デザイン要素,操作の4つの思考の属性を明かにした。またそれらを用いれば逆に思考単位の特性が記述できることが確かめられた。
  • 三上 訓顯
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 67-72
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    わが国戦後の社会動向のなかで,特に昭和40年代の高度経済成長期,昭和50年代,物質文明志向から精神文化志向への変化しつつ現在に至る30年間を人々の価値や生活の変化期とみた。本研究では,都市づくり分野においてこれまで多くの実績をあげてきたデザイン企業の活動に着目した。すでに公表されている文献にもとづきデザイン活動を分野と内容の二視点から概観し今後予定している一連の研究の基本フレームを検討した。活動対象を経年的にみると,従来専門家・技術者集団らが主導的役割をはたしてきたこの分野において,デザイン企業が異分野から参入してきた経緯を統計的にあきらかにした。ついで,一企業に着目しその活動内容をみた。そこには,デザインの具現化方法においてそれまでのハート志向の方法とは異なり,デザインを継続的に運営しつつ都市づくりに関与してきた新たなソフト・デザイン活動の発生が特徴的である。都市づくり方法の変化は,戦後変化期の動向を敷衍しつつ新たなデザイン方法の形成をあらわしている。
  • 比嘉 明子, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 73-82
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    農展は,大正期唯一の官制工芸展であり,当時の工芸が幅広く集積する場となった。地方からの出品も増加し,特に公設試験研究機関の出品が注目に値した。工芸デザインの波及効果など,この展覧会開催による地方の工芸振興への影響は大きなものがあった。しかし,当初は,出品者や審査員に東京美術学校関係者や老大家が多かったこともあり,全体的には技巧偏重で,保守的傾向が強かった。商工展となった後の1927(昭和2)年に帝展工芸部門が設置された事を契機に,保守的風潮を払拭しようとする動きが生起し,金工や漆工の部門では「構成派」などモダニズム風の作品が一挙に増加した。しかし,商工省の姿勢は実用的価値五分に美術的価値五分という大正期農展以来のあいまいなままであり,終局的に,商工展は,工芸の美術性を追求する帝展と試験研究機関や企業を対象とした輸出工芸展のいわば中間的存在として位置づけられることになった。時代の変化のなかで,具体的な方向づけがなく,当初の目的である輸出工芸振興策としては,形骸化したものになっていった。
  • 李 愚訓
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 4 号 p. 83-92
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    第1報ではデザイン過程における思考の属性を明かにした。本報では対象,製品サイクルの観点,デザイン要素,操作という4つの思考の属性を切り口として思考単位の累積出現頻度グラフの分析,思考単位間の推移パターンの分析,創造的アイデアの生成過程の分析などを行ない,デザイン思考過程の一般的特性を究明した。その結果,デザイン要素の側面からみた場合,デザイン思考過程がニーズの発見,製品のデザインの発想,使用のパターンの予測という3つの部分的思考過程によって構成されていることが確かめられた。また,操作の側面からみた場合,「関連製品の情報や知識を探索し,それを問題化して問題点とニーズを明かにする。また,その解決案としてアイデアを提案し,それがデザイン・テーマに適合するかを評価する。さらに,解決案や評価結果に対して再び問題化を行ない,アイデアの展開を活性化していく」という基本的な思考の流れが明かとなった。
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