庭園は,植物,石,水,という自然を主な要素として造られる空間であり,庭園の完成は,絵画や彫刻,建築等に比べて,多くの面で植物の成長や四季の変化といった自然の営み自体に頼っている。では,何が庭園の中でデザインされ,どのような効果を持ちうるのか,また,デザインされた空間としての庭園は,どのような点で,人間の手の加えられていない自然と異なるのであろうか。このような問題意識の上に立ち,ここでは庭園が与える心理的影響とデザイン性について,小石川後楽園を回遊した日本人大学生の視覚的,言語的調査に基づいて考察した。その結果,高く評価される景観にはその空間構成に条件があること,景観はメッセージを持ちうること,また,景観の審美評価には,被験者の体験が関係していることがわかった。小石川後楽園は自然風景を模した景観であるが,そこは気づかぬ所で鑑賞者の心理をコントロールし,メッセージを伝えるようにデザインされた空間である。
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