本研究では,自然と人間の対等な付き合いとしての「自然と人間の共生」の姿,すなわち,自然を適度に活用しながら自然を育てていくという姿勢を今も豊かに残している福島県只見川流域の生活様態に着目し,自然に働きかけ,自然と共生してきたものづくりの行動を明らかにし,その行動に内在する規範的観念について考察した。その結果,次の4つの規範的観念を抽出することができた。1)適度・適量の観念,2)「一物全体活用」の観念,3)自然態を尊ぶ観念,4)共同性・共有性の観念。また,自然との共生に基づく<行動-観念>を支える基層文化として,1)自然を身近に引き込む,2)自然を信仰する,人びとの生活に浸透した精神構造をみることができた。さらに,自然との共生を志向する地域づくりの基本的指針として,1)共生にかかわる潜在的資質の総点検,2)一物全体活用・リサイクル型生産形態の検討,3)共生を支える行動規範の検討,の3つを提示した。
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