デザイン学研究
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42 巻, 5 号
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  • 萩原 祐志
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 1-6
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    コンピュータが普及するにつれて,デザインの分野においても工業製品のデザイン支援システムに関する研究成果が数多く報告されるようになってきた。一言でデザイン支援システムといっても,その対象製品や支援のあり方などは様々である。ここではまずデザインプロセスを概念の操作と形の操作の2つに分類する観点から,従来のデザイン支援システムを概観する。そしてそこにおける問題点を指摘し,これを解決するために筆者が開発したシステムとそのシステムにおける未解決問題について述べる。その後,ここではデザイナが形状案を作成する方法に着目し,図形のオーバレイによって形状案を作成する新システムの構築を試みる。本稿はこの新システムの利用効果について報告するものである。
  • 曹 永慶, 増山 和夫, 山内 陸平
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 7-16
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,「ことのデザイン」と「もののデザイン」の具体的な関係を明らかにすることにある。その基礎的な研究として,「座ること」と椅子の形態の関係を事例として取り上げた。「座る」という行為についての副詞的イメージと椅子の形態,形容詞的イメージと椅子の形態についての調査結果を主成分分析を主として解析し,それぞれのイメージおよび椅子の形態をクラスターに分け,それら3者を相互に対応づけることができた。さらに,椅子の基本的な寸法とそれらの組み合わせによる諸関係を表す指標を設定し,それらの平均値,変動係数および多重比較の結果から,それぞれのイメージのクラスターに対応する椅子の形態的特徴を抽出した。その結果,副詞的イメージとそれに対応する椅子の形態的特徴は,それを構成する比例関係に深く関わっていることが明らかになった。このことは「こと」と「もの」とを具体的に関係づける上で有効である。
  • 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 17-26
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論は,腕時計のバンドや針のデザインを支援するシステムの構築に関するものである。腕時計のデザインでは,バンドはケースにそして針は文字板に付随する部品であるとされている。本論では,このように何らかのデザインに合わせる思考を段階型思考過程と呼ぶ。この段階型思考過程は,第一に適合する要素の選択の段階があり,第二に選択された要素から造形イメージのどれか一つに適合する要素を決定する,二段階の思考過程モデルとなる。このように,段階型思考過程モデルでもケースや文字板の思考過程と同じく「造形イメージ」が利用されている。また,段階型思考過程モデルにおける形の交互作用については,要素を選択する段階で解消されている。以上のようなモデルをもとに,バンドや針の思考を支援するシステムを開発した。また,システムの推論結果と実際の製品を比較し,システムの妥当性と有効性についての検証を行った。
  • 野口 尚孝, 田中 敦之助
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 27-34
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    デザイン過程のシンセシスにおける発散的思考の局面においては,コンセプトに適合する可能性のある形態をできるだけ多く発想する必要がある。しかし,仕事に習熟したデザイナーになるほど,コンセプトと形態の関係をある種のルール的知識として獲得しているため,既成概念に陥ってしまい,新鮮なアイデアを発想しにくくなる危険性がある。そこで,この既成概念に陥っているデザイナーの知識に当たる,コンセプトと形態間のルール的知識をニューラルネットワークに学習させた複数のモデルを用意し,それらを交差的に用いて外挿的推論を行わせることにより,新規性の高い形態の発想を支援しようとするのがクロス推論モデルの考え方である。本報では,カメラ製品群を属性により3つのグループに分割することによって得られた,3つの領域モデルを用いてクロス推論を行ない,新規性の高い形態の発想における支援を行なった例を示す。
  • 渡辺 誠, 松岡 克政, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 35-44
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    最近,製品においてある種特独な印象を与えるデザインが多く見受けられる。デザインの現場においては,これら独特なデザインをどのように取り扱うのかが問題になっている。消費者がこれらの製品を選択している背景にはデザインの意味や効用があると考えられる。そこで本研究では,現在の独特な印象を与えるデザインを取り上げ分析を行った。700種のサンプルを収集し,2つの分析を行った。第1は,700種から選んだ120種のサンプルを類似性により分類し10のグループを得た。第2は,イメージ語による評価を行い,30のサンプルより5つのクラスター得た。それら2つの結果を統合し,最終的に6つの分類にまとめ,各々の特徴とその効用を明らかにした。本研究ではこれらの独特な印象を与えるデザインを,「毒-Sting」と呼ぶことにした。現在の多種多様な要求をされるデザインにおいて,この6つの特徴とその効用を把握することで,より一層的確なデザインを行うための一つの指標になると言える。
  • ロブレス マ・エリザベス, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 45-54
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    製品意味論は,形態だけを説明することができ,製品造形のデザインのためにのみ有効である。一方,経験的意味論は,人間の経験を扱い,使用の際のイベントにおける人間と製品との関係を扱う。この論文は,製品意味論から経験的意味論への拡張したデザインの展望の正当性を提案する。人間が製品を使用する際のその人の許容量と経験についてのイベントのデザインを表現する。本論は,経験の対象をデザインすることと,新たなインタフェースデザインのための新しい次元をデザインすることである。はじめに,知識への現在のアプローチの基礎概念の予備的考察について検討する。このことは基礎的な意味と伝統的な意味としての経験を確かなものとするのである。そのためにデザインの意味論が検証されねばならない。哲学的,認知的,生態学的,そして経験的アプローチが考察される。これらのアプローチの一般の原理は設計の実行にとって貴重なものであり,特に知識メカニズムについての確かな理論を再評価して,これらの理論が人間のニーズを支える際のインタフェース設計にどのように関連しているかを決定することが本質的に重要なのである。
  • 梨原 宏
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 55-64
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本報告は工業化に導いた木製車いすの生産方式について述べている。組み立て精度を必要とする移動機能部は,成形部材のみの構成では加工精度が低く調整箇所が増え,確かな精度を与えることができないが,金属部材による構成を加えれば組立精度が保証され,組み立て作業に合理性が生まれる。個別の姿勢保持に関する身体寸法の要求に応えるには,座面横幅,座面奥行,背もたれ高を中心に設定し,次に肘あて高,膝下長を設定する部材寸法構成によれば良いことが明らかになり,その具体的な寸法構成モデルを提示した。木製車いすの生産には,(1)金属製車いすを生産するメーカーが主体となる生産方式,(2)成形部材メーカーが主体となる生産方式,および(3)補装具などを地域で生産する作り手を主体とする生産方式の3方式があることを明らかにした。そして後者の2生産方式には地域で木製車いすを生産,提供できる可能性を持つことを示した。
  • 佐藤 嘉憲, 久保 光徳, 青木 弘行, 鈴木 邁, 吉田 旺弘
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 65-70
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    新たなアクチュエータの実現を目的として,ゲルの電場応答収縮性について検討を行った。検討の結果,ゲル生成過程における冷解凍サイクル数の増加に伴って,電場応答収縮性が向上することを確認し,このゲルが電動アクチュエータになりうることを確認した。直流電場の影響を受ける場合,このゲルは陰極側で著しく収縮するが,この現象に基づいて,ゲルが電極に巻き付く挙動を実現した。また,この現象を応用して,電場によって駆動するゲルを用いた二つのロボットを提案した。一つは,巻き付き挙動によってマイクロカプセルを把持,解放するものであり,他方はへびのような生体を模倣した歩行ロボットである。このように,ゲルを用いることによって新たな運動様式を有するアクチュエータが可能となり,アクチュエータならびにロボットのデザインを変えうる可能性を示唆した。
  • 三橋 俊雄, 宮崎 清, 松林 健一
    原稿種別: 本文
    1996 年 42 巻 5 号 p. 71-80
    発行日: 1996/01/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,自然と人間の対等な付き合いとしての「自然と人間の共生」の姿,すなわち,自然を適度に活用しながら自然を育てていくという姿勢を今も豊かに残している福島県只見川流域の生活様態に着目し,自然に働きかけ,自然と共生してきたものづくりの行動を明らかにし,その行動に内在する規範的観念について考察した。その結果,次の4つの規範的観念を抽出することができた。1)適度・適量の観念,2)「一物全体活用」の観念,3)自然態を尊ぶ観念,4)共同性・共有性の観念。また,自然との共生に基づく<行動-観念>を支える基層文化として,1)自然を身近に引き込む,2)自然を信仰する,人びとの生活に浸透した精神構造をみることができた。さらに,自然との共生を志向する地域づくりの基本的指針として,1)共生にかかわる潜在的資質の総点検,2)一物全体活用・リサイクル型生産形態の検討,3)共生を支える行動規範の検討,の3つを提示した。
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