デザイン学研究
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43 巻, 6 号
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  • 山岸 淳, 長坂 一郎, 田浦 俊春
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 1-10
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、製品の意匠的形状のデザインにおいて、メンバーが地理的に分散し、時間をずらしてコミュニケーションするという形態のコラボレーションに注目し、これを計算機システムを用いて支援するための方法を提案する。コラボレーティブデザインではデザイナーが互いにデザインの意図や根拠を理解し合うことが重要である。そのためにはデザイン結果としての形状データだけでなく、言語による意図や根拠の伝達が望まれる。しかし形状デザインにおける意図や根拠は言語的に表しにくいため、伝達が困難になっている。そこで本研究では、言語に拠らずに意図や根拠を明示化し、その伝達・理解を助けるため、(1)システムが形状バリエーションを生成し、デザイナーに選択・編集させる、(2)そのデザインのプロセスを他のデザイナーに対して視覚的に提示する、という方法を提案する。そしてこれらの方法に基いた試作システムを用いてデザインを試みた結果、提案した方法が有効である可能性が示された。
  • 大森 峰輝
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 11-18
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    空間プレゼンテーションにおける最も重要な要素は視覚的イメージをダイレクトに伝える映像である。映像は感性的評価の対象であり、演出はその本質的部分と言える。本稿では、動画(実写)映像観視時における脳波の挙動と印象評定の結果に着目し、これらを対応させたかたちで比較分析することにより映像の情動効果(演出効果)を評価した。その結果、脳波の挙動と印象評定との間に対応関係を示唆する結果が得られた。具体的には、映像の情動価の高まりに伴って、α波帯域成分のパワー値が減衰する傾向及びα波ゆらぎの傾き値が増大する傾向を示した。脳波の挙動については解明されていない点が多く、感性的対象の評価指標として用いられた例は非常に数少ない。しかし、本稿の実験及び解析を通して得られた結果は、これまで主観的な評価に頼らざるを得なかった映像の情動効果を、人間の精神活動の根源とも言うべき大脳の活動に遡って客観的に評価できる可能性を示唆するものである。
  • 尹 亨建
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 19-24
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、自国の伝統工芸品と他国の伝統工芸品を評価して得たイメージ構造を比較・分析することによって、親密度によるイメージ構造がどのように変わるかに着目した。韓国人の自国の伝統工芸品に対するイメージ構造は「快-不快」「精緻-単純」「大胆-貧弱」であり、日本の伝統工芸品に対するイメージ構造は「精緻-単純」「快-不快」「大胆-貧弱」であることが分かった。韓国人は自国の伝統工芸品であれ、日本の伝統工芸品であれ代表因子の順位だけの違いであり、イメージ用語の空間上においては同じ因子を持っていることが分かった。日本人の自国の伝統工芸品に対するイメージ構造は「軽-重」「優美-野暮」「精緻-単純」であり、韓国の伝統工芸品に対しては「地味-派手」「優美-野暮」「軽-重」であることがわかった。自国の伝統工芸品と韓国の伝統工芸品ではイメージ構造の因子に相違があることが分かった。
  • 李 圭鈺
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 25-34
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    20世紀の映像芸術の展開においてテクノロジーがもつ意味は大きい。特に電子時代のアートの中で、コンピュータ・アートやビデオ・アート、コミュニケーション・アートなど、テクノロジーを基盤とするメディア・アート領域は先端的なハイテクノロジーに支えられた出力表現が芸術に適用されている。本研究は20世紀初頭から現在に至るまで、テクノロジーが、造形芸術に与えた影響の中で、特に映像メディアによる人間の視覚や意識世界の拡張を志向する表現形式について考察するものである。映像表現の展開は、実験映画の機械的手段による視覚世界の拡張から、光・運動・空間を素材とする映像形式まで拡張していく。さらに電子時代の映像表現は身体の外部から内部世界へと体験世界を内面化、深化して全体としては拡張していく映像のインタラクティブ化が進んでいる。新しいテクノロジーは新しい映像世界を開示する。しかも、テクノロジーによる映像表現の価値は発想の豊かさである。そこでテクノロジーは、創造のための表現手法として存在する。
  • シャクルトン ジョン, 杉山 和雄, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 35-44
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、前報に続き、日本のRV市場における主要なプロトタイプ効果である「典型性」が、自動車の属性から得た「類似性尺度」から判定できることを明らかにしたものである。本研究ではまず、RV市場の車輌の典型性に対する判断が、被験者の間でおおよその一致が見られることを明らかにした。そして、この典型性の判断に基づく順位付けと、「類似性尺度」からの予測による順位付けには、相関があることが確認できた。さらに、本研究ではロジスティック回帰モデルを用いることにより、各製品分類毎に該当するデザインの特徴についての相対的重要度を提示することができた。このロジスティック回帰分析モデルを用いて多数のRV車についてその典型性を求めた結果、最近のRV車は、総じて、以前に確立されたものより典型性が低いことがわかった。
  • 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 45-50
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    自動車開発はヒップポイントの決定より始まることから、シートの主要な仕様は、自動車開発の初期段階に試作をせずに短期間に決定されることが望まれており、そのために、外観の評価を定量的に予測する設計方法の構築が必要とされている。本研究では、シート外観の評価構造を明らかにするために、官能評価実験データをもとにした多変量解析を行った。その結果、重厚感や装飾性などの4種のイメージ評価因子と、クッションとバックの広さやトリムカバーのつやなど13種の外観要素評価主成分を抽出した。また、人による評価の個人差を考慮し、嗜好評価より被験者を層別化した。さらに、層別化した嗜好評価、イメージ評価、外観要素評価の各関係を重回帰式により求め、嗜好評価にはホールド感や重厚感などが強い影響を与えているなどの結果を得るとともに、外観要素評価から嗜好評価を定量的に予測する方法を構築した。本結果は、自動車開発の初期段階において、主要なシート仕様の決定を支援するツールとして活用可能である。
  • 黄 世輝, 田中 みなみ, 三橋 俊雄, 加藤 純一郎, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 51-60
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    台湾の寺廟文化は、中国大陸から渡来した漢民族による移民社会の成立とともに、地域生活と密接な関係を保ちながら発達してきた。本研究では、台湾・鹿港の文化的、社会的象徴といえる龍山寺を対象に、地域づくりにかかわる龍山寺の役割とその可能性について検討した。その結果、鹿港の地域づくりにかかわる龍山寺のあり方について、以下に示す五つの方向性について提示した。1)宗教活動の場として清浄な環境を保ちながら仏教教義の広がりに努める。2)教育の場として歴史的資産を保護、伝承しながら郷土教育を推進する。3)文化活動の場として住民参加型の文芸活動を展開する。4)観光活動の場として龍山寺の文化的価値を内外に発信する。5)憩い・交流の場として寺廟文化の情報センターの役割を担う。総じて、龍山寺は地域づくりの拠点として多くの住民が参加できる活動を展開することができる。
  • モハマド アリ ヤーガン
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 61-70
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ムカルナスは10世紀に出現し、その後900年余り続いたイスラムの造形である。その形と多様性は、時代により、さまざまに変化、発展してきた。ムカルナスの多くは建築に付加された装飾であった。しかし、すべてのムカルナスが建築装飾であったわけではない。これまでの研究では、建築装飾としてのムカルナスの特性がすべて作例に当てはまるかのように論じられてきた。本論文は、そのような一般化が必ずしもすべてのムカルナスに適合しないことを指摘し、建築構造に付加される装飾としてではなく、建築構造そのものを構成するムカルナスの定義を提示する。それは、将来の類型学的な研究に寄与しうる新しい類型の提示である。本論文の前半では、すでに定義されている属性に従いながらも、それらに共通する別の属性を抽出し、従来の装飾的ムカルナスとは異なる類型を「構造的ジェニュイン・ムカルナス・ドーム」として定義する。また、後半では、ムカルナスの本質的構成単位であるユニットに注目し、「構造的ジェニュイン・ムカルナス・ドーム」のユニットの分析を行う。
  • 釜池 光夫, 渡辺 誠, 古屋 繁, シャクルトン ジョン, 川崎 晃敬
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 6 号 p. 71-78
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論は、軽自動車のスタイルの抽出と、商品ラインナップ空間の構造を明らかにすることを目的としている。現在の軽自動車は、一つのモデルに様々なスタイルが存在する。これは、普通の乗用車とはかなり異なる特殊で複雑な商品である。そのため、商品企画やデザインにおいて、軽自動車全体の商品ラインナップがどのようなものか明らかでないのが現状である。本論では1977年から1994年までの18年間に存在した、6自動車会社、20モデル、830の軽自動車を対象に分析した結果、軽自動車の商品ラインナップは、10のスタイルに分類できることがわかった。そして、この10スタイルは、普通自動車を真似たスタイルと軽自動車独自のスタイルに大きく二分できることを明らかにした。さらに、10のスタイルの変遷により、1977年以降の軽自動車の商品ラインナップは、大きく3つの年代があることもわかった。以上のように10のスタイルで、複雑な軽自動車の商品ラインナップを明らかにすることができ、今後の商品企画やデザイン検討などに役立つと考えられる。
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