本研究は,美術大学において,生物の運動を観察し,コンピュータにアニメーションとして表現するというデザイン実践を事例として学生の課題制作過程を調査することで,学生の1グループのコンピュータ使用が,グループの生物の運動認識をどのように支援するのかについて,状況論的アプローチにもとづき,分析,考察したものである。その結果,明らかになったことは以下のようなことである。第1に,生物の運動のコンピュータ表現の際に,表現者は,コンピュータの持つ「規則」「条件」といったものをリソースとして運動の表現,認知の方向を収束させるということである。第2に,表現者は,コンピュータによって表現されたものに加えて,例えば,実際の生物の運動,ビデオ,文献などといった様々なリソースを繰り返し用い,またそうしたリソースを相互に参照することを通して,生物の運動のどこをどのように見るべきかといったことを「ローカライズ」して行くということである。
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