デザイン学研究
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43 巻, 2 号
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  • 釜池 光夫
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,乗用車のモデルチェンジが形成される過程を調査し,主にモデルの形態の変化の推移から,要因の概要について考察することにある。フォードの創生期(1903年〜1956年)の2ドアセダンのモデルチェンジの経過を文献で調べると,性能・構造の著しい改善が見られる。これら機能的な改善は外観の変化に深く関係を持っていることが解る。フォードと世界の乗用車のモデルチェンジの動向は近似しており,本論はモデルチェンジの全般動向の研究と考えることが出来る。この時代のフォードは11モデルあるが,「形態の類似性アンケート調査」で確認すると,他の形態と明確に区別されている5種の形態に分類が出来る。5種の側面画を直線に置き換えたプロポーション画は各グループの特長を表すイコン・アイコン(原型・象徴画)の一つと考えられる。プロポーション画を比較すると,その変化には方向性があり,その変動要因は機能的な改善が主に行なわれたことが解る。主要部品の大きさや配置・優先性が調整(パッケージング)された結果,連続的に変化したと思われる。モデルチェンジの意義はユーザーの生活に係わる走行性能や操縦性などの改善を図るため,モデルのプロポーションを変化させることと思われる。
  • 釜池 光夫
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 11-20
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論の目的は乗用車の創生期(1903年〜1956年)の派生車を含むフォードのモデルチェンジの過程を調べ,その要因と構造を考察することにある。モデルチェンジの経緯を見るため,外観の側面画を主とする「モデルチェンジ年表」を作成した。4ドアセダン,クーペ,ワゴン,トラックの派生車を早期より展開し,馬の居ない馬車から乗用車への改善が図られた。フォードは前半の大量生産と機能的な改良に成功するが,後半に自ら作り出したユーザーの多様な感覚的な要求や市場の対応に失敗している。年表で形態の経緯をみると,モデルは変動世代と継承世代に大きく分けられる。この時代のフォードの形態は変動世代の19種の側面画により代表され,5期に区分できる。側面画の直線プロポーション画を作成し,側面画との同定アンケートを行った。高い正解率となることから,この19のプロポーション画は,フォードと乗用車のイコン(原型)・アイコン(視覚象徴)の一種と考えられる。派生車別にプロポーションの変動要因を調べると,前半は機能的要因,後半は感覚・価値的な要因により主に変更されたと考えられる。
  • 小池 星多
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,美術大学において,生物の運動を観察し,コンピュータにアニメーションとして表現するというデザイン実践を事例として学生の課題制作過程を調査することで,学生の1グループのコンピュータ使用が,グループの生物の運動認識をどのように支援するのかについて,状況論的アプローチにもとづき,分析,考察したものである。その結果,明らかになったことは以下のようなことである。第1に,生物の運動のコンピュータ表現の際に,表現者は,コンピュータの持つ「規則」「条件」といったものをリソースとして運動の表現,認知の方向を収束させるということである。第2に,表現者は,コンピュータによって表現されたものに加えて,例えば,実際の生物の運動,ビデオ,文献などといった様々なリソースを繰り返し用い,またそうしたリソースを相互に参照することを通して,生物の運動のどこをどのように見るべきかといったことを「ローカライズ」して行くということである。
  • 畑山 美香, 宮崎 紀郎, 玉垣 庸一, 村越 愛策
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 31-38
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,最近出された,印刷媒体における比較広告をいくつかの型に分類し,それをもとに比較広告が人々にどの様に受け止められているのかをアンケート調査したものである。その結果をもとに,日本における比較広告の現状について検討した。比較広告は,アメリカではさかんに行われている。日本では,最近いくつかの比較広告が若者に関心を呼んでいるようだが,日本人はあからさまな比較を嫌うせいか,あまり多くは見られない。果たして,比較広告は,日本人には受け入れられないものなのだろうか。そこで,我々は,15歳から65歳までの男女189名に比較広告に関するアンケートを依頼し,143名の有効回答を得た。調査の結果,以下の点が判明した。(1)比較広告は,全ての年代の人々に受け入れられている。(2)広告の中で比較の相手の名前を出さない無指名型よりも,名前を出す指名型の方が効果的である。
  • 洪 尚憙, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 39-48
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論は,韓国の製品デザインにおけるデザイン・コンセプトの作成のため,旧・新調査の比較・分析による嗜好の変遷と構造化をしたものである。本論では,デザイン・コンセプトの構成要素のなかでも特に流行現象によるユーザーの嗜好度の変動を中心として分析を行うため,パーソナル製品としてファッション性が日々増加しつつある腕時計を研究対象としてデザイン属性上の構成要素に関して時期的変化を求め,両方の関連性を中心に各空間を構造化したものである。旧・新調査の結果を利用して,単純集計による嗜好の変遷を求めると共に,新調査の結果を用いて意味空間を作成,評価した。その結果,腕時計を始めとするパーソナル製品は今後,ファッション化傾向への加速化が予想された。また,その傾向はユーザー全般に広がり今後は「物質的な価値観」ではなく「感覚的な価値観」によりものを選ぶという推定が得られ,デザイン・コンセプト作成のための一指標を得ることが出来た。
  • 木下 公太郎, 赤松 明
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 49-58
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    前報では,紳士服専門店をとりあげ,その形態と視覚的イメージとの関係について検討し,ファサードに対するイメージ構造を活動性因子及び評価性因子の2因子で表現した。本研究では,タキストスコープ及びアイマークレコーダを用いて紳士服専門店ファサードの注視性について検討した。タキストスコープによる実験の結果,最も視認性の高い知覚要素は,陳列品及び店名・看板であった。しかし,これらとイメージ構造との間には有為な関係が認められず,ただ見えやすい要素であった。アイマークレコーダ実験による注視点の数及び注視時間の結果から,多くの注視要素をとらえることによってイメージが形成されることが明らかになった。さらに,店名・看板のテクスチュアや店頭陳列品及び店内陳列品の注視要素の数がイメージの形成に影響していることがわかった。
  • 宮内 悊
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 59-68
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    島根県の美保神社において,氏子が戸外での儀式に酒,つまみ,盃,箸などを運ぶために使用する「イスズ箱」と沖縄地方で御嶽信仰において,お供えを運ぶための「ビンシー」と呼ばれる箱とを比較して,デザインの特質を述べた。1.意味不明のイスズ箱とは,「神に酒を供えるための錫の瓶を収めた箱」であることを明らかにした。2.イスズ箱は,針葉樹の白木製で,隅打付接ないし組手接の箱である。わが国古来のアイデアである中蓋によってつまみ,盃,箸と徳利とをへだて,徳利が壊れないために箱の内部を巧妙に仕切っている。中蓋はお盆としても使用される。3.ビンシーは広葉樹で朱漆塗り,蟻組接である。箱の作り方として中国の影響が指摘される。また,箱自体が神に供物を捧げる台となる。4.二つの箱の機能は類似しているが,デザインが非常に異なるのは,文化,伝統の反映であると考えられる。
  • 深水 義之, 伊藤 明, 吉田 登美男, 白石 照美, 小谷津 孝明
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    デザインの評価の一手法として,視覚系固有の普遍的な法則を捉え,これにより客観性を確認する方法が考えられる。この問題の解決手段として,横瀬の場理論に着目し視覚現象の実験的な定量化と数値解析手段の構築を試みてきた。本論文では生理学的な立場から側抑制モデルF_<(0)>を構築し,視覚現象の定量化を試みる。まず折れ線図形を用いて心理実験を行い,これをもとに側抑制の結合係数を定義する。このようにF_<(0)>は側抑制構造を表す積分式と,実験値から推測した結合係数によって構成する。またF_<(0)>はコントラスト情報を出力するが,これを心理実験と同様の閾値へ変換する方法について検討する。ここで,単純図形について心理実験結果と計算値の比較からF_<(0)>の特性の考察を行った。この結果,側抑制構造が閾値の再現に有効であることが明らかとなったが,種々の図形において実験値と整合性の高いモデルを構築するには至らなかった。また,一連の研究の目的であるデザイン分野への応用に向け,閾値の解釈方法について初歩的な検討を行う。
  • 翁長 洋子, 深水 義之, 吉田 登美男, 白石 照美
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 1996/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    曲線と直線が並行に並んでいるとき,この2つの線の間に錯視が存在することは周知である。われわれは,アーチ橋の景観デザインの立場から,アーチと桁の各種の組合せモデルについて,錯視(見かけのライズ比)を観測した。アーチの形は円弧,放物線,三心円の3種を使い,桁は直線で一定の長さとした。桁とアーチが離れていると曲線の半径は過大に評価されたが錯視はそれほど大きくなかった。両者が近づくにつれ錯視は大きくなった。しかし,例外として両者が互いに重なった場合には逆の錯視が起きた。また,三心円の場合には錯視が観測されなかった。次に,われわれはこの現象を説明するために第4報で述べた新しい側抑制方程式によるポテンシャル解析を行った。結果として,これら錯視現象を説明できる手がかりを得た。
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