デザイン学研究
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43 巻, 3 号
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  • 高橋 正明, 高山 英樹, 山手 正彦
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    我が国の時刻表では、必要な情報をより得やすいものにすることと、新たな情報を収めるという相反する要求に対し、視覚伝達という視点から、様々なデザイン上の技術的回答が示された。ページ方式の採用と判型の定型化は、限られたスペースの中に情報を掲載するためのデザイン開発の誘因となった。ピクトグラムは、その代表的な例であり、我が国の時刻表では、限りある紙面の中で情報を速く分かりやすく伝達することを目的として早い時期から採用された。索引地図は、検索機能を優先した我が国独自の変形地図として、煩雑な文字情報だけでは得にくい細かな情報に、瞬時に到達させるという点において優れたデザイン上の工夫であった。また、視覚情報への置き換えが困難な文字による列車情報では、文字に微妙な変化を与えることによって見る情報としての要素が加えられた。この様に時刻表では、全体を通して「読む」から「見る」への一貫した提案が行われてきた。
  • 山内 元成, 高山 英樹, 山手 正彦
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 11-20
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    労働作業現場における災害防止に関する絵文字の開発および選定に資するため、イメージと識別性について検討を行った。イメージ調査では、絵文字のイメージを構成している因子として訴求性因子、評価性因子、簡略性因子の3因子を抽出し、各因子と絵文字の表現との傾向を明らかにした。識別実験では、学習前後の識別性を正答率と識別時間によって検討を行った。学習前に識別性の高い絵文字は、人の身体もしくは身体の一部を用いて注意事項をより具体的に表現される傾向が認められた。また、絵文字の学習効果は、殆ど全ての絵文字について認められ、特に抽象的な絵文字において顕著であった。さらに、イメージ調査と識別実験との結果をもとに、相互の関係について検討を行った。その結果、学習前の正答率は、簡略性因子と負、評価性因子と正の相関をもち、学習後における正答率は、訴求性因子、評価性因子とともに正の相関をもつことが認められた。
  • 三上 訓顯
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 21-30
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本報を含む一連の研究は、現代デザイン企業の活動に着目し、デザイン活動をめぐる諸変化を各企業の実際におこなわれてきたプロジェクトの実態に即し、活動特性、構造、およびプロジェクトの効果を解明することにより、これからのデザイン活動における新しい基礎的知見の一つをうることを最終的な目的としている。そのための一つとして位置づけている本報では、すでに前報であきらかにされたソフトデザインへの活動推移が顕著であると判断される企業として浜野商品研究所をとりあげた。そこでの28年間に実際におこなわれてきたプロジェクトを対象とし、前報同様の活動内容の11項目について、多変量解析手法をもちいて類型化をおこない、各プロジェクトにおける活動特性をあきらかにした。その結果、数量化3類により3分類軸がえられた。さらにこれらの3分類軸にもとづくクラスター分析による類型化では、あきらかな活動特性を持つ5タイプがえられた。なかでもひとつのタイプには、ソフトデザインの実態を示唆する特性がみられた。
  • 天貝 義教
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 31-40
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    アルバースの用語法によれば、色彩は芸術において最も相対的な媒体となる。アルバースの色彩教育に対するアプローチと絵画制作の中心にはこうした概念があり、アルバースの教育と芸術との最も直接的な結び付きは、色彩の分野において認めることができる。アルバースの色彩教育は、1933年の合衆国への移住後、まずブラック・マウンテン・カレッジで始まり、後にイェール大学において行われた。また、アルバースはこの色彩教育に加えて、多数の抽象絵画の制作を試みており、1950年には『正方形讃歌』の連作が着手されることとなった。この連作はアルバースが1976年にその生涯を閉じるまで描き続けられたのである。本稿の目的は、アルバースの色彩教育の発展過程を跡づけるとともに、その色彩教育の内容とアルバースの代表作に位置づけられる『正方形讃歌』の連作との相互関係を検討することによって、アルバースの教育と芸術における色彩の意味を考察することにある。
  • 佐藤 優, 金 英美
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 41-48
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    快適な都市景観をつくっていく上で、屋外広告物をいかに制御・誘導していくかが重要な課題になっている。行政が私的な欲求と市民の公益性との調整をはかりながら望ましい景観形成を進めるためには、抽象的な概念ではなく、客観的で説得力のある根拠を示す必要がある。本研究では、都市における建物の外壁面と屋外広告物の色彩調査を行い、色彩分布の実態を確認した。次に、屋外広告物の彩度を変えてみて、イメージの変動を測定した。その結果、彩度コントロールが景観イメージの形成に大きな影響を及ぼすことが認められた。そこで、色彩を計画的に誘導することによって景観イメージの変化を予測することができると考えられ、地域の特性に合わせた誘導も可能であると推論された。また、屋外広告物の掲出位置を建物の2階以下にするなど、人間の視知覚に特性もふまえ、屋外広告物を制御する可能性を示した。さらに福岡の天神と博多駅周辺(日本)及び、ソウルの汝矣島と明洞(韓国)の比較調査も行い、地域特性による差異を確認した。
  • 金 英美
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 49-58
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    都市環境における、建築物、広告物などの無秩序な色彩の氾濫をいかに制御・誘導していくかが重要な社会的課題になっている。しかし、どのような根拠で制御・誘導するかを明確にする必要があり、そのための論理的手法の検討が急がれている。本研究では、商業地区(福岡市天神)を対象に「イメージ」と「らしさ」の構造を把握し、その中で色彩の影響を明らかにするための調査を行った。その結果地域の「らしさ」と景観イメージが深くかかわっていることが分かり、建築物やそれに付属している屋外広告物の高彩度部分の色彩をコントロールすることによって地区のイメージをコントロールできることを証明した。次にこの実験結果をもとに、逆に特定の現場にその手法を適用した場合に意図したイメージが得られるかどうかを検証したいと考え、彩度を段階的に制限した写真を提示してイメージを調査した。実験の結果、相互の関係が明らかになり、双方の実験から色彩コントロールの効果が確かめられた。
  • 藤盛 啓治, 山本 誠
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 59-64
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ハニカムコアサンドイッチパネルの技術資料は、平面板に関するものが一般的で、その成果は多くの製品に利用されている。しかし、このパネルを曲面に成形する場合の技術資料は少なく、あってもそれは単曲面の場合で、球面や複曲面のシェルに成形する場合の資料は皆無に等しい。本研究はこの点に着目し、ハニカムコアを用いたシェルの成形法を開発し、製品への適用に向けた設計上の基礎資料を作ることを目的としている。本稿は研究の手始めとして、ハニカムコアサンドイッチパネルによる平面板及びL形成形板の2種の試験体について実験を行った結果、次のような知見を得たので報告する。1)平面板に用いられる表面単板は、カバ材の場合、厚さ1.2mm付近でせん断破壊が生じるため、それ以上表面単板を厚くする必要のないことが分かった。2)L形試験体の成形条件は、圧締力が1.0kgf/cm^2が適性であることが分かり、その時のモーメント有効率は、引張り荷重で0.55〜0.60、圧縮荷重で0.60〜1.08の範囲であった。
  • 梨原 宏, 奥田 光子, 伊東 隆子, 雫石 勝蔵, 吉田 旺弘
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 65-74
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本報告は工業化に導いた木製車いすにおける木質環境が人間の感覚に及ぼす効果について明らかにしている。車いすの心理的イメージ評価から、木製車いすは20代の学生による外観評価では上品で温かく地味で落ち着いたイメージ、施設で介護に携わる使用評価では温かく女性的で健康的イメージと受けとめられている。日常の温度環境のもとの車いすの温度分布計測から、木製フレームは周辺温度変化に緩慢に反応し、金属フレームに見られない保温性をもつことが知られた。強調フィルターを用いた車いすの形態の認知性調査から、木材フレームの素地色は黄色系で反射率が低く、高齢による視力低下でも形態を認知できると推測された。高齢者の色彩の認知調査では寒色系および低彩度の色彩は誤認知をまねき易いことが分かった。以上から木製車いすの素材と色彩選択の設計指針が明確にされた。
  • 井口 壽乃
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 3 号 p. 75-82
    発行日: 1996/09/10
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    20世紀初頭、ハンガリーの近代化の過程で生じた社会主義革命において、芸術家は文化の民主化を標榜し、社会へと活動を拡大した。彼等の現状に対する批判と変革の試みは、前衛芸術雑誌『MA』を中心に運動体としての芸術革命に結集し、モホイ=ナジの初期活動に少なからぬ影響を与えることとなる。本研究はモホイ=ナジの芸術理念を正しく理解するために、ハンガリー時代の初期活動に注目し、生い立ちから「行動主義」作家として成長するまでの軌跡を調査しその実像に迫る。彼は第一次世界大戦帰還後から視覚芸術の表現世界にのめり込み、次第に幾何学的抽象表現を獲得するが、同時に革新的芸術家集団「MA」に接近していく。本稿では、これまで見過ごされてきた初期文学作品や素描について紹介するとともに、特にモホイ=ナジが「MA」といつ、どのような関係にあったかを史実に基づき考察する。亡命後に到達した構成主義の理念は、彼がハンガリー時代に理想とした社会主義の視覚化であると言える。
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