デザイン学研究
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43 巻, 4 号
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  • 大森 峰輝
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 1-8
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,空間プレゼンテーション視聴時及び体験時(対話性が付加された状態)における脳波の挙動に着目し,対話性の付加による効果について評価した。また,脳波の挙動解析を空間プレゼンテーション技術の評価に用いる可能性について考察した。その結果,以下に示す成果が得られた。1)空間プレゼンテーションに対話性を付加することによって我々がそこから受ける感覚や印象が大きく変わる,言い換えればリアリティが変容することを示した。2)映像の情動価(演出効果)による影響,映像ソフトウェアの特徴,映像に対する慣れについても,脳波の挙動解析によって主観から遠ざかって評価できる可能性を具体的に解析データにて示した。3)本稿の実験及び解析を通して,空間プレゼンテーション技術の効果及び映像が我々に与える感覚や印象の客観的評価に関して,脳波の挙動解析が有効な手法となりうることを明らかにした。
  • シャクルトン ジョン, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 9-18
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文は,製品が類別化される際の構造把握にプロトタイプ理論が応用できることを示すとともに,実例として取り上げたRV車群の認知にみられるいくつかの「類似の尺度」を示したものである。属性の線形直交関係は,非線形主成分分析を用いてカテゴリカルなサンプルデータから抽出し,それらの次元についてのサンプルスコアの違いをステップワイズ回帰分析の独立変数として用いた。従属変数として用いた認知差異は一対比較法によって得た。この結果,RV車群における製品間の差異において,多くの認知次元が認められた。また,これらの次元の相対的重要度の表示も確定できた。
  • 佐藤 優, 定村 俊満
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 19-28
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,福岡市都市サインに関して利用者,市民,市職員を対象にアンケート調査を行ない,設計時の意図をふりかえりながら,その達成程度や反応を検討したものである。複雑化し住民の移動も激しい現代の都市にとって,街を快適に案内するサインの整備は,重要な課題のひとつである。福岡市都市サインの設計にあたっては,人間の視覚に適合した形態の提案,耐久性の向上,案内に適した地図の開発など,いくつかの新しい試みを行なった。その後の利用実態を確認して今後の設計に生かすために,設置後7年を経た1994年に追跡調査を行なった。その結果,耐久性に優れ,市民にもよく利用されていることが確認された。また,造形のイメージに関しても,親しみやすく福岡市にふさわしいなど,設計意図通りの回答が得られた。都市サインが有効に活用されていることがわかり,表現が適切だったことを確認できたが,情報量や文字の大きさなど,一部問題が残った要素については今後検討が必要である。本調査結果は,今後のサイン計画の進展のために有用な資料となった。
  • 両角 清隆, 渡辺 誠, 森川 博
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 29-36
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ユーザーの行動を分析・モデル化し,それを基にしてインタフェースデザインを行うことより,わかりやすいインタフェースデザインを達成することが目指されている。しかし,実際のユーザーの経験は多様であり,モデル化は容易ではない。そこで,これまでの研究で行動の類似性が認められた緊急時の操作を題材として,インタフェースデザインを考えた。緊急時の行動の特徴であるa)すぐ操作できる方法を選択する,b)一般的な知識を使って操作する,c)順方向操作との関係性(対称性)を想定して操作する,を考慮してシミュレーションモデルを作成した。その結果,ユーザーの緊急時操作の行動特性に対応したユーザーインタフェースデザインの指針として次の項目を得た。1)行動の特性に合った複数の操作経路を設定する,2)操作の対象を視覚的に表現する,特に緊急時の操作に対応する操作子は表面に設定する,3)情報の処理で認知的に高負荷をかけるダブルファンクション等は避ける
  • シャクルトン ジョン, 杉山 和雄, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 37-46
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,前報の成果に基づき,日本のRV車に焦点を当て,RV車の類別化にはある種の認知の焦点が存在し,いわゆるプロトタイプ理論によってそれが説明できることを,類別に寄与した属性パターンから示したものである。まず第一に,被験者にRV車を自由にグルーピングして貰う実験を行い,まず一様性分析により分析した結果,各被験者のグルーピングに寄与したと思われる属性を非線形正準相関分析により抽出したところ,各グループの識別は,ある幾つかの際だった属性により成り立っているのではなく,各グループの有する諸属性の一般的な傾向の違いに基づいていた。類別化は,示される属性の複合的な関係に依存していることを明らかにしたのである。
  • 藤盛 啓治, 山本 誠
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 47-52
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究の第一報では,曲面板のコアとなるハニカムサンドイッチパネルの適正な構造と基本性能を明らかにした。この研究は,最初にハニカムサンドイッチパネルを成形した後,さらにその局面コアの両面にそれぞれ表面単板層を接着させることである。本稿は,球面体を対象に実験を行った。特に表面板をプレカットし,球面状に容易に成形接着できるようにするためのカットラインの作図法2種をコンピュータシミュレーションを用いて検討した結果を報告する。1.ジオデシック多面体を応用した曲面の近似展開;球面状の大円を分割し,全ての稜が測地線からなる三角形で構成されることから,これを出来るだけ細分し,球面を形成した。2.矩形状球面板の作図と構成;球面を構成するための基本となる成形板の作図を基に製作し,その成形板を連続的に接合させることによって球面を形成した。
  • 比嘉 明子, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 53-62
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,石川県を事例とし,大正・昭和戦前期の工芸振興に地方試験研究機関が果たした役割を考察したものである。農展・商工展に対し,石川県工業試験場,石川県立工業学校は,機関単独,機関共同に加え,地元工芸界に図案指導を行なうかたちで,多数の出品をなした。また,石川県商品陳列所は,講演・講習会の開催,内外の展覧会への出品の仲介などを通して,地元工芸界を中央の工芸界へと開く窓口的役割を担った。農展・商工展への地方試験研究機関の出品活動は,試験研究の成果に加え,地元工芸界に対する指導の成果を世に問うことでもあった。また,それは農展・商工展に集積した「デザインと技術」に関する先端的情報を収集し,試験研究に反映し,地元業者に還元する機縁をなした。政府にとっては,各地方の工芸振興の状況を把握する機会であった。同時に,農展・商工展の大規模化は,政府による工芸振興策の全国化にほかならず,地方試験研究機関は地方での受け皿としての役割をなした。その実態は,地方試験研究機関における商工技師の実践に象徴されている。
  • 清水 忠男, 佐藤 公信, 権 寧徳
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 63-70
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    日本では,最近でこそ椅子の使用が一般化してきているが,生活の中では,いまだに畳仕上げの床の上に直接坐る平坐位姿勢が命脈を保っており,なかでも正坐姿勢は,日本の生活文化の基盤の一部を成すものと考えられている。そのような床に直接坐るさまざまな姿勢のとられ方の度合をアンケート手法によって調べてみると,各種の姿勢の中には,自分一人でくつろぐ場面,他人と同席するあらたまった場面など,状況の違いによって,とられ方の度合いが大きく異なるものが少なくなかった。また,姿勢の多くは,そのとられ方の度合いが性別や世代によって異なる傾向を示した。これらからわかることは,人間がある姿勢をとるとき,その理由は必ずしも生理的な快適性への希求によるばかりでなく,社会的・文化的な枠組みの影響を受けることが少なくないということである。それゆえ,平坐位姿勢に対応する家具や道具のデザインにあたっては,単に生理的な快適性を満たすばかりでなく,そのような社会的・文化的生物としての人間の行動や心理を考慮に入れる必要がある。
  • 黄 世輝, 田中 みなみ, 宮崎 清, 翁 徐得
    原稿種別: 本文
    1996 年 43 巻 4 号 p. 71-80
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本小論は,台湾中部の伝統的港町鹿港を対象として,歴史文化と共存する生活文化村づくりのあり方について検討したものである。現地調査ならびにアンケート調査を通して,1)地域資源と問題の発見,2)鹿港に抱く住民の印象と誇り,3)地域づくりや生活文化村づくりに対する意識などを抽出・検討した。その結果,以下の事項が明らかになった。1)鹿港は,近代化に取り残されたことで,伝統工芸や街並みなどの歴史的資産を多数残すことができた。しかし,その歴史的資産に対する再認識が必要となっている。2)住民は鹿港に対して誇りをもち,地域活動への意欲も高いが,地域づくり計画への主体的参加意識は薄い。3)工芸産業と観光業を鹿港の中心的産業に望むものが多いものの,生活工芸に対する重要性の認識が不足している。4)生活文化村の,「点在型」か「拠点型」かという建設形態以前の問題として,ソフト面の充実を図る必要がある。5)地域づくりの意識調査により,住民の志向性を四つの類型として分類することができた。
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