デザイン学研究
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43 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 豊泉 尚美
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 1-4
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    幼児教育の現場におけるデザインの教育的活動の意味とそのありかたを考察する, という研究テーマで, とくに「壁面構成」と呼ばれる作業をひとつのデザイン活動例としてとりあげる。保育現場で「デザイン」ということばを耳にする機会は現在ほとんどないが、幼児の遊びのなかにも「デザイン」の萌芽を多く認めることができる。保育者が今後保育空間のなかで, 子どもとモノ, モノとモノの望ましい関係づけを追及し, よりよい保育環境を創造するというデザインの概念をとり入れて, 「壁面構成」などの造型教育活動が行なわれることが望ましい, と提案する。また, このようなデザインの考え方はすでに改訂された「幼稚園教育要領」や「保育所保育要領」の「環境」と「表現」という新しい領域概念のなかに含まれていると考えられ, 今後幼児教育の場でデザイン活動を実践する上での指針として, おおいに参考になるものと思われる。
  • 岡崎 章
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 5-12
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    人の動作・姿勢に関するイメージ情報(静的・動的)を構築し, デザインの発想と検討過程で活用するデータベースシステムを構築することを目指した。第一段階として機器操作に関わる手の動きのイメージによる支援に視点を置き, 視覚・触覚・聴覚を用いることによって活用するデータべースを構築した。本研究は視触覚の部分における発想支援としての有効性を検証するものであり, 手操作のイメージ情報を静的な把持動作と動的な手指動作に分け, 今回は前者について行ったものである。実験は6枚の手操作の静止画像を見て2種類の機器デザインを被験者に行ってもらい, デザインスケッチと発想評価の内容から検討した。発想支援の評価は高く, 静的な把持動作に限定されない手指動作を考慮したデザインスケッチも表れた。このことにより提案する発想支援としてのデータベースシステムの有効性が確認できた。
  • 長沢 幸子
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 13-22
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文では, わが国におけるファッションイラストレーションの変遷について考察し, 以下のことを明らかにした。(1)今まで別々に論じられていた「抒情画」と「(狭義の)ファッションイラストレーション」の二つの流れを「(広義の)ファッションイラストレーション」の中に系統づけまとめた。(2)広義のファッションイラストレーションにおいて, 上記の二つの流れの他に, 被服製作に原点を見い出すことのできる菅沼金六から須貝一男・青木伊津子らへと連なる「基準線方式」による「スタイル画またはファッションデザイン画」の流れが存在することを位置づけ, 検証して重要性を指摘した。(3)上記の(1)と(2)の相互の関連を明らかにした。また全体の流れを三つに整理することを提案し, 相互関係について系統図を作成し, 提示した。その結果, 三つの流れはそれぞれに重要であり, 互いに関連を持ちながらわが国における「(広義の)ファッションイラストレーション」の世界を発展させることに寄与していることを明らかにした。
  • 宮崎 紀郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 23-30
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    今日, 新聞のカラー化が著しい。本研究は, 写真のカラー化とそのレイアウト位置の差異が, 新聞紙面イメージに及ぼす影響を明らかにし, 今後のカラー紙面デザインに対する指標を得ることを目的としている。5種類のレイアウト位置のカラー写真紙面と, それを白黒化した紙面との合計10種類をサンプルとして, SD法による官能評価実験を行った。実験は, 1992年, 40名の大学生を対象に行った。各サンプルのイメージを, 因子分析法により解析した。その結果は以下のようである。1)個性, 明朗性, 信頼性の3因子が抽出された。2)カラー写真を使用した紙面は, 白黒写真を使用した紙面より, 明朗かつ個性的であると評価される傾向が確認された。3)写真が紙面左にレイアウトされた紙面は, 個性的で新鮮な印象を与える傾向がみられた。4)カラー写真が紙面中央にレイアウトされた紙面は, 重厚で信頼感を与え, かつ明朗で親しみやすい印象を与えることが確認された。
  • 庄子 晃子
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 31-36
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ドイツの建築家ブルーノ・タウト(Bruno Tauto, 1880-1938)は, 1933年11月より翌1934年3月まで, 乞われて我が国の工芸産業の指導機関である商工省工芸指導所の顧問(嘱託)を務めた。タウトは最初の出会いである1933年9月の工芸指導所研究試作品展覧会の視察に基づく提案書の提出を皮切りに, 赴任直後から離任直前まで, 工芸指導所に対して熱心に提案や助言を重ねた。タウトが工芸指導所に提出した文書10編が岩波書店に残る。それらは, Vorsch1age(提案)6編, Berichte(報告)3編, Antwort(返答)1編に整理できる。それらの中でタウトは, 輸出振興を課題として欧米物のスケッチ的模倣的図案に終始している工芸指導所に対し, 伝統と現代の統合, すなわち日本の古来からの伝統(感覚, 形式, 材料, 技術)と西欧の近代精神・技術・生活との結合から, 日本独自の現代産業工芸の典型としての質の高い規範原型を創出して, 国内の工房や工場を指導していくことが工芸指導所の責務であり, 真に日本的なものは世界に通じるとする立場を貫いた。
  • 石村 真一
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 37-46
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    木材資源の枯渇化が心配される今日において, 木材を極めて有効に使用した桶・樽の造形文化が再考されることは, 木と人の共生という先進文明社会が直面している問題の解決につながる糸口になると思われる。本論はその第1報として, 我が国における桶の成立時期と初期形態について考察した。その結果次のような内容が明らかになった。従来桶と推定されていた容器の多くは, 縦方向に補強を施した曲物であった可能性が高い。我が国における桶の初見資料は『北野天神縁起弘安本』と推定される。桶は中国から伝来し, 少なくとも鎌倉中期以前に製作技術が成立している。そして畿内においては鎌倉後期に特権階級の間で普及した。桶の初期形態は, 白木で加飾性の少ないタイプであったことが確認された。
  • 石村 真一
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 47-56
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論は日本の桶・樽の造形文化に関する研究の第2報として, 鎌倉後期の絵画資料に描かれた中国風の桶を検証し, 我が国の桶文化が受けた中国大陸の影響を探ることを目的とするものである。検証の対象は『東征伝絵巻』, 『弘法大師伝絵巻』, 『大江山絵詞』という3種類の絵巻に限定し, 絵巻に描かれた桶をまず摘出した。続いて, 個々の桶を形態, 構造, 使用方法という要素から分類し, 中国の絵画資料, 民俗資料と比較検討し, 次のような事実を明らかにした。『東征伝絵巻』に関しては, 中国の桶文化を広く学んで描かれている。『弘法大師伝絵巻』に関しては, 特に運搬用桶の形態と機能について中国の桶文化を参考にしている。『大江山絵詞』に関しては, 部分的に中国の桶文化を取り入れて描いている。
  • 松岡 由幸, 原田 利宜
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 57-64
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    自動車開発におけるサイマルティーニアス・プロセスの導入は, 的確な設計解を短期間に求め, 開発期間の短縮や開発費の削減などを実現する方策として検討が進められており, さらなるサイマル化の推進のためには, そのボトルネック設計要素の設計方法の改善が必要となっている。本研究では, 自動車開発におけるサイマル化の推進を目的として, サイマル化要因の抽出とその構造の分析, サイマル化に関する主要な因子の抽出, ならびにサイマル化のボトルネック設計要素の抽出とその設計要素と因子との関係を解析した。その結果, 設計難易度や試作期間などの開発規模や, 外観と機能の従属性などに関する因子が抽出された。また, 外観や機能の従属性に関わるボトルネック設計要素として, ランプやシートなどが抽出され, それらのさらなるサイマル化のためには, 外観・機能設計の両者を定性的設計方法から定量的設計方法に切り替える必要性を述べ, 今後のサイマル化の方法を示した。
  • 目黒 秀明, 古川 貴雄, 清水 義雄
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 65-72
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文では, 筆圧を利用して3次元空間の座標値を決定する方法を提案し, 3次元図形処理におけるユーザ・インターフェースヘの応用についても述べる。提案方法では, 一般的な線画スケッチを描く時に投影面上の座標に加えて筆圧値を計測することにより奥行き情報を生成している。投影面上の2次元座標からは3次元空間内の座標を復元することはできないが, 筆圧値を用いて決定した奥行きから3次元座標を一意に決定できる。この座標位置を筆圧の変化に対応させて実時間で表示することにより, スケッチを描く際に行われている奥行きに関する思考過程を視覚化することを可能にしている。本方法を活用して, 線画スケッチを描くことによって多面体表現のソリッドモデルを入力する実験システムを作成し, 形状データの入力作業の容易さと有効性を確認した。
  • 黄 世輝, 牛井渕 展子, 宮崎 清, 陳 文標
    原稿種別: 本文
    1997 年 43 巻 5 号 p. 73-82
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 台湾埔里地域で行われてきた「新故郷運動」の背景, 始動, 挫折, 転機などの過程と住民意識を解明しながら, 地域づくりの基本的方法を考察することにある。踏査, アンケート調査と運動への参画を通して, 以下のことが明らかになった。(1)住民が自主的に組織した五つの研究会は埔里「新故郷運動」の柱になっている, (2)大多数の埔里住民にとって, 「新故郷運動」は「住民優先」「内部資源の利用」「自然・文化優先」「行政・企業・住民三者協同」の地域づくりである, (3)研究会が提起した課題の77.3%が住民の賛同を得られたが, 課題への参加意志は30%に満たない, (4)アンケート回答者の志向は, 「地場産業の振興」「人情・自然・文化の豊かさ」「住民主導の地域づくり」「外向けの発展」など, 傾向の異なる四つのグループにわかれる, (5)住民が地域づくりを主導すべきと考えるグループは少数派である。
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