デザイン学研究
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44 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 車 政弘
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 1-10
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    シーサンパンナの住居は高床式住居に代表され, ピロティ, 階段, 前廊, バルコニー, 接客空間と居間としての広間, 調理・食事空間の炉端と目隠し壁で仕切る寝室で構成される。調理は火塘を中心に行われる。特徴的な調理用具は蒸篭であり, 食器戸棚が普及している。日常の食事空間は調理空間に付随する空間で重視されず, 膳は毎食後片付けられる。典型的な食卓は竹の編組の丸い共用膳で, 男はユカ坐, 女は低いコシカケ坐で使用し, 接客用と日常用の2台を保有する場合がある。漢族文化の影響と考えられる甲板正方形の木製食卓(高さ30〜50cm)は男女とも低いコシカケ坐で使用する。供物膳が別に保有されることがあり竹の粗い編組品である。住居全体に竹から木へ変化し, 屋根材も茅から素焼き瓦となり, 電気, 水道などの普及と漢族の影響が明らかであり, 調理・食事様式にも変化の兆しがある。
  • 宮木 慧子
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 11-20
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    近世以降, 陶磁器の流通活動における包装は, 伝統的にワラを用いた「ワラの包装」が全国的に行われていた。「ワラの包装」は段ボール包装の開発で戦後衰退したが, 段ボールの原料である木材資源そのものが枯渇化する今日, 伝統的に継承されてきた「ワラの包装」を新たな視点で再考していく必要もある。本研究はその第1報として, 有田・伊万里地区の包装加工システムと形態を考察し, 次のような内容を明らかにした。1)造形に関しては, 「輪巻き」と「小口切り」という2タイプに大別されるが, 特に「輪巻き」の造形に, 有田焼の威信を象徴する, 誇張ともとれる強調された意匠性が確認された。2)近世以降, ワラ荷造りは専門職である荷師によって行われた。保護機能を重視した美的なワラ荷造りの形態特性は, 伊万里を拠点に, 陸上運搬はもとより海上輸送における長距離, 大量輸送用包装として発達したと考えられる。
  • 金 ドンハン, 北島 宗雄, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 21-30
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    使い勝手よりも印象が重視される, いわゆる「感性指向製品」のデザインにおいては, デザイナーが製品を表現しようとしたイメージと, その製品に対するユーザの感性的評価とのズレが問題の1つに挙げられている。本論文では, スタイリング段階においてそのズレを解消するのに利用できるツールとして, デザイナーが, デザイナー自身及びユーザの感性的評価をインタラクティブに計測したり, また, その結果のフィードバックを直ちに受けられるような, デザイン支援システムを提案した。計測された感性的評価データは, 筆者らが提案している感性的評価に関する認知モデル「二重マッピングモデル」に基づいて解析され, デザイナーとユーザとの評価のズレが定量化される。以上の機能を統合したプロトタイプシステムをビジュアル・オーサリング・ツールを用いて開発した。システムは, 感性的評価の計測ユニットとズレの演算・可視化ユニットから構成され, 操作の一貫性を実現するために統一的なインタフェースの下で構築されている。
  • 金本 大康, 上原 勝
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 31-36
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    フイルム素材の利用方法には, 二次元的な利用方法と三次元的な利用方法とがある。フイルム素材を三次元的に利用するには, 高強度をもつ構造化が必要となる。三次元化には, 既存のハニカム構造とは異なる, 新たな構造体も考えられる。本研究は, フイルム素材から巻き重ねて製作するフイルム巻きパイプに注目し, 立体物や構造体としての可能性とその力学的特性について検討することが目的である。具体的には, フイルム巻きパイプ単独の圧縮特性を把握する必要から, 単独パイプの圧縮強度実験を行なった。その結果, 以下のことが明らかとなった。1)円柱パイプは, 角柱パイプと比較して荷重が均一に負荷することから有効である。2)パイプ巻数の増加に伴って, 弾性率はわずかに低下するが最大圧縮荷重は上昇する。3)単独パイプを利用するには, 肉厚比が小さいパイプが有効である。
  • 古川 貴雄, 佐伯 貴利, 清水 義雄, 目黒 秀明
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 37-44
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文では, エンドユーザーの嗜好を反映した衣服のデザインを可能にする対話型アパレルデザインシステムを提案し, GUIを用いた対話的なアパレルCADシステムを実現する上で不可欠な着装シミュレーション手法を示す。まず, 仮想環境での着装シミュレーションを可能にするために, システムを(1)人体モデル, (2)衣服モデル, (3)環境モデルから構成する。布のように柔軟な素材で作られている衣服は変形するので, 一つの衣服でも様々な形態となる。そこで, 人体の動きに応じて衣服を変形させるための, 人体の骨格運動に基づく衣服形状生成法を提案する。次に, 運動する人体モデルと変形する衣服モデルの統合して動的な着装シミュレーションを実現する方法について述べる。最終的に, 環境モデルを動的な着装シミュレーションに追加して, 仮想環境における3次元アパレルCADシステムのための着装シミュレーションシステムを構築する。
  • 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 45-52
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論説は, 発想支援研究のこれまでの動向を把握し, そこから抽出される問題点について考察することにより, デザインの領域における今後の発想支援研究の一助とすることを目的とする。本論説では, まず発想支援研究の流れを1970年代と80年代以降の2つに分け, 前者における発想法の諸研究の中で, 今日の発想支援システム研究に理論的な基礎を与えたと思われる, 発想過程のモデル化に関する研究を取り上げた。ついで, 80年代以降の発想支援システム研究の動向を探り, さらにその中で最近のデザインの領域における発想支援システム研究の動向を探った。最後に, これら発想支援システム研究の動向における問題点の抽出を行い, 今後の課題を明らかにした。この中で, コンピュータ技術の急速な進展による新しい技術や方法の適用ばかりでなく, 人間の発想のメカニズムを基礎的な実験や最近の脳の研究成果から明らかにしていく方向が必要であり, 同時に発想支援システムの客観的評価方法を案出する必要もあることを指摘した。
  • 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 53-60
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論説においては, まず支援概念の定義を行ない, 次に支援の観点からデザインを見るために分業という視点からそれを考察した。まず, 社会的分業の視点から見た「デザインによる支援」では, 次のような支援のあリ方を挙げた。人工物を生理学的に親密化するための支援, 認知科学的に親密化するための支援, 社会的に親密化するための支援, そして, 使用者の心理的な満足感の達成を支援することである。生産単位内分業の視点から見た場合は, デザイン行為を被支援の立場からとらえ, 創造的思考を支援する発散的思考支援, 論理的判断を支援する収束的思考支援を挙げた。さらに, 社会的分業の視点からデザイナーの立場を考えた場合, 現代社会の生産と消費のメカニズムが内包する矛盾ゆえに, デザイナーの支援行為が必ずしも, 良い結果を生んではいないことを指摘し, その本質的原因を挙げるとともに, その中で行ないうるデザイナーの役割について示唆した。
  • 釜堀 文孝
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 61-70
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は地域の産業が抱える問題点を分析し, 製品開発の本質に迫ろうとするものである。本報では佐賀県の製造業を対象として行ったアンケート調査をもとに地域の製造業の抱える問題点を分析し, (1)企業は業種や企業規模の違いによリ製品開発に異なった意識を有している, (2)重要とされているのは製品の品質, 価格, 経営者のセンスであることがわかった。さらに困子分析によって5因子(マネージメント技術, 作る技術, デザイン技術, 品質, コストパフォーマンス)を抽出し, 企業のタイプを「作る技術重視型」, 「製品開発重視型」, 「製品開発無関心型」, 「デザイン重視型」, 「マネージメント重視型」の5タイプに分類した。その結果, (1)製品開発に対する考え方は, 企業規模よりも業種による違いが大きい, (2)医療品業界, 陶磁器・焼物業界のタイプ形成の要因には産業の成熟度が関係していると考えられることがわかった。
  • 郭 明姫
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 6 号 p. 71-80
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は韓国の看板の歴史的な研究を通して, 看板がどのような形をし, どのような内容が書かれ, どのように使われて来たか, その変遷過程を明らかにしようとするものである。さらに, デザインされた看板そのものの形態や特徴を分析して, 日本と中国の看板との比較を行い, それぞれの国の生活文化や風土, 習慣を含めたデザイン思想まで探ることを最終的な目的とする。本論文は, 高麗時代(901年〜1392年)から李朝時代(1392〜1876年)末期まで看板の成立からその変容を文献をもとに観察・分析を行った。その結果, 韓国の歴史的な看板は, 古くから政府によって設置・管理されていた国家次元での商業建築に見られ, そこに掛けられた標識は当時の官設建物に見られる建物標識と脈絡を共にしたと推測できた。韓国の歴史的な看板は主に『文字看板』であり, そこに書かれた文字は時代によって意味が異なっており, 高麗時代には商品や業種を表したのではなく, 店主の儒教的精神世界や経営信条を表わし, 李朝時代に入ってようやく商品名が看板に書かれるようになっことが明らかになった。
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