デザイン学研究
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44 巻, 2 号
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  • 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    近年、コストダウンや設計期間の短縮などの要求が一層強まり、標準化の必要性が高まってきた。その一方で、多様化するニーズは標準化の制約条件になっている。そこで、本研究では、こうした条件下で製品の構成要素の標準化とそれを織り込んだプロセス化の方法の検討を試みた。まず、自動車の設計要素を例にとって判別分析を行い、標準化レベルを左右している設計要素の特性を判別式により明らかにした。次に、標準化されていない設計要素の代表例としてシートをとりあげ、先の判別式にシートの構成要素を当てはめたところ、標準化されるべき構成要素として、クッションフレームなどが抽出された。また、クラスター分析などを利用した考察の結果、レイアウト設計が構成要素の標準化に有効であることを見い出した。一例としてバック・クッションフレームなどに対してレイアウト設計を試み、外観や機能に影響を与えない標準化方法を示すとともに、階層構造グラフを用いて、それにより標準化された構成要素を設計プロセスに組み込む方法についても考察した。
  • 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 9-18
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    新しい構造を有する製品の設計の多くは、既存の構造に変更を加える形で行われている。この変更は単に要求に対して直接的に関わるものだけでなく、その影響による2次的、3次的な間接的関連変更の必要性を含む。このような関連変更を素早く的確に把握することは難しく、その方法の構築は、新構造を有する製品の設計の改善のために期待されている。本研究では、設計者が新製品の構想を有し、ユーザー要求から直接的に影響を受ける製品特性や構成要素を把握している場合において、その2次的、3次的な間接的影響を明確にし、それを含んだ設計プロセスを構築する方法として、QFDと階層構造グラフを用いた方法を提示した。また、その方法の有効性を確認するために、新構造として設計された助手席専用シートを事例にして、机上での適用を試行した。その結果、実際に行われた設計において発生した設計変更を防止可能とする的確なプロセスの構築が可能であることが判り、今回提示した方法の有効性を示した。
  • 比嘉 明子, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 19-28
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    昭和戦前期の地方試験研究機関の研究活動は、その研究項目の傾向から、「染織工業」「窯業」「其の他の工業」などの軽工業に重点が置かれていたことが明らかになった。特に、「其の他の工業」は、その地方の在来の技術を基礎にした工芸産業を対象にした試作・応用研究が中心であった。このうち、漆工に関する割合が全体の約3割を占めたが、これは当時、商工省が積極的に推進した漆器の輸出振興と連動したと考えられる。地方試験研究機関における漆器の研究は、当時指摘されていた輸出漆器の欠点を補うことを目的とし、製作工程の合理化や新材料の応用研究を中心に行なわれた。その試作品のデザインは、いわゆる「輸出向」であり、国際化を目指し、従来の漆器の「古イ衣」なるイメージを払拭しようとするものでもあった。また、それは単なる「雑貨」であった輸出漆器からの脱却を図ろうとする努力の結果でもあった。この動きは「地方のデザイン活動」のはじまりともいえる。しかし、その姿勢は、あくまで輸出先の嗜好への適合化に腐心し政府による指導を待つものであり、独自のデザイン力としては未熟であった。
  • 朴 峯寛, 石川 弘, 杉山 和雄, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 29-38
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    これまでの消費者の商品に対する「態度」の把握では、主として人口統計学的変数群の分析や「ライフスタイル」によるセグメントなどをよりどころにしている。本研究では、この消費者の「態度」を家電製品を対象にして4つの観点により分析し、どの観点が的確であるかを明らかにした。本論文では、まず予備調査を行い、韓日両国の消費者に好みの違いが確かに存在することを明らかにした。さらに消費者の「態度」を説明するために取り上げられてきた「デモグラフィック」「ライフスタイル」、新たな観点として「エゴグラム」「G感性」の計4つの分析方法を取り上げ、その結果を多変量解析法を用いて比較した。その結果、4つの観点のどれかが強く効いているのではなく、それぞれが少しずつ関与していることが示唆された。
  • 尹 亨建
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 39-48
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、現代消費財の造形に対して韓国と日本の若者のイメージを比較分析したものである。分析の結果以下の点が明らかになった。韓国の若い男性と女性のイメージ構造は、「精緻-単純」「実質-非実質」「軽-重」の3因子で説明可能である。日本の若い男性のイメージ構造は、「軽-重」「地味-派手」「優美-野暮」の3因子で説明可能である。日本の若い女性のイメージ構造は、「地味-派手」「軽-重」「優美-野暮」の3因子で説明可能である。韓国は、男女が同一なイメージ構造を持っている。それに対して、日本は男女が相違するイメージ構造を持っている。これは、性別によって重視する造形要素が違うからである。韓国の若い男女の消費財のイメージは、消費財の表面の装飾要素に大きく反応している。また、日本の若い女性も現代消費財の表面の装飾要素に大きく反応している。韓国の若い男女と日本の若い女性は、認知レベルで消費財の造形のイメージを把握している。しかし、日本の若い男性は、価値観レベルで現代消費財の造形イメージを把握している。
  • 萩原 祐志
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    筆者はこれまでに図形を出力することによりデザイン支援を行うシステムを作成した。しかし、このシステムが出力する図形は、デザイナの描くスケッチと比較するとまだまだ稚拙なものである。そのため、このシステムはデザイナがスケッチを作成する時に発想を刺激するための能力は有しているが、デザイン仕様を決定するための能力までも有しているとは言えない。そこで、この問題を解決するために、造形処理を表す言葉を出力することによりデザイン支援を行うシステムを作成した。そして、2つのシステムを統合的に利用した結果、スケッチの描画が以前より容易になることを確認した。なお、今回作成したシステムには、デザインに関する知識の流行性と曖昧性に対応するために、ファジィ推論を適用し、システムの妥当性を高めることが出来た。
  • 堀田 明裕
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 57-66
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論は大学におけるデザイン教育の問題の分析と、今後の方向に関する提案を目的としている。戦後我が国に導入されたデザインの考え方は、経済や技術、あるいは生活スタイルなどの影響を受けて大きく変化してきた。この変化に対するデザイン教育の問題として、デザイン教育の検討体制、技術と技能、美的評価、教育におけるコンピュータ使用の位置づけ、教育と研究の関係、大学の基本的役割について分析した。これらに基づいて、今後のデザイン教育の目標を構想能力と造形能力の獲得とし、その方法として実技教育と知識教育の融合とした。また、教員の役割として、各自の教育上の特色を持つこと、教育技術の向上、教員間のデザイン評価に関する討論と学生への公開、研究作業への学生の参加を提案した。更に、今後のデザイン教育の共通基盤構築の視点から、デザインにおける美的評価の論理や教科書作成の必要性を提案した。
  • 釜堀 文孝
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    地場産業はそれぞれの地域の技術や材料の集積から生まれ発展してきた経緯から、多くの企業形態は中小企業である。そのため地域の産業を構成する各産業ごとの大企業の割合は極めて低く、裏を返せば中小企業は地域産業の重要な構成要因となっており、地元直結型の産業を形成している。本研究は、それらの要因及び問題点を分析し、地域産業の持つ製品開発の問題を明らかにし、その本質に迫ろうとするものである。本報では佐賀県の家具産業のアンケート調査を基に問題点の分析を行い、さらに、因子分析によって企業の特性による3因子(価格、企画力、品質)を抽出し、企業をコスト志向型、企画志向型、トータル志向型、志向未確定型の4タイプに分類した。その結果、(1)家具産業は未だ将来に対する明確な方向性を見いだせないでいること。(2)企業の持つ問題意識は企業規模によって差異が見られること。(3)4つのタイプに属する企業は、将来に対し異なった方向性を有することが分かった。
  • 松野 直行
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    今回の調査対象地域であるイタリアのブリアンツァは、ミラノの北部に位置する地域である。この地域の家具産業は、伝統的職人による小規模経営が中心であり、古くからミラノやコモを消費地として発展してきた地域とされている。今回の調査の目的は、伝統的技術をいかした生産方法と、小規模経営におけるデザイン開発、及び生産方法を探ることである。調査は商品構成の異なる家具メーカー3社を対象とした。その結果、各社とも生産される商品や、対象とする市場はそれぞれ異なるが、生産方法(特に外注企業の利用方法)にそれぞれ特徴があった。また、それらは伝統技術の保存や、新しい技術導入をともなうデザイン開発など、各企業の経営方針を明確に反映したものであった。また、各社とも自社で生産をすべてまかなうのではなく、自社の特徴を有しながら、独自の技術を有する外部企業を利用し、製品やデザインに対応してその企業連関により生産工程を変化させており、個性的な製品を生み出す背景としての企業間ネットワークの多様性が明らかになった。
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