韓国の博物館は, 日本の植民統治下に設立された中央型博物館, および, 文化財の保存を求める市民運動によって設立された地方型博物館が両立した時期を経て, 国の文化政策によって, その運営と活動が管理された国立博物館体制へと転換してきた。この体制の転換は, 近代史の混乱期のなかで, 文化財の保存と管理を確固とする意図, 民族文化の振興と文化的主体性の回復による国民の統合という政策的意図から始められた。このような歴史・社会的背景のなかで, 今日, 韓国の博物館が解決しなければならない課題は, 博物館の地域的遍在化と中央政府中心の設立・運営体系の改善, 歴史系博物館設立の偏重化解消, 学芸員の養成制度と養成教育機関の設置, 博物館学の体系確立, 博物館法の整備, 地域社会とのかかわりの増進, これら6点である。また, 今日の韓国の博物館において, 何よりも重要なことは, 現代の博物館の多義的な対社会的機能を明確に定立し, 博物館が公共的価値をもつ社会的機関としてその責任を果たす, 確固とした意志である。
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