デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
44 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 渡辺 誠, 篠原 傑, 古谷 繁
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 1-10
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論は, レンジフードのデザインを支援するモデルの構築に関するものである。レンジフードは, デザインの自由度が高い商品である。しかし一方で, システムキッチンヘの適合という問題を常に抱えている。そのため, デザインプロセスにおいては, レンジフードのデザインのシステムキッチンヘの適合度をどのように求めるかが課題となっている。そこで本論では, まずレンジフードとシステムキッチンそれぞれの商品構成の構造を明らかにした。レンジフードは, デザインの類似性により構造化を行った。一方, システムキッチンについては, 仕様による構造化を行った。次に, 両者の構造の関係にニューラルネットワークモデルを導入し, レンジフードのシステムキッチンヘの適合を推論するシステムを構築した。このシステムにより, デザインプロセスの途中段階で, レンジフードのシステムキッチンヘの適合をシミュレートでき, デザインを支援する方法が確立できた。
  • 朴 燦一, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 11-20
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    韓国の博物館は, 日本の植民統治下に設立された中央型博物館, および, 文化財の保存を求める市民運動によって設立された地方型博物館が両立した時期を経て, 国の文化政策によって, その運営と活動が管理された国立博物館体制へと転換してきた。この体制の転換は, 近代史の混乱期のなかで, 文化財の保存と管理を確固とする意図, 民族文化の振興と文化的主体性の回復による国民の統合という政策的意図から始められた。このような歴史・社会的背景のなかで, 今日, 韓国の博物館が解決しなければならない課題は, 博物館の地域的遍在化と中央政府中心の設立・運営体系の改善, 歴史系博物館設立の偏重化解消, 学芸員の養成制度と養成教育機関の設置, 博物館学の体系確立, 博物館法の整備, 地域社会とのかかわりの増進, これら6点である。また, 今日の韓国の博物館において, 何よりも重要なことは, 現代の博物館の多義的な対社会的機能を明確に定立し, 博物館が公共的価値をもつ社会的機関としてその責任を果たす, 確固とした意志である。
  • 吉岡 徹, 市原 茂
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 21-26
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, Local OrientationとGlobal Orientationで構成される多義的な縞パターンを検査刺激に用いることにより, マッカロー効果が刺激のLocal Orientationによって決定されるのか, それともGlobal Orientationによって決定されるのかをみた。結果は, Local Orientationの方が優位であったが, 順応刺激の空間周波数が, 検査刺激のglobal featureの空間周波数と一致したときには, Global Orientation優位の反応も生じた。また, 検査刺激を強くぼかすと, Global Orientation優位な反応が生じやすくなった。以上の結果は, マッカロー効果が視覚系の初期段階の特徴抽出機構だけで決まるのではなく, より高次の処理機構の影響も受けることを示すものといえる。
  • 田中 みなみ
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 27-36
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は, 手漉きの藁紙に対するイメージ評価について報告するものである。藁紙に対する加飾材料の種類と量を変化させ, そのイメージ評価に対する影響を検討した。また, 観察を行う際の条件については, 通常の反射光で観察した場合と, 光を透過させた場合と, 通常の反射光の元で手にとって触覚を観察した場合の3条件の元で実験を行った。解析の結果, 次の知見を得た。1)因子分析の結果, 「穏やかな-いきいきとした」「快適な-不快な」「温かい-冷たい」の3因子を得た。2)分散分析の結果, 加飾材料の混入量がイメージに与える影響との関係はリニアであるとはいえない。3)観察状況の違いは, 観察したサンプルのイメージに大きく影響を与える。光を透過させた場合には, 紙の個々の特徴が失われる危険性があるといえる。一方で, 触覚は温かく, いきいきとしたイメージの創出に効果的であることが明らかになった。
  • 赤松 明
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 37-42
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本報は, 紳士服専門店ファサードを印象づけると考えられる色彩をとりあげ, 視覚的イメージとの関係について検討した。そのために, 色彩とイメージとの関係を定量的に取り扱えるよう均等知覚色空間のひとつである(L^*a^*b^*)表色系でファサードの色彩を画像データに変換し, 色数, 色の種類, 色の面積比及び色の分布を抽出した。その結果, 色彩を画像データとして扱うことによってファサードを定量的に表現できた。また, 色彩的特徴量としての構成色数, 色相偏差, 明度偏差, 色度偏差がイメージに関係し, 次のことが明らかになった。1)構成色数を多くし, 色相偏差及び色度偏差を大きくするにともない活動性のイメージは増加する傾向が認められた。2)評価性のイメージのあるファサードは明度偏差が大きく, 色相偏差及び色度偏差は小さく構成色数が少ないという傾向が認められた。
  • 久保 光徳, 寺内 文雄, 青木 弘行, 渡辺 智也, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 43-50
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    一般的な最適設計手法により創出される形状が, 経験則や既存データに基づいた初期形状に対する局所的な形状変更の域に留まっていることの問題点に着目し, 初期形状にとらわれない形状設計手法の可能性についての基礎的検討を行った。有限要素解析に従って, 任意の柔らかさを有する正方形状の二次元テーブルを設定し, その境界の影響が比較的少ないテーブル中央部に, 拘束条件と荷重条件のみを設定した。そして, 塑性理論に基礎を置く生長硬化理論に従って形状生成を行った。本形状生成過程においては, 骨折部近傍に見られる骨の生長と縮退を数値的に模倣するために, 材料非線形解析による繰り返し計算のサイクル数を寿命とする淘汰要素を提案するとともに, 塑性ヒンジ効果を考慮した応力-ひずみ関係式を提案した。最後に, 本形状生成手法が, 初期形状を必要とせず, 力学的な妥当性を維持しつつも多様な形状を創出することの可能性を有している手法であることを示唆した。
  • 久保 光徳, 寺内 文雄, 青木 弘行, 小林 耕治, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 51-58
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文は, 枝付け根付近に見られる自己補強形態であるあて部の生物学的適応挙動に着目し, この適応挙動を再現する有限要素解析シミュレーションを用いることによって力学的適応形状の生成を目標としたものである。本形状生成シミュレーションでは, 力学的適応性を支配する応力-ひずみ関係式を[弾性領域], [塑性領域], [生長領域]の三領域にわたる連続的な応力-ひずみ関係曲線として定義した。これにより, まず初期形状の一部が弾性状態から塑性状態に変移し, その後にその塑性の進行度合いに応じて部分的に再硬化する, つまり生長状態となる数値的適応挙動を再現した。スパナ形状をケーススタディとして, 最終的に再硬化したすべての部分を生成形状と定義し, その形状に対する光弾性実験および破断試験による検討を行った。これらの結果より, 既存アプリケーションが有する材料非線形解析機能を活かすことで生物学的適応挙動を模倣した形状生成が可能であることを示唆できた。
  • 長井 崇, 高山 英樹, 山手 正彦, 坂元 愛史
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 59-68
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ロングライフ商品のデザイン特性を明らかにするために, ロングライフデザイン賞商品と伝統的工芸品および一般商品をとりあげ, 商品の視覚イメージを評価するイメージ調査および商品の機能を評価する現物調査を行った。イメージ調査では, イメージを構成している因子として, 審美性, 簡潔性および重厚性の3因子を抽出した。ロングライフデザイン賞商品は審美性, 簡潔性に, 伝統的工芸品は重厚性において優れた評価を示す傾向があることを明らかにした。現物調査では, 商品の機能を機能性, 使用感および愛着感の3段階に分け調査を行った。その結果, イメージの上では異なった傾向を示したロングライフデザイン賞商品と伝統的工芸品は一般商品と比較して, ともに使用感, 愛着感において優れた評価を示す傾向があり, ロングライフ商品には人の感情に触れる要素が特に重要であることを明らかにした。
  • 朴 燦一, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 44 巻 5 号 p. 69-78
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    日本の近代期の地域博物館は, 地域自体の特性と地域住民の要求による形成というより, 国の政策を基盤とする中央大規模博物館の活動の地方への波及による形成の例が多く, 地域の博物館が地域, あるいは地域の住民の身近な存在ではなかった。また, 戦後は, 急激な社会的変化のなかで, 地域社会に定着しようとする努力はあるものの, 観光目的, 地域社会という問題意識の希薄, 行政主導の施設優先の設立傾向など, さまざまな問題点を含んできた。このようなさまざまな問題点のなかで, 今日, 地域博物館は, 戦後の「経済成長優位の政策」がもたらした多様な矛盾点に対する反発感から「地域」という概念が再認識され, 地域の再構築が求められている社会的な情勢を背景として, 新しい「志向性」を模索している。このような新しい志向性は, 地域の住民が単なる博物館から知識を学ぶ受け身的存在でなく, 地域社会のなかで地域住民と博物館が連帯し, 新しい地域文化を発信する真の地域博物館活動の模索ともいえる。
feedback
Top