デザイン学研究
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45 巻, 3 号
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  • 田 慕玲, 杉山 和雄, 釜池 光夫, 渡辺 誠, シャクルトン ジョン
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は自動車におけるデザイン支援を目指し, イメージ目標に適する多様化解を探索する方法を目標とするものである。本報では, 筆者らが提出した遺伝的アルゴリズムによる製品形態の逆推論方法を改良し, 集団進化環境という概念を提案して, その概念による多様の個体を持つ集団進化アルゴリズムの構築を試みた。提案する方法は, 最適化の目標を外部環境とし, 集団個体同士の間の関係を内部環境として, 両方の影響により集団個体が進化させる。その結果, 過早収束の問題がある程度に改善され, 多様化の解を得ることができた。実験の結果より, 提案方法の有効性が判明できた。
  • 時長 逸子, 荒生 薫
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 11-18
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    色の世界を表わすために我々が用いるのは, 民族固有の言語による表現と, 色相, 明度, 彩度といった専門用語によってシステマチックに構成された色空間としての表現とがある。後者はカラーオーダーと呼ばれており, かなり早い時期に二次元だけでは表現できないことが判っていた。そのため様々な三次元的展開を行うことが試みられてきたのである。実試料によって色を系統的に表すことができるようになると, 色の世界はより綿密に構築されるようになっていった。カラーオーダーシステムの概念はこのような背景から生まれ, 実試料をシステムに従って空間的に配置して表すカラーアトラスが開発された。アトラスの存在は, 我々にそのシステムの理解を早めるという点で, 現在では必要不可欠な要素となっている。このため, NCSにはアトラスに類似したアプリケーションが存在する。カラーオーダーがどのようにビジュアライズされ, どのような構築概念をふまえて, 現在のシステム化に至ったかを考察した。
  • 近藤 祐一郎, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 19-26
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    稲作農村地域におけるエコロジカル・システムの再構築を目的として, 青森県稲垣村をケーススタディとした水質踏査やヒアリング調査, 文献調査などを実施した。調査の結果, 稲垣村には藁や籾殻の未活用, 水質汚染などの問題が存在する一方, 河川の自浄作用や, 環境保全運動の団体などが存在することを得た。そこで, これらの知見に基づき, 村で稼動している産業システムに則ったエコロジカル・システムを提案した。このシステムは, まず「籾殻」を炭化して「籾殻燻炭」を製造し, 「水質浄化材」として使用する。使用後は「堆肥」に再利用し, 「大地」に還元することによって次の「稲」が生まれ, 藁や籾殻とともに安全で質の高い米を収穫するというものである。さらに, 量的シミュレーションの結果, 籾殻燻炭の水質浄化材への利用が可能であること, さまざまな先行研究から, 本システムは再構築の可能性があることを得た。
  • 近藤 祐一郎, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 27-36
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    稲作農村地域におけるエコロジカル・システムの再構築を目的に, 青森県稲垣村をケーススタディとして, 住民の環境に対する意識調査を行った。住民の意見を把握するにあたり, 村内全ての世帯を対象に1403通の書面形式アンケートを配布し, 665件の有効回答を得た。アンケートでは, 回答者の属性, 家庭での水質保全, 生活排水の処理状況, 村内の水質と環境, 今後の環境保全活動, に関する五つの項目を主に聴集した。アンケートの分析から, エコロジカル・システムの再構築のためには, 以下の5項目の方向性が必要であることを得た。1)主婦を中心とした環境保全活動の必要生 2)台所ゴミの再資源化システムの必要生 3)身近な環境に関心をもつことの必要生 4)地域性を活かした家庭での水質保全法の必要生 5)村が一体となった環境保全活動の必要性
  • 近藤 祐一郎, 青木 弘行, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 37-44
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は籾殻の炭化法を変化させることによって得られる性状の変化を確認し, それに基づいて稲作農村地域における水質浄化材などへの有効利活用法について探求したものである。実験では, 熱重量測定実験, 比表面積測定実験, 細孔分布測定実験を行い, 以下の知見を得た。1)籾殻燻炭は, 活性炭と比較して炭素分は少ない反面, 灰分(ミネラル分)は多い。しかし, 稲作農村地域では排水処理材の他にもさまざまな応用・展開が可能であり, 十分に利用価値のある資源である。 2)野焼き法で製造した籾殻燻炭は単位価格あたりに対する比表面積が高く, 活性炭や木炭と比べて経済的である。 3)被吸着物質に応じた細孔径を有する籾殻燻炭を, 炭化条件を変化させることにより製造することができる。 4)稲作農村地域では生活雑排水が水質汚染源であり, 野焼き法と320℃, 520℃で炭化した3種類の籾殻の併用が最も効果的である。
  • 近藤 祐一郎, 長瀬 公秀, 青木 弘行, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 45-52
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    青森県稲垣村をケーススタディとして, 籾殻燻炭を用いた生活排水路の水質浄化実験を行った。実験は中期測定(朝8時と夕4時の1日2回, 10日間連続して測定)と, 短期測定(朝6時から夜10時まで2時間毎に測定)を行った。そして, 籾殻燻炭を設置した上流と下流の水質に対して, 水素イオン指数, 導電率, 濁度, 溶存酸素, 水温, 水深, 流速を測定した。実験の結果, 以下の知見を得た。1)籾殻燻炭を通過した排水は, 魚類が繁殖可能な値まで水素イオン指数が上昇し, 稲が生長可能な値まで溶存酸素が増加することを確認した。 2)籾殻燻炭を設置した区間内で, 従来まで確認することのできなかった水棲生物を確認した。これは, 指標生物学的に排水路の水質が浄化されたと判断することができる。 3)水質浄化活動を住民が目に見える形で行うことによって, 環境美化に発展することを確認した。
  • 坂本 久子, 川上 秀人, 松岡 高弘
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 53-62
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は, 19世紀後半のアメリカでの熱狂的日本流行のはじまりといわれるフィラデルフィア万国博覧会(1876年)の日本の出品物について明らかにするため, 本館における日本の展示を, 今日に残る写真をもとにして考察したものである。その結果, 「米国博覧会報告書 日本出品目録 貮」に付図された「米国費府博覧会本館内日本列品区畫図」は, 写真に見える範囲において, 出品物の配置, 出品物名, 出品人名を, ほぼ正確に伝えていることが分かった。このことにより, 部分的ではあるが, 出品物と会場構成との関係が明らかになり, それとともに, 一部の写真の出品物について類推できた。また, 写真と類似の挿絵を掲載した当時の出版物の記述内容や出品目録の記述内容を考察することにより, アメリカの人々の日本の出品物への受け止め方, アメリカでのアール・ヌーヴォーとの関連, そして, ウィーン万国博覧会(1873年)との関連が明らかになった。
  • 原田 利宣, 森山 真光, 吉本 富士市
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 63-70
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    デザイナーはある工業製品の形態を造形する際, その形態的意味を表現するために, "文字"に対応する形の基礎となる「視覚言語」を組み合わせ, "文"に対応する形態を作り出している。しかし, 工業製品における曲線(面)創成時の視覚言語に関する研究はほとんどなされていないのが現状である。そのため, 曲面設計する際に, 未だ曲線を一本ずつCADシステム上で作成するなど極めて非効率でかつ非人間的な方法が主流である。そこで, 本研究では, 現行CADシステムにおける曲線創成・変形方法の問題点を見いだすとともに, それを解決するための視覚言語の創出, およびそれらを用いた曲線創成システムの開発を行うことを目的とした。さらに, 開発したシステムを用いてシミュレーションを行った。その結果, 従来のCADシステムにあったデザイナー(ヒト)の能力を越えた曲線の通過点列指示や曲率制御などが必要なくなり, 極めて感覚にあった操作により曲線を得ることが可能となった。
  • 陳 郁佳, 野口 薫
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 3 号 p. 71-80
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    知覚・認知心理学的視点から, 道路環境におけるサインの視覚的伝達効果を検討した。まず, サイン認知の前提条件として, 人間の視知覚特性を示した。次いで, 台北のサイン環境について基礎調査を行い, サインの効果は, そのデザインのみならず, 環境的・文化的要因によって規定されることを明らかにした。さらに, 台北と千葉における道路標識の現状について比較し, それぞれの道路標識に対するドライバーの意見を認知的基準にしたがって分類した。最後に, 台湾留学生と日本人学生を被験者として, 二地域の道路標識に対する認知実験を行った。その結果, 標識に含まれる情報数が増えると, 標識の検出率と正答率は低下して, また情報数が同じであっても, 情報の種類や視覚ノイズによって影響されることを示した。さらに, 道路標識の表現形式が異なる地域からの被験者群の比較から, 文化的要因がサイン情報の認知に影響することを確認した。
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