デザイン学研究
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45 巻, 5 号
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  • 石割 伸一
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 1-6
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    パターン柄を持つ図案を開発するコンピュータ上のアルゴリズムを提案する。このパターン柄は, アルゴリズムの中の拡張された力学系により計算されたマトリックスから作られる。この拡張された力学系は, 擬2次元的な時間構造をもつが, 内部に2つの方程式を持っている。これらの方程式は, 1次元の非平衡状態を持っている振動子から構成されていて, それぞれの時間軸上で類似の数式的形式をもっている。この行列で示されている2次元的な時間発展は, その揺らぎの効果によりエネルギーの流入と流出とがいつもバランスがとれている。この方程式が, 1次元の非平衡状態を記述している限り, 拡張された力学系の2次元的な時間遷移は安定していて, また, それ故, 揺らぎパターン柄を持つ図案開発に利用することができる。
  • 永田 喬
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 7-12
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    著者は3次元デザインのために通常の投影透視図法を解釈し直した図法の開発を手がけてきた。本研究の一部として2点透視図法と関連する事項はすでに報告した^<1,2>。3点透視図法の複雑さゆえに, この開発を中断した。しかし, 3点透視図法の立方体の図形は, 空間位置からその辺長と辺が成す角度について9種に集約でき, この図形は2点透視図のそれと類似したもので, 作図の起点として機能することが明らかになったので, 作図法を提案した。従来の作図環境を整えてから描く図法に対して, この方法は, 作図環境を作図の進行にともなって, 次第に整えていく柔軟な作図であるから, 理解と知覚, 使用が容易で, 受け容れやすいものになった。
  • 目黒 秀明, 新村 正明, 古川 貴雄, 清水 義雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 13-22
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論文では, ネットワーク上のユーザーとのリアルタイム協調作業を考慮したフラッシュパネル家具用CADシステムと形状データフォーマットを提案する。このCADの実現には, 実際の製品製造を模した造形機能と製品製造のための情報生成機能が必要である。フラッシュパネル家具は, 接合もしくは対面するパネルの構成面の関係によって幾何形状と設計情報の定義が可能であることが分かった。提案システムではこれを活用して, 家具全体と個々のパネルをバウンダリーボックスで包含し, それぞれのボックスの構成面を対面する他の構成面とその距離によって定義する。この形状データフォーマットにより, リアルタイム協調設計のための柔軟なモデリングが可能になっている。提案CADは, 実際の組み立てを模して家具を作成するので, フラッシュパネルの構造情報を容易に生成することができる。既存のデータフォーマットと比較した結果, 提案データフォーマットは少ない容量で多くの情報を記述するのに有効であることが示された。
  • 望月 史郎
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 23-32
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は, 新聞広告を主たる資料として, 電気掃除機の基本機能である吸塵性能の, 変遷過程および開発・改善の方法について解析したものである。その結果明らかになったことは, 下記の通りである。1)1950年代の市場開拓前半期を経て, 60年代初頭から吸塵性能について種々の改善が試行され始めた。それが本格的に実施されたのは, 60年代半ば以降の普及・急成長期である。石油危機を契機に効率重視へと方向転換した後, 吸引力増強競争が再び始まる。その変遷は, 第1報で述べた時期区分に, ほほ対応している。2)吸塵性能は単に吸引力の増強に基づくだけでなく, 機能低下防止策によっても, もたらされている。そのように, 基本機能の改善方法に限定しても, 多種多様な手段がある。それはすべて特定部位改善の着眼点となる。さらにそれを異なる角度から抽象化し, (1)〈絶対値向上型〉〈相対値向上型〉(2)〈一石二鳥型〉〈連動型〉〈矛盾解消型〉(3)〈原因療法型〉〈対症療法型〉(4)〈付加型〉〈組み合わせ型〉(5)〈再生型〉という, 5類型の概念に整理した。
  • 金本 大康, 上原 勝
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 33-40
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, フイルム巻きパイプ集合体を力学的支持材として利用する可能性を, パイプの構成方法の差異による力学的効果から検討することである。具体的には, 12種類の構成パイプを製作し, 圧縮強度の測定から力学的特性を検討した結果, 以下のことが明らかとなった。1)基本外枠パイプの内容にパイプを配置することは, 破壊までの荷重値の大幅な増大と, 破壊に至るまでの変位量を増大させる効果がある。2)断面積の増加, 即ち, フイルム使用量の増加によって, 最大荷量と最大応力が増加する。3)材料量がほぼ同じであっても, 構成方法を工夫することによって最大荷重, 最大応力を高めることが可能である。以上から, 本研究の範囲内では, フイルムの巻数と断面積が一定であれば, 小径のパイプを外周に多数配置することが好ましく, 加えてパイプ集合体は比較的低強度ながら, 一般的な力学的支持材として利用できることがわかった。
  • 谷 誉志雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 41-50
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    Notes on the Synthesis of Form以降のCh.アレグザンダーの形成論には大きな転換が認められる。本稿の考察では, この転換を形態の形成に関わる「言葉のモード」の転換という観点から跡づけることを試みた。Notes以後の実験と思索は, 15年後に刊行されたThe Timeless Way of Buildingの理論に集約されている。Notesでは言葉の合理的, 分析的な能力の最適化が追求された。The Timeless Way of Buildingでは, 空間に生じる諸関係を全体性をもつ関係態(パターン)として捉え, その表現媒体としての言葉の能力が開拓されている。パターンのような「流動性をもつ関係の場」を精確に表現できる言葉の能力は, その後の「ヴィジョン」の考えにも反映されている。「知的で分析的な言葉」と「全体性の媒体としての言葉」の対比に見られる形成言語のモードの多様性は, 形成における客観性の多元化を示唆していると考えられる。形態の形成に不可避的に関わる言葉の問題を研究する「形態論批判」構想に対して, アレグザンダーの研究は重要な課題を提起している。
  • 坪郷 英彦
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 51-60
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    東京都西部の多摩丘陵で江戸時代から続けられた篭作りを事例とし, 在来技術の自然的・社会的環境との密接な関連性を明らかにした。具体的には次のような要因を導き出した。1.篭作りの材料は雑木林の独自の生態系に含まれる植物であり, その材料を積極的に利用した。2.篭作りは雑木林を活用した生活のサイクルに組み込まれており, 冬期の現金収入の手段であった。3.篭作りの仕事は男女の役割分担がはっきりしており, 主要な部分を女性が担った。4.篭作りの技術には計画思考と身体技法の二つの側面があり, 身体技法の伝承・伝播には女性が重要な役割を果たした。結果として生活している人々の慣習的な考えと行動の中に在来技術は成り立っていることを具体的に明らかにした。そして, 自然および社会との関係性の中で技術をとらえる必要性と, 技術を言葉で伝えられる部分と身体で伝える部分から分析する必要性を示した。
  • 内藤 郁夫, 安武 正剛, 飯岡 正麻
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 61-68
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    7色相で明度一定の色票をそれぞれ4〜5点ずつ選択した。女子学生25名に色相ごとに提示し, 彩度の塗装質感(光沢感・透明感・深み感・肉持ち感・金属感・平滑感・シルキー感)に及ぼす影響を順位法で調査した。平滑感や金属感を除き, 質感はいずれの色相においても彩度の影響を受ける。光沢感は彩度の影響を受けるが, 色相の影響は小さい。透明感と深み感はブルー側でより強く知覚する。一方シルキー感は, 彩度の増加に従い質感が減少する。その程度もグリーン側で高い。
  • 松崎 元, 大内 一雄, 上原 勝, 上野 義雪, 井村 五郎
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 69-76
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    つまみ・水栓金具・ふた等の操作具を前提とした円柱の回転操作において, 使用する指の状況が円柱の直径の変化によって, どのように推移するかを検討するため, 32名(19〜20歳の男性23名, 女性9名)の被験者で実験を行った。実験の方法は以下のようなものである。直径が7mm〜130mmの間で異なる木製の円柱(高さ50mm)を45本用意し, 無作為に選択された各円柱を, 順に台上の回転軸に差し込み, 右手で時計回りに回転させる。操作の状況は, 下方からビデオカメラで撮影し, 得られた画像から各指と円柱の接触状況を判断した。その結果, 回転操作開始時に使用する指の本数が変化する境界値を, 相対的に図示し把握することができた。また, 円柱の直径が増大するのに伴って, 各指の接触位置がどのように推移するかを二次曲線で近似でき, その傾向が明らかになった。この結果は, 回転操作機器の形状デザインに役立てることができる。
  • 金本 大康, 山田 一毅, 上原 勝
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 5 号 p. 77-82
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, フイルム巻きパイプを組み合わせた立体物の圧縮強度に対するパイプの分布状態の影響について検討することである。具体的には, 基本外枠パイプの内部に配置するパイプの分布状態やフイルム間の接触が強度にもたらす影響について検討した結果, 以下の知見が得られた。1)基本外枠パイプの内側周辺部にパイプを多く配置した分布状態は, 最大荷重及び最大応力が高い値を示す。2)フイルム巻きパイプの実測値は, 一体成形された円筒殻の理論値よりかなり低い値を示す。3)フイルム巻数が増えるにつれて, 一体成形された円筒殻の理論値とフイルム巻パイプの実測値との差は大きくなる傾向を示す。4)径の異なる2本のパイプで構成された試料では, その圧縮強度は径の大きなパイプの局部座屈に依存する。
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