デザイン学研究
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46 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 細谷 多聞
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    デジタルウォッチは, そのサイズの制約からひとつの操作ボタンに対して多重的な実行機能が割り当てられることの多いプロダクトである。本研究では, この実行機能の多重化がユーザのUI構造の理解に及ぼす影響を明確化するとともに, その原因となるUI設計の問題を, 被験者実験における操作記録の分析から導いた。実験は機能の実行結果だけを知らせた被験者12名に対し, シミュレータとして用意したUIシステムの全機能の実行を課題として行った。この実験で得られた操作記録と発話記録を元に, 構築中のメンタルモデルの混乱を示す操り返し操作を見い出した。また, ここで行われた操作と実際のUIシステムの操作構造の差から, UIシステムに用意された同一操作部の多重実行機能が, 被験者のメンタルモデルの修正を要求する性質を持つものであることを導いた。結論では, 多重実行機能を有することを, 構築されつつあるユーザのメンタルモデルに組み入れやすいUI設計の重要性を指摘した。
  • 寺澤 勉, 齋藤 剛, 高木 豊
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    「展示会会場」の情報は整備されているが, その実態を示すデ一タを整理・比較したものは存在しない。そこで本報では, 主成分分析により展示会会場相互の比較分析を行い, 日本の展示会会場の現状を把握し, 新たな展示会会場建設の方向付けに必要な基本的なデータを得ようとするものである。主成分分析の結果をもとにクラスター分析を行ったところ, 日本の主要な30の展示会会場は, 「開催可能な規模の大きさ」「展示会会場の使い勝手」「都市部・地方」をもとに, A)大規模・多目的展示会会場, B)地方中核展示会会場, C)中堅・利便性の高い展示会会場, D)都市型多目的展示会会場の4つに分類でき, ある地域の中に大小の展示会会場があることで多様なニーズに応える仕組みができあがっていることがわかった。また, 開設並びに増設時期と会場の布置の関係をみると, 展示会会場利用の自由度が改善されるようになっており, このことが今後の大きな選択肢となることが予想される。
  • 大坊 真洋, 小林 正信, 町田 俊一, 木村 光照
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    鏡面平面板上に付けられた円弧状の線刻へ光を照射したときに, その線刻上の明るく見える場所が右目と左目で異なる現象, いわゆる視差効果を利用したステレオ視立体ディスプレイを開発した。特定の方向から白色光を照明した時に, 円弧状の線刻のどの場所が明るく見えるかを定式化し, 立体ディスプレイの設計方法を示した。この立体ディスプレイは, 連続的な視差を与えるステレオグラムとして働く。コンピュータ制御のカッタープロッタにより, 平面基板上に円弧状の線刻を付けて立体像を書き込んだ。また, 情報量について見積もり, 従来よりも大幅に少ない情報量になり, コンピュータのメモリが少なくて済むことを示す。この立体ディスプレイは, 特殊な眼鏡やレーザを必要とせず, 空間に3次元像を表示することが可能であり, 簡単な機械的加工だけで作製することができる。この技法は, 基板の制限を緩和するとともに, 大型の3次元ディスプレイを安価に製造するために有効である。
  • 山本 政幸
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は, エドワード・ジョンストンとエリック・ギルのデザインした書体を中心として, 作者の思想や産業との関わりに着目しながら, イギリスにおけるモダン・サンセリフ活字の成立過程を明確にすることを目的としている。ジョンストンとギルの活動の根本に手工芸が据えられていた事実を追い, 並行して二人が近代産業に取り込まれながらサンセリフ体に着手する過程と, 彼らの書体に見出された新しい役割を確認したあと, 幾何学的アプローチと伝統的アプローチという二つの側面から, デザインの特徴についても言及した。彼らのサンセリフ体活字は, 産業との関わりから新しい社会における新しい目的のために作られ, 企業イメージの統一やサインから書籍印刷にいたるまで, 幅広い用途に対応する現代的な役割を備えた。その形態は, 機械的な規則と, ヒューマニスティックな骨格を併せもち, 幾何学的な新しさの中にも, 二人が尊重した伝統的基盤が根付いていた。これはイギリスのモダン・サンセリフ活字が成立する過程で生じた特徴といえる。
  • 梨原 宏, 吉田 旺弘
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は加齢対応と共用化に立脚し設計された道具の使用評価の中で, あいまいな評価を受けた項目に視点を置き, それを使いやすさに結び付ける設計評価手法を構築することを目的としている。本報では, 先の報告をもとにあいまい使用評価を克服するための設計評価手法の構築と設計事例による設計評価について明らかにしている。設計評価プロセスは使用評価条件の確認, 問題となる使用評価項目の抽出, ひずみの判定, 設計経緯の探索, 問題の構造分析, 改善案の提示, 改善と再評価, 加齢と道具に関する設計知識の蓄積の8ステップからなる。設計事例として木製車いすの設計を取り上げ, 試作試用段階, 製品段階のそれぞれについて使用評価結果をもとに設計評価を試みた。試作段階は明らかに問題となる設計項目の消去過程, 製品段階はあいまいな使用評価に基づく設計問題を見い出す過程とおおむね見なすことができ, それぞれ有効な設計課題と, 一般化可能な設計知識を得ることができることを明らかにした。
  • 沈 銀美, 宮崎 紀郎, 野口 薫
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論は, 印刷媒体における文字の奥行き表現について, 「イメージ測定」と「表現と文字の意味に関連した知覚効果」の2つの実験を通して, 文字表現の効果を調べたものである。まず, 文字の奥行き表現を立体, 主観的輪郭, サイズの変化, シャドー, パースペクティブ(パース)の5つに分類した。ついで, 「BIG」, 「SMALL」という, ボリューム感に関して反対の意味を持つ単語を選定, この2つの単語をそれぞれ, 分類した5つの奥行き表現とした10種類のサンプルを作成した。実験の被験者は, 日本人41名と韓国人53名, 合計94名である。その結果, 日本人はパースの表現に高いインパクト度, 主観的輪郭に高い好感度をみせた。韓国人はパースの表現に対し, 高いインパクト度を好感度をみせ, サイズ変化の表現を一番好まない傾向をみせた。文字の意味と関連して, 「BIG」のパースによる表現が一番適合しており, 意味伝達の効果も高い。今日, 文字の奥行き表現が増加している。本論は, 文字による視覚コミュニケーションの理解を増進させるものと考える。
  • 佐々木 俊介, 甲斐 裕
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    筆者は既報において, プロポーションのリズムによるコーディネーション・ツールとして, 黄金比に基づくペンタグラム・グリッドを提案したが, 本報では, より有効性・操作性を高めるため, 新たな2種類のグリッドを提案した。1つは, 水平方向と垂直方向の「区分単位」が等しいグリッド="グリッドV_3"であり, もう一つは「区分単位」の値としてフィボナッツィ数列の項の値(整数値)を採ったグリッド="Fグリッド"である。グリッドV_3では操作性が高まったばかりでなく, グリッド上でより多くの合同・相似の分割面を得ることができるようになり, それらから導かれるリズムも多様になった。Fグリッドは「区分単位」に整数値を用いたことにより, 複数のグリッドによる多様なリズムの組み合わせが可能となり, 「リズムのパターン」の活用の幅は格段に高まった。
  • 本 明子
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, 家具など身近に使用されている木材に対するイメージ評価が年齢によってどのように変化するのか, 高齢者と若年齢者との差について明らかにすることを目的としている。本実験では, 10種類の樹種についてSD尺度上で評価を行った。その結果, 20歳代, 60歳代, 70歳代の被験者ではその評価に関し異なった傾向を持っていることが示唆された。因子分析の結果, 木材は, 20歳代は「心地よさ」「著しさ」「現代的」「派手さ」の4因子で, 60歳代は「心地よさ」「軽快さ」「現代的」の3因子で, 70歳代は「心地よさ」「軽快さ」「現代的」「著しさ」の4因子で各々構成されていることが明らかになった。また, 高齢者は, 樹種の明度が評価に影響を与える傾向にあり, 若年齢者と比べると樹種に対し評価が曖味になる傾向が見られた。
  • 高橋 靖, シャクルトン ジョン
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 1 号 p. 71-80
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, テレビ視聴者の嗜好に合った番組ジャンルを自動推薦することを目標として, 非線形正準相関分析と年令・性別視聴率分析から年令・性別ならびにテレビ視聴態度・価値観因子のジャンル推薦モデルを導き, 番組・ジャンル推薦機構においてそれを活用する場合の諸問題を考察した。その結果, モデル構築に関する次の指標を得た。1.両モデルを番組・ジャンル推薦機構における汎用知識ベースとして併用することにより効果的なジャンル推薦ができる。2.汎用知識ベースは, 年令・性別の1位から3位までの推薦ジャンル, 並びにテレビ視聴態度・価値観因子の推薦ジャンルのデータを生活場面ごとに持ち, 視聴者の個人プロファイルデータを得て推薦を実行することができる。3.汎用知識ベースと視聴履歴による学習・推薦は, ジャンル推薦において相互補完的な機能を果たす。4.両モデルの優先順位は, 生活場面の特性に応じて選ぶことができる。
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