デザイン学研究
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46 巻, 2 号
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  • 寺澤 勉
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論は, 東京モーターショー(TMS)の会場計画の方法に関するものである。多岐にわたるTMS会場計画のアイテムについて考察した結果, その基本的な考え方として「統整」なる一種の規制が必要であることがわかった。「統整」は次の4つに分類できた。(1)計画の枠組みを決める(会場・会期・入場料, 等)(2)計画の方向を決める(基本スキーム・出品配置等)(3)来場者の行動を円滑にする(動線・通路カーペット)(4)出品展示の活性化を促す(統一展示・規程設定等)これらの計画を一貫したポリシー又はコンセプトは「統整」であり, この考え方に基づいて主催者と出品者の計画をリンクさせると, 活気と魅力に満ちた会場を実現できる。TMS 計画においては「統整」という一種の規制があることによって, むしろTMS活性化を促していることが分かった。
  • 陳 明石, 清水 忠男, 佐藤 公信, 一海 有里
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 7-12
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    商店街の「公有私用型」歩行者空間の例として, 千葉県千葉市の商店街を対象に調査を行った。対象地域の歩行者空間には, 日中, 様々な仮設的要素が路上に観察された。店舗からはみ出している商品や広告物に関しては, 商店側は歩行者の通行阻害になるのを認識しつつ意図的に路上に置く傾向がある。歩行者はそれら仮設的要素を「街の活気が感じられる」「歩きながら店の様子を知ることができる」「気軽に商品を見られる」と肯定的に評価する一方, 十分に歩行者の目を楽しませる魅力がないことについて否定的に評価している。また, 放置自転車については, 歩行者・商店側共に否定的な評価であり, 路上に設置された店舗側からの日除けの支持物についても, 歩行者側は否定的である。これらのことから, 商業地域の歩行者空間に見られる仮設的要素に関する人々の評価は, その種類や置かれ方及び評価する人の立場によって異なり, 相反することもあるといえる。従って, 商店街に活性化を促したり, 人々の利便性や楽しみを生み出すためには, 路上の仮設的要素を一律的に規制するのではなく, 多様な要求を念頭においた制御の仕方が求められる。
  • 陳 明石, 清水 忠男, 佐藤 公信, 一海 有里
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 13-18
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    調査対象となった岐阜県高山市の商店街路は, 私有地と公有地とを取り込み, 同じ舗装を施し, 一体感や広がり感を作り出している屋根付きの歩行者空間である。ここには, 平日, 週末を問わず, 店舗の営業時間に呼応して, 様々な仮設的要素が路上に置かれているのが観察された。それら仮設的要素の置かれ方は商店街の協定に基づいているため, 広い通行空間がほぼ確保され, 歩行者は歩きながら商品を楽しみ, 店内の様子をうかがうことが可能である。この点はアンケート調査においても肯定的に受けとめられていた。この空間は, 行政と商店側が双方の所有地を共同で計画, より幅広い歩行者空間としてデザインし作り上げた公私融合型歩行者空間ということができる。このようななりたちの歩行者空間は, 立場の異る様々な人々の多様な活動を支援し, コミュニケーションを促進する場となり, 商店街を活性化させる一つの有効なあり方を示している。
  • 岩井 正二
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 19-26
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, 駅における券売機の使い方に関する説明表示を, 記号論によって分析したものである。複数の駅の説明表示を一定の範囲で記録し, メタ言語としての記号から, 対象言語の記号へ置き換え, 「製品の使い方」のシンタックスに当てはめ, 比較検討する。結果として, 次のようなことがわかった。第1に, 券売機の使い方, そのものに関するよりも, すなわち, どの券売機を選ぶかに関する説明表示が多い。また, 1996年に導入されたJRの新型券売機は, 汎用機として使い方, およびパネル形状の傾斜型が定着, 記号としての識別性がよく, 券売機選択に効果をあげている。第2に, ユーザー層, および, ユーザーの学習の程度の違いによって, 説明表示の内容に変化が見られ, シンタックスの複雑さも異なってくる。
  • 林 品章
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 27-36
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論文は, 台湾の視覚伝達デザイン史研究シリーズの第一部である。フィールド調査と文献資料を通して, 視覚伝達設計という用語及びその学術領域の台湾における変遷ならびにその背景を明らかにすることが本研究の目的である。研究の結果, (1)現在台湾で普遍的に使われている視覚伝達設計という用語は, 過去四, 五十年間に, 図案, 美術設計, 商業美術設計, 商業設計などの相似語で使われていたこと, (2)視覚伝達設計という学術用語に至った過程において, 工芸とほぼ同じ意味である「美工設計(美術工芸の略語)」という用語も, 美術設計, 商業設計などと似た意味に認知されていたこと, (3)視覚伝達設計という用語が用いられる以前に, 台湾で使われていた「図案」は, 日本人の納富介次郎の造語したデザインに対応する用語である「図案」と深く関連しており, 日本からの外来語であると推論できることが判明した。
  • 井上 勝雄, 森 典彦, 広川 美津雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 37-44
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    評価問題の代表的な方法論である多属性意思決定の中で人の主観的な側面を加味できるファジィ理論を用いた方法が近年注目されている。この手法はデザイン評価に適した考え方でもある。本研究はこの理論で用いられているファジィ測度において劣加法性と優加法性が混在する新しいファジィ測度の算出の方法を提案する。提案の測度は, 菅野のλ-ファジィ測度の考え方をもとにしながら, これまでのファジィ測度の課題と問題点を考慮して考案したものである。具体的には, 評価項目間の重視度の相互関係の係数と, 測度式内の加法性の部分と劣加法性と優加法性の部分の値の割り付けとなるパラメータμを導入して, μの値を定められた範囲内でファジィ測度の定義の「有界性」と「単調性」の両方を満たすようにシミュレーションさせて算出する方法である。本研究では数学式の提案と実際の使用を想定した場合の運用方法も提示した。
  • ドゥディ ウィヤンチョコ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 45-54
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論文は, 人びとの坐り姿勢とその社会的意味との関連に着目しながら, インドネシア・ジャワの伝統的社会における坐具デザインの視覚的特徴を探究したものである。坐具デザインの視覚的特徴と坐り姿勢の社会的意味との関連は, ジャワ文化においては, その象徴の体系が宇宙発生論神話に基づいて秩序立てられているとの認識に立ってはじめて, よく理解することができる。すなわち, 次のようである。(1)ジャワの象徴の体系は, 二者択一および中庸の概念を基盤としている。(2)人びとの坐りの際の身体の形態は, ハレあるいはケのような社会的意味と関連した象徴の体系に対応している。(3)坐り姿勢によって表される社会的な意味は, 座具の構造的, 機能的, 美学的な側面と関係しながら, 座具デザインの視覚的特徴を決定する。(4)ジャワの伝統的社会における正式な坐具の意匠の視覚的特徴は, 左右対称性, 階層性, 装飾性である。
  • 金 顕静, 野口 薫
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, 形態的特徴が運動パターンの速度知覚にどのように影響するのかを調べたものである。刺激パターンとして垂直・水平・斜め・V字形という四つの異なる図形構成要素をもつパターンを用いた。各パターンにおいてはストライプ状の構成要素の間隔や幅を組織的に変化させた。被験者は, 上から下に運動する動画パターンを観察し, マグニチュード推定法によって知覚速度を評価した。その結果, 垂直ストライプからなる形態はもっとも遅く知覚され, 水平ストライプの形態はもっとも速く知覚された。そして, 斜め・V字形のストライプをもつ形態は, その中間の速度に知覚された。すべてのパターンにおいて, ストライプの間隔・幅の変化は速度知覚に有意な効果を与えた。すなわち, 間隔や幅が狭いほど速く知覚されることが示された。これらの結果は, パターンの構成要素の方向が運動方向(ここでは垂直運動)との関係で速度知覚に影響すること, またパターン出現の頻度が速度知覚の決定因であることを意味する。
  • 望月 史郎
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 1999/07/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は, 新聞広告を主たる資料として, 電気掃除機の操作性の, 変遷過程および開発・改善の方法について解析したものである。その結果明らかになったことは, 下記の通りである。1)市場開拓前半期を経た後, 1960年代初頭から操作性について種々の改善が製品に反映され始めた。2)60年代半ば以降の普及・急成長期にはさらに, 種々の方式が開発され, 既存方式の改善や組み合わせも実施された。3)70年代半ば以降の安定成長期には, 新しい方式を生み出すより, 既存方式の見直しに力点が置かれ, 従来の成長過程の軌道を修正した。4)80年代半ば以降の脱成熟化期には, 既存方式の改善に新しい要因を付加し, 生活提案型計画を充実させている。5)上記の変遷は, 前2報で述べた時期区分にほぼ対応している。6)操作性の改善方法に限定しても, 多種多様な手段がある。それはすべて特定部位改善の着眼点となる。さらにそれを前報で述べた概念の類型化に照合することができた。
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