デザイン学研究
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47 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 金 恩子, 宇野 英隆
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    ギャレー空間は非常にコンパクトに設計された多機能収納空間である。しかし, その反面そこで作業をするスチュワーデスにとっては作業負担の大きな空間となっている。ギャレー空間の改善のためにも作業負担の定量化が必要である。本研究では腰痛の原因の1つとも言われる高い位置への収納動作について調査した。作業負担の定量化のために表面筋電図によって, 収納動作の筋負担を調べた。各測定筋ごとに比較したところ, 各筋ごとに異なる特性が示された。それは同じ収納動作であっても, 収納場所によって作業姿勢, 動作の質が異なるからである。また, 高い位置への収納動作について限界動作比と動作角度を測定し, 身長との関係を考察した。結果として, 背の低い人ほど限界の動作を強いられていることが定量的に示された。最後にギャレー各部の収納動作に対する空間的難易度の評価を試みた。その結果は, ギャレー空間再構築時に考慮すべき基礎条件に対して具体的な方向性を与えた。
  • 金 恩子, 宇野 英隆
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究ではギャレー空間の重要な構成要素の1つであるカートについて調査を行った。その結果, ギャレー空間内におけるカートの役割は, 収納空間としての役割, 「もの」を運搬する役割, 作業台としての役割など様々あることが分かった。しかし, アンケート調査からはこのカートに関する不便な点も挙げられており, 改善の余地があることが示された。また, ビデオ分析やカート内の搭載品の調査からは, 狭いといわれるギャレー空間内にもデッドスペースを見出すことができた。これは今後, 現状のギャレーの機能を保持しながらも, よりコンパクトで, 作業性にも優れた新しいギャレー空間を構築するという我々の目的を可能にし得るものである。さらにカート操作時の筋負担について調べ, 特に腰への負担について考察した。また, カートヘの収納動作に関しては, 作業姿勢と筋負担の関係も調べた。
  • 高橋 靖, 長谷川 桂介, 杉山 和雄, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は映画における物語の構造を簡潔に表現し, タイトルや内容の検索, ブラウジング, 編集, 要約等に活用するために, 映画における物語の意味的単位であるシーンを複雑化・解決化の尺度で評価するセマンティックスコア法を提案した。5ジャンル15タイトルのセマンティックグラフの解析から重要シーン抽出の手がかりが得られ, またジャンル別にグラフを特徴づける4つの特徴関数, すなわち最高シーン率, 最終複雑度率, 平均シーン秒数, フラクタル次元が導かれた。これよりジャンルのグラフの型が次のように定められた。アクションタイプ「右上がり型」ドラマタイプ「山型」コメディタイプ「台地型」ラブストーリータイプ「右寄り山型」ファンタジータイプ「連峰型」さらに, 4つの特徴関数を用いたジャンルの判別分析によって15タイトルの映画が効果的に判別され, 映画の構造記述におけるセマンティックスコア法の有効性が示された。
  • 内藤 郁夫, 藤井 善博, 安武 正剛, 飯岡 正麻, 金子 かつこ
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    7色相で, 彩度一定の色票をそれぞれ4点ずつ選択した。女子学生25名に各色相ごとに色票を提示し, 明度の塗装質感(光沢感・透明感・深み感・肉持ち感・金属感・平滑感・シルキー感)に及ぼす影響を順位法で測定し, 色相ごとに検討した。「光沢感」尺度値は明度の影響をあまり受けないが, 「透明感」・「平滑感」・「シルキー感」の尺度値は明度の増加に従い増加し, 「深み感」・「肉持ち感」・「金属感」の尺度値は明度の増加に従い減少した。とくに「透明感」・「深み感」・「平滑感」・「シルキー感」では, 色相ごとの明度と質感尺度値とのプロットが同じ切片を取る。これより色相の影響も検討した。「透明感」・「深み感」と「平滑感」はブルー側で感度が高いが, 「シルキー感」はあまり大きい色相の影響を受けない。
  • 白石 照美, 深水 義之, 吉田 登美男, 伊藤 明
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    前報告では, これまでの心理実験の結果から視覚の諸特性を明らかにし, 多層の側抑制機構を一層の側抑制で置き換えた視空間伝達特性モデルF_<(1)>を提案した。本報告では, このモデルの有効性を定量的に確認するために, ミューラー・リヤーの錯視図形と直線を用いてサーストンの一対比較法による錯視量の測定実験を行い, 一方でF_<(1)>による計算を試みた。F_<(1)>での計算の結果得られた値を心理ポテンシャル値とし, 長さの錯視に影響を与える要素として, その最高値間の距離に着目して両者を比較した結果, 視空間伝達特性モデルF_<(1)>は実験結果と高い一致度を得た。ミューラー・リヤーの図形から主線を取り除いたものについても同様の実験を行った結果も, F_<(1)>の計算によるポテンシャル値の最高値間の距離とよく一致していた。今回行った実験の範囲で, F_<(1)>は錯視量の予測に定性的にも定量的にも有効であるということを確認することができた。
  • 松岡 由幸, 米川 裕毅
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    移動用福祉機器の一つとして車椅子車載システムが注目されている。本研究では, 既存システムの設計に関して, 乗心地に対する配慮が不十分であることに着目し, 乗心地設計を図るうえでの基礎的知見として人体-車椅子系の振動特性を把握することを研究目的とした。この目的に対して, 実験的モード解析を採用し, 振動特性を表すモード特性の明確化を試みた。まず, 加振台における入力振動と, 人体および車椅子上の各計測点における出力振動を同時に計測する加振実験を行い, 1〜15Hzの範囲における周波数応答関数を得た。つぎに, 周波数応答関数に適切なモードパラメータ推定法を適用し, 系の固有周波数として2.51Hz, 4.63Hz, 7.10Hz, 8.31Hzを抽出した。この結果, 系のモード特性が明確になった。さらに, 系の振動特性とヒトの振動感覚特性を検討した。その結果, 車椅子車載システムにおける乗心地の悪さに繋がる要因として, 4.63Hz, 7.10Hzにおける固有モードが抽出された。また, これらの固有モードにおける振動低減が, 乗心地向上に対して有効であることを示した。
  • 松岡 由幸, 米川 裕毅, 河合 晃平
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    車椅子車載システムの乗心地設計には, 系をモデル化し, 挙動の定量的なシミュレーションを行う設計支援方法が有効である。そこで本研究は, 人体-車椅子系振動シミュレーションモデルの構築を目的とした。まず, 人体-車椅子系をマス, ばねおよびダンパ要素によって表現する2次元7自由度のマスバネモデルを設定し, 系の運動方程式を導出した。つぎに, 過去の実験で得られた系のモード特性を用いて, 系における未知の物理特性を明確化することにより, モデルを同定した。同定したモデルは, シミュレーション結果が実験時の実際の挙動と一致したことから妥当性が確認された。さらに, 構築したモデル上の人体, 車椅子などの物理的パラメータを実際に変化させてシミュレーションを行った結果, パラメータ変化に対応した挙動の変化が確認されたことから, 構築したモデルの設計における有用性が認められた。
  • 米川 裕毅, 相原 弘武, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2000/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    車椅子車載システムの乗心地向上を図るには, 振動に対するヒトの評価特性を設計に反映させる方法が有効であると考えた。そこで本研究は, 同システム搭載車両のフロアおよび人体における振動と振動に対するヒトの乗心地評価の関連性を明確にすることを目的とした。加振機を用いて人体-車椅子系に正弦波を入力し, フロア振動と人体振動, およびその評価を計測する乗心地評価実験を行った。実験結果をもとに, 振動と評価の関連性を検討し, フロア振動ならびに人体振動の各々から乗心地評価を予測可能な重回帰式を得た。これらの重回帰式から, 乗心地評価の予測方法とその基準を求めた。なお, 人体振動については, 上胴部上下方向の振動が乗心地評価に大きく寄与することが判明した。同振動を用いた評価予測は, 振動感覚の主成分である加速度感覚および周波数感覚との対応関係から有用性が確認された。以上より, 設計から評価を予測する方法を構築し, 車椅子車載システムの乗心地設計に対して有効であることを示した。
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