デザイン学研究
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47 巻, 3 号
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  • 范 成浩, 杉山 和雄, 渡辺 誠, シャクルトン ジョン
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 1-8
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    今まで道路整備事業の路線計画作業は、「人間の手作業として」表面図上に整理し、道路の規格と、それに基づく幾何構造基準を満足させるべく線形を探索する形で行われている。本研究の立脚点は線形計画を行う際の、「人間の判断作業の手助け」を試行したものである。本論文では前報の論文に続いて、内部景観評価によって求めた最適ルート解の探索方法を示した。即ち、路線計画を行う際の、評価基準を明確にしたうえ、ルートを探索するものである。本研究では、運転者の心理変化に基づいて、その評価基準を構築したものである。具体的には、計画対象区域を適切な大きさのメッシュに区切り、各メッシュに対する景観の評価データを採取し、構築した評価基準に基として遺伝的アルゴリズムを用いて最適ルート解の探索を行うというものである。構築した景観の評価基準を用いて、既存ルートヘの評価を行い、専門家の経験による判断された結果と一緒なので、景観の評価基準が有効ということを分かった。
  • 范 成浩, 杉山 和雄, 渡辺 誠, シャクルトン ジョン
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 9-14
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    今までの道路計画事業では、新たなコンセプトを加えたにしても、固有条件が多すぎて、新たな設計手法が導入できず、そのまま設計を行ってしまうのが現状である。本論文では道路路線計画の固有条件を明確にするため、その計画支援システムの一環において、道路の安全性に対する評価関数を構築することを目的とした。本研究では、道路設計を行う際に、安全性に関する自然素因をパラメータとして組み込み、客観的な災害危険度評価を検討した。ここでは、災害危険度という関数を導き出すために、既災害(落石)の発生した路線を対象にメッシュに区分し、自然素因のデータを入力・解析した上、災害発生に係わる各自然素因の重み(係数)と各自然素因ランクの定量化を算出した。それを今回対象にした路線に当てはめることにより、安全基準値も得られた。最後に専門家による危険ルートと安全ルートに対して、本研究の妥当性を検証した。道路路線計画段階において、道路の安全性の評価関数を構築した。
  • 尹 明淑, 朴 燦一, 三橋 俊雄, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 15-24
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は、韓国の人びとの生活とともに形成されてきた「苞」の意匠的特質を、その形状別使い方・機能、材料、編み方、内容物との関係などに着目し、明らかにしたものである。その結果、次のことが明らかになった。(1)開放型苞 : 平面状の苞で、主に乾燥機能を有しているものの、生活空間における敷物や仕切りとしても使われる。(2)半開放型苞 : ボール状が多く、主に移動機能や一時的な貯蔵・乾燥機能など、複合的機能をもつ。また、複合的機能に対応するため、副素材や紐をつけるなど多様な工夫がみられる。(3)半閉鎖型苞 : 入口の開放面を小さくした小型のものが多く、発酵、信仰、商業用包みなどの多用途に使われた多機能型苞である。(4)閉鎖型苞 : 内容物の漏出を防ぐため蓋がつけられたり、閉じることができるように作られ、多量の穀物を長期間貯蔵するための大型と食品などを移動しながら一時的に貯蔵するための小型がある。これらの各形状別の苞は、機能、素材、編み方、それらが包む内容物などとの密接な相互関係に基づき、意匠的に工夫されている。
  • 松岡 由幸, 浅沼 尚, 鈴木 貴雄
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 25-34
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    CAD/CAMなどの曲線設計においては, 寸法や面積など従来の形状基本量による形状情報だけでなく, 形状要素間の関係などから発現する形状の全体的特徴を示す巨視的形状情報が設計指標として必要とされている.本研究では, 従来の形状基本量とは異なる形状特徴を示す巨視的形状情報の解析を試みた.具体的には, 巨視的形状情報として情報理論にもとづく情報エントロピーや期待値により定義した形状統計量と形状基本量の両者が有する認知情報の差異を分析した.まず, 直線により構成される幾何図形を用い, 各形状情報を求めた.この結果, 形状統計量は「複雑さ」や「奇抜さ」などの従来の形状基本量では表現できない全体的特徴を表現することが分かった.つぎに, Bezier曲線により生成された幾何図形の形状情報を求め, 両形状情報の特性を解析した.この結果, 形状基本量は制御ベクトルの大きさに関与することに対し, 形状統計量は制御ベクトルの方向に関与することが示された.このことにより曲線設計における形状統計量の有用性を検討した.
  • 趙 英玉, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 35-44
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    満州族の支配下におかれた清時代には、漢民族の被服文化に大きな変容が生じた。本研究では、清時代に書かれた小説『紅楼夢』にみられる被服の記述を抽出し、清代民族文化の出会いによる新しい文化創生の物語を、被服形態と着衣観念の側面から考察した。1)被服形態における特徴 : 外出服には満州族の被服がそのまま導入されているのに対し、在宅服には満州族の被服をそのまま導入する場合と、丈が短い上衣やほっそりとした仕立ての上衣など満州族の被服特質の一部を取り入れた新しい被服が着装される場合とがある。2)着衣観念における特徴 : 漢民族の古代思想は、陰陽観念をその基本に据え、被服においても陰陽の両面から解釈された。たとえば、上衣は「〓」より高貴な存在とみなされ、貴族は「〓」を露出せず、下着としてのみ着用した。しかし、『紅楼夢』には、「〓」を表に着用する場面が数ヶ所に現われる。このことは、清代中期における漢民族の衣生活にあっては、陰陽の観念に基づいた儒教観念の影響が薄らぎ、新しい被服文化が創生されつつあることを意味している。
  • 禹 在勇, 尹 永泰, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 45-54
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    韓国において、儒教は、家庭内から地域社会、国家社会まで、広く行動規範として生活を秩序づけてきた。今日、急速に変化する韓国社会にあって、儒教の教えに基づく生活規範は継承され生きているのだろうか、また、将来にわたって遵守されるのだろうか。本研究は、儒教に基づいて様式化された生活規範の表出として「所作の意匠」をとりあげ、韓国安東地域の大学生を対象としたアンケート調査を通して、韓国の食生活に現れる「所作の意匠」を把握したものである。調査の結果、以下の結論を得た。1)アンケート調査項目の79項目をクロス集計し、類似項目をMDA-ORで分類した結果、[生活様式][食の準備][祭祀の食][儒教の精神]四つの項目群に別れた。2)儒教の必要性は認められているものの、生活様式の変化や人びとの意識の変化に伴い、普段の食生活を通じた実践は失われつつある。3)現在、祭祀の食の所作については厳密に定式化され、各所に儒教の所作が残されているものの、他方では、儒教を盲目的に伝えていくことを疑問視する声も聞かれた。
  • 原田 利宣, 島田 哲夫, 吉本 富士市, 森 典彦
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 55-62
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    製品などの曲面を創成するためには, その基となる曲面の構造を表す簡単な多面体が必要不可欠である.また, デザイナはこれら多面体を組み合わせて, 製品形状を構築している.ここで, 筆者らは, 以前「認知幾何」という概念を提唱し, また一面体と六面体の間に何通りの異なった面構造を持った多面体が存在するのかを明らかにする方法を研究した.この方法を「面構造分析」と呼んだ.しかし, この研究は一面体と六面体の間に限定した分析であり, 取り扱える多面体にも制限があった.そこで, 筆者らは, 本研究において一般的に用いられるすべてのプリミティブや特殊な面の成り立ちをしている多面体にまで面構造分析の範囲を拡げ, そこにどのくらい数の面構造の異なった多面体が存在するのか, またそれらを抽出するための方法論の研究を目的とした.さらに, それら抽出された多面体をデザイン作業における形のバリエーション展開に応用することを考え, 視覚言語として体系化した.
  • 岡田 栄造, 寺内 文雄, 久保 光徳, 青木 弘行
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 3 号 p. 63-70
    発行日: 2000/09/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    明治・大正期の日本において、椅子がいかなる機能を有する家具として認識されていたかを明らかにするために、当時の起居様式に関する記述の収集と分析を行った。まず、29冊の書籍から椅子座式生活に関する記述を評価語として抽出した。次に、抽出された多くの記述をより客観的に考察するために、ISM法を適用して評価語の構造化を行った。それにより、多様な評価語間の関係を、15個の階層からなる評価構造として整理することができた。評価構造に基づいて椅子座式生活の実用性に関する記述を考察した結果、椅子は日本人の体格を良くし、日本人を勤勉にし、生活能率を増進するための家具として捉えられていたことが明らかとなった。さらに、上記の認識が、「静かな身体」から「活発な身体」へというように、起居の振る舞いに対する考え方の変化を背景として生じたことを示すことができた。最後に「機械化の文化史」の記述を引用し、同時期の西洋において主流であった「くつろぐための椅子」という認識が、日本においてはまだ一般的でなかったことを指摘した。
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