デザイン学研究
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47 巻, 5 号
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  • 尹 明淑, 禹 在勇, 朴 燦一, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 1-10
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は、自然素材によって制作され使用されてきた「伝統的苞」およびプラスチックに代表される新素材を用いて工業的に大量生産される「現代的包み」に関し、韓国の大学生がどのような認識・イメージを有し、どのように使用しているかを調査し、包みの文化のあり方を考察したものである。アンケート解析を通し、次の諸点を析出した。(1)総じて、「伝統的苞」を生活のなかで使用した経験はないものの、また、「伝統的苞」が今日の家庭ではみられないものの、大学生たちは、「伝統的苞」の素材・制作形態・処理方法に関する堅実な認識を有している。(2)利便性・実用性の観点で「現代的包み」が生活のなかで大量に使用されているものの、大学生たちは、それがゴミ問題・環境問題を惹起するひとつの要因になっているとの認識を有し、使い捨ての生活を可能な限り調整する姿勢を有している。(3)大学生たちは、資源循環型社会の再生・再構築が必要との視点に基づくとき、「伝統的苞」の文化が育んだ諸特質を再評価することの必要性を認識している。
  • 禹 在勇, 尹 永泰, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 11-20
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は、韓国安東地域における人びとの食生活のなかに、儒教倫理のひとつである「孝」がどのようなかたちで表出されているかを、現地における参与観察ならびに文献に基づき、整理したものである。その結果、次の諸点を具体的に明らかにした。(1)「孝」の観念は、日常的な食生活における人びとの行動のなかにさまざまなかたちで表出しており、それが慣習として家々で伝承・実践されている。(2)特に祖先の霊と対面する忌祭祀における食行動のなかには、「孝」の観念に基づく行動体系が儀礼化され、厳粛に継承されてきている。(3)日常および非日常の食生活における「孝」の表出は、それが慣習として維持・継承されることにより、家族・同族さらには地域社会における人間関係に一定の秩序をもたらす役割を担っている。伝統的観念に裏打ちされて一定の行動がいわば「型」として維持・継承されている韓国安東地域における人びとの食生活文化は、今日の韓国で民族のアイデンティティの確認・再評価が叫ばれているなかで、今後の生活文化のあり方を考えるための指針を内包していると思われる。
  • 原田 利宣, 中嶋 信幸, 栗原 祐介, 吉本 冨士市
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 21-28
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    一般に, 工業デザインの分野においては, クレイモデルの計測データをフェアリングして, CADシステム上で3次元モデルを作成する.しかし, このフェアリング作業には多大の工数がかかることが問題である.そこで, 我々はリバースエンジニアリングへの応用を考えた, 曲線の自動フェアリングシステムを提案する.この自動フェアリングシステムは, 以下の5つの部分からなる.1)非接触型3次元形状計測装置による曲面の測定とキーラインの抽出, 2)抽出したキーラインの曲線あてはめ, 3)曲線あてはめされたキーラインの曲率単調曲線への分割, 4)各々の曲率単調曲線に対して曲線の"性質"を分析, 5)上記分析結果をもとに各曲率単調曲線をノイズ除去した視覚言語に置換し, キーラインを再構成, 再配置このシステムを用いることにより, 我々は極めて短時間にデザイナの意図する曲線を得ることが可能となる.
  • 藤田 伸
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 29-38
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は、数学の世界で話題をよんだペンローズの非周期的パターンと、エッシャーが制作したエッシャー・パターンを題材に、パターン・デザインのあらたな研究課題を模索したものである。ペンローズの非周期的パターンにおいては、非周期的となるための組み合わせを限定させる条件が提示されている。その条件を再検証することで、いくつかのバリエーション・パターンを得ることができた。また、ペンローズの非周期的パターンとエッシャー・パターンの融合を試みた。その際、誰でも作ることができるエッシャー・パターンの制作法を提示することができた。本研究を通じて、ペンローズ・パターンおよびエッシャー・パターンは、今後も継続して研究する価値のあるパターン・デザイン課題であることがわかった。
  • 松岡 由幸, 下川 真人, 河合 晃平
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 39-46
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    車椅子車載システムの乗り心地向上を図るための設計支援ツールとして, 筆者らはこれまでの研究で人体-車椅子系の振動シミュレーションモデルを構築した.本報では, モデルの信頼性向上について検討し, さらにシミュレーションを行うことで, システムの乗り心地向上に向けた設計変更の指針を示すことを目的とした.まず, 比例粘性減衰の仮定を用いて構築したモデルの精度向上策として, 非比例粘性減衰のもとで新たにモデルを同定し, これがモデルの精度向上につながることを確認した.つぎに, 新たに同定したモデルを用いて, システムの特性を変更してシミュレーションを行った.特性変更は, 車椅子とフロアの二つを想定し, 車椅子については, 感度解析により, 乗り心地と相関が高い上胴部振動の低減に効果的である箇所として, 後輪部分を特定した.車椅子およびフロアの特性変更により, いずれも上胴部振動を大幅に低減可能であることが予測され, 今後のシステム設計変更に対して, 有意な指針を示すことができた.
  • 関 徹夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 47-54
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    審美性と情報性にかかわる活動であった初期の生産デザインを、現在の使用性(Ease and Convenience of Use)の追求をも含める活動に発展させたのは、1930年代のレイモンド・ロウイをはじめとする米国のデザイナー達と考えることができ、その取り組みの特徴は、使用性の追求を、審美性・情報性など、他要件との綜合最適化の中で行うことにあった。そして生産デザイン遂行に必要な上記3要件の綜合最適化の技術は生産デザインの固有技術と考えることができ、同時に生産デザイナーが備えるべき技術要件と言うことができる。デザイン教育において上記の固有技術を養成するためには、実際の生産デザイン場面で動員される3要件最適化のための思考と同質の働きが発揮されるように基礎教育を組み立てる必要があり、特に使用性追求の基礎訓練は、それのみを単独に行うのではなく、他の要件を含めた綜合最適化の中で追求するような工夫が必要である。
  • 李 岡茂
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 55-64
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    フラクタル幾何学の「自己相似性」の概念は、自然の形態を見る新しい視座を与えた。本論では「自己相似性」が自然物だけではなく、造形作品の分析にも活用される可能性に着目し、その事例研究として「アルヒテクトン」の構造分析を行った。分析の方法は、フラクタル・シミュレーションによって生成されたモデルと元の作品を比較することであった。その結果、垂直形アルヒテクトンは、基本的にはフラクタル的な構造を持っているが、各構成要素の比率関係や数においては自由な選択が行われたことが分かった。造形作業でフラクタル幾何学を応用する方法が試みられている今日、「自己相似的構造」と「作家の審美的判新」が調和されている垂直形のアルヒテクトンは、その先駆的な実例として再評価されるべきであると考える。
  • 松岡 由幸, 庭野 敦也, 森田 敦
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 65-72
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    座り心地の向上を目的として, 尻滑り力を防止するシートスウィング機構が注目されている.しかしながら, この尻滑り力防止に関する力学的解明がなされていないため, シートスウィング機構は的確な設計が行われておらず, その機能が十分に発揮されていない.そこで, 本研究では, 人体モデルを用いて力学シミュレーションを行い, 導出した設計解をもとにシートスウィング機構の設計を行うことを目的とする.本研究では, まず, 人間工学的, 解剖学的な見地から人体モデルを構築した.つぎに, そのモデルを用いて尻滑り力の推定式を立て, 尻滑り力の力学シミュレーションを実行することで最適なバックアングルとクッションアングルの関係を導出した.その結果, バックアングルが45°付近でクッションアングルが最大値をとる尻滑り防止曲線を導出した.さらに, 導出した尻滑り防止曲線をもとに, シートスウィング機構に対する各構成要素の仕様を決定し, 同機構の設計を行った.
  • 松岡 由幸, 庭野 敦也, 大原 侑也
    原稿種別: 本文
    2001 年 47 巻 5 号 p. 73-82
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    機能は場に依存している.場とは, 設計目標に対するヒト, モノ, 環境における各要素, およびそれらすべての要素間の関係である.一般に, モノが使用される場は多様である.しかしながら, モノの設計の多くは, 平均的な場を想定して行われているのが現状である.そのため, 場の多様性から一部のヒトや環境において, 評価が極端に低くなるという問題が発生している.このような問題を解決すべく, 本研究では, 多様場においても安定した評価が得られる方法論の構築を目的とする.まず, 設計方法として, 多様場対応型ロバスト設計方法を提案した.本方法は, 平均と分散を評価関数に含むロバスト設計方法をさらに拡張したものであり, 場のモデル化とそれをもとにしたシミュレーション解析の実行を折り込んだことを特徴としている.つぎに, 本方法の有効性を確認するために, 鉄道車両用シート設計への適用を試みた.その結果, 本方法による設計解が従来までの方法によるものより, 多様場に対してロバストな解が得られ, 本設計方法が有効であることが示された.
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