デザイン学研究
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48 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 坪郷 英彦
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    近代において関東地方は多くの種類の竹籠が作られたところである。竹籠の意匠と社会・経済的背景の関連性を知るために、一つの地域での竹籠の生産と使用状況を調査分析した。結果として次の2点が明らかとなった。1.養蚕が盛んになるにつれ竹籠作りの専門職人の移動、技術移転が起こり、さらに養蚕の生産技術の変化に応じて竹籠の需要変化が起こった。2.地域個有の畑作用籠が見出される。その籠は用途の変化にともない作り方、構造は変化してきたが形そのものは同じ形が継承されてきた。形の継承は社会的機能の維持に必要であった。3.竹籠制作のために専門的と副業的の異なる二つの技術体系が存在した。
  • 金 起範, 朴 燦一, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 9-18
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    韓国の歴史系博物館160館を対象として、博物館の教育普及活動に関するアンケート調査を実施した。その結果、教育普及活動の今日的課題として次の3点を得た。(1)地域とのかかわりの課題 : 地域課題対応、住民参加拡充、住民学習支援、諸機関・団体との交流・協力などの地域社会・地域住民と博物館とのかかわりを深める館活動の実施が住民の博物館利活用を促しており、博物館の運営・活動における地域とのかかわりに対する姿勢・意識の見直しが必要である。(2)実践の課題 : 現在、各活動の実施率が低く、地域社会・地域住民との直接的なかかわりも少ない。しかし、今後の館活動においては、直接的なかかわりによる館活動の展開と多様な教育普及活動の実施を望む館が増えており、より積極的な意識の転換とそれを反映した教育普及活動の実践が望まれる。(3)対応体制の課題 : 各活動における人的・ハードウェアの問題が数多く指摘されており、それらの整備を通した住民の持続的な館利活用と館活動への参加に応えられる博物館の対応体制の確立が望まれる。
  • 金 起範, 朴 燦一, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 19-28
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    日本全国の国公立歴史系博物館から寄せられた428件のアンケートに対する回答に基づき、今日の教育普及活動の実態を把握し、今後解決していくべき教育普及活動の課題として次の4点を得た。(1)教育普及活動の志向性 : 地域住民の積極的な館利活用を導くには、館の教育普及活動の充実が効果的であり、その活性化のためには、住民とのかかわりの構築や教育普及活動に対する館側の意識転換が必要である。(2)教育普及活動の充実 : 多くの博物館で十分な教育普及活動が行われていないのが現状で、今後、地域住民の要請に応えうる多様な教育普及活動の展開が望まれる。(3)連携活動の拡充 : 博物館が地域社会における生涯学習の場となりえるためには、地域住民との連携はもとより、地域における諸機関・団体などとの広範な共同・協力関係の構築が不可欠である。(4)ハードウェア・人的整備 : 博物館の教育普及活動にかかわる施設・設備や人材が、必ずしも十分ではない。より充実した館活動を展開していくために、ハードウェアならびに人材の整備・拡充が肝要である。
  • 釜池 光夫
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 29-38
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    乗用車デザインにおいて考慮すべき事項「デザイン要件」は複雑で、明確にされていない。本論の目的は、モデル開発における複雑なデザイン要件を分類し、開発にとって影響力のある重要な要件を明らかにすることにある。はじめに、RVモデル開発事例から、デザイン要件を約550項目を抽出し、KJ法とMDAの親近性の分析から、6つのカテゴリーに分類した。次いで各カテゴリーの要件相互の影響性と関連性の評価をグラフ理論のデマテル法で分析し、散布図を作成した。図の構成と内容の考察から4つの階層と重点要件を明らかにすることができた。以上の分析から、複雑な要件群を6つのカテゴリーと、4つの階層で構成する「総合デザイン要件表」に整理することができた。一覧表の要件の上位の要件、特に他の要件との関連の多いキー要件がRVモデルの開発事例を通して考察された。これらの要件は乗用車デザイン開発の重要な項目として、チェック・検討すべき要件と思われる。
  • 氏家 良樹, 細井 彰博, 浅沼 尚, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    現在, 曲線設計に用いられている形状情報は, 曲線形状の全体的な特徴との関係が不明確である.このため, 全体的な形状特徴の把握, 制御が重要となる曲線設計においては, 巨視的な形状情報が新たな設計指標として望まれている.前報において, 筆者らは, 巨視的形状情報として提案した曲率エントロピーが, 製品レベルの自由度を有する曲線形状に対して適用可能であることを示した.しかし, 曲率エントロピーは曲線の連続性を考慮しておらず, 形状認知に適応しない場合があった.そこで, 本研究では, マルコフ過程を導入することにより曲線の連続性をモデル化し, 形状認知に適応した形状情報を提案した.その結果, 曲率2次エントロピーが, 規則性を有する基本的な曲線形状および自動車サイドビューのアウトラインにおいて, 全体的な形状特徴を表現し得ることを確認した.また, 同形状情報は, 形状生成の自由度を増しても, 全体的な形状特徴を制御するうえでの有効な設計指標であり, 同形状情報を用いた形状生成システム開発の可能性を示した.
  • 松岡 由幸, 佐藤 陵, 河合 晃平, 下川 真人
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    福祉車両における車椅子利用者の乗り心地改善を目標として, 筆者らはこれまでの研究において, 実車や加振台を用いた実験の結果をもとに, 乗り心地評価基準の作成や人体-車椅子系力学モデルの構築を行ってきた.本研究では, 具体的な振動対策として車椅子へのサスペンションの追加を想定し, その最適特性を, 体格差を考慮して求めることを目的とした.まず, 同系のモデルを用いてシミュレーションを行い, 年齢差, 性差を考慮した12体格における人体振動とサスペンション特性の関係を明らかにして, 各体格における最適特性を導出した.つぎに, 多様場対応型ロバスト設計方法に従い, 体格差にかかわらず安定して人体振動が減少するサスペンション最適特性を導出した.サスペンションを車椅子に追加することにより, すべての体格において, 乗り心地評価との相関が高い上胴部振動を40-50%低減できることが予測された.また, 着座姿勢と上胴部振動の関係を調べたところ, 臀部を前にずらす仙骨姿勢が乗り心地の悪化に結びつくことが示唆された.
  • 小林 正子
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 57-66
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は、英国建築家C.F.A.Voysey(1857-1941)の住宅作品における室名使用を通じて、彼の設計思想の一端を明らかにすることを目的としている。初期の作品において、英国の伝統的住宅形式であるホール・ハウスの多目的な空間機能をもったホールを参照し、室名リヴィング・ルームを使用することによって新たな住宅への試みを提示したヴォイジーは、ドローイング・ルームという接客空間の排除を果たそうと努めるが、それまで労働者階級での使用しか例のなかったリヴィング・ルームは富裕な中産階級のクライアントには受け入れられなかった。そこでヴォイジーはマナ・ハウスで使用されていた多目的で多義な空間名称としてのパーラーに着目する。ヴォイジーは伝統性を重視する設計思想から伝統的な様式を参照することになったが、それは彼の個性的な解釈によるものであった。そしてヴォイジーのその解釈は、近代における中産階級の住宅に新たな方向を示すとともに、彼のこうした努力が近代住宅の基本となる平面構成の確立を導くことになったと考えられる。
  • 曽和 具之, 朴 燦一, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 67-76
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    古くから漁業と農業を行ってきた幕張町は、東京などの都市部への食料を供給地としての役割を担ってきた。しかし、1960年代の高度経済成長期のころ、町に大きな転機が訪れた。特に、千葉県が幕張干潟を埋め立て新都心を建設したことにより、町の生活環境は一変した。新都心には、1989年に国際イベント会場、1997年には新興住宅地が誕生した。幕張町住民に対するアンケート調査を通して、住民の新都心諸施設利用実態を把握・検討した本調査では、以下の結果を得た。(1)総じて、海浜部の埋め立て以前と以後とを通して新都心と歴史をともにしてきた住民のなかに、異なる二つの集団、すなわち、新都心諸施設を多様に利活用する集団、自己の生活とは無縁なものとして新都心諸施設の利活用がみられない集団が生起しつつある。(2)総じて、新都心建設が開始されてから以降に居住した住民のなかにも、同様に、異なる二つの集団が生まれつつある。ただし、(1)では「余暇」を主目的とする集団分化であるのに対し、(2)では「仕事」を主目的とする集団分化になっている。
  • 佐藤 弘喜, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 77-84
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    多くの伝統的な文様には、複数の見方が存在している。造形用語を用いた評価実験に基づいて、視覚的に多義性のある文様の認知構造を表現することを試みた。評価から得られた結果を因子分析によって解析し、解釈することで複数の画像を作成した。得られた画像を"レイヤー"と名付け、その特徴から5種類に分類した。(1)明暗レイヤー(明暗やコントラストを捉えたもの)(2)テクスチャレイヤー(肌理や密度などを捉えたもの)(3)構造レイヤー(配列などの構造を捉えたもの)(4)運動レイヤー(流れや動きを捉えたもの)(5)ディテールレイヤー(部分的な形状を捉えたもの)テクスチャレイヤーと構造レイヤーが認知における順位の上位に多く認められ、これらのレイヤーは文様の全体的な特徴を示すものであることから、鑑賞者は文様の全体的な特徴を認知しやすいという傾向が明らかになった。
  • 松崎 元, 上原 勝, 上野 義雪, 井村 五郎
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 85-92
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    円柱の回転操作における指の使用状況が、円柱の直径変化によって、どのように推移するかを検討するため、操作台の正面および側面につまみを設定した場合について実験を行った。被験者は32名で、直径が異なる木製の円柱を45本用意し、無作為に選択された各円柱を、順に右手で時計回りに回転させた。床からつまみ中心軸までの高さは各被験者の肩峰高に合わせ、操作の状況は、手掌側からビデオカメラで撮影し、得られた画像から各指と円柱の接触状況を判断した。その結果、正面設定・側面設定のそれぞれについて、回転操作開始時に使用する指の本数が変化する境界値を相対的に図示し把握することができ、また、円柱の直径が増大するのに伴って、各指の接触位置がどのように推移するかを二次曲線で近似できた。更に、前報の上面設定のものと合わせて比較することで、回転操作における手指機能の部分的特性を明らかにし、製品デザインのための資料としても応用範囲を広げることができた。
  • 林 品彰
    原稿種別: 本文
    2001 年48 巻1 号 p. 93-102
    発行日: 2001/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は日本人が台湾で開催した視覚伝達デザインに関する大型行事「台湾勧業共進会」「中部台湾共進会」「高雄港勢展覧会」「商業美術展覧会」についての調査から、それらが台湾視覚伝達デザイン史上に果たした意義を考察するものである。研究の結果以下のことがわかった。(1)日本が台湾を統治していた時期、日本は台湾から多くの利益を吸収しようと台湾のインフラ整備及び産業開発を行い、台湾を現代化、資本主義化の方向へ次第に向かわせようとしていたが、本研究で取り上げた各大型行事は、こうした政策逐行の一環として行われた。(2)これらの行事から、日本統治時代の台湾ではすでに視覚伝達デザインが活発に行われていたことがわかる。(3)これら大型行事の計画及びデザインは、日本人主導によるものであったが、計画は細密、周到なものであり、デザイン表現も当時の日本国内のデザインスタイルを反映していた。(4)これらの展覧活動によると、日本は台湾での開発は政治や経済の目的だけではなく、文化的配慮あるいはデザイン発展を向上させる具体的行動もあると認められる。
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