デザイン学研究
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48 巻, 4 号
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  • 牛井渕 展子, 朴 燦一, 宮崎 清, 翁 徐得
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、台湾の学校給食において、地域資源の活用の実態を明らかにすることを目的として、実施校の類型化を試みた。ここでは、学校給食に活用される地域資源を、1)ものの側面に関する資源;食材・調理・料理、2)ふるまいの側面に関する資源;食器・食堂・食事環境、3)教育的側面に関する資源;食教育・郷土教育に分類し、各々の段階に応じた地域資源の活用の実態を把握した。その結果、以下の点が明らかになった。ものの側面に関する食材・調理・料理資源の活用に基づいて類型化したところ、1)食材他地域依存型、2)食材地元調達型、3)食材地域密着型、4)調理業者型、5)調理自立型、6)料理活用型、の6類型が得られた。それぞれの類型は、学校の所在する立地条件や学校規模、給食形態の違いがみられると同時に、その他、諸資源の活用に関しても特性がみられた。
  • 牛井渕 展子, 朴 燦一, 宮崎 清, 翁 徐得
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 11-20
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    前報で、台湾の学校給食は、地域資源の活用特性から、1)食材他地域依存型、2)食材地元調達型、3)食材地域密着型、4)調理業者型、5)調理自立型、6)料理活用型の6類型が得られた。本論では、それぞれの類型の地域資源を活用した学校給食に対する志向性を考察し、その相違点を検証した。その結果、以下の志向性が明らかになった。1)子どもたちの食生活文化の継承の一つの方法として、地域資源を活用した学校給食を生きた教材として、積極的に活用したいという考え方が多くの学校で共通してみられる。2)地域資源を積極的に活用している学校ほど、地域資源を活用する学校給食に対して期待が大きい。3)学校給食の運営に参画していない学校や実施していない学校では、地域資源の活用に対して積極的な考え方がみられない。総じて、地域資源を活用した学校給食に対する志向性は、積極性の強弱があるものの、台湾全域で望まれているといえる。本研究で得られた志向性は、今後の学校給食のあり方を思考するうえで、重要な指針と考えられる。
  • 牛井渕 展子, 朴 燦一, 宮崎 清, 翁 徐得
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 21-30
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、台湾における地域資源を活用した学校給食に関する一連の研究の第三報である。本研究は、台湾の学校給食の現状に関する評価を検証したものである。地域資源を活用した学校給食の実態が異なる四つの小中学校の児童・生徒、保護者、教師を対象に、学校給食を体験する側、学校給食に託す側、学校給食を実施する側の三つの側面から、現状の学校給食に対する評価を明らかにすると同時に、三者の学校給食に対する期待を検証することを目的とする。アンケート調査および現地調査を通して、1)学校給食に対する関心、2)現状に対する評価、3)今後の期待や展望を考察した結果、1)地域の諸資源と関連性の度合いが高いほど子ども・保護者・教師の評価は良い、2)保護者や教師は地域資源を活用した学校給食に対して教育的場の期待が大きい、3)子どもたちは主体性があり変化に富む楽しい給食を期待していることが明らかになった。
  • 渡辺 誠, 小野 健太, 金 哲浩, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 31-36
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 企業における事業ドメインとインハウスデザインの関係について明らかにしたものである。本研究では, 事業ドメインの変化が激しくかつデザイン部門を有する企業が多い, 電気機器と精密機器業界に絞り調査を行った。まず第一に, 電気機器・精密機器業界の事業ドメインを「家電」や「情報技術」などの8つに分類した。次に, この8つの事業ドメインを全て持つ企業から2つだけの企業で, デザイン部門を持つ企業13社に調査を行った。その結果, 以下に記すように, 事業ドメインの方針は3つに分類でき, それに対するデザイン部門の戦略的活動は4つであることがわかった。1.変化する事業ドメイン=「a.柔軟なデザイン組織の運営」2.コア・ドメインの先鋭化=「b.デザインの独自性の顕在化」3.事業ドメインの形成が今後も変化=「c.組織的な専門能力の育成」及び「d.デザイン組織における業務の領域拡大」そしてこれらは, 今後のインハウスデザイン部門のマネージメントの一つの指標になりうると考えられる。
  • 船津 邦夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 37-44
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本報告は、戦後における我が国のデザイン政策の中で、デザインを通じての国際交流・協力についての歴史的変遷を、その政策実行機関である財団法人国際デザイン交流協会及び同協会のアジア太平洋デザイン交流センターの設立経緯、趣旨、事業概要に焦点を当て報告するものである。デザイン政策は、変化する国際経済、企業活動、消費生活等さまざまな観点からデザインの活用や課題について策定されてきた。その中で国際交流・協力については、国際社会での我が国の役割や位置付けを十分考慮しながら展開され今日に至っている。特に公的機関としての組織体制の確立と事業推進は内外に対して大きな責任と影響力を持つものであるが、相互の文化・生活の尊重、理解とデザイン振興を主眼とした視点と実施内容が基本となる。また、これらの設立経緯、趣旨、事業への取組みから、我が国デザイン界の凝縮された発展の経緯と蓄積を見直すことによって、デザイン本来の役割と更なる可能性を再確認することができる。
  • 船津 邦夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 45-52
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本報告は、我が国のデザインの国際交流・協力事業の実施を行う機関における事業概要を、筆者の経験を踏まえて報告するものである。アジア諸国・地域に対するデザイン交流・協力は対象国の状況によって手法やプロセスは多少異なるものの、我が国が長年の蓄積として持つノウハウが各国のデザイン振興に役立っている。各種事業の実施は相手国・地域にとって成果や影響をもたらすのみならず、周辺諸国相互の産業・生活・文化の発展にとって有効なことである。国際的な経済・産業活動の枠組みの中で今後のデザイン振興のあり方を考えた場合、従来の積重ねと同時に全体の取組みを見直したきめの細かい対応策が必要とされる。そして公的機関ならではの各種活動に加えて、企業や教育研究機関も一体となった交流・協力と積極的なビジネス展開や共同研究こそが、対外的にも対内的にもデザインの活性化をもたらすことにつながる。
  • 田村 良一
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 53-62
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 商品ラインアップの構造とデザインの考え方の関係について類型化することを目的とするものである。本論では, テレビを対象として, 過去6年間における主要5メーカの商品ラインアップの構造について検討した。ブラウン管方式のテレビは「ワイドテレビ」「スタンダードテレビ」「複合型ワイドテレビ」「複合型スタンダードテレビ」の4種類のカテゴリに分類でき, 抽出された9種類の放送メディアへの対応機能の組合せの違いから, 細かくは38タイプに分類することができた。そこで, 各メーカの商品ラインアップを38タイプの有無により把握し, 数量化理論III類を用いて時系列的観点から分析した。その結果, 各カテゴリごとに商品ラインアップの展開は異なっており, ワイドテレビや複合型ワイドテレビにおいては, タイプに基づく商品展開であることがわかった。さらにワイドテレビの商品展開は, 5メーカに共通して多機能タイプのラインアップ化であることがわかったが, 商品ラインアップを特徴づけるタイプの違いから大きく3種類に分類でき, 各メーカの技術開発力の差や事業戦略の違いなどが影響していると考えられた。
  • 張 英裕, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 63-72
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    「剪黏」とは、割れた茶碗の破片や色ガラスなどを利用して必要な形に刻み、作品の表面に一つ一つ丁寧に貼ることによって制作される、寺廟建築の屋根装飾である。本稿では、文献調査ならびに中国南部沿岸地域および台湾における現地調査に基き、「剪黏」の起源・変遷・制作過程について考察した。その結果、次の諸点を明らかにした。(1)中国大陸における「剪黏」は、南部沿岸の泉州地域において、清時代1700年前後に生誕したと思われる。また、ほぼ同時代に、その制作方法が台湾に伝えられた。(2)「剪黏」制作の主たる素材は、かつては茶碗や花瓶などの破片であったが、最近では、専用陶片が使用されるようになっている。専用陶片の出現は、「剪(切る)」と「黏(貼る)」からなる本来の「剪黏」造形における「剪(切る)」の作業を不要にし、職人の即興的創作性を喪失させた。この傾向は、台湾において著しい。(3)「剪黏」の主たる制作過程は、針金による原形制作、筋肉材の原形への付着、外観材の粘着に分けられる。
  • 大森 峰輝
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 73-80
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    高層居住は我々にとって好ましくないことであるというような指摘や報告がされる場合がある。本稿では、これらに係る著述の論拠を探り、高層・超高層集合住宅の住環境デザインに際しての設計指針について検討した。その結果は、以下のようにまとめられる。1)高層居住に対する批判の論点は、生理・心理的影響、外出や子供の遊びなどの行動制約と拘束の問題、日常生活の安全性の問題の3つに分類できる。2)生理・心理的な影響、行動制約や拘束を回避するには、遊び場やコミュニティ・スペースを分散配置する等の対策を検討すべきである。3)犯罪や事故の原因が、必ずしも高層であることによるものだとは言えない。しかし、居住者の自治意識・連帯感を高める上で、住戸タイプ(間取り)の複合等の対策により居住者の年齢・家族構成等について配慮すべきである。
  • 耿 鳳英, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 81-90
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、台湾における博物館の歴史的変容を史実に基づいて整理し、次のことを明らかにした。(1)台湾の博物館の歴史は、日本植民統治時代、戦後の国民政府時代、戒厳令解除後の文化政策期に大きく大別できる。この歴史的流れのなかで、台湾の博物館は、中央政府に長期間いわば従属していた「中央型博物館」から、それぞれの博物館が存在する地域との連関を意図し、独自の文化的・社会的背景に立脚した「地域型博物館」へと、変容してきた。(2)日本植民統治時代の博物館は、台湾を殖産興業の基地とする日本政府の方針に基づいて殖産興業化を支援・誇示する博物館、ならびに、皇民化政策を支援・徹底するための博物館として機能した。(3)戦後の国民政府時代においては、中華思想を民衆に浸透・徹底するため、島民全員を同一的な中華民族に帰属させる意識高揚を果たす機関として、博物館が位置づけられた。(4)工業化が伸展し、戒厳令が解除されるようになって以降、台湾の博物館は、地域社会との結びつきを強めた運営への転換を志向し始めるようになった。
  • 斎藤 共永
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 91-100
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    デジタルがキーとなる情報化時代のデザインとはどのようなものであるべきかについての研究である。今日のデザイン方法の底流をなす、システマティックなデザイン方法は、情報を細分化し、再構成することに重点を置いた、アナリシスを中心とした方法である。ところがデジタル機器においては、「何を」デザインするかが問題となり、シンセシスの過程がより重要となる。そのため、新たな方法の要件として次のようなことが言える。1)人間-人工物の系を一体的・相互的な行為的関わりとして、その全体を再構成する。2)物理的環境と同時に、社会的・文化的環境を含めた相互関連の考察と、総体的把握をする。3)例えば、情報機器のデザインでは、その道具的目的だけではなく、コミュニケーションの在り方といった精神的目的へと考察範囲を広げる。4)デザイン主体の価値明示的な「視点のまとめあげ」が必要となる。5)総合すると、それはものの存在を定義づける「在り方のデザイン」と呼べる。
  • 李 愚訓, 朴 志洙, 柳 東錫
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 101-110
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では多チャンネル環境におけるデジタルテレビの使用性の問題をEPGとインタラクションデバイスに焦点を絞って分析した。まず多チャンネル環境におけるデジタルテレビの視聴に対するタスク分析を行いSkyPerfecTV加入者に対する使用性の問題を調べた。その結果、(1)パーソナルな視聴環境、(2)視聴妨害をしないEPGの表示形式、(3)チャンネルナビゲーションとプログラム探索を統合的に支援できるツール、(4)情報過多による認知的負荷の軽減、(5)迅速性と正確性を両立するインタラクションデバイスなどとユーザーインタフェース設計のための要求条件を導くことができた。これらの設計要求条件に基づいてパーソナルテレビという新たなインタラクションスタイルを提案し、チャンネルバーやプログラムパレットなどのユーザーインタフェースの設計を行った。さらに仮想放送局をベースにこれらの設計結果を具現化して使用性の向上を確認することができた。
  • 竹内 幸絵, 中山 修一
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 111-120
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は、戦後日本の広告界が受容したPR理諭の、広告デザインに対する影響を論述する。同理論は敗戦後極端な物資不足にあった復興期の日本にGHQの指導によってもたらされた。1930年代の経済不況下の労使関係改善あるいは余剰製品販売戦略として米国で発展した同理論は、こうした背景の違いもあって、日本では企業(官公庁)が大衆に民生企業(団体)として認知されるために必要な戦略として主に理解され広まった。同理論は導入当初、官公庁の広報活動に意識改革を喚起し、ポスターなどの広告デザインに応用された。1950年以降の景気回復期には、影響は民間企業にも拡大され、複数企業による連合広告の形態を経て、個別企業の広告表現にも採り入れられた。その広がりの強大さは、多様な業種の広告に、具体的な製品宣伝を目的としない「企業広告」の形式が増大したことに現れている。本論は復興期における日本の広告のデザインに、企業イメージの遡及という役割が付加されたことによってもたらされた変化の過程を、PR理論受容による広告関係者の意識変革と、広告表現の概念化に視点を置いて論じていく。
  • 田村 良一
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 121-130
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は, ブラウン管方式のテレビの中から, 商品ラインアップの構成比率が高い「ワイドテレビ」と「スタンダードテレビ」の2カテゴリを対象として, 主要5メーカの過去6年間の商品展開とデザインについて検討したものである。両カテゴリの商品展開は, ブラウン管および映像表示機能の高性能・高機能化に基づくものであり, その変化の過程は各メーカごとに異なることがわかった。また各年度の新機種を対象として, 外観デザインの共通性について調査したところ, 全機種が同一のデザインである「統一型デザイン」と複数のデザインが混在する「分散型デザイン」の2種類があることがわかった。さらに後者は, デザインの共通する観点の有無やその違いから, 「タイプ立脚型デザイン」「画面サイズ立脚型デザイン」, そしてデザインの統一がみられない「分散型デザイン」の3種類に分類できることがわかった。これらのデザインの考え方の違いはラインアップ化される新機種のタイプや画面サイズの種類などとともに, 各メーカの商品戦略の違いや生産コストに対する考え方の違いなどが影響していると考えられた。
  • 永井 由佳里, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 131-138
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    デザインにおける創造的思考の構造を探るためにはアイデアスケッチが手がかりになると考えられる.そこでアイデアスケッチが創造的デザインにどのように寄与しているのかを知るために実験をおこなった.約80人の被験者に2つの異なるキーワードによるペーパーウエイトのデザインを課した.ドローイングの経時的観察から, 被験者を主に2つの異なる思考タイプに分けることができた.1つはキーワードから直接連想される多くの具体的対象を想起して描き, その中から選択するというタイプであり, 他はキーワードをもとにいくつかの抽象的イメージを描きながら徐々に形状を完成させるタイプである.創造的なスケッチは後者のタイプに多かった.次にこれらの思考タイプとドローイングの描き方の関係を検討した結果, 前者の思考タイプでは輪郭線による描画が多く, 後者では具体的なイメージを抽象度の高い形態に練り上げたものが多かった.以上から, 創造的なデザインはキーワードで与えられた目標を, 抽象度の高いレベルのイメージ思考へ媒介させないと得られないのではないかという考えに至った.
  • 森 優子
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 139-146
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    文を書くには, 文字以外に句読点をはじめとするさまざまな記号や符号が使用される。文をより正確に, 読みやすく表現するためには, これらの記号類は重要な要素となる。日本語の横組の文で用いられている句読点には, 現在3通りの組み合わせが存在する。本稿では, 句読点の不統一性に着目することでその現状について把握し, 問題点の所在を明確にすることを目的とする。まず, これらの句読点がどのような規則に基づいて決められ, 使用されるに至ったのかを把握するため, 句読の指針を示す記述がある文献について調査した。次に, 句読点の使用の現状を知るために, 現在発行されている定期刊行物がどの方式を採用しているのか調査し, それらの分野ごとの傾向について比較した。最後に, アンケートを通して個人の句読点に関する意識調査を行った。句読点の不統一性に着目した3調査の結果, 句読点に関する一般の規則と, 印刷物における使用の実態, さらに個人が持つ意識の間には差異があることが明らかになった。
  • 宮木 慧子, 石村 真一
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 147-156
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は、有田(伊万里)焼のワラ荷造りにおける「輪巻き」と「菰包み(小口切り)」の特色ある形態に関する造形要素について考察することを目的とする。絵画資料および現地調査によって得られたワラ荷造りの造形要素等を考察した結果、次の結論を得た。(1)「菰包み」・円筒形俵タイプは、日本の伝統的包装技術である俵、苞、菰、縄の技術文化の発展とみられる。形態については、海上輸送を主体とする衝撃に強い小型陶磁器専用包装として発展してきた。(2)精緻な「輪巻き」は、造形要素である太縄(ドグラワ)の格別な意匠に特徴がある。意匠の独自性は、大型陶磁器を対象として、遠距離海上輸送における保護機能を最優先して発展した可能性が強い。さらに、調査の結果、輪巻きタイプの成立は、陶磁器包装にみる樽掛け縄の事例や、輪巻きの呼称が示すように、近世、酒の海上輸送用容器として発展した酒樽の〓の意匠や、樽の梱包文化との連関が類推される。
  • 長沢 幸子, 長沢 伸也
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 157-166
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    「ファッションイラストレーション」とはファッションを表現した絵の総称である。本論文では, 被服製作に関連した目的で描かれる「ファッションデザイン画」の範疇のうち, 被服のみを描く「意匠図」について, 太平洋戦争後のわが国における作画法の変遷を整理し, 作画の原理を明確にした。さらにファッション画の基礎教育のために, 被服造形の平面作図に近い手法で描ける意匠図の新作画システム「意匠図原型作画方式」を提案した。その一環として再現性がありかつ絶対的な原点としての「リアルプロポーション」「意匠図基本プロポーション」および「意匠図原型」を作成し提案した。これはわが国の被服造形の教育において人体寸法より起こした被服原型から平面作図に至る一連のシステムに対応するものと考えられる。「意匠図原型作画方式」が提案されたことの意義は大変大きいといえる。
  • 朴 燦一, 末岡 正章
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 167-176
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、博物館のバリアフリーへの対応の実態を把握・考察することにより、今後の博物館におけるバリアフリー計画推進の際に検討すべき課題の抽出を試みた。その結果、次の四つの検討課題が得られた。(1)視覚に訴えるプレゼンテーションが多くを占める博物館の特性上、現状では、視覚障害者にとって大きなバリアが存在している。今後は、音声や点字による説明や案内などを積極的に導入するなど、視覚障害者への対応を強化することが求められる。(2)「情報」のバリアフリーは、「移動」のバリアフリーに比べ、対応が遅れている。館内外でのコミュニケーションや情報提供・情報授受は不可欠な要素であり、今後、それへの対応が急務である。(3)長期的な視野で博物館におけるバリアを体系的に把握・検討・解決していくためには、専門委員会などの設置が求められる。(4)博物館職員のバリアフリーに対する意識が、個々の博物館におけるバリアフリーへの対応に反映している。今後は、博物館職員のバリアフリーに関する意識の高揚など、ソフト的側面の充実が重要である。
  • 時長 逸子, 荒生 薫
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 177-184
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    戦後の学校教育制度の発足に伴って展開された美術教育の一部に、色彩教育は属している。筆者らは、初等教育における色彩教育の展開に関して、学習指導要領を中心に、内容と背景を把握した。この結果、色彩教育の立場では色彩学に即した系統学習的手法が推奨されてきた歴史的背景がある反面、美術教育としてはこの手法を排除する方向に進んできたことがわかった。しかしながら、現在の美術教育が求める感覚的側面重視の教育は、色彩において色名教育を発端とする系統学習的方法を通じて培われるとする正反対の考え方が存在することがわかった。
  • 永井 由佳里, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 185-194
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    デザインの創造的な思考過程を言葉から形への変換過程と考えた場合, デザイン目標として与えられたキーワードによってどのように思考モードが異なるかを知るため, 約80人の被験者に実験をおこなった.まず形への変換の難易度が異なる二種類の言葉からそれらに相応しい花瓶の形を考えさせる課題を課した.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合はキーワードから連想できる具体的な事実や対象を描くことから花瓶の形を考える傾向があることがわかった.次に「悲しい気持ちにさせる」というキーワードに相応しい椅子の形を考えさせた.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合, ドローイングの過程でキーワードから思い浮かべられる人間の姿勢やものの状態などを媒介にして, 言葉の意味を形に近いレベルにまで構造化し, 椅子の形に結びつけていることがわかった.以上から, デザイン思考過程における思考の抽象度をデザイン目標から形としてのデザインの創出までの距離として考えれば, この距離が長いほど思考の努力が必要であり, その過程でのドローイングの役割も大きいことが推測できた.
  • 永井 由佳里, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 195-200
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本報では前報の実験1.2に続き, 実験3とその結果についての考察をおこない, 3つの実験全体の総括をおこなった.実験3では, 5つの異なるキーワードによる街灯のデザインを, キーワードごとに分けたグループでおこなわせ, その最終案を評価した.その結果, キーワードによるデザインの成功率の違いが見られ, それがアイデアを生み出す際の思考経路形成のキーワードによる違いに関係があると推測できた.第1報を含めて, これまでの実験結果を総合的に考察した結果, 創造性の高いデザインを生み出すためには, デザイン目標の設定から, それに適合するデザイン対象の(視覚空間的)形態表現達成までの思考の経路が長い(抽象度の高い思考を経る)ことが必要であり, その中に形の練り上げという過程が含まれていなければならないことがわかった.これらの結果をふまえて, 次に形の練り上げ過程に焦点を当てた実験および考察が必要であると考えられた.
  • 宮崎 紀郎, 玉垣 庸一, 佐藤 秀樹
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 201-206
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、新聞広告欄の形状と色彩がそのイメージに与える影響を明らかにし、魅力的な紙面デザインへの指標を得ることである。はじめに、広告欄の形状が異なる9枚の紙面サンプルを作成し、74人の大学生被験者に対してSD法による官能評価実験を行った。次に、その中の3つの典型的な形状について、各々4通りの彩色サンプルを作成し、64人の大学生被験者に官能評価実験を行って彩色による影響を調べた。その結果(1)両調査に共通する因子として"注目度"と"好感度"を抽出した。(2)変形の度合いが大きいほど注目度の評定が高く、通常の矩形型広告は好感度の評定が高かった。(3)4種類の彩色法のうち、フルカラー広告の評定は注目度、好感度ともに最大であるが、単色カラー広告の好感度は均一な網版の領域を有するモノクロ広告よりも低く評定され、4種類中最低であった。
  • 伊藤 教子
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 4 号 p. 207-214
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 駅の評価に大きな影響を与えると考えられる「混みあい感」が, どのような要因に影響を受け, 評価にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としたものである。このため, 学生を被験者とし, 4つの都心の駅を対象としたイメージ調査, 及びこのうちの2駅について画像呈示による空間評価実験を行い、分析を行った。その結果, 1)駅のイメージは「人が多い, 混んでいる, 疲れる, 騒々しい」というものであった。また日常的なイメージであるほど良いイメージを持たれており, 親しみやすいイメージであるほど, 総合的な評価が良いことがわかった。2)因子分析により, 「誘引性」「親近性」と考えられる駅のイメージが抽出された。3)数量化1類により, 男女共物理的要因が「混みあい感」に大きな影響を与えており, 参加意向には, 男女共に「混みあい感」とイメージが影響を与えていることが確認された。
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