デザイン学研究
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50 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 尹 明淑, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    山岳部・化北面の民家における伝統的な苞の文化を、制作・使用の両面から観察・考察した。その結果、次の特質を導出した。(1)地域内自作:生活に必要な苞は家々で自作された。(2)環境対応の素材活用:稲藁とともに、萩、萩の皮、玉蜀黍などが苞づくりの素材として活用された。(3)地理的条件対応の形態:起伏の多い地形での乾燥・運搬・収納などの行為に対応した苞の形態が工夫された。(4)生活空間構成対応の使用秩序:ドジャンを有する家は苞のほとんどがドジャンに収納されたが、ドジャンをもたない家は軒下空間などが苞の収納に当てられた。(5)地域における経済力の象徴:苞の所有状態は、そのまま、個々の家々の経済力を象徴していた。(6)信仰対応の規範:さまざまな神を屋敷空間に祀り、穀物を容れた苞が神との交信の媒体となった。(7)人間関係の調整:苞の貸し借りが行われ、苞が家々を結びつける役割を果たしていた。(8)資源循環型活用の秩序:すべての苞が補修・転用され、最終的には土に戻された。
  • 佐藤 陵, 岩橋 幸彦, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    車椅子車載システム搭載車両における車椅子利用者の乗り心地改善を目的として,筆者らはこれまでの研究で,人体-車椅子系力学モデルを用いた振動特性解析を行い,サスペンション装着車椅子の開発へ応用した.本研究は,車両側への振動対策として,車両側免振装置の乗り心地改善効果を振動面と感性面の双方から検証することを目的とした.まず,車両側免振装置を用いることによる乗り心地改善に着目し,免振装置が筆者らの振動特性解析の結果を反映するように設定した.つぎに,この免振装置を用いて実車走行実験を行い,振動および乗り心地評価を測定した.その結果,免振装置の稼動により人体振動は約15-30%低減し,乗り心地評価の向上が示された.さらに,サスペンション装着車椅子と比較した結果,乗り心地と相関の高い人体振動の共振周波数が低周波域に移り,双方ともに人が不快に感じる4-8Hzの周波数域において高い免振効果を確認した.これにより,免振装置の効果を検証するとともに,振動特性解析の結果の有用性を示した.
  • 岩井 正二
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    デザイン対象へ記号概念を具体的に当てはめることは,認識,コミュニケーションの枠組みを当てはめることに他ならない。この考えに基づいて記号論の授業を行なった。講義の内容としては,(1)「製品の使い方」はコードであり,マニュアルはコード書にあたる。(2)コードを言及する言語はメタ言語であり,「製品の使い方」の記号の単位はメタ言語による「製品の部分」と「状態の変化」で規定できる。(3)マニュアルはイメージの連鎖を構成する記号の連鎖を意識しデザインされなければならない。(4)エレクトロニクス製品の使い方は,多くの部分パースの記号分類によるシンボル記号に基づいている。(5)操作パネル上の記号は,隣接性と類似性に基づいて構造化され,デザインされなければならない。マニュアルデザイン演習は,記号論のより具体的な理解に役立ち,同時にユーザーの頭の中の記号を意識した的確なコミュニケーションヘの契機になったと考える。
  • 永井 由佳里, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究に先行しておこなった,多くの被験者を用い,ローイングに焦点を当てたデザイン過程についての実験結果をもとに,本研究では,より深くデザイン思考過程を探る目的でデザイン行為をリアルタイムで追跡観察する実験をおこなった.4人の被験者に,「きれいなテープディスペンサーのデザイン」という課題を課し,それぞれ約20分間にわたるデザイン行為の過程を詳細に観察記録した.実験の結果,デザイン課題の主部あるいは述部と探索空間の関係や思考モードとの関係,プレドローイング行為などが抽出され,思考過程を把握するうえでの重要な手がかりとなりうることが分かった. 続報においては,それらの実験記録の解析から,各被験者がどのような思考経路でデザイン創造をおこない,どのような種類の探索をおこなっているのかについて追体験的に考察し,各被験者の比較をおこない共通部分を抽出し,デザインにおける創造的思考過程を思考経路という観点からモデル化することを試みた.
  • 永井 由佳里, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    前報において,デザイン行為の創造的思考過程を実時間的に把握する目的で,4人の被験者を用いて思考過程の詳細な観察実験を行なった.実験では,実験者自身がデザイン経験を持つことを前提に,被験者の思考過程に対する追体験的な推測にもとづく観察をおこなった.著者らのこれに先立つ研究の結果を含め,各被験者の思考過程を比較検討し,探索の種類やそこで描かれたドローイングの種類との対応関係,探索方法の切り換えなどをおこないながら最終デザインに至る思考の経路といった観点から考察し,創造的思考過程の構造を把握することを試みた.その結果,各被験者が思考過程においてとる方略に応じた探索モードの段階的(時系列的)な組み合わせがあることが推測できた.この思考経路の組み合わせおよび切り換えの度合いによって,思考経路の複雑さが表現しうると考え,これを思考経路の距離という概念で表現し,創造性との関係を考察した.これらを総合し,デザインの創造的思考における思考経路の仮設的モデルとして提起した.これはデザイン行為における創造的思考過程解明へのーつの手がかりとなりうるものと考える.
  • 松田 龍人, 青山 英樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,消費者の形状に対する嗜好を予測し,消費者が求める形状を提示するシステムを開発することを目的としている.本報は,その基礎研究と位置づけられ,対象を自動車とした場合の形状の嗜好を予測する方法について提案している.アンケートより,自動車形状に対する感性を表現する8つの形状イメージ用語として,"かわいらしさ","あきのこない","カジュアル性","フオーマル性","安定感","シャープさ","スポーティさ","空間性"を抽出している.15年間の販売台数と自動車形状に対する形状イメージ用語の5段階評点データから重回帰分析を行い,各年の形状イメージ用語に対する標準偏回帰係数の近似式を導出している.この標準偏回帰係数を各年の形状嗜好を表す重みと仮定し,近似式から標準偏回帰係数を導出することにより,形状嗜好を予測している.車種別販売台数予測と実販売数の比較,および形状イメージ用語の標準値回帰係数の予測とアンケート結果との比較を行い,提案した形状嗜好の予測方法について評価している.
  • 佐藤 弘喜, 遠藤 善道, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    我々は過去の関連研究において、文様デザインに対する鑑賞者の認知構造をレイヤーという言葉で表現し、5種類に分類した。文様検索のために、各レイヤーの評価と画像解析による特徴値を対応付けることによって、レイヤーにもとづく評価を用いた文様の分類が可能であることを明らかにすることが本研究の目的である。画像解析の複数の手法を用いて文様の特徴を抽出した。レイヤーに関する評価と対応付けるための候補特徴値として、29の特徴値群をリストアップした。また、文様サンプルに対する印象評価実験を行った。評価結果と特徴値の対応を重回帰分析によって解析し、十分なレベルの相関が得られた。解析結果において、各レイヤーの評価が、複数の特徴値の組み合わせによって対応付けられることが確かめられた。したがって、レイヤーにもとづく評価を用いた文様の分類が可能であることを明らかにすることができた。
  • 崔 慈芳, 宮崎 紀郎, 玉垣 庸一
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,台湾の新聞における紙面の変遷について調べることを通して,今後の新聞デザインに資することである。台湾における新聞の歴史を概観した結果,4つの時期に大別されることが分った。本稿はその第1報として,日本統治時代(1895〜1945)および終戦後から報禁実施(1945〜1955)までの時期について調べたものである。調査の結果,台湾における最初の日刊新聞紙は日本統治時代に日本人により創刊されたものであり,台湾入の皇民化が目的であった。日本の新聞製作技術で作られた当時の新聞は紙面が日本の新聞と酷似しており,ここで台湾の新聞スタイルの雛型が固められた。1945年,終戦後,国民政府の台湾遷移が行われ,台湾の新聞は徐々に日本統治時代の新聞スタイルの影が薄まっていった。その後,各新聞社が中国出身の記者・編集経験者を多く採用したことから,中国の新聞づくりの慣習が取り入れられ,台湾独自の新聞スタイルが徐々に出来上っていった。新聞は政治的道具として位置付けられて発展してきたなか,紙面デザインにはその変遷が大き<反映されることが明らかになった。
  • 崔 慈芳, 宮崎 紀郎, 玉垣 庸一
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は台湾の新聞における紙面の変遷について調べることによって,今後の新聞デザインに資することが目的である。調査から,台湾における新聞の歴史は4つの時期に大別されることが分った。本稿は第1報に続き,報禁時代(1955〜1988)および報禁解除から現在に至るまでの解放時代(1988〜2002)について調べたものである。1955年,台湾ではページ数などを規制する報禁が敷かれた。当初は,各新聞社とも発行ページ数が少なかったため,報禁の影響は見られなかった。しかしながら,経済の発展にともない,増ページの要求が強まり,多くの情報を掲載するために,紙面はすきまなくぎっしりと詰められるレイアウトとなった。1988年,報禁が解除され,新聞の紙面デザインは豊かな変化を遂げつつある。それらの変化の背景には,大きく二つの要因がある。一つは1980年頃から導入の写真植字とコンピュータによる編集技術の革新であり,もう一つはコンビニエンスストアでの取扱量増大による販売形態の変化である。新聞デザインは,法令と新聞の流通により大き<変化させられたのである。
  • 白谷 貞夫, 酒井 正幸, 原 正樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2003/05/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    1980年代初頭からのエンドユーザーコンピューティングの進展とともに、オフィスにおけるコンピュータ機器・システムの使い易さと、快適で効率的な作業環境の形成・維持などに関するさまざまな課題が生じてきた。これらに対応し、コンピュータ機器・システムのデザイン開発現場においても、80年代後半から90年代を見通した、新たなオフィス情報処理環境のコンセプト構築と、その実現に向けたデザイン開発手法の獲得が不可欠となっていた。本稿では、筆者らが1980〜82年に実施した企業内デザイン研究を事例として、新たなデザイン方法論としての"インタラクション・デザイン"の概念とその手法について考察した。これらの考察を通じ、インタラクション・デザインの機能の検証と、今日のオフィスで一般的になっているワークステーション環境の構築において、そこでのデザイン課題の形成と基本的解決が、主に1980年代前半においてなされたことを示した。
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