デザイン学研究
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50 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 樋口 孝之, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 1-10
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    「意匠」の語としての由来は、3世紀後半に、文章の構成の進めかたを説いた陸機『文賦』という漢籍にあり、8世紀に、杜甫が詩のなかで画の構想を苦心して構想する描写に用いた用例が広<知られる。それらの解釈は、作文や絵画の制作における「構想」「旨趣」として理解される。日本では、漢籍からの解釈が学ばれる一方で、字義の訓から、「こころだくみ」「こころのたくみ」としての解釈がなされる。このときの「たくみ」は、「匠」の字義からではなく、ヤマトコトバの語義で理解されたものとみられる。明治初期に、作文や絵画の制作に関する表現以外に、普遍的な思考・思想の上での「考案」や「工夫」といった意味で用いられたことが確認された。「意匠」は、明治の初期には多用されることばではなかったが、明治中頃になって、一般的に用いられるようになっている。Designの対訳語として用いられる以前に、日本語語彙のなかで使用された漢語としての語義の構造があきらかになった。
  • 樋口 孝之, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 11-20
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は,明治期の主要な英和・和英辞書,専門用語辞書によって,日本語「意匠」と英語単語との対応関係を調査し,「意匠」の意味の考察を行なったものである。今日,designと「意匠」の対応は,おおむね「形状・色彩・横様などの結合的な考案」という意味に受けとめられている。「意匠」は,明治初期の主要な英和辞書において,構成する字義の訓「こころだくみ」として解釈された語義から,「ムナヅモリ」の漢字表記として用いられた意味合いが強く,designの'amental plan'の語義に対応していた。これは,美術や工芸の制作に限らない,一般の語法としての「心中における計画・工夫」の意であり,文脈に応じて,「企て」「胸算用」「工夫」などの類義として用いられた。調査対象とした辞書においては,図像を示すdesignへの対応はみられなかった。また,明治10年代に,哲学上の目的論(Teleology)において'adaptation of means toends'の意味で用いられるdesignに対して「意匠」があてられたことが確認された。
  • Toshikazu MACHIDA
    原稿種別: Article
    2004 年 50 巻 5 号 p. 21-30
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    The Traditional Craft Industries are said to have gone into a decline all over the country. The primary cause of this decline is thought to be the fact that the Traditional Craft Industries didn't give importance to our domestic life because it played an important role in the export industry. The Council of Traditional Craft Industries points to "Lack of interest in the traditional crafts" in the people of today as the main cause of their verdict. This report pointed that the decline of the Traditional Craft Industries was caused by the fact that the craft industries couldn't go along with fast-moving life after this verdict; this and other factors were discussed. Moreover, they suggested that they should rebuild the value built up by the traditional crafts from the viewpoint of the environment and reproduce it according to the needs of contemporary society as a basic way for solving the problem mentioned in this report. Lastly, the results of the factors that caused the declined were examined in a comprehensive way. In conclusion, they suggested that the value of traditional crafts accomplished in design and the prospect about what they must be should be very important, and that it should be more important to deepen the consideration of connotative significance than to express the traditional value in a particular way.
  • 全 聖福, 釜堀 文孝
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 31-38
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    大型スパーマーケットとショッピングセンター、コンビニエンスストアなどの出現は私たちの消費パターンを変化させ、そのため多くの企業が自社商品の広告やデザインに莫大な費用を投資している。これらの販売形式は消費者にいかに自社商品を認識させるのかが重要であり、特に多くの商品を陳列している陳列台で消費者に強い印象を与えるか否かは企業の自社商品の購買をうなかす大きな役目をはたしている。本論文は食品や生活用品購入において商品の消費行動はどんな動機と媒体によって影響を受け、商品においてどんな要素を重要だと思うのかについてその要因を蔚山(ウルサン)大学の学生52入に対して調査を行い、分析した。その結果、商品購入においては「色相」と「パッケージデザイン」が重要視されており、要素としては「品質」が最も重要視され、購入するタイプでは「広告でよく見た商品を購入」「陳列している商品を見て購入」するのが非常に高いことがわかった。又,広告媒体についてはTV広告が全体の2/3を占めるほどに大きい影響を及ぼしているという結論を得た。
  • 金 惠蓮, 寺澤 勉
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 39-46
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、展示会開催における廃棄物の問題点を抽出し、今後展示会計画においての廃棄物アセスメントとして小間展示の設計段階で廃棄物の量と質を予測するための、環境に配慮した設計システムの構築をめざすことである。日本全国で年間7,000件にのぼる展示会の開催にともなって排出されている廃棄物の実態は、定量的かつ定性的に把握できていないのが現状である。そこで本報では、2002年開催された産業展示会のうち、展示面積1,000㎡以上の展示会に絞り245件のサンプルをもとに分析をおこない、展示会の開催形態とその特徴による廃棄物問題点を把握し、今後解決すべき項目を明らかにした。その結果により、まず展示会での廃棄物量を把握するためには、小間展示の構成別に廃棄物発生量が把握できれば、それを基準に展示会での排出量が推定できると考え、小間展示の構成別に分類した。
  • 阿部 眞理
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 47-54
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は、スギ圧縮材、スギ材、ブナ材にスライス加工を施して単板を作製し、それを積層接着させて通直な積層材(LVL)と湾曲したLVLの試験片を試作し、それらの「曲げ強さ」について検討を加えたものである。検討の対象として上記3種の単板をそれぞれ単一材で構成したものと、積層材の表面層(表裏)にスギ圧縮単板、中心層にスギ単板を配したものも加えた。その結果、以下の項目が明確となった。(1)スギ圧縮単板を用いた通直LVLの曲げ強さは、いずれの積層構成においても、スギ単板のみの単一積層材の1.2〜1.3倍の強さを示した。(2)スギ圧縮単板を用いた湾曲LVLの曲げ強さは、いずれの積層構成においても、ブナ単板のみの単一積層材と同等の強さを示した。(3)LVLの軽量化、生産コスト削減を狙い、LVLの中心層にスギ単板を用いたが、試験の結果、この部分からの破壊はみられず、スギ圧縮単板のみのLVLと同等の強さを示した。
  • 朴 貞淑
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 55-62
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、岡山県の中庄・西市・芳田団地のシルバーハウジングの高齢者とLSA(Life Support Adviser)を対象に、高齢者の特性、日常生活の実態や問題点、住居環境、LSAの役割を把握することを目的として、アンケート調査とインタビューを行った。その結果、次のことが明らかになった。(1)高齢者は、1人暮らしの70歳代の女性が多かった。(2)高齢者は、現在のシルバーハウジングで住み続けたいと思っている。(3)高齢者は、安否確認と緊急通報装置について、十分理解している人が少なかった。(4)トイレ・浴室で、緊急通報の誤報が多かった。原因は緊急通報ボタンの位置に問題があり、改善すべき課題であった。(5)LSAの役割は、安否確認、日常生活の支援、緊急時の処置、コミュニティの支援であった。(6)菜園は、高齢者の趣味、ふれあいの場として使われていた。(7)生活相談室や団らんコーナー、LSAとの積極的な関わりを求めている高齢者は少なかった。本研究によって、以上の点が明らかになった。今後、高齢者の生活の質(Quality of Life)・価値を保つ住居環境のために検討すべき課題を示すことができた。
  • 白石 照美, 井ノ口 達也, 深水 義之, 吉田 登美男, 増山 英太郎
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 63-72
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,アーチ橋のライズ比に関する錯視量を定量的に測定し,それに基づく橋梁デザインの設計資料を開発することを目的とする。実験方法として,心理尺度構成法の一つである恒常和法(constant sum method)を用いた。まず,予備実験で被験者の訓練を行うと同時に実験方法として恒常和法が適していることを確認した。本実験で,以下の結果が得られた。1)直線図形がアーチ図形の下端に位置する場合は,ライズ比1/5.00を境に1/2.76〜1/5.00で過小視傾向,1/5.00〜1/10.00では過大視傾向になる。2)直線図形がアーチ図形のライズ高を2等分する位置の場合は,ライズ比1/4.50を境に1/2.76〜1/4.50で過小視傾向,1/4.50〜1/10.00では過大視傾向になる。3)直線図形がアーチ図形のクラウンに重なる位置と接する位置の場合,および直線図形がアーチ図形よりも上部に位置する場合では,顕著な錯視は生じない。
  • 白石 照美, 深水 義之, 吉田 登美男
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 73-78
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では室内の出隅および入隅図形の高さに関する錯視現象について、心理実験によって定量的にとらえることを試みる。空間の表現方法のひとつである2点透視図法を用いて室内の出隅と入隅をあらわす図形を作成し、これと高さを示す直線図形とを比較して恒常法的手法を用いた一対比較法によって錯視量を測定する。当初、これらの図形をM・L図形の変形とみなし、出隅図形に関しては過小視、入隅図形に関しては過大視が起きていると予測していたが、結果はM・L図形の実験結果とは異なり、入隅図形でも過小視が観測され、矢線の長さや、主線と矢線のなす角度が、錯視に大きな影響を与えていることが確認される。また、対称性の低い図形は高い図形に比べて、錯視量が大きいという傾向も観測され、図形の対称性が錯視量に影響している可能性も指摘している。
  • 白石 照美, 深水 義之, 吉田 登美男
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 5 号 p. 79-86
    発行日: 2004/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本報ではミユーラー・リヤー錯視図形(以下M・L図形)を手がかりに,室内の出隅および入隅図形に関する高さの錯視について,心理実験から得られた視覚的な現象を理論的に解析する。理論的解析の手法として,視覚の側抑制構造(コントラスト強調効果)を基に構築した視空間伝達特性モデルF(1)を用いる。F(1)によって得られた出隅・入隅図形の心理生理ポテンシャルは,図形の影響で視覚「場」に生じる不均質をあらわす。これを用いて錯視現象を定量的に説明するために,ポテンシャル重心間距離に着目する。実験の結果として出隅・入隅図形ともに過小視が観測されおり,出隅図形に対しては最大値領域の重心間距離,入隅図形に関しては,3つの鈍角にそれぞれポテンシャル領域が残る比較的低い閾値設定の重心間距離が図形の心理的長さを比較的よく説明している。
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