デザイン学研究
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50 巻, 6 号
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  • 金子 宜正
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 1-10
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    バウハウスを退職した後、ヨハネス・イッテンは、独自の造形美術学校イッテン・シューレ(1926-1934)をベルリンに創設した。同校の教師陣には、日本人画家・水越松南、竹久夢二がおり、小原図芳は水越の授業を見学した。また、自由学園からの二人の留学生(山室光子・笹川[当時旧姓今井]和子)が同校で学んだ。本稿で筆者は、ベルリンにおけるイッテンと日本人との交流の詳細、日本人画家がイッテンの芸術論に与えた影響、イッテンと日本人画家を結びつけた長井亜歴山の活躍、日本に伝えられだイッテン教育にみられる日本画の影響を明らかにした。更に、山室・笹川が日本でイッテン教育を広め、イッテンと教育的交流を持ち続けたこと、二人の友人でイッテンの教え子エヴァ・プラウトが大智浩にイッテン教育を教え、彼が後にイッテンの色彩論を邦訳するに至ったことを明らかにし、イッテンと日本のデザイン教育との接点について論じた。
  • 野宮 謙吾, 渡辺 静香
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 11-18
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、和文書体を見ることにより想起される視覚イメージと、読むことにより想起される音声イメージの関係について明らかにすることを目的としている。本調査では、語感の音声イメージ及び和文カタカナ書体の視覚イメー-ジそれぞれについてアンケートを行い、共通に選択されたイメージ(形容詞)を抽出した。さらに、和文カタカナ書体の特徴的なエレメントのみによる視覚イメージ調査を行い、特定のイメージを想起させる要素の絞り込みを試みた。分析の結果、和文カタカナ書体の視覚イメージと語感からの音声イメージの間には、共通のイメージ(形容詞)が存在することが確認できた。細いウェイトの書体についても、特定の音声とイメージの一致傾向がみられることから、本文組みの文字においても、書体の違いによって意図的に音声イメージを感じさせることができる可能性もあると考察した。
  • 八馬 智, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 19-28
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    現在の道路景観設計は評価基準の設定や体系化があまりなされていない状況にあり、社会的ニーズヘの対応に立ち後れている。このため本研究では、高速道路の景観設計において重要な課題となる「快適性」と「安心感」についての評価尺度を構築することを目的とした。まず,高速道路の内部景観を構成する要素を抽出するための調査を行い、そこで整理した要素がどの程度「快適性」と「安心感」に影響を与えているのかを評価実験により分析した。その結果,道路内部景観の基本骨格は横断面構造(側方勾配、表面材料)と道路線形(視距)によって成り立つことがわかった。そして、この2つの要素が評価に与える影響度に基づいて点数化を行い、簡便に使用できる評価尺度を構築した。さらに、評価尺度の妥当性を確認し、実際の道路設計に対する活用方法を考察した。
  • 全 聖福, 釜堀 文孝
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 29-38
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は食品や生活用品購入において商品のどのような要素を重視しているかについて「大学生が持っている商品購入の傾向」と「商品において各項目がどの位重要なのか」の二つの項目を蔚山(ウルサン)大学の学生52入に対して調査を行い、分析した。その結果、両方の各項目に対して、「デザイン」「機能」「販売」を重視しているのは「化粧品」「合成洗剤(お風呂用洗剤)」であり「デザイン」「販売」を重視しているのは「飲み物(果実飲み物,炭酸飲み物)」「アイスクリーム類(アイスクリーム)」「お菓子類(ビスケット)」「お菓子類(クッキー)」「お菓子類(スナック)」「お菓子類(パイ)」、「機能」「販売」を重視しているのは「歯ブラシ/歯磨き」「乳加工品(粉ミルク)」「合成洗剤(洗濯用洗剤」「発酵食品(ヨグルト)」、「デザイン」「機能」を重視しているのは「穀類加工品(ご飯)」「水産物加工品(しじみのみそ汁)」「レトルト食品(コムタン)」「調味料(みそ)」「即席乾燥食品(明太スープ)」「芳香剤」という結論を得、商品によって重要視する要因が異なることがわかった。
  • 一海 有里, 清水 忠男
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 39-46
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    南フランス・プロヴァンスの独立住居におけるテラス空間への緑の関わり方,およびその空間の使われ方について調査を行った。快適性を得るための伝統的手法である,テラスの空間構成に植物を導入し,季節に沿って陽光の調節を行う方法は,住民から高く評価され,現在の住宅にも受け継がれている反面,テラス空間におけるその緑陰のあり方には変化がみられた。テラスでは様々なアクティビティが展開されており,それは主に生活のゆとり・社交に関わるアクティビティが中心となっている。このようなテラス空間を,住民は日常生活において欠かせない存在として捉えている。テラス空間において,緑は単なる鑑賞の対象に留まらず,緑陰を提供する能動的な緑として,住宅屋内・外をつなぐ中間領域的な場の形成に寄与している。このような緑と関連を持ちながら生み出されるテラス空間の多機能性は,屋外生活を支援する装置として働くと同時に,豊かなライフスタイルの形成に貢献しているといえる。
  • 常見 美紀子
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 47-56
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    桑沢洋子は1954年に「桑沢デザイン研究所」を創立した。その創立メンバーの一人、勝見勝は、その前後に「国際デザイン協会」を設立し、日本における1950年から60年代のデザイン運動を牽引した。デザイン運動とは、デザイン教育、デザイン研究、グッドデザイン運動という三つの活動の総体を指す。デザイン教育としては、専門デザイン教育機関としての桑沢デザイン研究所の創立、普通教育としての造形教育を推進するための「造形教育センター」の設立である。デザイン研究としては、「日本デザイン学会」の創立である。グッドデザイン運動としては、一般市民への啓蒙としての銀座松屋における「グッドデザインコーナー」の開設、生活を美しく豊かにするデザインの総合雑誌『リビングデザイン』の発刊である。すなわち、桑沢デザイン研究所は単にデザイン教育機関のみならず、デザイン運動の中で諸活動を有機的に関運づけるデザイン運動体でもあった。
  • 川上 比奈子
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 57-66
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は、アイリーン・グレイ(Eileen Gray,1878-1976)が最小限住宅E.1027に用いたデザイン手法を明らかにする。彼女は「最小限の場所」に「最大限の快適生活」をもたらす住宅モデルとしてE.1027を設計し、「自然な動作や本能的な反応に最適な形を付与する」「住み手が建築の構築の中に自身を自覚する喜びを取り戻す」ことが重要と主張した。こうした考えが建築的にどのように解決されたかを探るため、グレイによる4つの複式図を分析した。複式図は、幾何学形態の一部を平行・回転移動させ、部屋や家具に複数の機能と形を生みだす操作を示している。それは狭さによって機能と形が限定される最小限住宅の難点を克服するために、空間に可変性を与える手法であった。考察の結果、これらの手法は他の建築エレメントや家具にも適用され、建築と家具を等価に扱っていることが明白となった。身体を建築と家具に連動させ、生活者が欲求に応じて能動的に住空間を変換・構築し「自身を自覚する喜び」を獲得するための一貫したデザイン手法がそこにみてとれる。
  • 川上 比奈子
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 67-76
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    アイリーン・グレイは、菅原精造から日本漆芸を学び、漆塗り屏風を制作した。建築家に移行した後、住宅「E.1027」において、ジグザグに折れ曲がる窓をデザインし「屏風窓」と名付けた。本稿では、グレイが屏風を建築に展開する契機を探る。彼女の最初の屏風は、伝統的な形式を踏襲した絵画的調度品であったが、やがて漆塗りと屏風の特質によって、立体が浮かび上がって見える幾何学線形の描かれたものが制作される。同時期、屏風に描かれるべき図柄を、多数の小型漆パネルに分解して再構成した屏風が生みだされた。映りこんで見えていただけの立体が、実体として表現されると共に、分解・回転によってできた空隙が屏風の構成要素に加わり、視線も風も遮らないものとなる。空隙は、屏風の既成概念を取り払う切掛けとなり、グレイは、屏風を窓や壁のデザインに展開し、また、新素材の美しさを活用し、住空間に多様性を与えることになった。グレイの屏風は、空間の光や空気を調節するとともに、空間の機能と形も変える変換装置といえる。
  • 河 鳳洙
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 77-86
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    コンピュータによる空間(立体)の表現は透視図法を多用している。しかし透視図法による3次元表現はそれ自体の構造的な問題によって歪みが生じる。それゆえ制作の際、人々は自分の感覚によってそれを修正していると考えられる。この修正される量を定量的に抽出すれば、最も好まれる3次元イメージを作り上げることも可能であると考えられる。本稿は、このような観点から視点移動を前提とし、バランスのとれた空間図形の分割傾向を実証的に検討した。その結果、視高だけを変化させた予備実験と同様に分割比1:1.5(線分gh上)は視点を移動させてもほとんど変わらないことが明らかになった。さらに、この結果を透視図法(逓減比)と比較することから、,空間比例モデルを抽出することができた。このモデルの特性は、数理的な秩序や統一感を喚起する相似形の反復である。これは、美しい3次元イメージを生み出す基本条件を備えていると考えられる。
  • 庄山 茂子, 浦川 理加, 江田 雅美
    原稿種別: 本文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 87-94
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、女子学生のリクルートスーツにおいて、シャツの色彩の違いが、服装メッセージにどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。調査に用いた試料は、ベーシックなdark Grayのスーツにオープンカラーのシャツである。12色のシャツの色について調査した(ペールトーン10色と無彩色2色)。調査対象者は、就職活動中の女子学生166名と採用者側の銀行員157名とした。女子学生が着たい色、採用者側が好感を持つ色について回答を求めた。それぞれの色について、25対の形容詞を用いてSD法によるイメージ評価をしてもらった。その結果、女子学生が着たい色および採用者側が好感を持つ色の上位は、White、Blueであった。因子分析の結果、女子学生は、着たい色に「洗練」や「知性」を求め、採用者側は交換を持つ色に「誠実さ」を感じている事が明らかとなった。シャツの色彩の違いにより異なる服装メッセージが認められた。
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