デザイン学研究
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51 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 石丸 進, 石村 真一
    原稿種別: 本文
    2004 年 51 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,わが国の室内・家具と中国家具文化とのかかわりを,坐臥具を中心に比較・検証した。その結果,次のことが明らかとなった。(1)中国坐臥具の床(牀ともかく)は寝台であり,日本の「床の間」「床几」「床子」などの語源や形態に影響した。(2)「榻」は,日本の縁台や店棚形式の坐具と類似する。(3)中国北方の寝床「?」での起居様式は日本と同じ床坐であった。?で使用する「?卓」は、日本の「座卓」の原型であった。(4)?の起源は,古代中国の俎を原型とし,小?子は,日本の踏台や風呂腰掛けと同一構造・形態であった。(5)条?は,日本の床几と構造・形態で一致し,使用法も類似していた。
  • 菅 靖子
    原稿種別: 本文
    2004 年 51 巻 3 号 p. 11-20
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は19世紀から20世紀にかけて日本の「美術製造品」のイギリスヘの輸出に関わっていた商社の相互関係や本国での活動に着目し,後期ヴィクトリア朝からエドワード朝にかけて同国における日本趣味を支えたインフラストラクチャの一端を解明することを目的とする。そのためにイギリス・日本の両国に活動拠点をもっていた3つの人脈,マリアンズ,ストロームとロットマン,そしてホームとセールを中心に築かれた諸商会の経営体制を検証する。彼らが縁戚関係あるいはパートナーシップを通して経営していた諸商会は,名称変更こそあったが,しばしば数年で消えてゆく当時の外国商会の高い破産率を乗り越えて比較的継続した活動を展開した。その要因のひとつには,これらの同業者達のあいだに代理店制度など直接の相互関係があったことがあげられる。雇用主や従業員の繋がりや店舗や在庫の引き継ぎからなるこうした横のネットワークは、イギリスの日本趣味の流通を支えた一要素であった。
  • 高梨 武彦
    原稿種別: 本文
    2004 年 51 巻 3 号 p. 21-30
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    京都の風景を考えてゆく上で、観光客など来訪者の森林に対する見方を整理しておくことが必要である。調査結果から考察された事項を示す。(1)人々は東山や嵐山の森林に対して強い関心を示すものではないが、曖昧に意識していること。(2)樹、種など森林の詳しい状況はほとんど判っていないこと。(3)どちらかといえば東山も嵐山も森林を風景要素の「背景」と捉えていること。(4)求める森林像は現在成立している森林の姿に重ねる傾向が読み取られ、固定した森林風景として捉えているわけではないこと。(5)今後、森林が遵移してゆくなかで、人々が求める森林像も並行して更新されてゆく可能性が示唆された。
  • Kazuyo OKABE, Takao KUROKAWA
    原稿種別: Article
    2004 年 51 巻 3 号 p. 31-38
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    To obtain basic knowledge for designing comfortable brassieres, the relationship between sensory evaluation and clothing pressure was investigated in 193 young Japanese women. Five types of brassieres (1/2 cup, 3/4 cup, full-cup, full-cup non-wire and sports types) were tested. Using the factor analysis technique, 6 factors with the cumulative contribution rate of 70.3% were extracted. Among those 6 factors, a dynamic functional factor was found to be the most contributory to wearing comfort of brassieres. Clothing pressure was measured at 29 points on the breast covered not only by the cup part but also by the frame part of brassieres in 11 subjects. The clothing pressure at the lower and lateral parts varied greatly according to the brassiere type. The dynamic function factor was influenced by the stability of brassieres which was closely related with the clothing pressure at the lower part of the cup.
  • 田中 隆充, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2004 年 51 巻 3 号 p. 39-46
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究はデザイナーが創造的なコンセプトを発想し、製品化へ展開する際に有効な支援方法の可能性を考察したものである。発想のプロセスには大きくわけて発散過程と収束過程があり、発散過程においてはできるだけ多く発想することによって創造的なコンセプトを有するアイデアが探索できるものと考える。本稿ではデザイン思考における要求概念と属性概念の関係を整理し、操作に直接関わる機能のレベルとその操作に結びつけることができるレベルでの実体の関係を否定表現化することで既成概念の枠組みをはずす方法を提案し、その理論的根拠の考察を行った。その結果、機能を実現させるために必要な操作を否定表現化することで、新たな創造的なコンセプトを発見し発想をより広げることが可能であるとともに、新しい製品コンセプトが構築できる可能性があることがわかった。
  • 田中 隆充, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2004 年 51 巻 3 号 p. 47-54
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は否定表現から得られた発想から、新規性のあるコンセプトを生成し、製品化へ展開する際に有効な支援方法の可能性を考察したものである。否定表現化による思考方法は、既に第1報で理論的根拠の考察を行った。本報では携帯電話を例に、第1報で述べた方法に基づき、実験と製品化事例を通してその可能性を考察した。その結果、実験においては否定表現から得られた発想では、否定表現をせずに行った発想にはない提案があった。これは、否定表現化により、強制的に推論することで的を絞った思考が促されたものと考察する。これにより否定表現化の方法は、新たに発想を生成する可能性があると考えた。また、製品化の事例においては、否定表現化から得られた言語的概念表現を形態的概念表現へと整合させることでマーケティングレベルでユーザーの要求概念と提案したコンセプトの合致を確認し、製品化へと発展させた。これにより、否定表現化による思考から、創造的なコンセプトを発想し、製品化へ展開する際に有効な支援方法の可能性を示すものと考えた。
  • 宮木 慧子, 石村 真一
    原稿種別: 本文
    2004 年 51 巻 3 号 p. 55-64
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    日本において,昭和40年代まで陶磁器の流通包装には,ワラ包装が行われていた。本研究は,有田・伊万里をはじめ東アジアにおいて広域調査を実施し,各窯業地の諸形態を明らかにして,日本のワラ包装形態を造形の視点から比較考察する。(1)日本の包装形態は,陶磁器の形状から大型器種と小型器種に対応する2系統8種のワラ包装タイプに類型化される。大型器種に対しては衝撃に強い「太織巻き」,小型器種には円筒形の「ワラ包み」が主に行われており,産地ごとに微妙に意匠の異なるものの,同一産地においては,それぞれ特色あるワラ包装技術を共有していた。(2)各産地における包装形態と意匠の独自性は,保護機能の他に産地識別のための情報機能をも果たしていた。(3)陶磁器包装の伝播は窯業技術の伝播と深い関連が窺える。江戸前期,景徳鎮の包装技術が有田にもたらされており,高品位の磁器創出を目指していた有田の美意識と日本のワラ文化の成熟が優れた意匠のワラ包装技術を確立したと考えられる。
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