デザイン学研究
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53 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 金 明蘭, 樋口 孝之, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2006 年 53 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    日本では,1970年代以降,地域づくり・町づくり運動に対する住民意識の高まりとともに街路景観に配慮した道路整備が行われ,歩行者に視覚的楽しみを与えるフットスケープデザインが各地の代表的街路や商店街において展開されるようになった。日本各地の25ヵ所の通りについて文献調査ならびに実地調査を行い,調査対象としたフットスケープデザインについて以下の知見が得られた。(1)ブロック工法として石材のほかに磁器質・陶器質のタイル材の利用が多くみられる,(2)ブロックエ法ではパターン展開に工夫が施されている,(3)地域性を表現するために絵タイルの使用例が複数みられる,(4)休息,ショッピングなど,通りの利用目的に合わせてFSDによるイメージが形成されている,(5)官と民が協調した道づくりが良い成果を導いている。総じて,舗装材やデザイン展開の技法などが多様であり,地域性を演出する配慮がなされている。事例を解析することからデザイン開発の方法論を確立していくことがこれからの課題である。
  • 金 相斗, 落合 太郎
    原稿種別: 本文
    2006 年 53 巻 2 号 p. 11-18
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    今日、河川再生における地域の非営利民間団体の役割に関する調査分析は"市民運動単位・NGO単位・NPO単位・ボランティア単位"で個別に行われることが多いが、これらの単位分野を横断的に研究したものは極めて少ない。本研究では、光州広域市に登録している30の非営利民間団体にアンケート調査を行い、光州川に対しての問題要因、改善の方向性を考察するため、光州川の現状や各団体の現況・意識を把握し、各団体の活動分野や活動内容についての自己評価に基づき、非営利民間団体の今後の役割を探った。さらに、予備調査で行った地域市民のアンケート結果から、光州川再生に必要と思われる項目として40%以上の回答を得た6分野の文化・芸術・イベント、環境教育、広告・広報活動、施策事業の提言、監視・モニタリング、障害者の利用施設を各団体に提示し、それらの分野が重要であるか、また、活動の満足度はどうであるかといったアンケート調査を行って重要度や満足度を分析した。
  • 鄭 秉国, 洪 起, 豊口 協
    原稿種別: 本文
    2006 年 53 巻 2 号 p. 19-28
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    第1報で記述されている商品に関わる因子、すなわち、ブランド名、コマーシャル、パッケージデザイン、価格等は消費者の購買活動予測に大変大きな影響を及ぼすことが報告されている。それ故、ある商品に関する消費者の購買活動状況を予測するためには、これらの因子を定量的に考慮した予測方法の定式化が望まれる。本稿は、市場における販売実績等の購買活動状況、またはアンケート調査に関するデータから尤度関数を統計的に評価し、商品の目的変数とデザイン因子との確率的な関係をベイズ的アプローチにより数量的に定式化する手法について述べ、デザイン開発者が、ある特定デザイン因子のイメージ評価を有する新商品のパッケージデザインを開発したとき、その商品の販売率または購買率等はどの程度になるかを推定する新しい数量化手法を提案し、数値解析例による検討をした。このような試験的な試みが、新商品のパッケージデザインに関する感性的なイメージ評価を因子とする目的変数予測の数量的評価にー助になることが望まれる。
  • Ming-Shih Chen
    原稿種別: Article
    2006 年 53 巻 2 号 p. 29-38
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    The microwave oven brings convenience and safety for the elderly; however, it has a trend to microelectronics, and the elderly have more difficulties operating it. Through the investigation, we can know that the elderly would be affected by the comprehension, recognition, and like in operating panels, even in age and education level. We compared two different interfaces of manipulation. The result indicates that numerals are preferred to time setting and comprehension of heat sections, while letters are preferred for advanced level buttons. The bigger the contrast between letters and background, the easier it is to read. Likewise, it will not be easy to understand Auto Cooking through a bunch of letters. Visual images using an icon are easier to read than written instructions. The instruction "Start" is much clearer than "On/Off". Colors help gathering attention, sound assists for better receiving, and buttons with lights are more distinguishable for the elderly.
  • 木内 正人
    原稿種別: 本文
    2006 年 53 巻 2 号 p. 39-48
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    セキュリティ・デザインとは、偽造防止を主な目的として紙幣をはじめ証明書等に施される緻密な線画模様を指すものである。これまでセキュリティ・デザインに関する文献は国内には無く、またセキュリティ・デザインを科学的に解析した文献も存在しなかった。しかし、今まで誰にも語られることの無かったセキュリティ・デザインは、歴史、経済システム、政治システム等を背景に、社会の変遷に伴って様々な要素が複雑に関係し合って、今もなお進化を続けているデザインでもある。本研究では、セキュリティ・デザインの表現手法とその役割について現状と歴史的価値を説明し、セキュリティ・デザインの法則を空間周波数解析によって検証することで、デジタル技術を活用した将来のITソリューションへの応用など、今後の偽造防止策並びにデザインに役立てることが可能であることを明らかにする。
  • 張 瑋琦, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2006 年 53 巻 2 号 p. 49-58
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    台湾の原住民地域においては、近年、地域づくりの方策として観光発展が重要視され、「原住民が主体となった観光」という概念が提起されている。こうした現状を踏まえ、本稿では、「原住民が主体となった観光」を創生することの重要性を考察するとともに、「観光デザイン」の役割と方針を検討した。台湾・花蓮県の太巴朗と馬太鞍の2つの原住民集落における現地調査に基づいて比較解析すると、両集落にはそれぞれにアイデンティティを有した観光活動が展開されているものの、相対的に、前者は「これまでの観光文化」の延長線上にあり、後者には「観光デザイン」の視点が組み込まれて「新たな観光文化」の創生がみられることがわかった。この解析を踏まえ、本稿では、「観光デザイン」の重要性を再認識しつつ、「原住民が主体となった観光」を創生していくための指針として、(1)地域デザインの自主権を住民に返すこと、(2)「影も見る・影も見せる観光」を創生すること、(3)「ホストが見る観光」をデザインすること、(4)新たな目で地域解説員の役割を考えることの4つを提起した。
  • 李 煕周, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2006 年 53 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2006/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本稿は、今日までほとんど省みられることがなかった韓国における「針仕事:パジヌル」文化を支えていた女性の姿と、その文化を創出した社会的状況を、古文献を通して明らかにしようとしたものである。厳格な儒教倫理が生活の隅々にまで貫徹された朝鮮時代後期は、女性にとって抑圧・束縛の時代そのものであった。支配階級の両班にあっても、また、庶民にあっても、男性上位の観念が絶対的で揺るぐことがないなかで、「針仕事」に精出すことが女性にとっての大切な徳目とされた。女性は内房(アンバン)に閉じこもり、糸紡ぎから裁縫・刺繍に至るまでの労働を行った。針・尺・鋏・鏝・アイロン・糸・指貫の7つを「友」とし、女性は、家族の衣生活のすべてを賄った。1本の針を大切にし、それが折れたときには心から嘆き働哭した。朝鮮時代後期の女性による「針仕事」が今日の私たちを驚愕させるほどに昇華された美的世界をなしているのは、それらに、抑圧・束縛の時代のなかで生きた当時の女性の慎ましやかな自己表現が表出されているからである。その行為と作品には、当時の女性たちのまさにアイデンティティが見て取れる。
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