デザイン学研究
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53 巻, 5 号
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  • 李 煕周, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 1-10
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    「閨房歌辭」は、朝鮮時代後期の女性たちが日々の暮らしを綴つたものである。本稿では、「閨房歌辭」にみられる「針仕事:バヌジル」の観察を通して朝鮮時代後期の「針仕事文化」の特性を考察し、次の諸点を明らかにした。(1)「針仕事」は、女性が16歳までに習得しなければならない大切な徳目として位置づけられていた。そして、一着の衣服をつくれることが一人前の成人女性としての証そのものとされた。(2)「針仕事」を通して、母と娘は、技術伝承だけでなく、女性に対する厳しい社会環境を共に越えようとする連帯性を培った。(3)「針仕事」は、女性自身の存在を表現する手段のひとつであった。また、「針仕事」の仕上がり具合が、女性の存在を社会的に認証する礎となっていた。(4)結婚生活は辛い家事労働の集積そのものであった。女性は、夜を徹して、「針仕事」を中心とする家事労働を貫徹した。(5)女性は、「針」と自分自身とを同等化することによって、辛い家事労働を乗り越えようとした。また、このような志向は、針仕事が韓国女性の生活そのものであったことを示している。
  • Seyed Javad ZAFARMAND, Kazuo SUGIYAMA, Makoto WATANABE, Kenta ONO
    原稿種別: Article
    2007 年 53 巻 5 号 p. 11-20
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    This paper presents the third phase of an analytical research on product aesthetic sustainability that its outline has been introduced in the first paper of these serial articles generally entitled 'An Inverse Approach to Product Aesthetic Durability'. The focus of research is on product aesthetic boredom, the opposite of product aesthetic durability. The individuals' actual experience of product aesthetic boredom has been surveyed during the second phase of research. But this third phase of research aims at experimenting with the subjects' appraisal of boredom of the objects in relation to the objects' form-structural characters. The choice of samples of two groups of mobile phone used in Japan and Iran and the form-structural variables are based on the results of the second phase of research presented in the last paper. Finally, it compares the derived form-structural patterns and their rates of boredom appraised by the Japanese and Iranian subjects regarding the same samples.
  • 石 磊, 張 〓, 山中 敏正, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 21-28
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究は快適な運転を実現するため、運転中のドライバーの感性的な評価を脳前頭部α波ゆらぎリズムによって測定し、ドライバーの感じ方と車両運動特性の相関性を解明することを目指した。特に車両曲線運動におけるドライバーの感じ方を考察の中心とした。走行実験としては、被験者に180°コーナリングの設定コースを実車で走行させた。走行中収録した被験者の前頭葉α波をHSK中枢リズムモニタースリムの出力モデルに基づき、ドライバーの快適感を「気分と覚醒感」の二軸に評価し、車両挙動指標との関連性を解析した。本研究は脳波の計測と解析による、人間の製品に対する感情など主観的な体験を客観化して評価するアプローチである。ユーザの心理活動に随伴する生理反応を利用し、人工物を客観的に評価する試みはある程度検証できた。
  • 榎本 雄介, 原田 利宣, 水谷 政夫
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 29-34
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    近年、非線形的データマイニング手法の一つである、ラフ集合理論が様々な分野で注目ざれている。しかし、その特徴を検証している研究例は多くない。そこで、本研究では腕時計をケーススタディとして、非線形的手法であるラフ集合理論と、線形的手法である数量化理論第II類から得られる推論結果の相違点について検証することを目的とした。まず、本研究では被験者41名に対して腕時計の選好に関するアンケート調査を行い、被験者を価値観の違いから5つのクラスターに分類した。次に、アンケート調査をもとに、数量化理論第II類によって得られた偏相関係数(以下、線形解)とラフ集合理論によって得られた縮約(以下、非線形解)を用いて選好分析を行った。さらに、分析結果から、数量化理論第IV類を用いて、線形解と非線形解の違いについて比較した。また、被験者の選好基準と線形解、非線形解の間でケンドールの一致係数を求めた。その結果から、線形解、非線形解の特徴を明らかにし、両者の特徴を検証した。
  • 篠原 久美子, 木下 武志, 一川 誠
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 35-42
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    画家やデザイナーらは,色の軽重感によって視覚的に心地よいバランスとなるように2次元作品の配色を操作していると言われている.本研究では,視覚的に心地よいバランスとなる配色を行うために,色相,彩度,明度の軽重感への影響を客観的手法に基づいて理解することを目的とした.2つの実験において,マンセル表色系から選ばれた計65色の色票の軽重感をマグニチュード推定法により測定した.実験1では,色相の軽重感への影響を理解するために,無彩色とそれと同明度の有彩色(10色相)の軽重感を調べた.実験2では,彩度が軽重感におよぼす影響を理解するために,彩度の異なる色の軽重感を4色相において調べた.どちらの実験においても,明度が一定であっても色相や彩度が異なることで,軽重感が体系的に変化することが示された.以上の実験結果は,視覚的に心地よいバランスのとれた配色を行うには,色の3属性それぞれが軽重感に及ぼす影響を理解することが有効であることを示唆している.
  • 金 志香, 宮崎 紀郎, 玉垣 庸一, 小原 康裕
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 43-52
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    多量の情報を扱うサイトにおける情報探索はユーザーにとって非常に困難である。本研究は、そうしたサイトの一つであるネット書店を対象にして、各サイトのナビゲーションを比較、分析し、情報探索および移動をより円滑にするナビゲーションの提案を行うものである。まず、既存のネット書店のなかで認知度のある4つを対象に探索実験を行い、問題点を抽出した。その結果、(1)分類が曖昧なこと、(2)構造の仕組みや使い方が分かりにくいこと、(3)構成が他のメニューと紛らわしいことが明らかになった。ついで、その3つの問題点を改善する3案のサンプルを制作した。この3つの改善案サンプルに、探索実験で一番高い評価を得た既存のサイトを加えた合計4つのサンプルを対象に「ユーザビリティテスト」による実験を行った。その結果、情報の探索および移動をより円滑にするためには、「安心感のあるナビゲーション」が求められていることが確認された。そして、安心感のあるナビゲーションとは、「クリックまでのマウスの移動距離」を短くすることが重要であることが分かった。
  • 範 聖璽, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 53-60
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    デザイン行為では,通常デザイン要求が言語表現で与えられるが,それを視覚空間的形態イメージに変換する過程がデザイン思考過程であるといえる。デザイン要求を表す目標表現は,デザイン思考における探索空間を限定するといえるが,実際のデザイン行為においては,同じデザイン要求であっても,その解釈の相違によって,結果としての視覚空間的形態表現も異なる。本研究では,「子供用のイスのデザイン」というデザイン要求を学生に課した実験により,その要求を解釈したコンセプトにおける言語表現の概念構造と,それに対応する視覚空間的形態表現との関係を,認知意味論のカテゴリー階層構造という視点からとらえ,デザイン要求の解釈の仕方の違いが形態表現における創造性とどのような関係があるかを確かめた。その結果,与えられたデザイン要求の解釈において,意味空間カテゴリーの中心的な解釈よりも,周縁的解釈の方が,作品の形態表現における新規性が高い傾向があることが分かった。
  • 範 聖璽, 野口 尚孝
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 61-68
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    デザインの創造的思考において,デザイン対象が属するカテゴリー(デザインしようとしているものがどのような名前で呼ばれるのか)を考える場合,いかにそのカテゴリーが示す対象の原型(プロトタイプ)のイメージを残しておくか,あるいはいかに新たなイメージを創出するかという視点の置き方によってデザイン対象のとらえかたと表現内容が大きく変わる。本報では,デザイン目標表現(デザイン対象の言語的表現)の相違から来る視点の相違と,デザイン対象のカテゴリーにおけるプロトタイプ・イメージの影響との関係を2つの実験によって確かめ,独創性の高いデザインを生み出すためのデザイン目標表現のあり方についての手がかりを探った。その結果,デザイン対象が属するカテゴリーの認知意味論的な基本レベルより上位のカテゴリーによるデザイン目標を与え,そこからその下位概念として基本レベルでの対象を考えさせるか,意図的にデザイン対象を含む,より大きな文脈でのデザイン目標を与えることにより,独創性のあるデザインを創出させることができることが分かった。
  • 遠藤 律子, 宮崎 紀郎
    原稿種別: 本文
    2007 年 53 巻 5 号 p. 69-78
    発行日: 2007/01/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    書物は印刷を表現手段とするグラフィックデザインの一部であり、印刷技術に支えられ、変化し続けてきた。本研究は、日本の書物の装幀の変遷を、主として印刷、製本、製紙などの技術との関係から参照する。これにより技術が装幀に与えた影響を浮き彫りにすることから、今後の装幀、ひいてはグラフィックデザインやコミュニケーションデザインに資することを目的とする。日本の書物は、主として西洋からの技術の導入により、従来培ってきた書物のあり方から、書物の構造と概念を大きく変えられるに至った。とりわけ、諸技術の導入期である明治の初頭における書物の装幀の改革は、現在の書物のデザインに大きく影響している。本論は継続研究の第1報であり、明治期の装幀についての調査結果を論じている。その結果、明治期を大きく3期に分割することができることが判明した。また、和装本から洋装本への移行の過程、方法が解明された。
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