デザイン学研究
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54 巻, 2 号
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  • 高梨 武彦
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    森林施業にあたって汎用されてきた指針は単位面積当たり本数である。木材生産とちがい森林風致施業の場合、本数の指示だけでは森林の風致の向上程度がわかりやすく表現できていない。林内の風致には見通しと明るさの確保が重要であり、これを反映する森林風致施業のための数値指標を考察した。林内の見通しと明るさにかかわる主因子を単位面積当たりの本数・胸高直径・枝下高・林床植生高・樹冠疎密度と判断し、これら因子より「枝下空間量」と「胸高直径指数」という関数を導き出した。それは施業による林内の風致の向上にむけた見通し距離・相対照度の想定を可能とし、森林風致施業の指針となることを示した。
  • 菅 靖子
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 9-18
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    今井(後に笹川)和子は,1930年代にヨーロッパへ留学した後,自由学園工芸研究所で中心的な役割を果たし,海外の国際展覧会に作品を出品した。本稿では,ヨーロッパのモダニズム的デザイン教育を体験した今井の工芸活動を,両大戦間期の日本における工芸産業,ジェンダー,そしてナショナリズムという三方向と関連させて論じる。フェミニズム思想に端を発した自由学園での工芸活動の基幹となった工芸研究所の設立過程,今井の留学先(プラハ国立工芸学校,イッテンシューレ,ライマンシューレ)での知見の広がり,帰国後の工芸研究所における指導者的役割を検証し,こうした今井の活動が当時の社会情勢のなかで徐々に日本の国家主義的な輸出工芸振興の思惑と絡んでいく過程を明らかにする。国策としてのモダンな工芸産業の奨励は,西洋で再びジャポニスムを興そうとすることでもあり,いわば「モダン・ジャポニスム」の戦略であった。今井の工芸のモダニティは,こうした国家の表象に寄与するものであった。
  • 伊藤 恵士, 桐谷 佳恵, 小原 康裕, 玉垣 庸一, 宮崎 紀郎
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 19-26
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    商品購入時のパッケージデザインの重要性をふまえ、ユーザ印象を考慮した日本酒のラベルデザインのあり方を検討するための基礎資料として、日本酒のパッケージの印象評価を行った。まず、13色の瓶の印象評価及び因子分析を行い、ユーザが瓶色に対して何らかのイメージを抱く事を確認した。次に、現行ラベルデザイン14種を6色の瓶と組み合わせ、それらの印象を評価させた。その結果、熟成感、濃淡感、嗜好性の因子が抽出された。ラベル自体の熟成感には色(彩度)、濃淡感には色(色相)と用いられるグラフィックの量、嗜好性には高級感を演出する金などの色や誘目性の高いレイアウトが効果的であることがわかった。そしてラベルの印象は、それが貼られる瓶の色によって大きく変化した。特に嗜好性は、瓶とラベルに使用されている色の統一感、色相差、明度差、色数によって大きく変わった。
  • 南 和幸, 田浦 俊春, 永井 由佳里
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 27-34
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    環境問題を背景に、持続的な使用を可能とする人工物のアプローチとして潜在機能という概念がある。人工物の取り巻く場が変化することによって、新たに発現する機能のことを潜在機能と呼び、潜在機能が豊かな人工物は廃棄行動の抑制に繋がると期待されている。しかし、どのような機能が人工物の潜在機能であると判断するのか、その基準は明確ではない。このため、潜在機能の観点から人工物を分析することが困難となっている。従って、見出される潜在機能を一般化して捉える手法が必要である。本研究では、概念辞書を用いて潜在機能を定量的に捉える手法を提案する。概念辞書の木構造に従い、被験者が見出す潜在機能の数と概念間距離を定め、ユーザが見出す潜在機能は人工物間でどのような関連があるのか分析を行った。結果、ユーザはテーブルやタンスといった複雑な人工物よりも、木やガラスといった単純な物からのほうが、潜在機能を見出しやすいことが、定量的に示すことができた。以上、本研究で提案した手法は、ユーザが見出す潜在機能を人工物間で比較する、有効な手段であることが示唆された。
  • Mijy Kwon, Sungheui Cho, Haruo Hibino
    原稿種別: Article
    2007 年 54 巻 2 号 p. 35-42
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    The demand for a new type of studio unit has increased gradually with the diversification of resident types. However, the current floor plans of studio unit do not utilize the benefit of an open plan in small areas. Thus, the purpose of this study is to propose several guidelines for the planning of studio unit that correspond to residents' needs in order to facilitate the benefit of open plans, such as efficiency and multi-purpose use within a small area. As the results, the design guidelines of planning studio unit could be suggested through five cases. These findings show that, for a better understanding of studio unit, further research by increasing the number of subjects and diversifying the dwelling size will be needed.
  • 陳 世海, 落合 太郎
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 43-48
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究は、台湾の都市空間に現存する伝統的アーケード「騎楼」(Qi-Lou)が本来有しているユニークな機能について、今日の複合化社会に存在する様々な問題にどう対処できるのかということに対し、利用者優位のユニバーサルデザインの概念を取り入れ、また、今日「騎楼」空間が抱えている「バリア問題」を住民の歩行安全及び生活の質の観点から考察した。本研究は、台湾北東部に位置する宜蘭市を対象として取り上げ、同市の「騎楼」空間や歩道を現地調査し、その結果を踏まえて論述した。また、「騎楼」空間が本来有する多元的機能性とその特徴を建築学的に理解するために、騎楼所有者の建築研究者及び建築士にも訪問調査を行い、その結果得られたそれぞれの専門的見解を得て分析評価の上、明らかとなった問題点を整理し、宜蘭市における「騎楼」空間とそれに付属する歩道空間の現状を把握し、歩行安全と生活の質の向上に関する改善策を検討した。
  • 粂川 美紀, 堀田 明裕
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    我が国の社会環境及び技術環境の変化は、デザインの概念および要求を変化させた。この変化の中で,特にデザインの新たな価値に関するデザイン・コンセプトの作成が重要となってきている。本研究はデザイン・コンセプトの構築手法を提案することを目的に、その構造化を試みた。文献調査によってデザイン、コンセプト、デザイン・コンセプトの定義を収集し、分析した。その結果、デザイン・コンセプトを構成している要因として行動、価値、手段が抽出された。この3要因を基にデザイン・コンセプトの改善と新たなデザイン・コンセプトの構築に関する2つのプロセスモデルを提案した。更に、このモデルを既存の事例と高齢者の装いに関する調査データによって検討し、その有効性を確かめた。
  • 粂川 美紀, 堀田 明裕
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究は高齢者の生活を活性化させる装い行為デザインの提案を目標に、先行研究で明らかにした装い行為の高齢者活性要因に対応する装い行為要求および価値観を検討することを目的とした。また、フィールド調査の手法を応用して、(1)研究者の能力に依存しないデータ分析手法、(2)要求抽出に特化した分析手法、(3)分析時間の短縮の課題に対して有効な手法を提案した。上記の手法に基づいて3名の高齢者を対象に面接調査を行い、装い行為に対する高齢者の顕在的要求および潜在的要求、またそれぞれの要求のうち実現されているもの、されていないものを抽出して分析した。その結果、装い行為要求と価値観の要求が一致している被験者に関しては、現状の装い行為に満足している傾向があり、これらが一致していない被験者は、現状の装い行為に満足していない傾向が見られた。これらの結果を基にそれぞれの被験者の活性化に有効な装い行為デザインの方向を検討した。
  • 土居 加奈子, 足立 啓, 田中 千歳
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究は、認知症高齢者グループホームの一般型と言われるリビングを中心に居室がとり囲む「ホール型」平面構成と、共用空間の選択肢が多い「非ホール型」平面構成の違いに着目し、行動観察調査やPEAP評価などを通じた、比較・評価を行った。「ホール型」では、家具などを配置しているが、居場所の選択肢は限定的で、偏りがみられた。また空間内に間仕切りがないため、職員は入居者を見守り易い反面、直接の目線を嫌う入居者への配慮は十分とはいえない傾向がみられた。一方、「非ホール型」では、見え隠れするような平面計画の場合は多様な居場所を提供することができるため、入居者のプライバシーや落ち着きが保たれ、より個別的な対応が可能であった。また、居場所の選択肢が増加するに伴い、そこでの生活行為も多岐にわたることが伺えた。一般に見守りが困難と考えがちな「非ホール型」であっても、見え隠れするような空間づくりをすることによって、個別的空間を提供し、入居者により良いケア環境を提供できる空間デザインの可能性が示唆された。
  • 粂川 美紀, 堀田 明裕
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究は高齢者が活性化する装い行為の要因の構造と効果を明らかにし、その条件から活性化のためのコンセプトの提言をすることを目的とした。文献調査から仮説モデルを作成した結果、装い行為が持つ活性効果は自意識を核として、身体志向に基づく生理的活性要因、対人志向に基づく心理的活性要因、帰属志向に基づく社会的活性要因の3要因から構成されていることが示された。次に、この仮説モデルを面接調査および質問紙調査によって検討した。その結果、上記の3つの要因にはそれぞれ、保守性と革新性を表すパラノ-スキゾ軸があると考えられた。これらは高齢者の属性によって対応する軸が変化していた。以上のことから高齢者が活性化する装い行為の条件として、1.多様な状況・属性に対応して幅広い選択肢を用意すること、2.装い行為に関する情報を提示すること、3.人間関係の中で装い行為をすることが考えられた。
  • 長井 千春, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    明治政府が遂行した殖産興業及び輸出振興政策において、明治20年頃迄は、陶磁器製造業が日本の在来産業の主役として重要な役割を果たした。1873(明治6)年に政府が正式に参加したウィーン万博に附随した海外伝習の結果、日本の陶磁器産業は飛躍的な成長を遂げることとなる。本稿では、陶磁器分野の最新技術習得をめざして日本から派遣された伝習生、納富介次郎、川原忠次郎、丹山陸郎の3名の研修地オーストリア・ボヘミア地方の磁器産業に焦点を当て、産地としての特徴を分析し、同地での研修の意義について考察を試みた。ドイツ文化圏の磁器産地の中でも後発のボヘミア地方は、セーブル窯、ミントン社などが競合する同時代のヨーロッパ陶磁器業界において、重830年代から優れた量産技術力で注目され、廉価な磁器製造、多様な海外需要への対応力に秀でていた。同地方はウィーン万博でも特に注目された産地の一つであった。日本政府は、既に自信を持っていた美術装飾品分野ではなく、日用品としての陶磁器量産工業技術の習得を目指し、研修地をボヘミア地方に決定したものと考えられる。
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