デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
55 巻, 6 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • Meng-Cong Zheng, Tadao Shimizu, Kiminobu Sato
    原稿種別: Article
    2009 年 55 巻 6 号 p. 1-10
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study is to understand how information signs correspond to users' various wayfinding behavior and how the signs serve their needs such as safety, pleasure, and smooth passage when walking between above-ground train stations. In order to find out how information signs work in diverse situations, interchange routes were set up for the subjects in two wayfinding experiments: one long-distance and the other short-distance. The results of the experiments showed a variety of behavior, even though the subjects had no time constraints. On the long-distance routes, the subjects requested maps or signs showing the particulars along the routes. It is evident that the subjects were generally in a lighthearted mood wandering about and really caring about the effectiveness of self-orientation. On the other hand, directional signs were requested for the short-distance route. Unfortunately, few signs were provided between the train stations. The subjects had to keep making decisions along the routes, especially when they were at intersections, where the information signs should be enhanced by providing a great number of signs. For these reasons, user needs suggested by the subjects' wayfinding behavior should be considered when planning information signs.
  • 朴 成桓, 釜池 光夫, 長尾 徹
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 11-20
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、乗用車デザイン開発における画像の印象構造と複合画像要素の調和性を明らかにすることである。はじめに、ユーザ(8枚)、環境(8枚)、車(5枚)の画像から受けた印象について各14の形容詞による5段階の印象評価を行い、因子分析を用いて三つの主成分に抽出した。さらに、ユーザ・環境・車の潜在変数間の関係を調べるため、因子分析から得られた三つの主成分を観測変数として用い共分散構造分析を行った。その結果、ユーザと環境因子が車の印象に影響を与えることが推定できた。特に、環境因子が車の印象により強く影響されることが把握できた。次に、ユーザ、環境、車の複合画像印象の調和性(マッチング)について評価し、ラフ集合による推論を行い、各車種ことに調和性の良い組み合わせを抽出した。さらに、ユーザと環境因子の組み合わせによる効果(車印象の相乗効果)を明らかにするため、車のみの単一画像と複合画像(ユーザ・環境・車)印象評価の比較検証を行い、複合画像のほうが車の印象の特徴がより強調される傾向があることが分かった。
  • 朴 成桓, 釜池 光夫, 長尾 徹
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 21-28
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、人の顔の認知に関する基礎的研究をベースに、乗用車のフロントマスクの表情印象を構造化し、表情印象と形態要素の関係性の検証を行い、乗用車のフロントマスクデザイン開発のおいて効果的に表情印象を持たせる為の形態要素を明らかにすることにある。はじめに、21車種のフロントマスクについて、表情印象評価用語(20語)による5段階リッカーと尺度で評価実験を行い、因子分析をした結果、快・不快の因子と覚醒水準の因子を軸とする表情印象マップを作成して、四つの表情印象グループ(Happy、Angry、Bored、Confident)を抽出することができた。次に、各表情印象グループの形態要素とその大きさが表情印象にどのように影響を与えているかを明らかにするため、形態要素をアイテムとしてカテゴリー化し数量化I類理論を用いて、その形態要素と表情印象グループの関係性を明らかにした。
  • 羅 彩雲, 宮崎 清, 楊 静, 植田 憲
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 29-38
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は、台湾における伝統的寝台「紅眠床」の風格様式を、時代性と地域性に留意しながら分析し、その変容を明らかにしたものである。実地調査により62体の「紅眠床」の資料を採集するとともに、文献調査を併用して、考察を行った。その結果、次のことを明らかにした。(1)使用者の社会的地位の表象であった漢式期の「紅眠床」には、主に床脚・堵を中心に、中国の伝統的紋様が施されている。(2)日本期には多様な装飾技術と新材料が導入され、「紅眠床」は職人の技術を競う対象となった。この期には、遮風を中心として、中国・西洋・日本の紋様が併用された風格様式の「紅眠床」が出現した。(3)戦後期では、大量生産が志向され、「紅眠床」は庶民的・実用的なものになった。彫刻が姿を消し、墨絵と挽物を中心とし、紋様の簡素化が図られた。(4)「紅眠床」の風格様式の変遷から、各時代の価値づけが推断される。すなわち、漢式期は彫刻の精緻度、日本期は新材料の運用、戦後期は価格の合理性に「紅眠床」の価値が置かれた。
  • Meng-Cong Zheng, Tadao Shimizu, Kiminobu Sato
    原稿種別: Article
    2009 年 55 巻 6 号 p. 39-48
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    We have learned from previous studies on long distance and short distance that subjects tend to be either of non-wandering priority or of wandering priority during their travel. So how underground limits affect users' wayfinding behavior between travels will be conducted in this study. Experiments on those with a non-wandering priority wayfinding with time constraint and wandering priority wayfinding without time constraint were then conducted to simulate the real situation of people travelling in an under-ground station. It is found that directional signs are used simply to make the users follow instructions and to direct people to move straight ahead, but the people had to see the sign before they could make a judgment. It only provides the information needed so that they can easily find and follow the path to their destination. Orientation signs force users to memorize the information shown on the map and confirm their memory while moving from one unfamiliar place to another. Under time stress, users require more functions from the information signs than what the system itself can actually provide.
  • 劉 賢国
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 49-58
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は、19世紀後半にパリ外国宣教会の宣教師による多言語『韓佛字典』の刊行及びそのタイポグラフィの特徴について考察し、以下のようなことを明らかにした。『韓佛字典』は、韓国における新式活版印刷による韓国最初の横組み多言語辞典である。『韓佛字典』の出版者C.Levyは、「セールレビーCerf Levy」であることが判明した。韓国語の活字書体は、チェ・ジヒョクが原字を書き、それを5号活字として製作された。多言語組版は、韓国語/発音(欧文)/漢字/意味(欧文)の表記順で7つの組版に構成しており、ベタ組均等配置の組み方を基準として運用された。特に、漢字由来の韓国語にはアステリスクが表記され区別されている。以上が本稿における主な新しい知見である。『韓佛字典』には、今後の韓国における発展のために重要な内容が含まれていることを明確にした。
  • 酒巻 隆治, 染矢 聡, 岡本 孝司
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 59-66
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文では,Webデザインがユーザに与える印象と,記憶される情報量との関係を明らかにするため,Webアンケート調査と被験者実験(眼球運動測定,ヒアリング)を通して調べた結果について報告する.まずSD法によりWebデザインが与える印象,評価を分析した結果,「利便性」「文字の可読性」「エンターテイメント性」というWeb評価因子が抽出された.また共分散構造分析を通し,良いデザインと思われるには「利便性」「エンターテイメント性」,再利用意向を高めるには「利便性」の影響が大きいことを明らかにした.またWeb閲覧時のユーザの眼球運動測定,閲覧後のヒアリングにより,注視された情報量と記憶された情報量とは相関関係があること.また,注視された情報量は「利便性」「エンターテイメント性」,記憶された情報量は「利便性」の影響が大きいことを示した.つまり,良いデザインと思われる為にも,再利用意向を高める為にも,情報が注視される為にも,記憶に残す為にも,「次に何をすればいいか迷わない」「タイトルが見つけやすい」などユーザのメンタルモデルに即した「利便性」をWeb上にデザインすることが重要となることが明らかになった.
  • 王 海冬, 宮崎 清, 植田 憲
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 67-76
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    中国のオロチョン族における伝統的な樺皮活用文化の諸相を現地調査することを通して、本稿では、オロチョン族の生活文化の特質として次の7つを析出した。(1)「一物全体活用」:白樺を無駄なく多様に活用する知恵。(2)「自然との共存・共生」:生存・生活に不可欠な白樺を不必要に伐採せず、自然資源を適度・適量に活用する生活実践。(3)「地産地消・自給自足」:当該地域で生産し、当該地域で使用する、自らがつくり、自らが使う文化。(4)「縦型世代伝承」:家庭における父母から子どもに、子どもから次世代に伝承される生活文化。(5)「相扶相助」:樺皮活用のすべての所作において相互扶助しながら生存・生活を図ってきた文化。(6)「身土不二・天人合一」:厳しい気候・風土と一体化して、自らがつくり伝えてきた文化。(7)「資源循環」:補修に補修を重ねながら、最後には樺皮活用の器物の一切を土に戻していく、生と死の不断の輪廻の文化。
  • 高島 翠
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 77-84
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    明るさの同化・対比現象は,図形の全体視・部分視の優位性や,知覚ディメンジョンの違いによって影響を受ける知覚現象である。このような知覚現象においては,美術や視覚心理学などの専門性により異なる見えが報告されることも知られている。本研究では,専門的知識の有無によって同化・対比現象に違いがみられるのは,専門的知識の有無により全体視・部分視の優位性と着目する知覚ディメンジョンが異なるためではないかと考え,実験を行った。その結果,1)専門性の高い観察者の方が部分視が優位であり,2)同じように部分視が優位な観察者であっても,専門性が高いと専門性が低い観察者よりも対比傾向を示すこと,3)専門性の高い観察者は複数のディメンジョンについて観察することができるが,4)専門性の低い観察者は表面色の変化のみに注目して観察することが示された。以上のことから,専門性の違いによる明るさの同化・対比現象への影響は,全体視・部分視の優位性といった観察様式だけでなく,観察者の注目するディメンジョンも重要であると考えられる。
  • 新井 竜治
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 85-94
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    戦後日本の木製家具メーカー及びベッドメーカーの家具を評価する一つの有効な指標はグッドデザイン賞である。本研究では、先行研究文献資料及び日本産業デザイン振興会のグッドデザインファインダーにおける半世紀分のGマーク商品の精査により、以下のことが判明した。この間に選定された木製家具メーカー及びベッドメーカーの家具の大半は、戦後日本人の生活様式を大きく変えた脚物家具とベッドであった。秋田木工、天童木工、コスガ、ヤマカワラタン、飛騨産業、二葉工業といった主要木製家具メーカーは、社外デザイナーを積極的に活用しつつ、社内デザイン部門と連携して、主に脚物家具のデザイン開発に取り組んだ。その受賞時期は主に60年代であり、意匠はミッドセンチュリー・モダンスタイル及びジャパニーズ・モダンスタイルであった。また西川産業、フランスベッド、アイシン精機といった主要ベッドメーカー各社には強力な社内デザイン部門が存在しており、主に普通ベッドのデザイン開発に注力した。その受賞時期は主に80年代であった。
  • 中西 啓
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 95-102
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、ハミルトン・エリスによる鉄道客車デザインの発展史「NINETEENTH CENTURY RAILWAY CARRIAGES」における叙述を分析対象とする言説分析の試みである。分析対象に比較的多く記される事物の終焉時期を記す解説文に着目し、これらの解説文を記すことが分析対象に何をもたらしているかを考察する。分析では、はじめにこれらの解説文を記すことが発展史として妥当であるか検証する。次にこれらの解説文がデザイン史学において有用であるか考察する。分析には統計学および精神分析学の知見を援用した。統計学の知見を援用する分析からは、事物の終焉時期を記す解説文が分析対象の発展史としての妥当性を損なっていないことが分かった。精神分析学の知見を援用する分析からは、事物の終焉時期を記す解説文の中に、因果関係の説明に客観性をもたらそうとする有用な解説文があることが分かった。これらの分析結果は、事物の終焉時期を記すことの有用性が、デザイン史学の領野において展開できる可能性を示している。
  • 郭 全生, 宮崎 清, 植田 憲
    原稿種別: 本文
    2009 年 55 巻 6 号 p. 103-112
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は、現地調査・文献調査を通して、洛陽地域南石山村における唐三彩工芸の生成から今日までの変遷を分析するとともに、唐三彩工芸を支えた職人たちの実像を明らかにしたものである。以下が判明した。(1)南石山村の唐三彩は、19世紀末の鉄道敷設工事の際に〓山で出土した唐三彩を、高氏族が瑠璃瓦焼成技術を活かして修復したのが起源である。職人たちは、墳墓から本物の唐三彩を盗掘し、その修繕ならびに複製を手がけるようになった。(2)南石山村の唐三彩職人たちは、唐三彩焼成技術を身につけたばかりか、漢代や北魏時代の出土品をも複製・鑑定した。(3)南石山村における唐三彩職人は、「家族伝授」ならびに「合作社伝授」の形態で、師徒制に基づく技術伝承を行ってきた。(4)「文化大革命」「改革開放」「計画生育」などの時代の潮流の中で、職人に対する歴史的・社会的侮蔑も相まって、村民の都市志向が急速に高まり、今日の南石山村唐三彩工芸文化は質的低下と後継者の激減に遭遇している。
feedback
Top