デザイン学研究
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56 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 倉持 淳子, 佐藤 啓一郎, 寺田 智, 岡田 衛
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、デジタル家電の新機能の使用を誘発するインタフェースを開発し、その有効性を明らかにすることを目的とした。前稿で、使用を動機づける要因を複数同定し、「キッカー(Kicker)」と名づけた。本稿ではキッカーの応用を試みた。テレビ機能搭載パソコンの新機能が、従来のテレビ同様に気軽に使われることを目指した。そのためには、キッカーをインタフェースに盛り込む必要がある、と考えた。キッカーの中から、〔なじみのある機能・操作〕キッカー、他2個を取り上げた。テレビにおいていちばん〔なじみのある機能・操作〕であるチャンネルに、新しい機能を割り振った。新しい機能とは、テレビ以外のコンテンツの選択、もしくはアプリケーションの起動であった。これを「チャンネルインタフェース」と名づけた。試作機を使って評価を行なった結果、このインタフェースは、初期使用を誘発する上で、有効であることが示唆された。
  • 平野 聖
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 7-16
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    扇風機の基本的な機能は,第2次世界大戦前に,ほぼ満足のゆく段階に至っており,戦後追加された機能としては,いわゆる「お座敷扇」に見られる首伸縮機能くらいである。これは1台で洋間にも和室にも使用可能な経済的な扇風機と認知され,団地を中心に広く受け入れられた。戦前発明された幅広3枚羽根の「エトラ扇」は,戦後特許が切れたことにより,各社がこぞって採用するようになる。安全性が確保されたことから,ガードの間隔の疎らなものが増え,流線型の本体との相乗効果により,戦前に比較し軽快でスマートな印象を与える扇風機も登場した。色彩に関しては,扇風機は「黒」という常識が,戦後のカラー化導入によって覆された。これは,進駐軍の影響とプラスチックの採用によるところが大きい。この時期の扇風機用ガードのデザインの多様性には目を見張るものがあり,扇風機のモデルチェンジやバリエーション展開により付加価値を与え,消費者の購買意欲をそそる営業戦略的側面において,大いに寄与している。
  • 野呂田 純一
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 17-22
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    幕末、幕府への報告書において、現代とほぼ同じ意味で単語「芸術」を使用したのは南画家渡辺崋山であったが、この報告書は陽の目を見ることはなかった。ペリーの浦賀来航後、幕府は外交文書の翻訳機関として蕃書調所を設立したが、その頭取古賀謹一郎は西洋の言語学、天文、地理、数学、物産学、精錬学、器械学、画学、活字術等を総称して芸術とした。その一方で物産学から活字術までを百工技芸とする者もおり、芸術と技芸は一部重複した概念であった。その後、幕府はフランス万博(1867年)の出品分類等を入手したが、その和訳においてartを絵画、彫刻、建築、版画を意味する芸術と訳す一方で、arts usuelsを日用品の製作技術だけでなく、見世物をも意味する技芸と訳しており、芸術と技芸が重複しないよう訳し分けられていることが判明した。また、Beaux-Artsは「精工」、「細工」と和訳されており、その具体的内容は精密な図柄を持つ工芸品であることが判明した。
  • Ming-tang WANG, Manlai YOU
    原稿種別: Article
    2009 年 56 巻 2 号 p. 23-32
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    In order to understand the development of motor scooters, this study investigated relevant information of manufacturers and their products from historical references, relevant documents, and the Internet, to conclude the development process of motor scooters. The process could be divided into four developmental stages. Especially, Yamaha produced Passola especially for women, and opened the third stage of motor scooters due to the innovation of materials and engine technology, and the reorientation of motor scooters for female market in 1977. Honda manufactured non-petroleum motor scooters which applied storage batteries and fuel batteries as the sources of energy, created the fourth stage: electric scooters. We found out the evolution of products was not only influenced by the outer environment tremendously, such as the influences by social economy, living demands, and capabilities of technology and manufacturing, meanwhile, it was also affected by the competition of relevant products.
  • 増成 和敏, 石村 眞一
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 33-42
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本論は,家具調テレビのデザイン成立過程を明らかにすることを目的として,テレビ受像機「嵯峨」に関し,主として文献史料調査より,以下の内容を明らかにした。1)広告記述で使用された「家具調」の表現が「家具調テレビ」のデザインを誘発する要因のひとつとなった。2)家具調の意味は,使われ始めた当初,和風,日本調と必ずしも一致するものではなかった。3)「嵯峨」は,特徴的なデザインと和風ネーミングの大量広告により,家具調テレビの典型となった。4)「嵯峨」の特徴は,張り出した天板,スピーカーグリル桟,本体と一体感のある脚,天然木の木質感表現である。5)「嵯峨」は,シリーズ展開されており,初代「嵯峨」とは差別化された多様なデザインが展開されている。
  • Tyan-Yu Wu, Wen-chih Chang
    原稿種別: Article
    2009 年 56 巻 2 号 p. 43-52
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    Bionic design has been broadly used in product design as a catalyst to evoke young consumer pleasure. The aim of this study is to develop a model for the development of a bionic product in order to evoke consumer pleasure. The Pleasurable Bionic Products Design Model (PBPDM) was developed in this paper based on the results of research and a review of the literature. A case study and experiment were conducted to support this design model. The findings show that practitioners valued both the 'user concerns board' and 'bionic image board' as effective and affective tools to communicate ideas and define design criteria, and to further develop concepts and form generation. ELM was also found to be a valuable tool for inspiring lateral thinking when performing ideation towards pleasure.
  • 佐賀 一郎
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    明治初期に登場した近代的新聞は,1869(明治2)年から1870(明治3)年にかけてに上海美華書館からもたらされた活版印刷技術の技術的発達を牽引した。本稿では,近代的日刊新聞としてはじめて鉛活字を全面的に使用した『東京日日新聞』(1872〔明治5〕年2月21日創刊)を対象にその内容と意義を検討する。『東京日日新聞』の創業者らは,近代的新聞の発行の条件のひとつに活版印刷を数え,上海美華書館から輸入した五号相当の鉛活字を使用したが,必要字種の不足,活字の形状の問題等によって,ごく短期間で頓挫した。本稿では同紙の印刷面を確認し,その内容と,この経験が後にどのような影響を与えたのかを検討する。上海美華書館の印刷技師からもたらされた外来技術である活版印刷技術は,特に草創期においては,これをいかにして実地に利用するかが問題とされていた。短期間に終わったとはいえ,『東京日日新聞』において行われた鉛活字の使用は,競合紙と同様の自家印刷環境の整備を促しただけでなく,後に多くの新聞が追随して使用した五号活字を基準とした紙面体裁の整備を促した。
  • 山本 佐恵
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    1940年のニューヨーク万博の展示館「カヴァード・スペース」に、日本は写真壁画《日本産業》を展示した。それは「造船」、「手工芸」、「紡績」、「機械工」、「航空」というテーマの5面から構成され、写真のモンタージュに加え、写真への着色や、金属、絣綿布、木綿紐、ガラス、加工ベニヤ板等を写真に組み合わせて構成するなど、造形的処理が施されていた。こうした手法は、欧米の模倣や追従ではない独自の表現方法として、当時、日本の批評家から高く評価された。《日本産業》に使われた写真は、土門拳など当時の新進写真家たちが撮影した「報道写真」だった。5面を連結させて一つのテーマを構成する方法は、「報道写真」における「組写真」の形式にならったものだった。その背景には、当時ドイツから移入された新即物主義と、そこから生まれた「リアル・フォト」の表現があった。また、報道写真家パウル・ヴォルフの写真から、構図や表現に多くの示唆を受けた可能性が指摘できる。
  • 朴 貞淑, 上田 篤嗣, 金 〓
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    コミュニティ(地域)におけるユニバーサルデザインについて、岡山県JR駅(岡山駅・倉敷駅・総社駅)周辺地域を対象として、タウンウォッチングによる実態調査及びアンケート及びインタビュー調査を行い、次のような実態が明らかになった。(1)駅構内の案内サインの文字が小さく識別が困難である。(2)車いす用のトイレが少ない。(3)高齢者や身体障がい者、車いす使用者のためのエレベーターやエスカレーターが少ない。(4)チケット券売機の位置が高く、車いす使用者の手が届きにくい。(5)改札口が通りにくい。(6)ベンチなど休める環境が整備されていない。(7)段差や歩道の凸凹が大きく、通行が困難である。(8)道幅が狭く車いすでの通行に危険性が高い。(9)放置された自転車やバイクで通行が困難である。駅のユニバーサルデザインへの満足度について、利用者のほとんどが不満足を示すほど、整備環境が不十分であることが分かった。コミュニティ(地域)を構成する、市民、NPO、事業者、行政とのネットワークを構築し、バリアフリーの基盤整備を行う必要がある。
  • 郭 全生, 宮崎 清, 植田 憲
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本論は洛陽地域南石山村における唐三彩の制作技術の形成と変容について、職人からの聴書きを中心としてまとめたものである。その結果、以下の諸点を明らかにした。(1)唐三彩制作技術の起源は、漢代の鉛釉陶器の焼成技術が礎であった。唐代になり、単色釉から多種類の色釉へと発展し、色鮮やかな視覚的効果が形成された。(2)南石山村における唐三彩の制作・焼成技術は、約100年の歴史を経た今日でも、大筋において変わりがない。(3)伝統唐三彩と新工芸唐三彩の制作工程には多少の差異がある。1970年代以降、職人たちの間での分業化が進みつつある。(4)1980年代以来の大量生産の潮流とともに、唐三彩は多くの人びとの生活に導入されるようになった。しかしながら、伝統的装飾が減りつつあり、立体彫刻が中心となっている。
  • 新井 竜治
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2009/07/31
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    天童木工の一般家庭用家具シリーズは住宅の室内を総合的に構成するものであった。また官公庁・公共施設・一般企業向け家具シリーズには、日本で最初に開発されたオフィス・システム家具シリーズであるOFgroup-1とその後続シリーズ、図書館用家具・高齢者福祉用家具・ベンチ・テーブル・大会議テーブル等の各シリーズがあった。そして天童木工は1986年から93年まで官公庁・公共施設・一般企業向け家具に特化していた。次に、60年代の天童木工家具デザインコンクールには、その作品の量産化よりも、家具デザイナーに研鑽の場を提供したという意義があった。また天童木工名作家具のデザイナーの中では、特に剣持勇の貢献が大きかった。それから、天童木工は50・60年代にアメリカ、北欧、ブラジルのモダニズムの影響を受けたミッドセンチュリー・モダニズムの家具を製作した。またジャパニーズ・モダニズムの家具も製作した。更に80年代にはポスト・モダニズムの影響を受けた家具を製作した他、構造体の美を追求する後期モダニズムの影響を受けた家具も製作した。
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