デザイン学研究
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56 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 関場 亜利果
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は現代キネティック・アートの動向を探る一環として,グルッポTの「ミリオラマ15」を報告する事である。グルッポTはイタリアのキネティック・アートを代表する作家で,彼らの活動「ミリオラマ」は開催順に番号が付けられている。第9回ミリオラマは東京で行われ,我が国に最も早く紹介されたイタリア戦後美術の一つである。今日までグループは正式に解散していないが,事実上1964年の第14回ミリオラマ以降は各メンバー個人の活動が中心となっていた。2008年,グループは長い休止期間を経て通算第15回目のミリオラマを開催した。これは近年の再評価の動向を受け,ヴァルモール美術スタジオが企画・開催したものである。本稿は「ミリオラマ15」について現地調査を行い,作品の特徴や現代におけるキネティック・アートの意義を考察した。その結果,グルッポTの作品と現代美術との共通点を明らかにした。また近年みられる再評価の背景として,インタラクティブ・アートなどのメディア・アートの先駆として注目されている事を確認した。
  • 岩田 彩子, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 11-20
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    第二次世界大戦後、廃土と化した国土復興のための国策は、輸出貿易振興による産業の活性化であった。その役割を担う新たな社会的職能として、「幻の技術者」としてのインダストリアルデザイナーが生誕した。戦時中の抑圧から解放され、インダストリアルデザイナーたちは、海外へのデザイン留学や外国人講師の招聘などを通して、先進的な技術・知識を吸収し始めた。このような時代背景のなかで、1952年10月20日、日本における唯一のインダストリアルデザイナーの全国組織である日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)が創立された。JIDAが1950年代に発行した機関誌からは、「インダストリアルデザイナーたちの組織づくり」「インダストリアルデザインの普及・啓蒙」「国際化のなかでの日本のインダストリアルデザイン」などの諸問題が読み取れる。1950年代のJIDAは、欧米とりわけアメリカにおけるインダストリアルデザインといういわば異文化との遭遇のなかで、総じて、日本の産業・経済・生活に連動するインダストリアルデザインの基盤づくりの役割を担った。
  • 井上 勝雄, 藤井 忠夫, 原田 実穂, 中川 亮
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 21-30
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    これまで,研究者らは飲食店とヘアサロンの店舗の店舗デザインの研究を行ってきている。本研究では,研究者らがこれまで行ってきた製品デザインの方法論を店舗デザインに適用するだけでなく,その分析結果をもとに,一級建築士に依頼して,新しい店舗デザインの基本設計を行ってもらった。分析方法としては,人間の認知評価構造の視点から,最上位の態度(「入りたい」または「入りやすい」)とイメージ(中位)および認知部位(下位)で構成される2つの階層構造を区間回帰分析とラフ集合を用いて,若い女性の洋菓子店に対する認知評価構造を解明した。次に,その認知評価構造の変更によるデザインコンセプトを策定して,2案のデザインスケッチ案を作成した。さらにスケッチ案がデザインコンセプトをどの程度表現しているかの検証も行った。その結果,3次元CGスケッチの空間表現の限界はあったが,スケッチ案はデザインコンセプトを半分以上反映したものであることが確認された。
  • Ngo Thi Thu Trang, Takatoshi TAUCHI, Fumio TERAUCHI, Mitsunori KUBO, H ...
    原稿種別: Article
    2009 年 56 巻 3 号 p. 31-40
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    This research has firstly explored the diversity, historical development, techniques and applied range of products of Japanese and Vietnamese materials in traditional daily products. All of those issues have been in turn studied in each material such as wood ware, lacquer ware, ceramic ware, metal ware, bamboo ware, stone ware, paper ware, and others for both countries. An analysis on the frequency level of using of materials has shown the favor of Japan in wood and lacquer mediums, and the abundance of Vietnam in ceramic and metal wares. Some more detail differences were also found in using materials among 3 big groups of Japanese and Vietnamese products according to the using activity: eating, drinking and living. Finally, through the investigation on characteristics of combining of material in Vietnamese and Japanese traditional daily products, the result came out quite distinguish between two countries: a manner of high contrast was felt all over the items of Japan, whilst uniform and harmony feeling went through the Vietnamese products.
  • Ngo Thi Thu Trang, Takatoshi TAUCHI, Fumio TERAUCHI, Mitsunori KUBO, H ...
    原稿種別: Article
    2009 年 56 巻 3 号 p. 41-50
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    This paper presents the major analyses carried out on shape and form's characteristic database from Japanese and Vietnamese traditional daily products (TDPs). The aim of the research is to recognize the vital specifications representing for a national style by comparing two different countries together. By using Quantification Theory Type III and Cluster analysis, firstly, the analyses were undergone separately for Japanese and then Vietnamese product data in succession so that a view of general direction for each country was caught. The result showing a difference in scale of "Complexity" and "Specification" axis between Japan and Vietnam leads to performance of the analysis done on combine database of the two countries to get a clearer view of correlation between them. However, the biggest difference between the two countries lies in "Form" (Geometric-Organic) axis. Continuously, for studying more deeply into outline of product shape, the main ratios that affect the appearance or gorgeousness of product's outline were taken into account and analyzed. By comparing this result to the previous ones, finally a wider and more detail perspective of Japan and Vietnam shape's specification in a mutual relationship was discovered.
  • 菊池 利彦, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 51-60
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    村落は、生産から祭祀まで、人びとのおよそあらゆる営みが行われる場所であり、一定の秩序を備えた小宇宙であった。村落の空間秩序の有りようは、そこで展開される人びとのふるまいや伝統行事の様態からうかがうことができる。本稿は、成田市下方における伝統的厄払い行事「人形送り」に注目し、その行事のなかで展開される人びとの所作を読み解き、行事に内包される人びとの空間観念を析出し、当該村落の人びとがなした空間意匠の特質を考察した。それにより、以下の知見を得た。(1)「人形送り」にみられる所作には、藁人形を神格に変貌させ、これを定められた場所に掲げることにより、災厄の村落への侵入を防ぐ意図がうかがわれる。(2)「人形送り」には、下方の4つの集落と集落が管轄する田地全体を「内」とする空間観念が内包されている。(3)「人形送り」は、平穏な生活空間の創出を志向した村落の人びとによる空間意匠そのものであり、時間空間を共有する人びとの間に規範意識や同族意識を醸成するものである。
  • 蘆澤 雄亮, 森行 浩人, 小野 健太, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 61-70
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    今日、デザインが対象とする領域は拡大の一途を辿っている。その理由としてデザインという行為が非常に多くのことがらにおいて適用可能な方法論を持っているということが考えられる。しかし既存のデザイン方法論は、特定の領域に特化したものが多く、デザインの普遍的な方法論を解明したものは見られない。そこで本稿では多くの領域において適用可能である基本的なデザインの思考方法論構築を行った。過去に行われた研究におけるプロセスモデルや方法論をまとめたデザインプロセス概念図と、デザイナーへのヒアリング調査から得られた実務プロセス事例の分析より、Find、Acquisition、Evaluation、Simulationのループによって構成されるFASEモデルが導かれた。さらにFASEモデルに沿ったデザインプロセスの解釈により、これまで分類不可能とされてきた「解決型」および「提案型」の特徴を発見することができた。
  • 蘆澤 雄亮, 森行 浩人, 小野 健太, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 71-80
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本稿ではデザイン行為の思考モデルであるFASEモデルをさらに掘り下げ、デザイン思考の仕組みについて認知科学の観点から考察を行なった。その結果、FASEモデルにおいて最も特徴的な思考プロセスは外的刺激を伴わずとも行なうことができるSimulationであり、その仕組みはソマティック・マーカー仮説による「あたかもループ」に類似していることがわかった。また、あたかもループを神経科学的な観点から考察した結果、あたかもループは「情報の統合と予測」と「情動情報の変換」が重要なファクターとなり、言語機能を直接介さないことがわかった。そして、これらの理論の整合性を確認するために異なる思考パターンを用いた2つの思考実験を行った結果、デザイナーはそれ以外の被験者と比較して言語機能を直接介さない思考方法に関して有利であることがわかった。
  • 筒井 亜湖, 近江 源太郎
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 81-88
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    美的な刺激に対する評価はどのような過程を経て生じるのだろうか?われわれは,美的な評価的判断の心理構造をその評価と刺激との間に仲介する変数を仮定することによって解明することを試みている。本研究は,評価的判断のうちの特に快さおよび面白さに対する色彩感情尺度の仲介変数としての有効性を検討した。実験では,10名の大学院生に50の配色刺激の快さ,面白さ,明るさ感,暖かさ感,強さ感および複雑性評定を求めた。その結果得られた重回帰式は,面白さでは3変数(明るさ感,複雑性,および強さ感)で構成されたのに対して,快さに関しては1変数(明るさ感)のみであった。したがって,快さは面白さよりもより単純な構造を有する判断であること,また明るさ感は快さを強力に規定する変数であることが示された。
  • 堀口 利枝, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 89-98
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、平安時代から室町時代までの約400年間に描かれた絵巻物に登場する傘の意匠について、観察・解析したものである。絵巻物に登場した傘の図像は303点であった。それらより、傘の意匠の特質を次のように導出した。(1)絵巻物を通してみられる傘の多くは開閉可能で、平安時代には覆いが大型であったが、鎌倉時代以降に小型の覆いをもつ傘が現れる。それに呼応し、短柄の傘が出現する。(2)覆いが小型の傘の登場により、鎌倉時代以降、傘を使用する階層が拡大するとともに、差しかけられる形態から、傘の柄を自ら保持する形態に変化していく。(3)階層ごとに、使用する傘の形状、覆いの大きさ・色彩・材質に一定の関係性がみられる。(4)祭りに使用される傘には、神を迎えて時間空間を同一化する意匠がうかがえる。(5)往時の人びとの傘の使用には、陽よけ・雨よけの物理的機能に加え、傘によって表象的・結界的な時空間を演出・創出する企図がみられる。
  • 権 未智, 日比野 治雄, 小山 慎一
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 3 号 p. 99-108
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    人は加齢に伴い,視力が低下し,視覚の媒体が黄化し,色の判別能力が低下する。このため,高齢者は道路や階段がぼやけて見えたり,距離がつかみにくくなったりする可能性がある。そこで本研究では高齢者を対象にアンケートを実施し,階段を歩く際に視覚的要因により階段を見づらく感じた経験を調査した。それに基づき,カラーユニバーサルデザインの視点から,高齢者にとって視認性の高い階段の床と滑り止めの色彩について検討した。千葉県内に住んでいる高齢者と若齢者を対象に階段のフロアの色に対する滑り止めの色の見え方を比べた。実験では実際階段に使われているフロアの6色と滑り止めの8色を使用した。コンピュータ画面にフロアと滑り止めの色が提示されるようにし,被験者はフロアの色に対して見えやすい・見えにくい滑り止めの色を答えた。その結果,輝度コントラストが高く色相の差が大きい色が見えやすいと確認された。階段が見えやすく視認性を高くするためにはコントラストだけでなく色相も考慮した上で配色が望ましいと考えられる。
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