本研究では,新潟県十日町市・津南町の広範囲に渡り行われた越後妻有アートトリエンナーレについて調査を行い,その中の「空家プロジェクト」に焦点を当て,芸術の導入により地域の活性化がいかに行われているか分析・考察を行ったものである。魅力ある町をつくるために芸術作品の設置が全国で行われている。芸術作品設置の目的としては,都市景観の形成・地域文化の向上・精神の豊かさの向上があげられる。そして,この目的を通して過疎化問題・高齢化問題・地場産業の低迷の解決も可能であると考えられる。しかし,芸術作品は地域の特性や歴史的背景に触れずに設置されることが多くみられる。設置場所や環境を把握せずに作られ設置された芸術作品はその場所に必要なものか疑問視されている。また,このプロジェクトでは、鑑賞型芸術作品だけではなく参加型芸術作品の存在により,地域住民,他地域の住民,作家,鑑賞者の交流によって空き家を再生させ町を生き返らせると共に人々を呼び戻すことに成功している有効な例として,これからの芸術作品の使われかたの可能性がみられた。
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