デザイン学研究
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56 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 田中 遵, 荒木 晋作, 高橋 佳祐, 日高 單也
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,新潟県十日町市・津南町の広範囲に渡り行われた越後妻有アートトリエンナーレについて調査を行い,その中の「空家プロジェクト」に焦点を当て,芸術の導入により地域の活性化がいかに行われているか分析・考察を行ったものである。魅力ある町をつくるために芸術作品の設置が全国で行われている。芸術作品設置の目的としては,都市景観の形成・地域文化の向上・精神の豊かさの向上があげられる。そして,この目的を通して過疎化問題・高齢化問題・地場産業の低迷の解決も可能であると考えられる。しかし,芸術作品は地域の特性や歴史的背景に触れずに設置されることが多くみられる。設置場所や環境を把握せずに作られ設置された芸術作品はその場所に必要なものか疑問視されている。また,このプロジェクトでは、鑑賞型芸術作品だけではなく参加型芸術作品の存在により,地域住民,他地域の住民,作家,鑑賞者の交流によって空き家を再生させ町を生き返らせると共に人々を呼び戻すことに成功している有効な例として,これからの芸術作品の使われかたの可能性がみられた。
  • Pei-Fen Wu, Jen Yen, Kuang-Yi Fan
    原稿種別: Article
    2009 年 56 巻 4 号 p. 11-20
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    It is found and defined the elements that influence the ideation of animated short film in this study. The divergence relationships of element is explained and built from its deviation Conceptual Maps for ideation of animated short film. The modified Interactive Qualitative Analysis (m-IQA) approach is used to collect data, to diagnose the cognitive from USA's and Taiwan's experts, and to produce a Conceptual Map. It is found that the ideation of animated short film includes seven Affinities from m-IQA approach. There are two common consensuses that Primary Driver is Concept as the most important element, and Primary Outcome is Sound in animation ideation from results. There are some differences from results: The Metaphor plays as a more important Affinity in USA's experts; but Taiwan's experts consider the Metaphor that is a slight-important Affinity in animation ideation. On the other hand, the element of Character Setup is more important from Taiwan's experts than that of USA's experts. The Conceptual Map was summarized and related from the constituent Affinities that provides a force guide for learner to prompt the ones ability of storytelling from the complicated relationship of Affinities in the ideation of animated short film.
  • Koichiro SATO, Yoshiyuki MATSUOKA
    原稿種別: Article
    2009 年 56 巻 4 号 p. 21-30
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    In this paper, we indicate the possibility of design methodology inspired by life system for the support of making the methodology of creative design activity. Therefore, the concept of "emergence" was shown by some phenomena in nature, and "emergent design", which is based on the concept of emergence and is able to derive diverse design solutions in unclear design conditions, was observed in comparison with optimum design, which is able to derive an optimized unique design solution in clear design condition. Moreover, we showed "emergent design system" inspired by the method of "emergent design" for the artifact design, and applied this system to actual artifact design. As a result, we indicated that this system was effective in deriving diverse design solutions. Finally, the possibility of emergent design for design methodology inspired by life system was indicated.
  • 岩田 彩子, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 31-40
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本稿は、JIDA機関誌掲載記事を対象にして、1960年代におけるJIDAの活動内容、とりわけ世界デザイン会議(WoDeCo)の意義を中心に、観察・考察を行ったものである。その結果、次の知見を得た。(1)1960年5月に開催されたWoDeCoにJIDAは組織としては参画しなかったものの、会議に参加したJIDA会員たちの間には世界における日本のIDへの気付きが生まれた。(2)1960年代にJIDAはIDに関する研究会活動を活発化させ、機関誌にその詳細を掲載し、JIDA会員に広く知らしめた。(3)1960年代のJIDA機関誌は、ICSID国際会議に参加したJIDA会員による詳細な報告を掲載し、世界におけるIDの動向への注視と会員への広報に意を注いだ。(4)JIDAは、1965年以降、ICSID国際会議等の海外におけるID会議の動きにも対応し、国内で活発化したID研究会の経験的蓄積に基づいて、国内におけるデザイン会議を毎年開催するようになった。(5)ICSID総会を日本に招致することをJIDAは1965年に機関決定し、1973年の日本におけるICSID国際会議開催への繋がりを築いた。
  • 横山 精光, 今村 恒一, 塩川 満久, 長町 三生, 山岡 俊樹
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 41-48
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    住宅における安全と安心感の確保やユニバーサルデザイン化への対応のために,住宅内での人の移動をサポートする手すりは非常に重要な役割をする設備である。それゆえ,手すりを使いやすくするための仕様をいかに決めるかが大切になってくる。本研究では高年齢者を中心にした主観評価による廊下や階段における手すりの径や設置高さなどの仕様の決定と,更には手すりがあることによる生活者への効果などの確認をした。これにより,高齢者を中心にした生活者に安全・安心で快適な住まいを提供するため,廊下や階段などの移動空間での手すりの基本的な仕様が確認された。
  • Mitsuaki Shiraishi
    原稿種別: Article
    2009 年 56 巻 4 号 p. 49-56
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    When designing an interior space, a designer designs on the basis of his/her design concept. For representing design concept appropriately in interior space, it is important to make clear the relation between the user's impression and interior elements in interior space design. This paper aims to clarify the relation. At first, sample photographs are classified with KJ method. Next, it is questioned with semantic differential method for some impressions on the sample photographs of the classified groups. Next, compound effects between interior elements are analyzed with rough set theory. As a result, it is shown that the impressions of Japanese style and Western style are influenced by interior elements (e.g., tatami, shouji, stone floor) that compose the interior space. Interior elements which have been used for a long time in Japan influence strongly to the impression of Japanese style. It is same tendency in the case of Western style. And it is found that these interior elements have more influence when combined.
  • 堀口 利枝, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 57-66
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    本稿は、絵巻物にみられる「笠」の意匠を観察・解析したものである。調査対象とした平安時代から室町時代のおよそ400年間に制作された絵巻物33巻の中に、人々が使用する「笠」の図像が1153点みられた。それらの図像の観察を通して、本稿では「笠」の意匠の特質を下記のように析出した。(1)平安時代は巾子のある「笠」のみであったが、鎌倉時代以降には、「笠」の材料や製作方法の進展とも関連し、巾子のない「笠」や塗りの「笠」がみられ多様な「笠」の文化が繰り広げられる。(2)「笠」は、上流者から庶民に至るまで多くの階層で使用されていたが、階層ごとに、使用者と「笠」の種類・形状との間に一定の関係性がみられる。(3)「笠」の使用目的は、風雨・風雪・陽光などを避ける物理的・実用的機能のみならず、女や僧・尼たちの間では顔・面を覆い隠す道具でもあった。(4)祭りに登場する「笠」には特異な風流が施され、神が降り立つための標、降り立った神そのものの標としての役割を果たした。
  • 大森 峰輝
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 67-74
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    街並みスケッチの表現内容、構図・構成原理、構成要素、着彩の有無等が注視傾向に及ぼす影響を分析・考察した。その結果は、以下のようにまとめられた。1)スケッチの表現内容により固有の注視パターンがあり、一視点の軸景では消失点辺りを注視する傾向があった。2)人や車、サイン等が描かれている場合、それらへの注視時間が長くなる傾向が認められ、建築物への注視が極めて少なかった。また、スケッチの中で濃くあるいは明るい着彩が施されている部分への注視傾向を確認した。3)被験者は、スケッチを視始めた瞬間にその場面を象徴するサイン、人や車に視線を向けた。その後、描かれた対象によっては注視する範囲を広げたり、あるいはより細部を視るというプロセスをとったことが示唆された。
  • 森部 公一郎
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 75-84
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    高等学校普通教科「情報」において、手続き的説明内容を映像表現するために、絵コンテ作成を行うための心的表象の結束性の強化の促進を目的に、状況マップの利用を試みた。手続き的説明内容の創出に適するように説明文の型の利用を行い、併せて流れ図的概念ネットワークの適用、概念地図作成ソフトウェアの利用などで状況マップの作成方法を改善し実験とその分析を行った。まず、学習者の絵コンテ作成能力の下位尺度を因子分析で見出した。そこで、3因子構造であることを仮定し、認識力・構成力・表現力と命名した。そして、状況マップが学習者に心的表象の定着を促し絵コンテ作成の能力をどの程度向上させたかを調査した。その結果、状況マップ使用群は未使用群よりも認識力・構成力において有意に高い値を示した。さらに、その下位尺度の相関関係を調べ、それらが心的表象の定着度にどのような影響を与えたかを分析し、パス図を作成した。また、学習者の状況マップの利用状況の分析を行い、改善点を抽出した。
  • 時長 逸子, 宇都宮 千明
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 85-90
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    広告戦略においてカラーバリエーションという手法は、生産的とはいえない位置づけであるにもかかわらず、広く見られるものである。その理由を知るための調査を行い、以下のような結果が導かれた。(1)製品バリエーションとしてのカラー戦略である。(2)ある製品に対する消費者の固定観念を打ち破る色彩の利用である。(3)イメージ戦略としての色彩の利用である。明らかに色彩の心理効果を活用し、展開する。これらの結果はPhilip Kotlerによる「5つの製品レベル」に即したものである。しかしながら、このレベルに当てはまらない広告が存在した。その広告に対する印象調査を行い、(4)カラーバリエーションを展開していながらも、その製品の売れ行きをあまり重視せず、どちらかというと企業イメージや製品イメージを広く認知ざせるための手段として利用されるもの、という新たな広告戦略があることが判った。
  • 菊池 利彦, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2009 年 56 巻 4 号 p. 91-100
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2017/06/29
    ジャーナル フリー
    「死」はかつて、人びとの身近に存在した。死者がでると、人びとは自ら埋葬を行い、死者の鎮魂をし、死者に由来する魔や穢れの処理を行った。葬送儀礼は、穢れが漂う空間を平穏な日常空間に復旧するための空間意匠を内包するものであったといえる。本稿では、千葉県成田市台方における葬送儀礼に注目し、儀礼に内包される空間意匠を抽出するとともに、その特質について考察を行った。これにより以下の知見を得た。(1)出棺から埋葬までにみられる-連の所作は、葬家から埋葬地に至る空間に幾重にも分節点を築き、それにより此の世と彼の世を峻別するものである。(2)葬送儀礼には、日常において忌避される「逆さ」にする所作が散見される。これらの所作には、死を日常と対置することにより、日常の時間・空間へ穢れが流入するのを防ぐ意図が内包されている。(3)葬式翌日以降の多様な供養の儀礼は、一様に過ぎていく時間の流れに分節点を築き、穢れが希薄化していく過程、荒々しい死者が祖霊へと変化する過程を、人びとが実感するための作法であるといえる。
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