デザイン学研究
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57 巻, 2 号
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  • 周 豊, 永井 由佳里
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究は,デザインにおける印象の生成が連想によってもたらされることに着目し,連想概念ネットワークに基づくデザイン印象の分析方法を提案した.自由記述による印象語の収集と中心化共鳴性分析による印象の深層にあるイメージの抽出を特色とした方法論を構築し,事例研究においてその方法を実際に用い,デザイン印象とその連想構造を分析した.事例研究では9種類のデザイン試料を用いた実験により,「季節感を想定した色のユニフォーム」「従来の白衣」「高彩度ユニフォーム」からの連想がどのような印象に結びつくかを調査した.13名の評定者から得られたデザイン印象の自由記述データを用いて,ネットワーク分析により,表出された語の背後に構造化されている深層イメージを求めるとともに,その構造を可視化した.また連想語について,コレスポンデンス分析および中心化共鳴分析を行い,各ユニフォーム試料と深層イメージを意味空間にマッピングした.本研究に示したデザイン印象の分析手法を展開することで,ユーザの連想に基づいた印象形成の過程をデザイナが把握することにつながると期待される.
  • 坂本 泰宏, 桑原 理乃, 須藤 悠, 稲蔭 正彦
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 11-20
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    私たちが日常的に目にする動画は,一般的に間欠的な視覚刺激として呈示され,φ現象という視覚特性によって仮現運動として知覚されたものである。このような動画知覚の説明方法は,視覚心理学における共通理解とされてきたが,近年の幾つかのアニメーション研究においては,光学的な遮断を用いない,機械工学的なステップ運動による視覚刺激からもφ現象が生起することが示唆されている。これまでの映画史において動画メディアは,常に光学技術と共に発展し,故に光学的な装置として設計されて来た。しかしここで,従来とは異なる,ステップ運動による視覚刺激を用いた方法で動画メディアを再設計することができれば,現在の映像システムとは全く異なる新しい動画メディアの誕生が期待される。そこで本論では,光学的な遮断を用いない立体動画装置の設計とその検証を実施した。
  • 梁 根榮, 赤瀬 達三, 桐谷 佳惠
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    日本は世界で有名数の地震多発地帯にある.2005年1月1日を起点として,今後30年以内に震度6弱もしくは震度5弱以上の揺れに見舞われる確率も高い.そこで,本研究は日本に住んでいる外国人の災害に関する情報の伝達状況などを把握し,実際にどのような支援が必要かを知ることにより,災害時に必要な情報と問題点を調査した.その結果,在住外国人は災害について,具体的な災害の知識はもっているが実際の対策はあまり行っていないことが明らかになった.災害が発生した場合や発生の恐れがある場合,正確な情報を得ることが防災や減災を図るために非常に重要である.しかし,在住外国人は日本語によるコミュニケーションが十分にできないことが多いため,情報提供に関し、外国人への災害防災教育等の様々な提案が必要であることが示唆された.
  • 鄭 元俊
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 31-38
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,釜山駅の公共サインデザインの現況を調査分析することにより,現在設置されている釜山駅内の案内サインの現状を把握し,今後の駅の案内サインづくりにあたっての指針を提案するものである。現状の案内対象についてヒアリング調査から得られた結果をまとめ,公共サインシステムの現状況の問題点を分析した。また,その結果を整理し,専門家の視点に立ち,利用者に及ぼす影響に関する調査を行った。その結果,既存の公共サインには都市計画とは関係なく,サインそのものが混乱し,調和されておらず,案内や誘導の役割を担う情報の不足が見られた。また,公共サインにおける情報伝達機能もうまく行われてない状態で全般的に改善を要求されている等の問題点があることが分かった。この結果から,公共サインシステムの例として釜山駅の都市景観の要素を位置づけ,現在設置している公共サイン物を調査分析し,その利用者,サイン業者,デザイナーにとって望ましい公共サインのあり方を考察した。
  • 吉岡 聖美
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 39-46
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本論文では,抽象絵画における直線表現要素の違いと印象評価の関係を検証し,併せて,病院空間に展示された場合の印象評価について比較検証することを目的とする。方法は,直線表現の異なる抽象絵画を用いた画像を鑑賞し,得られた印象評価の評定値について分析を行った。これにより,傾きのある直線・長方形を強調したマレーヴィチ絵画は,"イライラする""激しい""動的な"という印象評価が大きくなった。境界を強調しないロスコ絵画は,"穏やかな""退屈な""静的な""リラックスした"という印象評価が大きくなった。垂直線・水平線を強調したモンドリアン絵画は,"軽い"という印象評価が大きくとなった。また,病院空間という特有の空間に絵画が展示されると,直線表現要素の違いによって固有の印象評価に差が生じた。この研究結果から,抽象絵画における直線表現要素の違い(垂直線・水平線・斜線)が印象評価に影響することが示唆された。
  • 吉田 泰三, 梨原 宏
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 47-56
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究は、高齢者にふさわしい車いすのあり方について、開発・生産・供給・使用・介護支援システムの観点から探ることを目的としている。本報告では、宮城県内の医療・介護系の施設福祉系中間ユーザー61名と居宅福祉系中間ユーザー55名を対象にした37項目からなるアンケート調査によって、現在高齢者向け車いすにどのような要求を持っているかを「介助サービス」「生活環境整備」「品質素材感」「製造技術」「外観性」「納期・取引」「移動機能性能」「使い勝手」「保守管理」「経済性」の観点から分析した。その結果、施設福祉系よりも居宅福祉系の方が使用者の立場に立った幅広い視点からの要求を持つこと、施設福祉系中間ユーザーは、適切な管理を志向した比較的焦点を絞った要求を持っていることが分かった。また経済性に関しては、共に安さと性能を主に求めていることも分かった。高齢者向け車いすに対する要求項目の違いを中間ユーザーの視点から明らかにできたことから、車いすの総合的なデザイン評価項目構築に必要な使用者側からの要求機軸を得たと思われる。
  • 吉田 泰三, 梨原 宏
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 57-66
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    第1報で得られた中間ユーザーの車いすに対する要求内容と、デザイン・開発、製造、医療・リハビリテーションの各立場からの要求内容、そして健全な社会形成からの要求内容を踏まえ、開発、製造、提供、使用、介護サービスまでを包含し、車いすに関係する誰もが理解し共有できる総合的なデザイン評価項目の構築を行った。デザイン評価項目構築プロセスは6ステップからなる。そのプロセスによる構築を行った結果、大項目7と中項目17、それに対応した120のデザイン評価項目を得た。市販されている機能・形態の異なる3機種を事例に、車いす知識を持つ2名の評価者によって評価シミュレーションを行った。その結果、3機種の特質を比較分析することができ、評価が可能であることを検証することができた。本デザイン総合評価項目は、開発から使用サービスまで、車いすに関わる立場の異なる人々が協働して、車いすの在り方について総合的に評価し、検討することに役立つことが分かった。
  • 林 海福, 加藤 浩
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究は,プロダクトデザイナーが成長する過程において必要とされる能力及びそれらの能力の関連性を明らかにすることを目的とする.そのために,現場のデザイナー6名にインタビューを行った.その結果,デザイナーとして,最も必要とされるデザイン能力は,創造的なアイディアを考える能力,プレゼンテーション能力であることがわかった.さらに,抽出した概念の関連について,デザイナーの成長プロセスの中で期待される能力に変化がみられた.初心者のデザイナーからプロフェッショナルなデザイナーへの成長段階では. (1)バリエーション豊富な発想を持ち,その発想を手描きやソフトによって表現できる能力から,問題発見力・解決力,さらにそれら全体を形にまとめる創造力への変化, (2)デザイナー間のプレゼンテーション能力から,対象をクライアントに拡大して説得する能力への変化,さらに,ある程度経験を積んだ段階では,目的に応じて相手を外交的に駆け引きする折衝力も求められていた.
  • 萩原 祐志
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    デザイン初期段階における形状の探索を支援するシステムの開発は遅れている。この問題解決を促進する手段の1つとして,パラメトリック設計と進化計算理論を併用したデザイン支援システムの構築がある。本研究の目的は,この考え方を背景にシステムを構築し,それを用いたシミュレーションを実施することで,構築したシステムがデザインにおける形状の探索に利用できる可能性を示すことである。なお,システム構築とシミュレーションを行うにあたり,支援対象はプロダクトデザインの他,漫画などにおけるキャラクタデザイン等であることも考慮した。本研究の結果,汎用CAD上で稼働するデザイン支援システムが構築できた。また,それを用いたシミュレーションにて,獲得できる形状を示した。さらに,ここでは周知の事実を踏まえた主観的視座から獲得形状を考察し,当該システムがデザインにおける形状の探索に役立つ可能性があることを示すための見解を与えた。
  • 宋 基正, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    韓国における地域振興が地域の主体性に基づいて展開されるようになったのは、極めて最近のことである。本稿は、韓国各地で展開され始めている「地域革新体制(RIS)」の様相を明らかにするとともに、その生誕の経緯を俯瞰したものである。(1)頻発した戦争による国内の混乱に伴う長期間の鎖国、脆弱な国力の強化を図るための長期に亘る君主制、その下で忍耐せざるを得なかった国民生活など、韓国における地域の自立は長い間封じ込まれ続けてきた。(2)地域自立への認識が高まったのは1970年代に始まった経済成長期であり、国内における産業化・工業化とともに、国際経済社会のなかで地域アイデンティティへの探求が求められた。(3)2003年に「参与政府」を掲げて大統領に就任した盧武鉉は、地域住民による地域革新遂行の力量強化に基づく「地域革新体制」の創出を目指した。(4)今日韓国各地で展開されている「地域革新体制」は内発的地域振興の諸要点を十全に具現化しているとは必ずしもいえないが、地域住民による主体的地域振興の今後のあり方を明示したものであり、デザイナーのそれへの参画が広く求められている。
  • 中西 啓
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究は芸術展示における誤読に着目する。分析対象の展示における展示する側および展示を見る側の二者による誤読に着目し分析することで、二者の間に生起する関係を明らかにする。分析対象の展示では経済学にいう交換がなされた。経済学の知見によれば、二者の間で価値がある量的比率関係をもつとき交換が成立する。したがって、分析対象の展示では、二者の間で価値が何らかの量的比率関係をもつと考えられる。ところが、分析対象の目に見える次元において、二者の間で価値に量的比率関係は析出されない。一方、目に見えない次元において、展示対象に関わる側つまりデザイン学領野による時間の切り上げ機能が析出される。この機能は、目に見えない次元において二者の間で価値にある量的比率関係がもたらされることを証する機能である。したがって、分析対象において交換が成立するのは、目に見えない次元において、二者の間で価値がある量的比率関係をもつからであることが証される。
  • Akira UEDA
    原稿種別: Article
    2010 年 57 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2010/07/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    In this paper, while presenting examples from the Seto Region, one of Japan's representative ceramic-producing regions, we will ascertain various aspects of life relating to the natural environment and symbiosis that includes the lifestyle concepts of mottainai and moshi wake nai, with the objective of examining deeply how regional identity might be expressed in this region. When we consider the special characteristics of a symbiotic lifestyle with the environment in this region, we can summarize the following general points: (1) In the social environment of this region, the people's social concept of mottainai is reflected through the long history of the region; through the production of ceramics as the livelihood of the people, created based on the optimal and thorough use of kiln tools that were no longer usable; and through products that could not be shipped as well as the full utilization and proper collection of fuel and raw materials needed in the production of ceramics. (2) In the creation of a symbiotic environment in this region, the shared concept of moshi wake nai was accordingly expressed among the people involved in ceramic production, toward the various gods and tools used in production of ceramics, toward the precursors and others, in other words, in their feelings of gratitude and regret toward many factors that exist in the people's everyday lives. (3) The symbiotic lifestyle with the environment in this region is not something limited to this age or region, but is widely shared and transcends regions and generations.
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