デザイン学研究
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57 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 杉本 美貴, 岡田 栄造, 櫛 勝彦, 山本 建太郎
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    国内の家電・電子機器メーカーの環境問題への取組みが一段と加速している中で、常に製品開発の源流に立ち、製品の生産から廃棄に至るプロダクトライフサイクルの多くのプロセスに関与するデザイナーの役割は非常に重要である。本研究では、企業のエコロジカルな製品開発の取組みにおける現在のインハウスデザイナーの関与の実態について調査・考察を行った。そのために、企業のデザイン部門に対してアンケート調査を実施した。調査の結果、デザイン部門のエコデザインへの取組みでは依然設計開発時に関する取組みに対する意識が高く、その要因として、コスト削減や販売訴求効果、外観の新規性などの相乗効果がなければ製品化に結実することが困難な実態が明らかになった。また、今後デザイン部門で積極的に取組まれるべきエコデザインの領域は、(1)外観における素材や加工法開発、(2)ロングライフデザイン、(3)製品のエコ機能や構造、新たなサービス提案、(4)製品使用時にユーザにエコを喚起させる、または働きかけを行うデザインであると考えられる。
  • 筒井 亜湖, 近江 源太郎
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 11-18
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究は,3ヘドニックトーン尺度(快さ,美しさ,好ましさ)と面白さおよび楽しさとの美的評価間の異質性を,理解度評定および画像の抽象化処理による作品の具象性の度合いの2種の理解度指標から検討した。実験では,21名の美術大学生に3点の具象絵画と3点の抽象絵画,およびそれらを4段階にモザイク化した計30画像の,5美的評価,理解度,および3色彩感情の9尺度の評定を求めた。その結果として,評定および作品の具象性の双方の理解度指標において,ヘドニックトーン尺度群は作品理解度にきわめて規定される傾向が認められた。一方で,面白さに関しては,総体的傾向としては理解度評定とある程度の負の関係を示したが,作品の具象性の程度との関係は不明瞭であった。また,楽しさは評定においても,刺激操作においても,作品理解度との関係は不明瞭であった。これらから,ヘドニックトーン以外の美的評価の代表とみなせる面白さおよび楽しさの,作品理解度の点からのヘドニックトーンとの異質性が示唆された。
  • 染矢 聡, 酒巻 隆治
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 19-24
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    パブリックアウトリーチのためのWebシステム及びコンテンツを作成し,それによるアウトリーチ効果について検討した。作成したシステムでは閲覧者のマウスの動きをリアルタイムに分析し,閲覧者の関心事項を推定する。推定結果に基づいて,関連するトピックスをサムネイル画像の大きさや位置によって閲覧者に推薦する。作成したコンテンツはあまり詳細な知識を有していない一般人を対象とした内容で,多くの動画と簡単な技術解説文で構成される。81名の被験者にコンテンツを閲覧してもらい,閲覧前後にWebアンケートに回答してもらった。パブリックアウトリーチでは自分の意見を持つ,考える機会につなげることが重要である。アウトリーチの効果についてアンケートの回答を元に検討した結果,自分の意見を持っていなかった被験者が自分の意見を持つようになるなど,アウトリーチの効果がみられた。
  • Ngo Thi Thu Trang, Fumio TERAUCHI, Mitsunori KUBO, Hiroyuki AOKI
    原稿種別: Article
    2010 年 57 巻 3 号 p. 25-34
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    The objective of this research is to explore relationships among the three main aesthetic components in design of traditional daily products (TDPs): form, color and decoration. Those relationships are compared between two countries, Japan and Vietnam, in order to reveal the specification of each country. By using Dual Scaling and Cluster Analysis methods, the correlations between three pairs (Form-Color, Color-Decoration, Decoration-Form) are in turn investigated and extracted. Finally, the summary of all result shows that, the relationship among color, form, decoration in Japanese TDPs is tighter and balance than in Vietnamese ones. This indicates that, in Japanese TDPs form has strong effects to color and decoration in a product, while it is likely a separate component in design of Vietnamese TDPs. Besides, there is also a similarity between the two countries: form and decoration's complexity are usually in a visual balance and harmony, while colorfulness follows up with decoration's complexity.
  • 氏家 良樹, 奈良原 久之, 前野 隆司, 竹村 研治郎, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 35-42
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究においては,対象と場の関係を記述可能な多空間デザインモデルを視点として,VR空間上のロボットによる親近感生起動作の生成法を提案した.生成法には,親近感の評価における個人差を反映可能な対話型遺伝的アルゴリズムを用い,親近感とアイコンタクト双方に対する評価を入力として動作生成を行うこととした.動作生成を実施した結果,親近感に対する評価のみを入力した場合の生成動作と比較して,提案手法による生成動作の親近感評価が高くなったことから,ロボットの視線方向とヒトの視線方向の関係から生まれるアイコンタクトを考慮することの重要性が示された.さらに,生成動作におけるアイコンタクトの度合いに相違がみられたことから,アイコンタクトと親近感の関係には個人差があり,アイコンタクトに対する個人の好みを考慮する必要性も示された.
  • Andrew COOKSON, Shinnichi ISHIMURA
    原稿種別: Article
    2010 年 57 巻 3 号 p. 43-52
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    This paper examines the trade and use of rattan in China and Japan until, and during, the 17^<th> Century. The objective is to analyse how rattan was viewed, understood and used in design prior to its introduction into Europeans markets as a material suited for chair seat manufacture. It is intended that this investigation will provide a better understanding of initial European perceptions of rattan when this material was encountered in the early stages of the 17^<th> Century, and why it was accepted with such vigour into the English chair trade from the 1660s. The analysis of rattan use in China and Japan prior to the 17^<th> Century indicates that this material had attained a widespread reputation for its unique natural properties, namely that of strength and flexibility, that translated into a multi-purpose usage. Its continued employment in two areas, weaving and binding, can be seen as pre-empting its introduction into chair seat manufacture in China from around the Song Dynasty onwards.
  • 菱沼 隆, 高橋 梓帆美, 中村 洋臣, 大平 裕子, 増田 卓也, 小山 慎一, 日比野 治雄
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 53-60
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    大型電子ペーパーは新しい広告・防災案内表示媒体として注目されており,実用上の読みやすさの検討が求められている.本研究では大型電子ペーパーにおける文字表示の読みやすさについて室内実験および現地調査を通じて詳細に検討した.室内実験では一対比較法を用いて最適行間隔,最適文字間隔を測定し,さらに標準読み速度を測定した.地下鉄駅ホームにおける現地調査では幅広い年齢層の利用客を対象に広範囲の測定位置からの読みやすさ,背景色・文字色の影響について調査した.室内実験および現地調査の結果,屋内空間で500lx程度の照明下に大型電子ペーパーを設置する場合には視角0.56°以上の大きさの文字を行間隔50%,文字間隔25%で,1秒当たり8文字ずつ表示すると読みやすく,従来の媒体と同等の視認性を維持できることが示唆された.また,背景色の影響についても考慮する必要があることが示唆された.
  • 崔 庭瑞, 蘇 文宰, 小山 慎一, 日比野 治雄
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 61-68
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究では多様な視覚的デザインをもつ缶コーヒーのパッケージを事例としてパッケージに対する消費者の視点と注意を分析した。具体的な方法としては缶コーヒーのパッケージデザインをシンボル,ロゴ,イラストなどのデザインエレメントに分け,各デザインエレメントに対する視線の動きを眼球運動測定装置で測定した。さらに,Change Blindness課題を用いて各デザインエレメントに対する注目度を評価した。その結果,大きい面積を占めているデザインエレメントに視点は最初に停留し,面積が大きいデザインエレメントほど停留時間は長いという傾向が得られた。しかし,注目度に関しては比較的面積の小さいシンボルが短い時間で消費者の注目を効果的に引いているということが明らかになった。本研究によって示唆された各デザインエレメントに対する消費者の視線および注意は,商品パッケージをデザインする際に効果的な情報伝達方法を検討するための手がかりになるものと期待される。
  • 後藤 泰徳, 平田 一郎, 井邊 智吉
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 69-78
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究は、身振り表現を重視した人型ロボットのデザイン手法の開発に関するものである。人型ロボットを身近な存在として親しまれるようにするためには、身振り表現を魅力的にする必要がある。しかし、人間ほど関節自由度のないロボットを魅力的に動作させるには、限られた機構の中で表現しなければならない。そこで、本研究では簡潔な機構や構造で魅力的な身振り表現を実現するため、人間の細かな動作を省略し、特徴的な動作のみをロボットに再現させる方法を試みた。動作特徴を単純化して身振り表現の型とする方法は、日本の古典芸能にも多く見られる。この考え方を人型ロボットの動きのデザインに応用した。人型ロボットの動きのデザインの題材としては、現代における美の基準の一つであるファッションモデルを取り上げた。モデルの動きを観察した結果、体幹から脚にかけての連動が特徴的であることがわかった。この特徴的な動作を身振りの型、即ち動作設計のためのデザインルールとした。次に、このデザインルールに基づいて、スリムで簡潔な骨格構造を持つモデル型ロボットの設計・制作を行った。
  • 梁 根榮, 桐谷 佳惠, 玉垣 庸一, 赤瀬 達三
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 79-86
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究では,日本に在住している外国人にどのような方法で行政機関から災害の情報提供がなされているのか調査を行った。まず,日本全国都道府県と政令指定都市に対し,質問紙調査を行った。次に,提供されている情報媒体を対象とし,分類,検討を加えた。その結果,災害情報の提供方法としては,大部分の地域で印刷物やホームページを利用して提供していることがわかった。そして,それらは,主に,英語,中国語,韓国語,スペイン語,ポルトカル語に翻訳して情報を提供していた。提供媒体の分類については,最も多く利用されていた印刷物・ホームページを中心に分析を行った。まず,各自治体において印刷物・ホームページによって提供されている災害情報に関する内容の分類およびデザインの分類を行った。分類の結果,帰宅対策はあまり提供されていなかった,避難所については印刷媒体に比べてホームページを利用して情報が提供されていた,デザイン面の分類については,印刷媒体は多言語と文字・イラストでほとんど提供しているが,ホームページでは,言語は1ヵ国語で,テキストのみ提供していることがわかった。
  • 楚 東暁, 小野 健太, 寺内 文雄, 渡辺 誠, 青木 弘行
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 87-96
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    21世紀を迎えた社会はサービスの時代に入っており,プロダクトデザインにとって新たなチャレンジが求められている.なかでも,サービス・プロダクトにおける価値創造は,問題解決に向けた重要な柱の一つである.本稿においては,設計パラダイムの転換という観点からサービスデザインにおける価値共創について考察を行った.具体的には,製品開発プロセスを4つの段階に分類し,[仁品]というサービス・プロダクトの概念を提示した.そして,サービス・プロダクトにおける価値を[経済価値,使用価値,感性価値]に分類し,各価値間の関係を明らかにした.さらに,時間軸デザインの重要性に配慮して,サービス・プロダクトにおける価値を維持・向上させるための方策をライフサイクルの観点から検討した.
  • Ching YANG
    原稿種別: Article
    2010 年 57 巻 3 号 p. 97-106
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    Through literature reviews and in-depth interviews to the key persons, this study investigated the background, cause, activities and achievement of inviting the Russel Wright Associates to promote handcraft export to America by the Taiwan Handcraft Promotion Center during 1955-1960, under the support of the American Aid Program. Through this study we explored the influence on the development of industrial design in the early stage of Taiwan caused by these promotion activities and have clarified the critical role they have played in assisting the transition of development from handcraft design into industrial design in Taiwan. This study revealed that, for enhancing the exporting potential of Taiwanese handcraft products, the Russel Wright Associates has successfully conducted a series of training programs in 1950s to enhance the skill for designing and manufacturing bamboo and rattan furniture, fine bamboo handcrafts, straw-woven mats and hats, souvenir products, wood carving handcrafts, and pottery handcrafts. The programs included training technicians, improving manufacturing technology and introducing new concept of managing and selling products as well. By these programs, it is also the first time the modern concept and methods of American industrial design have been introduced to Taiwan in the early stage and have deeply influenced the development of industrial design in Taiwan afterward. Based on this point, we may say Russel Wright is the first tutor to enlighten the development of industrial design in Taiwan.
  • 金 夆洙, 宮崎 清, 鈴木 直人
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 3 号 p. 107-114
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    かつて、商家をはじめ、山村・漁村などにおいて広く用いられてきた「家印」などの日本の伝統的な「しるし(印)」は、きわめて重要な生活文化・地域資源のひとつである。しかしながら、今日では、一部の老舗・旧家などで継承されているに過ぎず、他の多くの伝統文化と同様、急速に消失しつつある。本調査・研究は、「醸造の町」として知られる新潟県長岡市摂田屋地域を代表する老舗6社を対象に取り上げ、文献調査・現地調査に基づき、多様な形で存在した家印(商標)・屋号の特質を把握するとともに、その将来のより望ましいあり方を考察することを目的とした。調査・考察の結果、各社がもっている家印(商標)・屋号は摂田屋地域、および各社の特徴を表すアイデンティティー形成の重要な要素であることが判明した。また、現在、古い家印は存在するもののあまり活用されなくなっており、それらの今日的価値を再認識し、各社が伝統のしるし、文化の継承の大切さ、今日の地域づくりのニーズに対応するその活用の重要性などを認織した一連のデザイン提案を示すことができた。
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