デザイン学研究
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57 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 菅 靖子
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本稿では、モダニズム期イギリスにおけるジャポニスムを照射するために、空間デザインと植物の表象、とりわけ生け花と盆栽の影響について考察する。まず日本の空間デザインや植物配置がイギリスのデザイン界に与えた影響について概観する。次に、20世紀に入り、日本側から空間デザインのあり方を海外へ発信した例として、『ステューディオ』誌に原田治郎ほかが寄稿した日本の空間デザインおよび生け花、盆栽に関する記述を検証し、続いて万国博覧会での日本による展示にみる空間デザインの意識の強化を確認する。それから、『ステューディオ』誌のなかで、「日本」と銘打たれないまでも日本的な室内装飾や生け花、盆栽が海外のアーティストによってさまざまに応用されていた事例を抽出し、それがひとつの「スタイル」としてモダンな空間デザインのなかで活用されていたことを確認する。以上から、一方でイギリスにおけるジャポニスムがモダニズムをイギリスに取り込む裏道となり、他方で政治的対立の強まる日本の表象を利用するにあたりモダニズムが隠れ蓑になっていたという、イギリスにおけるモダニズムとジャポニスムの双方向性を浮き彫りにする。
  • 侯 茉莉, 小野 健太, 渡邉 誠
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 11-16
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    近年、中国では大学数、大学の学生数、及び研究機構、研究者が急速に増加している。大学進学率は、1990年の3.4%から2007年の23%まで成長した。本論では、急成長する中国の大学におけるデザイン関連学科の教育について、主に、カリキュラムや教育内容について、デザイン系学科を有する主な10校に対し、工業デザイン関連学科の調査を行った。これらのデータより、各大学の特徴をグループとして把握した。その結果、グループは4つに分類でき、中央美術学院、同済大学及び江南大学は、主にプロダクトに対しての技術性の実習科目を学ぶ大学、広州美術学院、北京理工大学及び清華大学のように、基礎知識の養成が重視される大学、湖南大学や復旦大学のように商業ベースの授業の多い大学、浙江大学のように感性に関する課程が多い大学というグループが形成された。また、10校中7校で、クリエイティブデザインという科目が設置されているのが特徴的であった。
  • 侯 茉莉, 小野 健太, 渡邉 誠
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 17-24
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    台湾では戦後早期のデザイン発展およびデザイン教育において、日本からの影響と、米国およびヨーロッパの専門家や学者から多くの協力が得られた。日本の影響のもとに築かれた台湾のデザイン教育が、商工業の発展につれて次第に独自のスタイルを持つようになった。一方、日本でも、ものを作るだけの時代から、更にマーケティング等の視点を取り入れ発展してきた。本論では、100年以上の歴史を経た現在の日本および台湾における高等デザイン教育の状況、また、日本と台湾のデザイン教育の相違を抽出することが目的である。日本の35のデザイン学科および台湾の32のデザイン学科に対し、カリキュラムの調査を行った。具体的には、それぞれのカリキュラムについて、重視されている、あるいは欠けている課程を調べ、数量化理論III類を用いて分析することにより、9つのタイプに分類を行った。それらのタイプと日本、台湾との関係を見ることにより、日本のデザイン教育は多様な要素を含んだ総合的な学問として、台湾のデザイン教育は「ものづくり」ための技術教育を中心に発展してきたことが分かった。
  • 石橋 伸介, 曽我部 春香, 森田 昌嗣
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 25-34
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究では,公共空間における作り手,送り手,受け手といった異なるユーザーグループ間の評価のズレを可視化し,潜在的なニーズを抽出するため,クオリティカルテ評価・診断システムの構築を目的としている。本稿では,第3稿で構築した空間評価指標および評価手法を用いて評価実験を行い,評価データの収集および分析を行った。評価実験では日本人観光客と韓国人観光客を被験者とし,両国の玄関口となる港および駅を対象として合計4箇所の評価を行った。その結果,地域性に対する感じ方の違い,ユニバーサルデザインへの関心度の違いを抽出することができた。また,案内サインについての共通の問題点も複数抽出することができた。さらに,その結果を用いて学生によるデザインワークを行い,コンセプト立案やアイディア展開での活用を試みた。
  • 吉川 浩
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 35-44
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は、汎用性のある「地域イメージ測定指数」の構成を試みることにある。そこで、商業立地変動等により店舗業種イメージの総和が、街のイメージ形成に大きな影響を与えることに着目した。そのためにまず「各店舗業種が街に与える印象」につき<非常に良い>から<非常に悪い>までの7段階評価によるアンケート調査を行い、3事例地域で値が相関する指標を抽出でき、共通性を確認した。それを集計することにより、事例地域の指標を平均化した「業種イメージ総合指数・平均指数」を構成し、その変化率等による地域イメージの測定の推定を行い、その特徴を明らかにした。さらに「業種イメージ総合指数・平均指数」の有効性を検証するために、「奈良町」の地域イメージ形成に影響する雑誌メディアへの奈良町情報の露出度を表す「雑誌掲載頁数」の経年変化を調べた。こうした「メディアによる評価度」が、「業種イメージ総合指数・平均指数」の経年変化をもとに、回帰分析を通じて説明できることから、その有効性を確認した。
  • 高橋 梓帆美, 小山 慎一, 日比野 治雄
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 45-50
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    大型電子ペーパーは公共スペースにおけるデジタルサイネージとして利用されているが,その可読性は電子書籍用の小型電子ペーパーに比べまだ十分に評価されていないのが現状である.本研究では,大型電子ペーパー上に表示された文字の可読性を既存媒体である液晶画面(LCD)および紙と比較した.可読性の評価指標として,視覚探索課題における被験者の探索時間・誤答率,および印象評価における評定値を使用した.視覚探索課題では探索時間と誤答率に媒体間の有意差は見られず,印象評価においても媒体間で「文字の読みやすさ」および「文字の見つけやすさ」の評定値に有意差は認められなかった.これらの結果から大型電子ペーパーは一定の条件下では既存媒体とほぼ同等の可読性を持ちうることが示唆された.また,印象評価では,反射媒体である大型電子ペーパーと紙では発光体であるLCDよりも「画面のちらつき」「眼のチカチカ感」等の不快感が少ないことが示唆された.大型電子ペーパーは読みやすく視覚への負担が少ない情報表示媒体として今後の活用が期待される.
  • 鳥宮 尚道
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 51-56
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    デザインにおける、概念構築に伴うイメージ形成の方法について、本論ではsexyをテーマにその解釈を試みた。予備調査としてsexyをキーワードにWeb検索を行い、用いられ方を分析した。次に、思考の連想過程に着目し、連想過程の記録方法として連想樹形図の作成を試行し、そこに現れた言葉を整理した後、数量化III類とクラスター分析によって構造を把握した。また、得られた連想樹形図に見られる係り受け関係を用いて構造モデルを作成することで、連想の思考プロセスに重点を置いた概念形成の手法を試みた。この結果、sexyという概念の中心的要素は、「魅力」「曲線」「柔らか」「形」「美しい」という要素によって構成されていることなどを推察することができた。
  • Shyh-Huei HWANG, Wei-Chen CHANG, Kiyoshi MIYAZAKI
    原稿種別: Article
    2010 年 57 巻 4 号 p. 57-66
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    The research based on aboriginal story aims to conduct teaching experiment for cultural product design. "Story mapping" helps design thinking during cultural product design to flexibly use local culture, and two concepts comprising design studies and anthropology are merged into the "Design Anthropology" which is preliminarily discussed as a basis for cultural product design. We explore "Design Anthropology" and "story mapping" as a process of design development which is a design activity relevant to exploration and communication. Cases of design teaching are applied to verify model for cultural product design. The study based on this concept establishes a user-centered design model assisted by designer to help development of cultural product as well as discusses human-oriented view in cultural product design to convey human-oriented care and touch heart with story design.
  • 孔 慶権, 福川 裕一
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 67-76
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    中国では20世紀の初めに、伝統的な中国の建物に西洋の様式を取り入れた「中華バロック」と呼ばれる建築様式が盛んに建設された。このような「中華バロック」は従来により注目されてきたが、本格的な調査は少なく、その評価や保存の為にはなお詳細な調査・研究が必要である。そこで、中華バロックが集中するハルビン市「靖宇」街地区を取り上げ、この地区における中華バロック建築の成立過程、その建築的な特徴、現状、保存上の課題を研究した。その結果、この地区における中華バロック建築が、同時期にロシア人建築家の主導で形成されつつあった中央大街の影響を受けつつも中国人の手で生まれたこと、西洋的様式をそのまま用いることはなく独自のデザインコンセプトを有すること、このような正確な評価が乏しいまま安易な修理や模倣が行われ、オーセンティシティが失われつつあること、このような現状を修正するため、オリジナルのデザインを正確に調査・評価した上で改装が行われるよう制度を改めるべきことを明らかにした。
  • Kiminobu SATO, Naoto SUZUKI, Fumio TERAUCHI, Satoshi HACHIMA, Shinichi ...
    原稿種別: Article
    2010 年 57 巻 4 号 p. 77-86
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    When designing a living aims to enhance regional values through the employment of cultural resources and local indigenous resources (i.e., the local population, environment etc.), its sustainability should not be assessed in economic terms. Rather, it should be assessed through various social perspectives and reviewed from various macro perspectives as well as from micro design functions, which are closely related to cultural elements. Besides these perspectives, the nature and magnitude of the design goal should be integral criteria in the critical assessment of the rationality of the proposed "designing a living" program. The Integrated Design Engineering Project (IDEP) 2010 implemented by Chiba University in Isumi, Chiba Prefecture intends to show that the living conditions of a particular locale or region can be improved through the activation of positive social linkages and exchanges within the local population. This paper analyzes the sustainability of this idea from three dimensions and lays down specific evaluation guidelines. Evaluation for designing a living is a critical activity and is an integral function of hometown designers in their task of reinvigorating specific places. Learning the various features of evaluation is an indispensable skill that should be nurtured by a hometown designer.
  • 中村 仁美, 比嘉 明子, 佐藤 敬之, 三橋 俊雄
    原稿種別: 本文
    2010 年 57 巻 4 号 p. 87-94
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    大正,昭和戦前期の京都市工業研究所をとりあげ,その活動を調査した。全国の公立試験研究機関との比較により,当該工業研究所の特質を見出し,文献調査とインタビューにより,工業研究所の工芸品試作活動およびデザイン活動を明らかにした。その結果,(1)京都市工業研究所の活動は,輸出増進を図るため科学を基礎にして工芸品の品質と意匠を改善するという理念を持っていた。(2)工芸品試作活動は前述の理念を体現し,新しい技術や意匠を当業者に分かりやすく伝えることに寄与した。(3)全国と比較して,京都市は工芸に関する支援環境が充実しており,京都市工業研究所は研究者や職人の層が厚いという点に特徴があった。この特徴を活かした実験的な取り組みとして,複数の材料を取り合わせた「総合工芸」という手法を推進した。(4)総合工芸研究会を立ち上げ,地域の工芸作家や当業者との連携と協力を図ることで京都市の工芸産業の振興が試みられた。
  • Kun-Fan Lin, Pei-Hsin Hsieh
    原稿種別: Article
    2010 年 57 巻 4 号 p. 95-104
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    Jiao Ban Shan International Sculptural Park is the first exemplar in Taiwan development of creating international public art in different cities. By studying genius loci, or the 'spirits of a place', created by the public art in this Park. We will use confirmatory factory analysis and interviewing methods to explore the relations between people, objects, and space so as to understand and exercise local characteristics. In addition, the aspects of 'natural environment' and 'human cultural environment' plus the four facets of 'sky, earth, mortals and divinities', were discussed to examine the correlation between the environment and the sculptures in the park. Study result confirmed that Jiao Ban Shan provides an excellent model for how Taiwan can not only promote itself by establishing sites of international public art, but can also promote the sustainable development of regional culture in the future by using public art to convey the genius loci of certain places.
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