デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
57 巻, 6 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 橋田 規子, 小暮 真弥子, 青山 英樹
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 1-8
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究では,デザイナーが意図したデザインコンセプトを形に表現する際,一般ユーザーの感性に伝わるデザインを選択できるように,(1)一般ユーザーの形状に対する感覚を,感性アンケートによりモデル化し,(2)それらから導いた,各形状要素の感性への影響度を活用して,コンセプトからデザインを具体化するための,デザイン支援方法を提案した.対象としては,商業ビルなどのトイレ空間の洗面ボールについて行った.こうしたパブリック空間の設備は,デザイン決定者が使用者と異なるという点で,デザイン選択に注意が必要である.本研究の成果は,感性アンケートにより,洗面ボールの各形状要素がユーザーの感性に与える影響度合いについて明らかにした.また,デザイン支援方法の提案では,Microsoft Visual C++,OpenGLによって作成したプログラムにより,コンセプト=感性を数値で入力することで,形状を導出できるような手法を構築した.
  • 大鋸 智, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 9-18
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本稿は、現代的ものづくりと伝統的ものづくりの2つのものづくりにおける資源循環体系の比較検討を通して、今日の生活者が留意していくべき生活文化のあり方を導出することを目指したものである。まず、「循環型社会形成推進基本法」をひもとき、現代日本のものづくりにおける資源循環の体系について考察を行い、次いで、新潟県山北地域の実地参与観察に基づきながら、羽越しな布という伝統的なものづくり文化が内包している資源循環型生活の諸要素を抽出した。その結果、日本にみられる伝統的な資源循環の要素は、「いただく」「むだをなくす」「いたわる」「やくだてる」「つかいつくす」「おかえしする」「いつくしむ」の7つの「ことば」で整理・把握することが可能であることを明らかとした。また、これらの「ことば」には、人が自然との共生を図る積極的な姿勢が内包されており、今後、地域の循環型生活を構築するためには、生活者自身による資源循環型生活の知恵の再認識・再確認とその実践が求められることを示した。
  • 金 潤秀, 清水 忠男, 佐藤 公信
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 19-24
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本稿は1986年〜1987年、1997年〜1998年、2006年〜2007年10年間隔2年間を単位として「新建築」に掲載された集住空間の作品例の共有領域に関する設計意図を調査したものである。集住空間の共有領域に関する設計者の説明文中に述べられたことがらは「心理面への働きに関することがら」「コミュニティ促進や共有性に関することがら」「空間様態に関することがら」「機能面に関することがら」「自然とのかかわりに関することがら」「居住者の多様性に関することがら」に大別され、中でも「自然とのかかわりに関することがら」は年代の変化に関係なく常に重要視された。これらに基づき、集住空間の共有領域の設計意図に対する相互関連性や特性を調べるため数量化III類とクラスター分析を行い考察した。その結果、設計者が集住空間の共有領域を設計する際意図した特徴は、(1)空間演出として緑にかかわる要素を取り入れたこと(2)多様な居住者に配慮し安全に考慮したこと(3)空間の利便性を重視したこと(4)空間の連結に考慮したことがあげられた。
  • 白石 光昭
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 25-34
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究ではまず,1966年〜2000年に販売された事務用回転椅子(274点)を対象に,形状の変遷を調べた。具体的には,正面斜めから撮影された写真をもとに,形状の特徴となるアイテム(18項目)を設定し,数量化III類を用いて分析した。その結果,「背のボリューム」と「背横方向の分断・ライン」の軸をもとに,8つのグループを得ることができ,ほぼ年代順に分類できることがわかった。次に,8つのグループのうち,サンプル数の少ない2グループを除き,それぞれから代表的な5脚を選び,評価グリッド法を用いて,各グループの椅子が視覚的にどんな印象を持たれるのかを調べた。その結果,(1)ユーザは椅子に対して,視覚の点からは形状の良し悪しと座り心地についての印象を持つ,(2)背もたれの幅や広さが,座り心地や見た目の印象に影響する,(3)肘かけは全体形状のバランスからはあった方が良く見えるが,個々の形状に対する印象評価はユーザによってかなり異なる,との傾向があることがわかった。
  • Yoshie KIRITANI
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 35-40
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    The purpose of study was to confirm whether nonnative readers of Japanese spontaneously pay attention to written Japanese in a simulation of signpost recognition. Twenty-three nonnative Japanese participants performed recognition test of place names expressed both in Japanese Kanji and in alphabetic expression. In some trials, the alphabetic expression did not correspond to Japanese, so that the participants should have looked at also Japanese Kanji to correctly respond to the test. Results showed that there were only 5 participants who could not completely look at Japanese Kanji. Sixty-five percent of participants could respond to at least one written Japanese Kanji over chance level. Visibility of Japanese Kanji in signposts would be important not only for Japanese but also for nonnative Japanese.
  • Andrew COOKSON, Shinnichi ISHIMURA
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 41-50
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    This paper examines the early roots that influenced the introduction of the woven rattan chair splat in English furniture from around the 1660s. The objective of this research is to collate evidence of a culture of consistent woven splat use on Chinese chairs in the centuries preceding the introduction of weaved splats and seats into Europe in the 17^<th> century. To achieve this objective, visual sources from Japan that relate to Chinese chair design are employed to supplement a lack of surviving Chinese examples. It is envisaged that this study will contribute towards a better understanding of why, and in what way, rattan was imported from Asia and used in English chairs during this time. A study of the development of chair forms in both England and China demonstrate that it is likely that woven splats on straight chair backs popular in the East were adopted into English chair design prior to the importation of the solid splat in the first decades of the 18^<th> century. Specifically, splats of Chinese origin directly influenced the uptake of rattan and solid splats in European chair manufacture as a result of sustained international trade between the two continents. Different construction techniques however, may be seen as responsible for the delayed uptake of the solid splat from the turn of the 18^<th> century.
  • 李 勇, 佐藤 弘喜
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 51-60
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、中国華南地域の現地調査に基づき、小型乗用車のスタイリング要素の優先順位を明らかにし、その優先順位に基づき小型乗用車のスタイリング要素の最適組合せを構築することにある。はじめに、市販されている55台の小型乗用車を調査サンプルに選び、スタイリング要素に関する21要素と61水準を抽出した。55台のサンプル車についてスタイリングの順位評価に関する第一段階の現地調査を行った。集計データを数量化I類分析を用い、スタイリング要素の優先順位を把握した。さらに優先要素及び関連する水準を選び出し、コンジョイント分析を用い、プロファイル・カードを得た。それら分析結果に基づき、調査サンプルとしてスケッチを作成した。これらのスケッチについてスタイリング選好に関する第二段階の現地調査を行った。集計データのコンジョイント分析を用いて、小型乗用車スタイリング要素の最適組合せを構築した。得られた最適組合せは中国華南地域の小型乗用車のスタイル開発の基礎として利用可能と思われる。
  • 木谷 庸二, 山口 眞理, 櫛 勝彦, 藤戸 幹雄
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 61-70
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    本稿は、戦後から現在に至る「デザイン」領域の変遷を明らかにするための一研究として、特にデザイン教育における「デザイン」の変遷に着目して、教育内容の流れを分析することで、教育分野における「デザイン」の捉えられ方・役割の変化を明らかにしたものである。中でも、その前身から100年にわたる歴史を有した京都工芸繊維大学及び千葉大学を事例として、工学系大学のデザイン教育の変遷・特徴を1)必修科目の経年変化、2)講義と実習の比重変化、3)教育内容の経年変化、4)科目内での教育内容の経年変化、5)時代との対応、6)カリキュラムの全体構造の経年変化の点で明らかにした。その結果、大きく捉えると工学系デザイン教育が「総合的」「システム的」な方向に収斂されていることが明らかとなった。
  • Kiminobu SATO, Hiromichi HARA, Fumino SUGIYAMA, Tomoko MATSUMOTO, Eri ...
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 71-78
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    In this paper, the research targets are selected from 6 groups of interactive exhibits which are classified in 'Analysis on Interactive Exhibits at Science Museums-Part 1' from those found in many science museums. While observing these utterances of the visitors through the video-recorded behavior, the contents are examined and 13 categories of utterances are classified according to their meaning and intention. The result shows that the presence of other people surrounding the children and the way with which the children relate to them are especially important for child's education/development. The experience impresses the children that interacting with the exhibit is 'fun' and leaves a long lasting memory with it. Along this thought, the paper concludes that it becomes crucial to elaborate the specific ways to draw the attention of their parents, guardians and other surrounding people to have fun experiences together with the children (the visitors) and enjoy being with them. From the standpoint of the goal achievement of exhibition, it can further be suggested that the guardians should try to enjoy jointly with the children, rather than just let them do what they want. The appropriate implementation of interactive exhibits needs this parallel planning perspective.
  • 林 海福, 加藤 浩, 戸谷 毅史, 中本 和宏
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 79-88
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    プロダクトデザイン分野において,製品分析は,デザイン企画を行うための市場調査方法の一つとして不可欠である.本研究では,複数の学習者が協調的に製品分析を行うことによるデザイン学習法を提案する.その提案は,Brunoによる分析項目リストを取り入れることによって初心者でも多視点から分析できることと,協調的な学習を取り入れることによって客観的に分析できることという特徴がある.この提案を用いて,実際にデザイン学部の大学生を対象とし,特定の製品分析の実験を行い,その妥当性を評価した.その結果,本提案の学習法の有効性について,次のことが検証できた.1)初心者である学習者でも多視点から製品を分析でき,製品分析の質が高まる効果がある.2)製品分析を行うことで,製品の意図を理解したうえ,製品の改良の方向性もはっきりする効果がある.
  • 鳥宮 尚道
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 89-94
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    画像に対する印象を用いた概念の把握について、被験者による絶対的評価、相対的評価、特徴ある画像に対するSD評価という3種の評価方法を、1つのWebアンケートシステムとして構築し、印象の把握における本システムの有用性を確認した。相対的評価から「sexy」という概念を最もよく表す画像とその対となる画像を抽出し、この画像を基準に、絶対的評価の連想キーワード、ならびに画像構成要素をサンプルとした数量化III類・クラスター分析を行い、さらにSD法からの因子分析を行った結果、「sexy」という概念が活動的、有機的、象徴的、柔軟性、熟成感という要素によって表されることがわかり、構成要素としては不定型、平滑などの特徴を持つことを把握することができた。
  • 白石 照美, 阿部 眞理, キム ジュヒ, 戸塚 泰幸
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 95-100
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    これまで,内装用材として既に活用されているもの,および活用が期待されているものについて,その形状からボード形状・シート形状・ひも形状に分類し,研究を進めてきた。本報では,自然の材料で作られているひも形状素材について,利用の指針とすることを目的にSD法を用いた視覚および視触覚についての感覚評価実験をおこなった。因子分析の結果,視覚・視触覚ともに「品格」「量感」「手触り感」「新鮮感」「開放感」の5因子が抽出された。さらに20種のひも形状素材について因子間布置図を作成した結果,視覚,視触覚いずれも表面が粗い材は品格に欠けると判断され,目が細かい,スムースな材が品格があると判断されていること,同じ原料でもその形状,加工方法によって評価が異なるなど,素材の特性と感覚特性の傾向を把握することができた。
  • 阿部 眞理, 白石 照美, 戸塚 泰幸
    原稿種別: 本文
    2011 年 57 巻 6 号 p. 101-108
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/06/24
    ジャーナル フリー
    生活用品に使用されている材料にはひも形状を持つものがあり,自然素材を原料とするものの需要が高まっている。本稿では,ひも形状材料の新規用途開発を目的とし,木材,紙材,植物材からつくられた11種類の材料に対して,力学的および物理的試験,断面形状観察を行った。その結果,木材によるものは熱伝導性が高く,植物によるものは保温性に優れるなどの性質があることがわかった。加えて,ひも形状材料の性質は個々に異なるものが多く,性質の類似による括りが難しいことが明らかとなった。筆者らは過去に,紙材によるひも形状材料を使った家庭用車いすを試作した。当時は感覚評価の結果をもとに材料を選択したが,今回明らかとなった性質とは若干の相違があった。材料の新規用途開発には,感覚的,力学的,物理的性質の把握が必要であることが確認された。
feedback
Top