本研究では,交流に関する取り組みを積極的に行ってきた千葉県内のケアハウスの活動事例調査を通して世代間交流促進におけるデザインの関わりの可能性を考察した。まず,世代間交流を目的として同施設に設置されたが継続し得なかった「おもちゃ美術館」の調査によって,ソフト面,ハード面に関わるいくつかの問題点が導きだされた。次に,大学院でデザインを学ぶ学生たちが当該ケアハウスで行った3つの研究(多目的に用いられる食堂椅子の改良,散歩時の休憩環境の提案,庭のデザイン提案)を通した交流活動に関する観察調査および,ヒアリング調査を行った。これらの活動は結果的に施設における生活環境のデザイン的な解決につながり,その結果1)入居者の日常生活の活性化2)発展性のある交流の促進3)活動に対する入居者の能動的姿勢の芽ばえが観察された。また,このような配慮や計画はケアハウスにおける既存の組織や方法によっては生み出されにくいことがわかった。以上のことから世代間交流促進におけるデザイン関与の可能性とファシリデータ的な役割の必要性が示唆された。
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