デザイン学研究
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59 巻, 2 号
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  • - 携帯電話のデザイン評価を事例として
    佐々 牧雄, 牧野 喬, 小野 健太
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_1-2_8
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    デザインプロセスにおける重要なステップに,デザイン評価がある。デザイン評価は,想定ユーザーを招聘し,グループインタビューを行う定性調査や,デザインを表現する評価用語を用い,アンケートを行う定量調査が主流である。しかしながら,これらは時間やコストもかかり,自動車産業のように開発期間も長く,開発コストをかけられるケースを除き,商品開発プロセスにデザイン評価を必ず組み込んで,定常的に実施することは難しい。本研究は,デザイナーの予測能力を生かして,これらの課題を解決することを目的としている。具体的には「群衆の叡智」という概念を参考にしながら,複数のデザイナーが,想定ターゲットユーザーが行ったデザイン評価結果の予測を行い,その精度を測定した。その結果,個人嗜好についての評価語は,印象についての評価語と比べ,予測精度が良くないこと,また,デザイナーが複数で予測を行えば,ユーザーに対して行う,デザイン印象評価結果の再現性が高いことが分かった。
  • 佐々 牧雄
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_9-2_18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,筆者らの先行研究である「サービス申込フォームにおけるデザイン・ガイドラインの構築」と「予測手法によるデザイン評価の研究」を応用,発展させたものであり,ユーザビリティ評価法における課題である「実施コスト」「実施期間」「評価者スキルの定量的把握」「ユーザビリティ問題の解決の優先度把握」などの解決を目指したものである。実験では,「群衆の叡智」で既に得られている知見を応用し,情報デザイナーやユーザビリティ・コンサルタントからなるエキスパート集団に,一般的なユーザーを対象に行ったユーザビリティ評価法のパフォーマンス測定の結果を予測してもらった。実験の結果良好な結果が得られたので,エキスパート集団の予測結果を用いることで,大規模なパフォーマンス測定をしなくとも,ほぼ同等な結果が得られることがわかった。それとともに,ユーザビリティ評価者を「どれだけユーザーの行動を予測できるか」という視点により,そのスキルを定量的に測ることができた。
  • - 品川区東中延公園・二葉公園・旗の台なか公園における調査を通して
    田中 遵, 石田 憲, 強矢 大輔, 日高 單也
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_19-2_28
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    東京都品川区荏原地区の街区公園には,既存の遊戯施設以外に,家庭で使用されなくなったおもちゃが地域住民によって設置され再利用されることで,こどもの視点で遊び場が形成された東中延公園・二葉公園・旗の台なか公園がある。本研究では,この3つの公園とその周辺の街区公園を調査研究することにより,大人の視点で作られた為にこども達が創造的に遊んだり学んだりする場としての機能が失われている公園に,どのように地域住民が関与すればこども達や地域住民の為の街区公園になり得るかを探究することを目的とした。調査研究により,街区公園において,おもちゃの設置がこども達を楽しませるだけではなく,親同士,散歩にくるお年寄り,休憩にくる人々にコミュニケーションの場を提供することが明らかになった。今後は,地域住民主体の活動を評価し,それを推進していく新たな指針を策定していくことが重要な課題になると考えられる。
  • - The Effects of Natural Lighting for Meditation
    Pi-Fen Wang, Ming-Chyuan Ho, Chun-Yuan Wang
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_29-2_38
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    Sacred space has always been a significant place to enhance human spirituality, essential to contemporary human suffering from secular pressure. This study aims to investigate the effects of filtered natural lighting for meditation in sacred space. This study used the methods focusing on the designed experiments including the measurement of the illuminance, open-ended questionnaire, closed-ended questionnaire and extended semi-structured interviews from 61 participants. The experimental results of T-test had significantly difference and interviews indicated the common feelings and some special perceptions. We concluded in the following: First, the filter of the natural lighting would affect the meditation. The meditation space should be dim light to most participants. Second, the intensity of light could be approved to affect the meditation. The degree of effects could be explored further. However, it should not be too strong and too dark. Third, the rate of inflation of illuminance would affect the meditation. Finally, we have to consider the adaptation of different groups, and the control of the direct light that relates to the feeling of "nature", "power" and "energy". This study would significantly contribute appropriate ideas to the meditation space in interior design.
  • Chi-Shoung TZENG, Tun-Chih CHANG
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_39-2_48
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    The article investigates difference in paper, writing style, characters, article, specific sign and seal related to anti-counterfeit layout and design of passport in Qing Dynasty between 1880 and 1911. The study has results as follows: 1. Most passports in Qing Dynasty used by "human", except the need of keeping stub and number for future reference, were not sealed on the perforation and number which provided an anti-counterfeit "verification". 2. As to "morphology" of passport in Qing Dynasty, the article finds that only officials could use the passport with dragon-framed pattern. Foreigners visiting China used the passport with straight-line frame. 3. Of all diplomatics in Qing Dynasty, passport was the document with the most discreet layout in issuance and anti-counterfeit function. The sealing procedure truly conformed to "Qi Jun Gai Yue" which had stronger anti-counterfeit function.
  • - 家電製品のエコロジカルな使用を促す表示手法の研究(2)
    杉本 美貴, 岡田 栄造, 櫛 勝彦, 山本 建太郎
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_49-2_56
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、個々の家電製品自体に何らかの環境負荷に関する表示(以下、エコ表示)を行う際、ユーザにエコロジカルな機器の使用を促すために効果的な表示内容や表示方法を明らかにすることである。前稿では、冷蔵庫にエコ表示を実施する際に効果的なエコ表示の要件を明らかにした。
    本稿では、冷蔵庫を対象としたそれらの要件が、他の家電製品でも有効であるのか検証する事を目的とする。そのために、家電製品の中でも消費電力量が多いテレビとエアーコンディショナ(以下、エアコン)を対象に、冷蔵庫での結果を反映させたエコ表示を行った場合のユーザの意識や環境負荷低減効果について考察した。その結果、ユーザの行為を視覚化する「IN PUT表示」にするか、ユーザの行為の結果を視覚化する「OUT PUT表示」にするかは、機器の特性やユーザの関心を見極めた上で選択しなければならない事、表示の見やすさ、分かりやすさ、適切な変化量への配慮がなければ即応性の効果は得られない事が明らかとなった。
  • 西尾 幸一郎, 秋本 俊, 田中 祐作, 松原 斎樹
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_57-2_62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、若年者に対するスヌーズレン空間の効果について心理的・生理的側面から検討し、建築デザインの中でスヌーズレン空間をリラクセーションの場として取り入れる上での基礎的知見を得ることである。T高専の健康な学生 20名を対象とし、スヌーズレン空間外とスヌーズレン空間における被験者の反応を比較した。その結果、以下のことが明らかになった。スヌーズレン空間で過ごすことは、総合的な気分を改善させる効果があり、とりわけ緊張感や抑うつ、疲労感を緩和させるという気分の改善効果が期待できる。一方で、気分に及ぼす効果はスヌーズレン空間の環境条件によって異なり、活気を下げるというマイナスの効果が生じることもある。また、スヌーズレン空間の視覚刺激系の設備・機器を操作し、環境条件を変化させることで、空間の印象に及ぼす心理的効果が大きく異なる。以上より、若年者に対するスヌーズレン空間の効果の一端が明らかになった。
  • - 若年女性と高齢女性の比較
    彭 春栄, 下村 義弘, 池山 和幸, 勝浦 哲夫
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_63-2_68
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    スキンケア用コットンの持ち方を「はさむ」と「つまむ」2つの姿勢に分けた。「はさむ」は手指を伸展させ、指と指の間にコットンをはさむ姿勢であり、「つまむ」は拇指とそれに対向する複数の指でコットンをつまむ姿勢であった。本実験のタスクは化粧水を顔にコットンでなじませる動作であり、18プロセスから成っていた。被験者は30代の社会人女性15名と高齢女性11名であった。測定項目は上肢の筋電図および関節角度であった。結果、「はさむ」場合、コットンを手と顔面の相対的な角度と位置に合わせて幅広く移動させるため、手指と掌についての力および姿勢の変化は大きく、手関節の姿勢変化は小さいことがわかった。「つまむ」場合、手指の力および姿勢は一定であるため、コットンを顔面に移動させるのに、手関節の姿勢変化が大きいことがわかった。
    コットンの持ち方に関わらず、高齢者の化粧対象部位間の筋活動と関節運動の違いが若年者より小さかった。このことより、高齢者は若年者のように力と姿勢の調整が上手にできず、運動学的により狭くかつ低い活動度であることが示唆された。
  • - 家具小売専門店・百貨店家具売場の店頭展示とコスガの販売促進手法との比較研究
    新井 竜治
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_69-2_78
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    家具小売専門店・百貨店家具売場における家具の展示方法は、1950・60年代は平場展開が全盛であったが、70年代の海外家具メーカーのギャラリー展開を機に、ルーム展開が導入された。80年代はルーム展開と平場展開が並列したが、バブル崩壊を経て、90年代以降は平場展開に回帰した。ライフスタイル提案型ショップは、70年代の海外家具メーカーのギャラリー展開にその萌芽が見られ、80年代初めから 90年代中盤に興隆期を迎えた。90年代中盤以降は小規模化し、一点豪華主義的になった。主要木製家具メーカーのコスガは、トータルインテリアコーディネート家具シリーズを家具小売業の店頭にギャラリー展開するため、70・80年代には家具だけのルーム展開プランを販売店側に提案したが、90年代以降は、ライフスタイル提案型ショップの影響を受けて、家具と生活雑貨を展示する生活感溢れる提案へと販売促進手法を変化させた。コスガのギャラリー展開の情報源は、アメリカの家具小売市場におけるイーセン・アーレン等の家具メーカー主導のギャラリー展開の事例であった。
  • -「工場萌え」への心理学的アプローチ
    金 美英, 李 志炯, 崔 庭瑞, 八馬 智, 日比野 治雄, 小山 慎一
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_79-2_86
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    景観評価に関する研究は評価される景観の特徴に焦点を当てたものが多く、評価者の心理に焦点を当てた研究はほとんど見られない。本研究では、工場景観愛好者と非愛好者の心理学的評価特性を印象評価および眼球運動実験を通じて比較した。印象評価実験では、工場・橋・歴史的建造物の景観において形容詞対を用いて評価した。眼球運動実験では、これらの景観を評価する際の眼球運動および瞳孔径を測定した。その結果、印象評価実験では、工場景観愛好者は非愛好者よりも多様な評価基準を用いて工場景観を評価していることが示唆された。また、工場景観愛好者では工場景観鑑賞時に垂直方向の眼球運動が活発に見られ、瞳孔径の拡大も認められた。以上の結果から、工場景観愛好者は工場景観鑑賞時に非愛好者よりも活発な情報収集を行い、多様な評価基準を用いて評価していることが明らかになった。工場景観に対する興味や愛着によって活発な情報収集と多様な評価基準による評価が引き起こされるとともに、これらの行為によって工場景観に対する愛着が促進されていると考えられる。
  • -映画制作をモチーフにしたメディア作品制作体験のデザインについて
    長谷 海平
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_87-2_94
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    本論は映像で表現する能力を得るための教育的体験について実践をもとに論じたものである。本論において映像で表現する能力とはメディア・リテラシーの本来的な意味である「読み書く」能力のうちの「書く」能力の事を指す。映像の表現には文法的なものがあり、映像で「書く」能力とはすなわちこの文法を手に入れる事になる。ただし、固定的な映像文法が確固として存在しているという考え方は映画理論として正しくはなく、またメディア・リテラシー論的に実践をデザインするための望ましい理解にはなっていない。これらをふまえ、本論では学習者自身が映像の文法的なものを自ら生成していくような実践になるように映画制作をモチーフに体験をデザインした。
    その効果についてはデザインされた体験を実践する事から測定を行った。その結果、体験から学習者は自身の映画の個人的な言葉と言うべき統辞的手法を発見し、具体化しており本論で述べられた体験が、映像で「書く」力を養う体験デザインになっていたことが明らかになった。
  • -1990年代の金融自由化を事例として
    坂手 勇次
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_95-2_100
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    1990年代以降,異業種参入による業界再編やインターネットの普及が加速したことで,サービス業界におけるサービスチャネルの多様化が急速に進展した。特に,バーチャルなサービスチャネルの拡充は、リアルな場を持つ「店舗」の役割を大きく変化させている。本稿の主題は,このリアルな場を持つ「店舗」の価値がどのように変化するかを考察することにある。本稿では,その価値を「顧客から求められる機能空間」として「サービス・アクセスポイント」を定義,類型化し,「それを実現するシステム」として「サービス・アクセシビリティ」を定義,類型化した。また,これらの考察を通じて,リアルな場を持つ「店舗」は業界の垣根を超えて融合し,顧客に最適な機能空間に再編されるという仮説を導出した。本稿では,金融自由化や業界再編など,市場環境の変化が顕著な金融業界の店舗を事例に店舗モデルを構想するとともに,その具体的な店舗機能空間をデザインした。
  • 楊 莉, 赤瀬 達三
    2012 年 59 巻 2 号 p. 2_101-2_106
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    近年の国際化社会の進行に伴い外国人でも高速道路で円滑に運転ができるような環境整備が期待され、案内標識のローマ字表記の読みやすさを向上させることが求められている。本調査では、外国人が読みやすい日本地名のローマ字のつづり方を探ることを目的とした。アンケート調査は日本地名の音節数の調査によって、5音節以上の地名を対象とした。ハイフンを入れないものを「1つづり」、1ヵ所のハイフンで区切るものを「2つづり」、2ヵ所のハイフンで区切るものを「3つづり」というつづり方によって、調査サンプルごとに参加者全体のつづり方別選択率と、在日年数3年未満者のつづり方別選択率を算出した。調査結果では、(1)5音節から8音節のアルファベット表示では2つづりが支持され、9音節以上になると3つづりが支持されていた。(2)在日年数が少ない外国人は、5音節の地名において 2つづりが読みやすい傾向が見られた。(3)「g」、「k」の前に母音がある場合、その前にもハイフンを入れる必要があることが判明した。(4)音節の多い語はハイフンで区切るつづり方が読みやすくなることは疑いようがないと考えられる。
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