本論は、戦時体制下(1937~1945)の日本デザインにおける機能主義を〈簡素美〉との関係から考察し、その関係の特質と〈簡素美〉が有した意味の解明を目的とする。考察の対象は、商工省工芸指導所における生活用品の研究制作活動である。また、〈簡素美〉は「簡素」という言葉を含む美意識とする。
戦時体制下、造形主義である機能主義と一般的美意識である〈簡素美〉は、単純化としての機能主義理解により、両者の関係が成立した。また、日本独自の性質を象徴する〈簡素美〉の性格により、〈簡素美〉は機能主義と日本の造形を媒介する役割を担った。そして、両者の関係が戦時体制下に提示された背景には、7・7禁令を契機とした新しい造形規範を求める動きがあり、機能主義と日本の民族性の融合というその理想に適合したのが〈簡素美〉だった。
このように、戦時体制下に〈簡素美〉を通して、機能主義と日本の独自性の関係が考究されたことは、ジャパニーズ・モダンなど戦後の日本デザインの素地の一つを形成したといえる。
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