デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
61 巻, 4 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 平田 光彦
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_1-4_8
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,整斉を基調とした楷書の点画構成において,はねを有する画が与える美的印象を,感性評価によって実証的に検討した.調査対象は,右方向へ送筆後にはねる画と右下方向へ送筆後にはねる画の強調効果であった.刺激には,はねを有する画を強調した標準構成のサンプル文字と強調のないサンプル文字を用意し,SD法によって視覚的印象のデータを採集した.評価尺度には筆者らの先行研究で構成した3次元(「均整美」,「開放性(活動性)」,「力量性」)の尺度を使用した.サンプル文字の評価値には,採集データに項目反応理論を適用して求めた尺度値を使用し,分散分析による検定をおこなった.
     調査の結果,はねを有する画は,右方向への強調構成によって均整美の評価を上げた.また開放性の評価結果から,はねを有する画が,視覚を通して身体運動への共感覚を喚起する可能性が推察された.最後に,右下に送筆後はねる画で,力量性の評価が向上する画の長さの範囲があることが示唆された.
  • -生活文化的、道具学的視点からの考察を通して
    陳 譽云, 三橋 俊雄
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_9-4_16
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究は、台湾・南投県竹山地域において、かつて生活に不可欠であった竹素材に着目し、現存する生活用具や建築材料、習慣、信仰などについて、生活文化的、道具学的視点から現地調査を通してその特質を明らかにし、竹素材の利活用がいかに人びとの暮らしを支えてきたかを検証した。
    調査対象地域は、標高の違う大鞍里(Da-an Vlg.)、田子里(Tianzih Vlg.)を含めて6集落とした。調査の結果、それらの地域における竹具や竹具づくりに内包される伝統的生活文化・生活技術の特質として、適材適用、手技の探求、地産地消、象徴性・真正性を導出することができた。すなわち、当該地域における竹と生活文化の関わりにおいて、自然や風土に働きかけ、合理的で最適な自然資源活用のあり方を求め、環境や実状に応じて最善の処置を講ずるものづくりの理念を明らかにすることができた。
  • -台湾大甲地域における内発的発展に関する調査・研究(2)
    陳 香延, 植田 憲
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_17-4_26
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     本稿は,台湾における大甲藺工芸産業の変遷をまとめるとともに,それに関与した人びとの活動を明らかにすることを目的としたものである。調査・考察の結果,大甲藺工芸産業の発展は,以下の5つの時期に分けることができた。(1)黎明期:1729~1895年頃に相当し,大甲藺工芸の原型となった編みの技術が,生活者の手によって創出された時期である。(2)発展期:1895~1903年頃に相当し,大甲藺工芸の産業化のみならず,当該地域の総合的な生活の向上に地元の郷紳らが大きく寄与した時期である。(3)最盛期:1903~1942年頃に相当し,大甲帽子の生産がピークを迎えた時期である。(4)衰退期:1943年より始まった第二次世界大戦を経て,産業としての大甲藺工芸が大きく衰退した時期である。(5)復興期:1994年の社区総体営造の開始から現代までの時期に相当する。大甲藺工芸産業の成立と発展は,地域の人びとの内発的な活動を促すとともに,それに支えられつつ展開されたことが示唆された。
  • -名古屋市久屋大通公園を事例として
    伊藤 孝紀, 松野 大希, 成田 康輔
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_27-4_32
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、都市公園における音の要素を抽出し、印象評価の違いを分析することで、都市公園の環境演出をおこなう上で基盤となる音の特性を把握することを目的としている。名古屋市の久屋大通公園を研究事例として
    1)定点観測調査により久屋大通公園中の12広場において音を収集し、久屋大通公園に存在する音のデータ化をおこなった。
    2)データをもとにクラスター分析をおこない、3つの類型を抽出した。
    3)類型化された3つの代表的な広場の音源を使用し、地区把握者と非地区把握者に対して音聴取心理実験をおこない、3広場の印象的な音の把握とSD法による印象評価をおこなった。
    4)印象評価の結果をもとに因子分析をおこない、「快適」因子、「美的」因子、「喧噪」因子の3因子を抽出した。
    5)因子得点をもとに分散分析をおこない、音の美しさという点において属性間の評価の差が明らかになった。さらに因子得点の布置図をみることにより、広場ごとの評価特性を明らかにした。
  • ─介護支援ボランティア制度導入直後の調査
    金 正和, 山中 克夫, 花里 俊廣
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_33-4_40
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
    高齢者施設における介護ボランティア導入についての介護者及び入居者の評価を明らかにするために,第一に,高齢者施設の管理的立場の人々が,介護ボランティア導入をどのように考えているのかを調査した。第二に,高齢者施設のスタッフ,介護ボランティア及び入居者が,介護ボランティア導入による介護のゆとり度や満足度,スタッフと介護ボランティアによる介護の質の違いについてどう感じているのかを調査した。そして,聞き取り調査の結果,施設の管理的立場の人々は介護ボランティア導入による介護が,スタッフの仕事量を軽減させるなど介護のゆとりを増進させていると考えていることがわかった。また,介護ボランティアの割合が高い施設ほど,介護のゆとり度が高いとスタッフ,介護ボランティア及び入居者が感じていることがわかった。同様に,介護ボランティアが行う介護の満足度が高く,スタッフと介護ボランティアによる介護(生活援助)の質に違いがないと感じていることがわかった。このように介護ボランティア導入は,介護者及び入居者から歓迎されていた。
  • 田中 法博, 望月 宏祐
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_41-4_50
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究は物体の光沢や陰影を含めた精密な色再現ができる分光ベースのCG レンダリング手法を Android アーキテクチャのスマートフォンで実現することを目的とする.最初に物体のレンダリングのために分光反射モデルを構築する.二番目にスマートフォンのGraphics Processing Unit(GPU)に適した分光ベースレンダリング手法を提案する.ここでは GPU のテクスチャメモリ用に光源の分光分布やダイナミックレンジを圧縮する手法を提案する.三番目にCG の色再現精度を向上させるために,スマートフォンのディスプレイのキャリブレーション手法を提案し,色差⊿E=8.7 の精度でCG 再現ができた.最後に、提案手法の妥当性を示すためにスマートフォン上でいくつか照明環境下のシーンで物体をCG レンダリングした.また,ディスプレイサイズの違いによるCG 再現精度の違いを一対比較法で検証したが有意な差がないことがわかった.
  • -ナナちゃんストリートで実施されている催事内容と空間特性
    伊藤 孝紀, 平 翔, 成田 康輔
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_51-4_56
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究では, プレイス・ブランディングの対象となる都市や地域固有のモニュメントやオブジェなどの野外彫刻物を「都市シンボル」と位置づけた。そして, 都市シンボルに対する市民の意識を把握することを目的とした意識調査に加え, 設置された空間で実施されている催事における来訪者の行為から, 空間特性を明らかにすることを目的とした行為観測調査をおこなった。
     意識調査から, 都市シンボルに対する市民の印象と活用提案を把握した。行為観測調査から, 催事開催時における催事内容によって参加者の属性が異なることを明らかにした。また, 設置された空間の特性として, 開催時における使用機材の種類および設置場所は,参加者の分布に影響を与えることと, 開催時の使用機材や参加者の分布によって歩行者が往来できる地点が限定されていることを明らかにした。
  • ─注視順序と想起順序の相関関係と探索性との関係に着目して
    滝澤 功, 長尾 徹, 佐藤 弘喜, 大嶋 辰夫, 赤澤智 津子
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_57-4_64
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
    本稿は,ニュースサイト上の見出し記事を探索する過程において,知覚した注視順序と認知した想起順序の相関関係に着目した。その相関関係と探索性との関係を示し,探索性の評価方法を提案した。まず,探索性に影響するニュースサイトの要素をラフ集合によって抽出し,その要素が含まれた既往ニュースサイトをもとに注視領域と想起領域を示した。そして,注視領域外と想起領域外を削除したサンプルで検証し,注視順序と想起順序の順位相関関係は探索性の主観評価に関係することを明らかにした。本稿によって示唆された注視順序と想起順序の順位相関による探索性の評価は,Web サイトにおける探索性を知覚領域と認知領域とで複合的に調査でき,探索性の高いWeb サイト作成の指針につながると期待される。
  • 西田 智裕, 木本 晴夫
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_65-4_74
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     本論文では,自然画像からの抽出オブジェクトの色や形状による印象表現の有り方について分析を行う。分析結果から,人の発想では描かれにくい自然画像の色や形状による印象表現の有り方を明らかにすることが,本論文の目的である。自然画像からの抽出オブジェクトと手描きオブジェクトのそれぞれに対して印象評価実験を行った。実験にて上位に評価されたオブジェクトの色と形状を比較して分析した。この研究から,自然画像には人の発想では描かれにくい色による印象表現の有り方があることがわかった。
  • 内山 貴博, 栗本 健太, 田沼 和㤗, 福田 雄介, 間瀬 陽介, 中西 美和
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_75-4_84
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究では、ユーザの実視野をできるだけ活かしつつそこにオーバーレイして映像を提示する単眼シースルー型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)について、産業用途への応用を想定し、そのデザイン要素と装着快適性との関連性をモデル化した。モデル化に際して、装着快適性にはそれを構成する複数の要件があり、さらにそれらの各要件に対して個々のデザイン要素が影響を及ぼすという階層構造をフレームワークとした。階層構造における各ノード間の影響を明らかにするべく、被験者に異なるデザイン要素・パタンの単眼シースルーHMDを体験させ、その際の装着快適性及びそれを構成する要件の充足について主観評価させる実験を行った。得られたデータに重回帰分析及び数量化Ⅰ類を適用し、各デザイン要素・パタンから装着快適性を定量的に推定するモデルを得た。このモデルは、複数のデザイン案の優位性を比較検討する際、意思決定の参考となる指標を導出する点、新しいデザイン案を創出する際の発想支援に繋がる点において、有用性と拡張性を持つものと考えられた。
  • 平野 亮, 原田 利宣, 井上 治郎
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_85-4_94
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     デザイナは周囲の光源環境が製品の曲面へ映り込んだ像の形状(以下,映り込み形状)を手掛かりとして,曲面の性質の評価を行っている.しかし,造形前に意図した映り込み形状を映し出すような曲面を創成するCAD 上の制御パラメータ値を明確にすることはできておらず,デザイナは経験や勘により曲面の丸みや捩じれを少しずつ調整しながら探索的に意図する映り込み形状を映し出す曲面を得ている.
     そこで,本研究では,美しい曲面を創成するための曲面の制御パラメータ値とそのパラメータ値間の関係の明確化を目的とした.具体的には,対数美的曲面の制御パラメータにおける各値の組み合わせ計256 種から創成された対数美的曲面とその曲面上の映り込み形状の関係性,また視点位置と映り込み形状の関係性について分析を行った.その結果,不具合な映り込み形状を生ずる対数美的曲面を創成する制御パラメータ値とそのパラメータ値間の関係が明らかとなった.
  • ―その発展歩み、問題点及び復興の兆候
    張 英裕, 傅 思華, 陳 柏君
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_95-4_104
    発行日: 2014/08/18
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     台中電子街は台中市中区に位置し、1970年前後から台湾中部の電子部品の集散地として一躍有名になった。しかし、1990年前後から多くの原因で、当エリアも台中市中区とともに衰退してきている。
     現在、台中市中区が久々に回転し始めている。こんな時期こそ、電子街は未来発展への対応をいち早くしなければならない。従って、本研究は電子街の現状及び問題点に基づき、次の七点を提示する。(1)業者の結束力を再喚起することが最優先。(2)台中電子街でしか見られない特色を創造しPRする。(3)特色のある専門店を入居させる。(4)商圏の管理とPRを別々にする。(5)便利なバイク駐輪場を設置する。(6)管理委員会の強制力をアップさせる。(7)インターネットと水空間を活用する。
  • ─mobile AP3 を用いた観察によるモノ・コトデザインのための記録特性
    荘 育鯉, 南部 美砂子, 岡本 誠
    2014 年 61 巻 4 号 p. 4_105-4_114
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
    情報環境をデザインする場合,ユーザの経験を理解することが大切である.そのために,ユーザの活動や心理的な変化を知るための新たなデザインメソッドが必要とされている.そこで本研究では,スマートフォンと経験抽出法(Experience Sampling Method,ESM)を用いたマルチメディア経験収集システム(mobileAP3)を提案した.mobile AP3 は観察者の経験を複数の記録用メディアによって記録することができる経験収集システムである.今回の研究では,各記録用メディアの有効性を明らかにし,また,記録用メディアを用いたことで,観察者と周囲の人や環境の関係についての考察を行った.分析の結果,調査者は観察対象(環境や人間活動)の違いによって,それに適した記録用メディアを選択することが明らかになった.更に観察態度や記録行動をも変化させていることが示唆された.
feedback
Top